中国SF『三体』ガチ勢のVRクリエイターたちが実写ドラマ版を語り尽くす

「VRに対する解像度が高い」クリエイターたちも太鼓判

──作中では登場人物たちが、ある文明が崩壊するまでを繰り返すVRゲームに挑みます。VRの表現について、VRクリエイターの皆さんはどんな印象を受けましたか?

原作ではVR用にスーツを着て、ゲーム内の温度も感じることができます。そういうゲームをつくるのはどんなところでどれくらいお金をかけたのか、まずそこから気になりますよね。

舞台になるのは2007年で、ドラマでは当時の機材とか、OSもXPだしMSNメッセンジャーなんかを使っているのに、VRについては使っている機材が実際にある最新のものじゃないですか。そこだけ異質で、VRに対する解像度が高いなと感じました。

今思うとあのグラフィックのVRで、しかもオンラインのゲームですよね。インターネット回線の速度が大分ヤバいですよ……!

よくよく考えると1インスタンス(仮想空間上の部屋)にアクセスするのは4~5人だけだから、もしかすると可能なのかもしれないですね(笑)。

そもそも『三体』が発表されたのは2006年。舞台である2007年の技術や常識からするとSFの世界になるけど、現代の我々からすると、VR技術については想像を超えるレベルのものではなくて現実的なレベルだった気がする。

一つ一つは面倒くさいけど頑張れば……みたいなラインですよね。

ゲーム内の人体は厳しい環境を生き延びるために「脱水」という能力を獲得しているんですが、それも原作の文章から読み取れるイメージそのままでした。めちゃくちゃ面白かったですよね、あれ(笑)!

文章で読み取れるものをそのまま表現してましたよね。

「脱水」した体を雑に扱うせいで、その後「再水化」したときに指が欠けてるとか、細かいところも面白かったですね。

あと、文明が発達して蒸気機関が登場するシーン。原作にあのシーンありましたっけ? ドラマオリジナルだと思うんですけど、あれもダイナミックで良かったですね。

「この世界に没入してほしい」という意志を感じるVRゲームの設計

VRを題材にした作品っていっぱいあるけど、VR空間のはずなのに完全に実写の映像が映っていて、見ている側としては「これはVRゲームの中の世界です」って言われても、うーん、実写だよなあ、と思っちゃう作品があったりするんです。

『三体』に関しては、その点ちゃんとVRゲームのシーンがCGで表現されている。もちろん「オンラインVRゲームとしてオーバースペックすぎないか?」と思っちゃうぐらいの誇張演出もないと言えば嘘になる。でもちゃんとゲーム画面に見える程度のCGで表現されていて、見た瞬間に「これはVRゲームで何かをしているシーンなんだな」と、すっと違和感なく入ってきました。

UIとかの表示はなかったんですけど、ログアウトとかEXITって書いてあることでちゃんとゲームであることがわかりやすく表示されていて良かったですね。

ウォークスルー形式のVRで実際に体験してみたいですよね〜。

結構広いワールドをちゃんと歩かせるんだなとも思いました。「苦しみをちゃんと味あわせる」という意志をすごく感じましたね。

UIもそうですが、ちゃんとこの世界に没入してほしいという意志を感じる設計になっていて、その辺を丁寧にやっているんだなって。

『三体』に出てくるVRゲームと、実際のVRゲームで大きく違うのが、温度の表現です。

現実の我々がやっているVRゲームでは、温度ってあまり重要じゃないんですよ。

でも「3body.com」というゲームに関して改めて俯瞰してみると、プレイヤーが温度を通して過酷な環境や快適な空間を体験することこそが、製作者の意図を理解するために重要なポイントだったんだろうって思いました。

製作者はそういう苦しさも乗り越えられるプレイヤーを求めているところもありますよね。

ある種の“死に戻りゲー”みたいな構造ですからね。

成功したら文明の段階が次に進む、という喜びもあるんですよね。

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