海賊版サイト「漫画村」が社会現象化し、テレビなどでも報道される事態に。しかも、ついに有料化に踏み切ることが宣言され、さらに大きな波紋を呼んでいる。
漫画家や出版社をとことん煽る文面も大いに物議を醸しているが、純粋に疑問点がある。
違法アップロードされた漫画作品を、著作権者に無断で提供している海賊版サイトの有料化が果たして可能なのか?
そして、有料版では、これまでWebブラウザ上で閲覧できるだけだった漫画村が、ダウンロード配信に踏み切ることも宣言されている。
違法アップロードされた著作物を、その事実を知りながらダウンロードした場合は「著作権又は著作隣接権の侵害」に当たる。「漫画村」で違法ダウンロードしたユーザーは罪に問われるのだろうか。
そして、そもそも「漫画村」について、NHKなどでも「規制は難しい」と報道されているが(元記事は削除済み、魚拓)、果たしてそれは本当なのか。
結論から言えば、「漫画村」が違法とされる可能性は低くない。
そして、有料化した漫画村で違法ダウンロードを行うユーザーがいたとしても、“現時点で”罪に問われることはない。ただし、今後についてはその限りではない。
専門家の意見を交えながら、順番に記述していきたい。
取材・文:新見直 協力:坂井崇俊氏(「エンターテイメント表現の自由の会」編集長)/永井幸輔氏(弁護士。NPO「Arts and Law」や「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」にも所属)
大前提として、日本では、著作物を無断でアップロードするのは著作権法違反(公衆送信権の侵害)となる。
ただし、無断でアップロードされた著作物のリンクの収集(クローリング)・掲載は、著作権法上一定の場合には違法とされないことがある。そして「漫画村」も、違法にアップロードされた画像を収集・保管しているのみだと主張している。
さらにややこしいのは、「漫画村」はサーバーを海外に置いている点だ。海外で運営されているサイトが適法か違法かについては、その国の法律に準拠して判断されるからだ(準拠法)。
つまり、「漫画村」はそもそも日本の著作権法は適用されない(上、仮に日本の法律に照らしたとしてもその運営方法自体に違法性は見当たらない)と運営は主張している。現在「漫画村」を巡る議論において、そう認識している利用者も多い印象だ。
しかし、実は「必ずしもそうではない」と、法律家を中心とした専門家によるNPO「Arts and Law」や「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」にも所属する弁護士・永井幸輔氏は言う。
「海外にサーバーがあるからといって日本の著作権法が適用されないというわけではないんです。裁判例上、サービスが日本語で日本向けに提供されていたり、日本法人がサービスを提供していた事案で、日本の著作権法が適用されたケースが存在します。漫画村も、日本の著作権法が適用される可能性は十分あります」(永井幸輔氏)
争点となるのは「本当に海外で運営されているのかどうか」。海外にサーバーを置いていても、実質運営されているのが日本であると判断された場合、日本の法律で罪に問われることがある。
実際、2005年の「ファイルローグ」事件という前例がある。P2Pファイル交換ソフト「ファイルローグ」による著作権侵害事件で、カナダのサーバーにアップした日本法人の著作権侵害が控訴審で認められた。
ただし、もし日本の法律が適用されるとして、違法にアップロードされている海賊版の画像を収集・保存しているだけと主張している「漫画村」は、著作権違反となるのだろうか。
あくまでそれが違法か合法かに関わらずアップロードされたものを保管しているだけに過ぎないという点で、仕組み上はGoogle画像検索と「漫画村」は近い手法をとっているようにも見える。では、Googleが問題視されることがないのはなぜか。
「著作権法47条の6に権利制限の項目があります。著作権法では、著作権を制限して著作物を自由に利用することができる、いくつかの条件があります。その一つが『インターネット情報検索サービスにおける複製』です」(同上)
インターネット情報検索サービスの提供に当たって、著作物の複製・自動公衆送信を認めるという内容が、永井氏の言う権利制限の一つだ。
ただし、その著作物が違法にアップロードされているものだと判明した場合には、その提供を停止しなければならないという旨も明記されている(外部リンク)。
インターネット情報検索サービスであっても、著作権者が申請すれば違法な著作物の提供(クローリング)を止めることができるということだ。
そもそも、掲示板やブログなどの無断転載が違法になるかどうかも議論が必要だ。著作権法の定める『引用』の範囲であれば適法となるため、作品名で画像検索を行って表示されたものが違法であるとは限らない。
「漫画村」は「インターネット情報検索サービスにおける複製」はもちろん、他のどの項目にも該当せず、かつそのすべてが違法アップロードされたものである可能性が高い。その場合、前述のようにもし日本の法律が適用されるとなれば、著作権者から申請があれば提供の停止に応じなければならない。
ただし、「漫画村」の「権利者の方に」という項目には、「10月以降漫画村自身のサーバーには画像を保管しなくなりました。また画像の保管元は漫画村と一切関係ありません。画像の削除依頼は画像の保管元にお問い合わせください。」と記述されているのみ。
出版社はこれまでも、数多くの海賊版サイトを相手にしてきた。画像検索に限らず、Google自体の検索結果から著作権を侵害しているものを強制的に除外するように求めることができるDMCA侵害申し立ても行ってきた。
申し立てが記録される「LumenDatabase」を確認すると、「漫画村」ドメインへも出版社や弁護士から日夜無数のDMCA侵害申し立てが行われていることがわかる。
繰り返しになるが、「漫画村は違法ではない」という理屈は厳しい。最終的な判断は司法の場に委ねられるのだろう。
では、なぜいまだに運営が継続されているのか。それは、海外のサーバーの場合、Webサイトでの公開を差し止める、あるいは運営者の情報を特定して損害賠償請求を行うまでのハードルが高いからだ。
訴訟を起こすには運営者の氏名などの特定が必要となるため、サーバー側に発信者情報開示請求を行うことになる。
準拠法については、「漫画村」に日本の著作権法が適用される可能性は十分あるものの、発信者情報開示請求を行うには、サーバーが置かれている国の開示請求手続きに従った上で、「漫画村」の違法性をサーバー側に証明しなければならないため、ここで難航する可能性がある。
そのため、現時点では責任を問うところまで至っていないのではないかと考えられる。
漫画家や出版社をとことん煽る文面も大いに物議を醸しているが、純粋に疑問点がある。
違法アップロードされた漫画作品を、著作権者に無断で提供している海賊版サイトの有料化が果たして可能なのか?
そして、有料版では、これまでWebブラウザ上で閲覧できるだけだった漫画村が、ダウンロード配信に踏み切ることも宣言されている。
違法アップロードされた著作物を、その事実を知りながらダウンロードした場合は「著作権又は著作隣接権の侵害」に当たる。「漫画村」で違法ダウンロードしたユーザーは罪に問われるのだろうか。
そして、そもそも「漫画村」について、NHKなどでも「規制は難しい」と報道されているが(元記事は削除済み、魚拓)、果たしてそれは本当なのか。
結論から言えば、「漫画村」が違法とされる可能性は低くない。
そして、有料化した漫画村で違法ダウンロードを行うユーザーがいたとしても、“現時点で”罪に問われることはない。ただし、今後についてはその限りではない。
専門家の意見を交えながら、順番に記述していきたい。
取材・文:新見直 協力:坂井崇俊氏(「エンターテイメント表現の自由の会」編集長)/永井幸輔氏(弁護士。NPO「Arts and Law」や「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」にも所属)
「漫画村には日本の法律が適用されない」のウソ
漫画の売り上げに悪影響を及ぼしているとされ、日本漫画家協会が発表した異例の声明文(関連記事)の中で強く糾弾されている海賊版サイトだが、摘発されていないのには理由がある。大前提として、日本では、著作物を無断でアップロードするのは著作権法違反(公衆送信権の侵害)となる。
ただし、無断でアップロードされた著作物のリンクの収集(クローリング)・掲載は、著作権法上一定の場合には違法とされないことがある。そして「漫画村」も、違法にアップロードされた画像を収集・保管しているのみだと主張している。
さらにややこしいのは、「漫画村」はサーバーを海外に置いている点だ。海外で運営されているサイトが適法か違法かについては、その国の法律に準拠して判断されるからだ(準拠法)。
つまり、「漫画村」はそもそも日本の著作権法は適用されない(上、仮に日本の法律に照らしたとしてもその運営方法自体に違法性は見当たらない)と運営は主張している。現在「漫画村」を巡る議論において、そう認識している利用者も多い印象だ。
しかし、実は「必ずしもそうではない」と、法律家を中心とした専門家によるNPO「Arts and Law」や「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」にも所属する弁護士・永井幸輔氏は言う。
「海外にサーバーがあるからといって日本の著作権法が適用されないというわけではないんです。裁判例上、サービスが日本語で日本向けに提供されていたり、日本法人がサービスを提供していた事案で、日本の著作権法が適用されたケースが存在します。漫画村も、日本の著作権法が適用される可能性は十分あります」(永井幸輔氏)
争点となるのは「本当に海外で運営されているのかどうか」。海外にサーバーを置いていても、実質運営されているのが日本であると判断された場合、日本の法律で罪に問われることがある。
実際、2005年の「ファイルローグ」事件という前例がある。P2Pファイル交換ソフト「ファイルローグ」による著作権侵害事件で、カナダのサーバーにアップした日本法人の著作権侵害が控訴審で認められた。
ただし、もし日本の法律が適用されるとして、違法にアップロードされている海賊版の画像を収集・保存しているだけと主張している「漫画村」は、著作権違反となるのだろうか。
「漫画村は違法ではない」のウソ
例えば、Googleの画像検索でも、著作権者に無断で掲示板やSNS上にアップロードされた画像を検索することができる。あくまでそれが違法か合法かに関わらずアップロードされたものを保管しているだけに過ぎないという点で、仕組み上はGoogle画像検索と「漫画村」は近い手法をとっているようにも見える。では、Googleが問題視されることがないのはなぜか。
「著作権法47条の6に権利制限の項目があります。著作権法では、著作権を制限して著作物を自由に利用することができる、いくつかの条件があります。その一つが『インターネット情報検索サービスにおける複製』です」(同上)
インターネット情報検索サービスの提供に当たって、著作物の複製・自動公衆送信を認めるという内容が、永井氏の言う権利制限の一つだ。
ただし、その著作物が違法にアップロードされているものだと判明した場合には、その提供を停止しなければならないという旨も明記されている(外部リンク)。
インターネット情報検索サービスであっても、著作権者が申請すれば違法な著作物の提供(クローリング)を止めることができるということだ。
そもそも、掲示板やブログなどの無断転載が違法になるかどうかも議論が必要だ。著作権法の定める『引用』の範囲であれば適法となるため、作品名で画像検索を行って表示されたものが違法であるとは限らない。
「漫画村」は「インターネット情報検索サービスにおける複製」はもちろん、他のどの項目にも該当せず、かつそのすべてが違法アップロードされたものである可能性が高い。その場合、前述のようにもし日本の法律が適用されるとなれば、著作権者から申請があれば提供の停止に応じなければならない。
ただし、「漫画村」の「権利者の方に」という項目には、「10月以降漫画村自身のサーバーには画像を保管しなくなりました。また画像の保管元は漫画村と一切関係ありません。画像の削除依頼は画像の保管元にお問い合わせください。」と記述されているのみ。
出版社はこれまでも、数多くの海賊版サイトを相手にしてきた。画像検索に限らず、Google自体の検索結果から著作権を侵害しているものを強制的に除外するように求めることができるDMCA侵害申し立ても行ってきた。
申し立てが記録される「LumenDatabase」を確認すると、「漫画村」ドメインへも出版社や弁護士から日夜無数のDMCA侵害申し立てが行われていることがわかる。
繰り返しになるが、「漫画村は違法ではない」という理屈は厳しい。最終的な判断は司法の場に委ねられるのだろう。
では、なぜいまだに運営が継続されているのか。それは、海外のサーバーの場合、Webサイトでの公開を差し止める、あるいは運営者の情報を特定して損害賠償請求を行うまでのハードルが高いからだ。
訴訟を起こすには運営者の氏名などの特定が必要となるため、サーバー側に発信者情報開示請求を行うことになる。
準拠法については、「漫画村」に日本の著作権法が適用される可能性は十分あるものの、発信者情報開示請求を行うには、サーバーが置かれている国の開示請求手続きに従った上で、「漫画村」の違法性をサーバー側に証明しなければならないため、ここで難航する可能性がある。
そのため、現時点では責任を問うところまで至っていないのではないかと考えられる。
この記事どう思う?
5件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:1841)
ようするに、漫画村自体は違法に問えるけど、まだ問われてないってことは出版社たちが無能ってことだろ?
そして使ってるやつらは違法ではないけど今後は知らんよってこと。
匿名ハッコウくん(ID:1838)
テーマがわからない文章。
起承転結がなんなのかわからんw
でも、勉強にはなりました。
匿名ハッコウくん(ID:1833)
分かりにくい。