millennium paradeは攻殻機動隊だった? 神山・荒牧監督と語る『攻殻 SAC_2045』

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millennium paradeは攻殻機動隊だった? 神山・荒牧監督と語る『攻殻 SAC_2045』
millennium paradeは攻殻機動隊だった? 神山・荒牧監督と語る『攻殻 SAC_2045』

神山健治×荒牧伸志×millennium parade『攻殻機動隊 SAC_2045』座談会

POPなポイントを3行で

  • アニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』座談会
  • 神山・荒牧両監督と常田率いるmillennium paradeの邂逅
  • 変化したイデオロギーを生きる公安9課とmillennium paradeの共通点
ひょっとしたら、これは“予言”のような作品になるのではないだろうか……。

4月23日より全世界で独占配信中のNetflixオリジナルアニメシリーズ攻殻機動隊 SAC_2045』。原作は1989年に士郎正宗さんが発表した漫画『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』。

以来、アニメや実写映画、ゲームなどさまざまなメディアでシリーズを展開し、世界中のファンやクリエイターに大きな影響を与えてきた近未来SFシリーズ「攻殻機動隊」の最新作だ。
シリーズ初のフル3DCG作品となる本作は、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の神山健治さんと『APPLESEED』の荒牧伸志さんが共同監督を手がけ、Production I.GとSOLA DIGITAL ARTSが共同制作した。

OPテーマ「Fly with me」はKing Gnu常田大希さん率いるプロジェクト・millennium paradeが担当(アーティスト名は millennium parade × ghost in the shell: SAC_2045)。本作のために書き下ろしたこの曲は、5月13日にCDシングルとしてリリースされた。

millennium parade × ghost in the shell: SAC_2045『Fly with me』/Amazonでチェックする

作品の舞台は2045年。“全世界同時デフォルト”が発生し、計画的かつ持続可能な戦争“サスティナブル・ウォー”へと突入した世界で、傭兵部隊として腕を奮っている草薙素子ら元公安9課のメンバーの奮闘が描かれる。

どんな発想から新しい「攻殻機動隊」の物語が生まれてきたのか?
アニメーションと音楽はどのような化学反応を起こしているのか?


──それを探るため、神山健治さん、荒牧伸志さんの両監督と、「攻殻機動隊」に多大な影響を受けてきたというmillennium paradeの常田大希さん、佐々木集さん、神戸雄平さんの5人にインタビュー取材を行った。 なお、CINRA.NETでは同じ座組みで、millennium paradeが『攻殻機動隊 SAC_2045』のOPテーマを担当した経緯をより深く振り返っている。取材を実施したのは制作が佳境を迎えていた1月29日。「現実に越されたくない」と語っていた荒牧監督の言葉が、今になってみると、とても印象的だ。

新型コロナウィルスが猛威を振るい、各国で多数の死者が出て、世界経済にこの先にわたって壊滅的なダメージが及ぶことが確定している2020年。「攻殻機動隊」が描く未来像に着目すべき意義は、とても大きい。

取材・文:柴 那典 撮影:Takashi Togawa

神山監督「スタンド・アローン・コンプレックス」のヒントは音楽

2002年に放送された『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』

『攻殻機動隊 SAC_2045』の“原点”となる『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(以下『攻殻機動隊 S.A.C.』)が放送されたのは2002年。「笑い男事件」というサイバーテロを題材とした近未来SFストーリーは大きな衝撃を持って受け止められた。

当時は9・11の同時多発テロ事件との関連が多く語られたが、今になって振り返ると、重要な“予言”となっていたのは作品のサブタイトルにもなった「スタンド・アローン・コンプレックス」という概念だろう。

情報ネットワークの発達によって独立した個人(=スタンド・アローン)が無意識的に同調し、結果的に集団的な行動(=コンプレックス)をとるようになる、ということを意味するこの言葉。

2002年の当時はあまり理解されにくい概念だったが、スマートフォンとSNSが普及した今の日本では、むしろ我々の日常の中で当たり前に思い描くことのできるイメージとなっているだろう。

神山健治監督は、当時、どのような未来を思い描いていたのか。

神山健治監督

神山 未来を予見しようと思っていたわけじゃないんです。ただ、「スタンドアローン・コンプレックス」という概念のアイディアのもとになったエピソードがいくつかあって。

──それはどういうものでしょうか?

神山 当時はまだSNSはなかったんですが、携帯電話でようやく140文字のメールが送れるようになったぐらいの時代だった。そういうときに、携帯をつくった会社の偉い人が「なんでしゃべれるのに、テキストで会話するのかね?」って言っているインタビューを読んだんですよ。

それを読んだときに「いや、絶対にこれからの人たちはテキストで語り合うっていうところにハマっていくな」と思ったんです。これは明確に覚えています。

なぜかと言うと、テキストのほうが情報の広がる速さが圧倒的に速い。昔って、人気のドラマや番組を観た翌日の学校でその感想を話していたわけじゃないですか。共通体験を共有するためには学校に集まる必要があった。

でも、顔を見合わさずにその日のうちに中学生、高校生がメールで「あれ、観た?」っていう情報を広めているわけですよ。しかも、電話だと1対1のコミュニケーションしかできなかったのが、テキストだと何人もと同時に会話をしている状態が可能になる。

携帯でメールを送る機能を発明したおじさんたちより、それを真っ先に使っている子たちのほうが先にビビッドに反応しているのを見たんですね。それで「あ、これからはこういう時代がくるんだな」って思った。

あともう1つ、「スタンド・アローン・コンプレックス」という概念のヒントになったのは音楽なんですよ

──音楽がヒントになった、というと?

神山 僕は音楽への憧れがすごくあるんです。特にライブをやっている人たちの生き様みたいなものを「かっこいいな」と思っていた。僕らがやっているアニメーションは1フレームごとにコントロールできるものだけど、唯一ないものがライブ感なんです。

だから自分ができないものに憧れたという意味もあったと思います。それで「スタンド・アローン・コンプレックス」は、音楽、特にライブをやる人たちのスタイルや生き方を参考にしたんですね。

millennium paradeの根底にある「攻殻機動隊」の原体験

millennium parade:左から佐々木集さん、常田大希さん、神戸雄平さん

『攻殻機動隊』と音楽との親和性はとても大きい。川井憲次さんによる『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の音楽をはじめ、菅野よう子さんが手がけた『攻殻機動隊 S.A.C.』のサウンドトラックや、コーネリアスによる『攻殻機動隊ARISE』のサウンドトラックなどは印象的だ。

『攻殻機動隊 SAC_2045』のOPテーマ「Fly with me」を手がけるmillennium paradeのメンバーも「攻殻機動隊」シリーズからの多大な影響を語る。 常田 最初に話が来たときには、かなりテンション上がりましたね。

佐々木 「嘘でしょ!?」って。

常田 俺はやっぱり、音楽家目線で作品を観ていたので。菅野よう子さんやコーネリアスが音楽を担当したアニメーションがあるというところから「攻殻機動隊」を知った記憶がありますね。そこから世界観とかストーリーラインにもとても影響を受けるようになった。

佐々木 トータルのアートワークやビジュアル的な側面にしても、今までにない東京の近未来の切り取り方をしていたんですよね。

街の見せ方にしても、ホログラムが看板になっていたり、「本当にこういうのがあったら面白いな」というものが可視化されていた。そういう部分はmillennium paradeとしても表現したい形だったので、すごく影響を受けています。

佐々木集さん

神戸 自分が最初に知ったのは押井守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』だったんですけど、そこから『攻殻機動隊 S.A.C.』にも没入していくようになって。

自分の今好きなカルチャーの根源みたいなところに「攻殻機動隊」という作品がずっと残っているっていう感じです。2人が言ったように、視覚表現としての新しさ、斬新さ、情報量の緻密さにはすごく影響を受けていますね。

神戸雄平さん

「スタンドプレーから生じるチームワーク」に通じる“バンドではない”あり方

我々のあいだにはチームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。あるとすればスタンドプレーから生じるチームワークだけだ

──『攻殻機動隊 S.A.C.』には、こんなセリフがある。公安9課を率いる荒巻課長の言葉だ。こうしたチームのあり方も、実はmillennium paradeのあり方に共通している。

millennium paradeとは、King Gnuの首謀者である常田大希さんによるプロジェクト。2019年5月に行われたライブイベント「“millennium parade” Launch Party!!!」で本格始動を果たした。 全編にわたって3D映像の演出が施されたこのライブで映像をプロデュースしたのは、King GnuのすべてのMVやadidasのCMなども手がけるクリエイティブブレーベル「PERIMETRON」だ。

もともとPERIMETRONも常田さんがスタートさせたもので、映像プロデューサー/デザイナーの佐々木集さん、デジタルアーティストの神戸雄平さんもメンバーとなっている。

こうしたmillenium paradeの“チームワーク”について、常田さんらはこう語る。

常田大希さん

常田 いわゆる音楽業界とか大衆が思っている「バンド」ではない集団という形を提示したい気持ちはありますね。だから、あえてミュージシャンであるかどうかにこだわっていない。でもそれが結果としてトータルでかっこいいということになっているという。

佐々木 みんな我が強いタイプが集まってますからね。そんなにチームプレイは考えていなくて、全員が各々やりたい方向に動いている。それが結果としてチームとしてのアウトプットになっている。そこも「攻殻機動隊」との共通点だなと思いました。

常田 今って、いわゆる既存のジャンルのイメージみたいなものがどんどん崩れてきたり、壊さなければいけないタームに入っているので。もっと自由に楽しけりゃいいじゃんっていうのを俺ら世代が体現していかなきゃいけないっていう意識はあります。
millennium parade「Fly with me」MV
── 神山健治さんと荒牧伸志さんの両監督は、millennium paradeによるOPテーマ「Fly with me」をどのように捉えていたのでしょうか?

荒牧 最初に曲を聴かせていただいたときには、もっと歳の上の人がつくった曲かなと思ったんです。ただ単にテクニックがあるというだけじゃなく、大人っぽいなと思った。

IQが高いというか、いい意味で、簡単にはわからせてくれない感じがあった。老獪さもあるし、エッジもある。そういうことを感じました。

神山 音楽的な偏差値もすごく高いし、玄人っぽい音楽だな、でもとんがっているなって印象でした。

荒牧 OPテーマは作品の顔というか、作品の方向性や目指すところを体現する曲になると思うんですよね。それが観る人にとっての最初のインパクトになる。そういう意味でのハマり具合っていうのは間違いないと思いました。

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