講談社も海賊版サイトに「緊急声明」 ブロッキング巡って揺れる日本

講談社も海賊版サイトに「緊急声明」 ブロッキング巡って揺れる日本
講談社も海賊版サイトに「緊急声明」 ブロッキング巡って揺れる日本

講談社の「海賊版サイトについての緊急声明」よりスクリーンショット

POPなポイントを3行で

  • 「漫画村」など海賊版サイトへの緊急対策について安倍晋三総理大臣が声明
  • 講談社もこれに呼応して「海賊版サイトについての緊急声明」を発表
  • ブロッキング巡っては、有識者の意見も真っ二つに割れている
社会問題化している「漫画村」を中心とした海賊版サイトへのアクセス遮断を促す緊急対策について、4月13日(金)に総理大臣官邸で行われた知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議より、安倍晋三総理大臣の声明が発表された。

安倍晋三総理大臣は「国としても早急な対応が必要」とした上で、「著作権制度、コンテンツ産業、電気通信事業などに関連する府省を中心に政府一体となって中長期も含めた対応方策を直ちに取りまとめ、可能なものから一刻も早く実施するようお願いします」と対策を呼びかけた(外部リンク)。

この決定を受けて、同日、講談社より「海賊版サイトについての緊急声明」が公開された。

「現状を放置すれば、日本のコンテンツ産業を根底から破壊し、すぐれた才能を枯渇させることは明らかです。日本が誇るコンテンツ・ビジネスを未来に亘って発展させていくためには、ISPや流通事業者等のご協力も不可欠です」と呼びかけると同時に、海賊版サイトをはじめとする権利侵害行為については断固たる姿勢で臨んでいくと結んでいる(外部リンク)。

漫画村が社会問題に 政府が対策呼びかける

違法アップロードされた漫画が閲覧できる海賊版サイトは、2017年から今年にかけて利用者が急増し、メディアでも取り沙汰されて社会問題化。

当初は具体的なサイト名を伏せた形で報道されていたが、利用者が急増したことに呼応して、中でも日本人利用者最大手とされる「漫画村」への報道が増えていた。

Twitter等では若年層を中心に利用が進んでいるように見えたが、その実態は時間潰しのために同サイトを利用するサラリーマンや主婦も急増しているという状況だった。通勤中の電車などでも、当たり前のようにスマートフォンで「漫画村」を閲覧する利用者の姿がある。

2018年に入ってからは、日本漫画家協会が利用をやめるように呼びかける異例の声明文を発表、また政府もアクセス遮断を行うサイトブロッキングを検討していることを発表していた。

すでに、権利保持者からのDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づくクレーム申請を受けて、Googleの検索結果からは「漫画村」のTOPページを含む一部ページが除外されている。

「漫画村」以外にも海賊版サイト「Anitube」と「Miomio」が名指し

現時点で名指しされたと報道されている海賊版サイトは3つ。「漫画村」の他に、アニメの海賊版サイト「Anitube」と「Miomio」だ。

今回、政府が正式に対策を呼びかけている対象は漫画やアニメの海賊版サイトに限られている。

被害額は計り知れないが、同様の被害を受けているアダルトビデオなどの海賊版サイトへの対策は盛り込まれていないことなどについて、疑問視する声も多い。

また、前日となる4月12日には、「漫画村」公式と思しきTwitterアカウントで、「漫画村」の類似サービス「漫画タウン」が告知されたことを受けて、「ブロッキングしても結局はイタチごっこだ」という指摘も増えている。

文化国家と法治国家は両立できないのか?

そもそも、「漫画村」の問題性を懸念する声と同等に、その対策措置としてのサイトブロッキング導入の是非については多くの批判が巻き起こっている。

創作者の血と汗の結晶である作品に敬意を払い、正当な対価で報いることが創作者の糧となり、次の作品が生まれて、文化国家を支えます。安倍晋三総理大臣の声明文より一部引用

安倍晋三総理大臣は、声明の中で「文化国家」という言葉を使っている。その内容自体は議論する余地のない当たり前の主張だが、「法治国家」として保障すべき権利については声明では一切触れられていない。

再三にわたって指摘されている通り、クローズドで拙速な議論の上で決定されたブロッキング導入要請をプロバイダー側が受け入れた場合、「通信の秘密」に抵触し憲法違反となりかねないからだ。また、国民の「知る権利」も阻害される恐れもある。

政府が法律を任意で無視し、民営のサービス等に対して制裁を下すということになれば、それは憲法で禁止されている「検閲」に繋がる可能性も否定できない。

不当に利益を奪われている構造は無理を通してでも速やかに是正するべきというブロッキング容認派、付け焼き刃に過ぎない特定サイトへのブロッキングの導入を焦るよりも、権利者団体が一丸となって対策を講じるなり対抗するサービスをはじめるべきというブロッキング反対派。

今、有識者の意見も真っ二つに割れている。

海賊版サイトを巡って、急転直下の数日間

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