「届けるまでがものづくり」ボカロP はるまきごはんが「幻影」で見せたプロデューサーの顔

「呼ばれ方は何でもいい」はるまきごはんが目指す姿

はるまきごはんさん

──はるまきごはんさんは現在、「ボカロP」あるいは「マルチクリエイター」として紹介されることが多いと思います。一方で、クリエイター・プロデューサー両面での活動を知ると、今の肩書きでは足りないようにも感じます。

はるまきごはん 「ボカロP」という言葉が自分の活動を説明しきれていないのも、なんとなく感じてはいるんですけど、だからといって、わざわざわかりづらい表現をしたいとも思いません。むしろ僕自身、自分をボカロPだと思っているので、そう呼ばれることは全く嫌じゃないです。

逆に「こう呼ばれたい」とかも特になくて、作品を受け取る人がどう感じるかでいいのかなと思っています。

たとえば僕をアニメから知った人が、「はるまきごはんはアニメーターだ」と思っているならそれでいいし、ボカロPとして知った人が「ボカロPだ」と思っているのはそれでいい。あるとき、その人が知らなかったはるまきごはんの一面に接したときに、初めて立体的に認識してもらえればいいと思っています。

自分にとっては、作品を見て好きになってもらうことが一番ありがたくて、それに比べれば、自分の呼ばれ方や肩書きは何でもいいです。

──肩書きのお話にも通じますが、「幻影」シリーズをはじめ、はるまきごはんさんの作品群を見ていると、必ずしも音楽が主軸なのではなく、世界観を表現する要素として音楽があり、ゲームがあり、漫画やライブがある、ということが伝わってきます。

はるまきごはん 自分がいろんなものをつくるときに一番目指しているのは、「どれか一つを切り抜かれてそのジャンルの人たちと並べられたときに、単体でもしっかり作品として楽しんでもらえるぐらい良い作品にすること」なんです。

たとえば音楽だったら、Spotifyのプレイリストに入ったときって、アニメやイラストの力は使えないじゃないですか。そうなっても作品として好きになってもらえたら、しっかり誰かの心を動かせるぐらいのものを生み出せた証明になる気がするんです。

そんなふうにどれか一つで自分を評価してくれる人を、制作しているものの数だけ生み出せたら、それは「マルチクリエイター」という見られ方に甘えずに、それぞれで良い作品をつくれた証拠になるのかなと思っています。

ライブ「幻影LV」で披露されたアニメーション映像

作品に女の子しか登場しない意外な理由

──制作へのスタンスをうかがって改めて感じたんですが、はるまきごはんさんはトレンドやヒットの傾向に左右されずに、あくまでご自身が自発的につくりたいものをつくられているんでしょうか?

はるまきごはん 自分ではそのつもりです。

──それはクリエイターとして理想の形でありつつ、一方で茨の道というか。もちろんトレンドを押さえる方が簡単という意味ではないんですが、クリエイター心理として盛り上がっている方に乗りたくなる気持ちもあると思っていて。ご自身として、「あくまで自分は自分の道を行くんだ」という意識もあるのでしょうか?

はるまきごはん たとえば今のトレンドが自分の作りたいものではないのに、好きじゃないなと感じながら取り入れても、本当に心からそのトレンドが好きな人がつくる作品には、絶対に敵わないと思っています。トレンドのジャンルをトレンドになる前から愛していた人がつくるものを、付け焼き刃では超えられないだろうと。

好きだと思えないものを無理してつくっても、自分の場合真似事になっちゃうんですよ。かつ、それを「流行ってるから」とか「伸びたいから」みたいな心でやると、どんどん作品が不健康になっていく気がしていて。

数字がほしくてそういうことをしても、結局中途半端になって数字も付かず、作品も自分的に満足できないものになってしまう……と、僕は思っているから、トレンドに合わせていく方法はあんまり選ばないですね。

自分が好きで選んだ要素が結果的にトレンドの渦中のものだった、ということもあると思います。トレンドを忌避しすぎてもそれはそれでただ逆張りしてるだけになってしまうので、トレンドかどうかより、自分が好きかどうかで観るもの、つくるものは決めていきたいです。

──ちなみに、はるまきごはんさんの作品に登場するキャラクターは女の子ばかりですが、何か理由があるのでしょうか?

はるまきごはん 理念として、自分が「美しい」とか「切ない」と感じるものを描きたいんですよね。今のところ、自分が男のキャラクターと女のキャラクターが恋愛するものにあんまり美しいとか切ないと感じないからですね。

あと、地球上でそこそこ見ることのできるものを描くことも、そこまで興味がないです。自分の性は男なので、自分と遠いものを描きたくなっているのはあると思います。

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