3人がセリフを言えば「攻殻」の世界が立ち上がる
──前作『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』に続き、日本映画界で最も注目を集める1人・藤井道人さんが監督を務めました。実写畑の方が監督をされるとあって、普段と何か違いを感じる部分はありましたか?山寺宏一 追加シーンの収録もありましたけど、それも少しのことなので、全体を通じて特に大きな違いは感じませんでした。『新聞記者』などの作品はもちろん観ていましたし、素晴らしい監督さんであることはわかっていました。
だから、今回のトグサのセリフを聞いて、「山寺さんっていい演技するんだな、今度実写映画でも使ってみようかな」って思ってくれないかなって下世話なことを考えたりはしましたけどね(笑)。
大塚明夫・田中敦子 ……(笑)。
山寺宏一 え、2人は違うの?! ──「攻殻機動隊」は長い歴史の中で、様々な作品が存在します。監督が変わることもある中で、演じられる方々としては、作品ごとに意識の違いはあるのでしょうか?
田中敦子 「S.A.C.」シリーズが始まる時は、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』より若い時代のエネルギッシュな公安9課を描きたいと言われていたので、意識している部分もありました。
『攻殻機動隊 SAC_2045』から絵が3DCGになり、動きもモーションキャプチャーされたものになったので、今までよりは実写に近いような感覚もありましたが、草薙素子としての意識は基本的に変わらないですね。シリーズが違っても、素子は素子としてのひとつの繋がりの中で演じているような感覚があります。 大塚明夫 シリーズごとに、それぞれがパラレルワールド的な関係性ですけど、どの作品でもバトーの根源的な部分というか、背骨は変わっていないんです。なので、演技をする上でも根本的に変わるということはないですね。
山寺宏一 作品ごとに違った何かを感じてもらってるかもしれませんが、それは我々が変えようと意識しているわけではなくて、役と作品の世界を意識していく中で自然と出てくるものなんだと思います。
1人で演じていると、「こんな感じだったっけ?」って感じることがあったりするんですが、この3人で話し始めるとスッと役に入れるんですよ。掛け合いをするとすぐに感覚が取り戻せるのは不思議だなって思いますね。
大塚明夫 確かに『攻殻機動隊 SAC_2045』のシーズン1収録の時は、「収録するのかなり久しぶりだから大丈夫かな」って気持ちはちょっとあったけど、この3人でセリフを言い始めたら、フワッと世界が立ち上がっていきました。それはやはり「攻殻」のような長いシリーズならではのことだと思います。 ──シーズン2の再構成となった本作で、特に印象的なシーンはありますか?
大塚明夫 素子がタカシの元へ行って対話する最後のシーンは印象的でしたね。クライマックスだし、重要なシーンなのはわかってるんですけど、複雑な論理を展開するタカシに対して素子の「わかるように説明しろ!」ってセリフがもうツボっちゃって(笑)。僕たちの気持ちを代弁してくれたなって気持ちになってしまいました。
山寺宏一 今までの謎が明らかになるのかと思いきや、むしろ謎が深まるようなシーンでしたからね。あのシーンに全てが集約されていると言っても過言ではないですし、今回の劇場版制作にあたって新録されているわけですから、やっぱり印象的なシーンだと思います。トグサも新録しているシーンがあるので、どこのシーンなのか気にかけて観てもらったら嬉しいです。 田中敦子 私も印象的なのはやっぱり最後の会話のシーンになっちゃいますね。やり取りの中でも一番グッときたのは、プリンはどうしてダブルシンクにならないのかが判明するところなんですが、そこでプリンの今までのことが一気に思い出されて、特に印象深く感じました。
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