K-POPの根源的課題──アーティストの疎外
4月13日と20日、HYBE傘下のLE SSERAFIMは世界最大級の音楽フェスティバル「コーチェラ・フェスティバル 2024」でライブを披露した。
そのライブはYouTubeで生中継されたのだが、特に13日のライブでボーカルの不安定さが露わとなり、韓国のネットでは非難の声が高まった。
ステージやパフォーマンスのクオリティは企画や演出なども込みで決定されるものだが、その矛先がメンバーに向けられた一例だ。
ミン・ヒジン代表は、25日に行った記者会見で、LE SSERAFIMもHYBEの裏切りの一例として取り上げた。
約束を破ってNewJeansより先駆けてデビューさせ、プロモーション戦略も妨害されたと主張した。それに関連したHYBEとADORの真偽の攻防は、現在、「コーチェラ」のパフォーマンスが世間からバッシングを浴びているLE SSERAFIMに対し、追い討ちになりかねない。
(真偽の主張をしてはならないというわけでは当然ない。ただ、実際にメンバーへの攻撃がなされている点に注目してほしい。)
K-POPとは、資本によって徹底的にブランディングされたジャンルである。
アイドルメンバーにはキャラクター性が付与され、その印象をファンダムは崇拝する。その二重構造の中で、K-POPアーティストの主体性は疎外されたまま、彼(女)らはチームのフロントに立たされる。
HYBEの猛攻は、企業組織が個人を「魔女狩り」的な状況に追い込み、女性を“ヒステリック”と烙印付ける、弱者嫌悪および女性嫌悪の凡例としても映った。
ADORの暴露戦略が集約した記者会見には、そんな男性中心的企業文化に立ち向かって、ミン・ヒジン代表が生身でぶつかったと、フェミニズム的な意義を捉える意見にも、一部賛同できる。
企業のパワーゲームに巻き込まれた芸術家(ミン・ヒジン代表はSMエンタテイメントのアートディレクター出身)というポジションが大衆の共感を呼び起こして、世論の反転も見込めるくらい空気が変わったのかもしれない。
それでも懸念は残る。アイドルメンバーたちや実務スタッフが実質的に被っている被害は、経営者たちの攻防において、相手への攻撃手段として彼(女)らの名前が使われたことで招かれたからだ。
まだ真実の攻防は終わっていないどころか、これから始まったばかりである。
一方、NewJeansは4月27日、アルバムのリードシングル「Bubble Gum」を公開。5月1日には現代美術家・村上隆さんとのコラボレーションを発表。
カムバック&日本デビューまでの予定を問題なく進めている。
彼女らを含め、K-POPアーティストたちが安全に活動できることを望むばかりだ。
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