中国SF『三体』ガチ勢のVRクリエイターたちが実写ドラマ版を語り尽くす

ここまでやるのか! ドラマの再現度に驚きを隠せない面々

──他に、原作小説と比較した時にドラマになって良かった点はありますか?

ドラマとして登場人物の顔が出たことで、掴みにくかった登場人物の印象がわかるようになった。今読み返したらきっと、より読みやすいと思います。

葉文潔(イエ・ウェンジエ)の若い頃と年を取ってからの顔がマジで似ててびっくりした(笑)。

丁儀(ディン・イー)先生のビジュアルもロン毛でうまく再現されてましたね。

丁儀先生って中国では一番人気あるんじゃないかってぐらい人気あるんですよ!

実験結果に落ち込む楊冬(ヤン・ドン)に指輪を差し出してプロポーズするシーン、面白かったですよね。

彼なりの励ましだったのかな。実験に失敗した後の2人のシーンは、人間味があって良かった。

ドラマでは科学者たちの変わった一面をわかりやすく表現してたなと思いました。登場する科学者はみんな変人じゃないですか。感情的になったり、割とコミカルなんですよね。それが再現されていて良かったです。

『三体』はハードSFなのに登場人物がラノベ的なキャラ立ちしてるのも魅力ですよね。中国ではラノベ版のような、カバーイラストや挿絵付きのバージョンが出版されているんです。

偏屈科学者でラノベ的なんだけど、嘘っぽくないギリギリのラインというか。実在するか実在しないかと言われると嘘っぽくはないけど実在しないんじゃないか、くらいのキャラクター性が、役者さんが演じることでリアリティを担保されていて良かったです。

僕は「これ、省略されるんじゃね?」と思ってたところが省略されずにちゃんと丁寧に映像化されていたのに感動しました。

原作は文章で読んだときは結構ハードなSFって感じじゃないですか。

ふつうは映像化すると『インターステラー』のように、セリフで語るんじゃなくて「映像で理解してくれ」みたいな感じになって、観る側は理解するために3周する羽目になることがありますよね。

でも『三体』の場合はセリフでも、ちゃんと説明してくれている。初見の人でもわかるように丁寧につくってくれている気がしました。

「全部本物が使われてて引いた…!」ドラマ版『三体』驚愕の緻密さ

『三体』の良いところは、物理学的なことが完全に理解できない読者でも“今とてもまずいことが起きている”とわかる演出力だと思うんです。

ドラマでも、とにかくパニックになってくれる汪淼(ワン・ミャオ)先生とか、観測結果にびっくりしてくれる研究所の人のおかげで、何かやばいことが起きてるんだろうなってちゃんとわかる映像になっているのが嬉しいですね。

映像化されることによって、感情移入しやすくなったのはすごく大きかったですよね。

印象に残っている場面は、汪淼先生が写真を現像するシーン。小説でも印象的でしたが、汗だくで奥さんにめっちゃ心配されているのが映像で表現されていて、感情移入しやすくなったなと思いました。

あとは、細かい機材や科学的な実験装置に「全部ちゃんと本物が使われている」ってちょっと引きました(笑)。例えば「レーダーの大きさってどんなもんなんだろう」みたいなところも科学的な知識がない人からすると、映像化されるとわかりやすいのかもしれないですよね。

ビリヤードを例に使って物理学の想定を越えた事態を説明する場面も、やけに丁寧でしたね!

VRの機材も現代の最新のものですよね。揃えるときの「これ高かったんだよ〜」というやり取りが、金銭感覚が私たちと一緒なんだと感じられてよかったです。

今だと、歩行型VRデバイス“KATWALK”が100万円くらいで、それを動かすパソコンとなると50万円くらいになると思いますね。ただ、『三体』の2007年当時であれを揃えるとなると一体いくらになるんだろう……

あの歩けるVR一式、東京タワーで体験できますよね。

できますね(笑)。

わかりやすいと言えば、作中の「射撃手と農場主」という例え話がCGアニメーションで表現されていて、できも良くてわかりやすかったです。エンドロールも3D班の人たちの名前がズラーっと並んでましたよね。

例え話に出てくる七面鳥の科学者が可愛いんですよね。

──CGパートも力が入っていて本当に丁寧でしたね。

ドラマでは、宇宙からミクロまで入っていく映像表現が多用されてますよね。

時間と空間を跨いだ物語になっていくのが劉慈欣SFの面白さだと思うんで、ミクロの顕微鏡で見た世界から宇宙までの広さでそれをものの数秒で表しててすごいと感じました。

ゴーグルで宇宙の背景放射を観測するシーンも良かったですね。

あとは、内容と直接関係はないですが、オープニングもストーリーを示唆する内容で毎回変わっていて嬉しいですよね。

VRゲームの中の世界も、ゲームであることがギリギリわかる3DCGの質感にすごいこだわったんだろうなと感じました。

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