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ゲーマーにとってブースティングは何を意味するのか 『VALORANT』の事例から考える

ゲーマーにとってブースティングは何を意味するのか 『VALORANT』の事例から考える

VALORANT

POPなポイントを3行で

  • なぜゲーマーはブースティングに手を染めるのか
  • ゲームコミュニティではブースティングが常習的におこなわれてきた
  • 実力を誇示し、交友関係を広めるきっかけとなるランクシステムの光と影
ここ最近ゲーマー界隈を賑わせている話題がある。「ブースティング」である。他人に自身のランクを引き上げてもらう行為を指す。

発端は、プロゲーミングチーム・Crazy RaccoonのオーナーであるCRおじじこと高野大知さん、同チーム所属の元プロゲーマーRionさん、Zepherさん、Franciscoさん、「ぶいすぽっ!」所属のVTuber・八雲べにさんによる、一連の不祥事だ。

この際に取り沙汰されたのが、Windows向けのタクティカルシューター『VALORANT』における「ブースティング」行為である。事件に関わった者には報酬のカットや活動自粛など、厳しい処分が下された。 さらには、当初ブースティング行為が発覚していなかった他チームの選手・ストリーマーなどに飛び火した。

これにより、「ぶいすぽっ!」所属の花芽すみれさんはCRカップの出場を辞退、ZETA DIVISION所属の夏代孝明さんとtakejさんには3ヶ月間の活動自粛と報酬のカットの処分が下りた。 筋金入りの対戦ゲーマーの方であれば、『VALORANT』におけるブースティング行為が上記の処分に相当することは、容易に想像できるだろう。

しかしながら、近年のPCゲームのコミュニティの爆発的な成長と共に、各プレイヤー間でブースティングという行為についての認識にギャップが生じている。上記の行為に対して同情的な意見をお持ちの方もいるはずだ。

このブースティングの正体とは一体何なのか。また、彼らはなぜこのような厳罰を受けなければならなかったのか。今回はPCゲームコミュニティに長年鎮座してきた「ブースティング」というタブーを取り上げたい。

目次

ゲームアカウントはゲーマーにとっての身分証

原始、私達は仲間内でゲームを楽しんでいた。

皆で一つの家庭用ゲーム機を取り囲み、時に協力し合い、時に勝利を巡り争った。顔を見知った間柄でゲームの腕前の優劣を付けたりもしたが、自分が世界で何番目に強いのか、見当もつかなかった。

時代は巡り、2021年。相変わらず私達はゲームを楽しんでいるが、その楽しみ方は大きく異なる。わざわざ一つのゲーム機を囲まずとも、インターネットでつながった各々のゲームハードで一緒に遊ぶことができる。

むしろ現実の友達よりも、ゲーム中に知り合った顔も知らぬ人と遊ぶ機会の方が多い

自身のゲームの腕前を知ることも容易だ。ランクマッチをプレイすれば、自身のゲームアカウントに実力が顕在化した階級が紐付けられる。

地元で一番の腕前だとしても、世界中の人々を相手取るランクマッチにおいては、中の下程度の階級だったりするのだ。この階級をもとに実力が近い者同士でランクマッチのマッチングが組まれる。

ゲームアカウントは今やゲーム内での身分証明書、履歴書に相当する。

自分がどのようにそのゲームを遊んでいるか、腕前は如何ほどなのか、自身のアイデンティティを示すものとなった。無論、貸し借りは禁物である。
激闘へ向かえ // Episode 3 Act II オープニングトレーラー - VALORANT
「ブースティング(Boosting)」とは、他者の力を借り、ゲームにおけるランクマッチの階級を引き上げる行為全般を指す。

これにより、ブースティングを受けた者はより上の階級を自身のプロフィールに表示でき、実力より盛ったマッチングに参加することとなる。

一般的には、上位ランクプレイヤーにランクの低いサブアカウントを使用してもらい、マッチングを調整した上でパーティを組み、敵を蹂躙してランクを上げてもらう行為を指す。以後、本文で使用する「ブースティング」は、すべてこの行為に読み替えていただきたい。

広義では、自分のゲームアカウントにログインしてもらい、ランクを上げてもらう行為も含む。しかし日本のゲームコミュニティにおいては、この行為は「代行」と呼ばれ、「ブースティング」と区別される。本文においても、「代行」と「ブースティング」は明確に区別することとする。

コミュニティから強烈に糾弾されるモラルの問題

多くのゲームにおいて、アカウントの共有は認められない。『VALORANT』も、「アカウント作成者が第三者にアカウントを共有する行為」を明確に禁じている。

したがって「代行」行為が発覚した場合、アカウントの停止など厳罰を処される。この際、「家族がプレイしていた」等の言い訳は通用しない。

一方、『VALORANT』におけるサブアカウントを使用しての「ブースティング」行為は、規約違反には類しない。規約上は問題なく、あくまで個人のモラルの問題であるとされる。

しかしながら、この行為が明るみに出た際、ブースティングを受けたプレイヤー・おこなったプレイヤーは共にゲームコミュニティから強烈に糾弾されることとなる

ブースティングの何が悪質なのか

ブースティングは悪質なマナー違反行為である。しかし、すべてのブースティングに悪意があるとは思えない。

そして、例えブースティングがどんなに悪質であろうと、万人が石を投げつけて良い訳ではない。多くのゲームプレイヤーは、無自覚的にブースティングによく似た行為を過去にしてきたはずだ。

例えば、『ポケットモンスター』で四天王を倒すために、友達に高いレベルのポケモンを貸りて殿堂入りを果たした。『モンスターハンター』で既に最後のクエストをクリアしている友達に、自身のハンターランク上げを手伝ってもらった。

挙げればきりがないが、これらが筆者の主観的なものではなく、各々のゲーム経験においてありふれた事象であることは理解していただけるだろう。 これらに共通するのは、ゲームをスムーズに攻略するという姿勢だ。先のストーリー展開を素早く体験するために、他人の力を借りたのだ。

現在取り沙汰されているブースティングも構造としては同じである。ランクマッチにおける難所を攻略するために、ゲームの上手い友人に協力してもらっているだけなのだ

実際、多くの人が集中する下位レートはランクを上げるのが難しく、しばしば「魔境」と形容される。例えレート以上の実力を持っていたとしても、「魔境」の脱出には時間がかかる。

初心者が楽しむ場を破壊してしまう行為

ブースティングに与するプレイヤーは概して無邪気である。他者の協力を得てランクマッチを効率的に攻略しているに過ぎない。

かといって、ブースティングに与したプレイヤーは擁護されるべきではない。では一体ブースティングのどこが悪質な行為であると言われる所以なのか。

第一に、ゲームを楽しむ、という姿勢に反するという点だ

ブースティングはゲームの持つ楽しさを損なわせる。

ランクマッチはゲームを始めたての初心者がいきなり上級者とマッチングしないよう、対等な実力同士で遊べるように設計されている。

適度な緊張感を持ちつつ、拮抗した勝負が繰り広げられるランクマッチでの対決は最高に楽しい。
【フィジカル強化】撃ち合いが強い人の特徴と上手くなる為の練習方法【VALORANT/ヴァロラント】
ブースティングはこの初心者がゲームを楽しむための場を、無慈悲に破壊してしまう行為である。

初心者が配属されるレート帯のマッチングに偏りが生じ、その影響は徐々に上位レート帯に波及する。そうすると、ゲームを始めたてのプレイヤーは、継続的にプレイしている上級者とのマッチングを余儀なくされる。

また、どんなゲームであっても、他者の力を借りずに自力でじっくり腰を据えて解決した方がゲームは楽しい。

対戦ゲームで己が実力を高めながら、目標のランクに達した時の感動に代わるゲーム体験はなかなかない。達成感を度外視したスムーズなランクマッチの攻略は、“寒い”行為なのだ

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん

魔境を抜けられないのは本人の実力なので、それをブースティングの理由にするのはおかしいと思います。

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん

草野球をしていて、「今日は大谷翔平選手に来てもらいました」で投げてもらったり打ってもらったりするのは楽しめるけど、「草野球の試合をします」で相手に大谷翔平がいるのに「大谷翔平じゃないです。別人です」で剛速球を投げてホームランを連発できるのがeスポーツタイトルの問題なんだよな。経験者の一般人が未経験を装うのはまだしも(それもよくないが)、プロや有名人が一般人を装えるということを「モラル違反」程度で済ましてはならない。ましてや「eスポーツ」を謳うタイトルであるならなおさら

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん

本垢のランク上下に一喜一憂するの疲れてサブで気楽にやるパターンもあるよ

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