WILYWNKAが語る “チル”の真髄 「好きにやる」ことの困難を越えて

「キラキラ」じゃなくて「ギラギラ」していたい

──「ヘッズの自分が出てきた」とのことですが、なにか内面に変化があったのでしょうか?

WILYWNKA 21歳の時に1stアルバム(『SACULA』)を出したんです。その時は生まれてから経験した全てを詰め込んだつもりでした。「俺なりの名刺じゃ」みたいな感じですよね。

1stを出したことで、僕のラップも少しは聴いてもらえるようになって、ツアーもするようになった。その1年後に2ndアルバム(『PAUSE』)を出して、ツアーを回ってワンマンもやれて、ありがたいことにオーディエンスもどんどん増えていった。

ラップ、見た目、声……僕のスタイルが世の中に受け入れられたんだなって感じましたね。けど、ツアーとかが終わった時「あれ? 俺って慣れてきてない?」って思ったんです

──「慣れてきた」とは?

WILYWNKA 1stを沢山の人に聴いてもらえた喜びもあって、2ndをつくっていた時の僕は「もっと聴いてもらいたい」「もっと共感してもらえることを歌いたい」と思っていました。だから曲をつくるにあたって、ほんの少しだけど皆の方向に“傾けた”感覚があった

実際リスナーの方を向くのは大切なことやとも思うんです。皆のおかげで僕たちはメシを食えて、調子に乗れてるわけですから。でもある時に自分自身が、自分がやってることに慣れてしまって……「こなして」しまっているのかもって思ったんです。「あれ? 俺、もしかして自分がやりたいことを殺してる?」みたいな。

そんなことを考えていたら、いきなりコロナがやって来た。そこからはご存知の通りライブができなくなって、2020年の年末に『EAZY EAZY』というEPは出してるけど、ただただ2年が過ぎていって。

──ファンが望むWILYWNKAを続けていけば失敗することはない。でも、本当にやりたいことを我慢しているとすればそれは違う、と。 WILYWNKA 特にコロナが大騒ぎになっていた頃は、本当に色々考えてました。「俺が本当にやりたかったのってどんなことだっけ」「どんな曲がつくりたいんだっけ」って。

それを突き詰めていくと「最近ちょっと優しくなり過ぎてたのかも」って思ったんですよ。まだ24、5やし、まん丸になるのは3、40でええんちゃう? って。僕は「キラキラ」じゃなくて「ギラギラ」していたい

「鬼のスパーリング」でできたEP

──それでギラギラしたヒップホップを詰め込んだEPをつくろうと思ったんですね。

WILYWNKA 本当は3rdアルバムをつくろうと思ったんですけど、変態紳士クラブのアルバムもあったし、まずはEPにしました。コロナで頭が固まっちゃってるところもあるから、ラップマスターたちのお力を借りよう、と。

──とはいえ相手はラップの達人です。少しでも油断したら喰われますよね。相当タフな制作だったのでは?

WILYWNKA だから「僕の好きなラッパーを呼びました〜」とは言いつつ、“鬼のスパーリング”みたいな感覚でしたよ(笑)。特にBESさんとの曲なんて、サビなしで24小節のラップをただただスピットするだけ。色んな意味で凄まじい曲です。

──すごく骨太な曲でした。
24 Spit (feat. BES)
WILYWNKA ラップマスターの皆に稽古をつけてもらったおかげで頭はめちゃくちゃスッキリしたし、自分の好きなこと、やりたいことを再確認出来ました。レコーディングを終えた時に「やっぱり俺、ここで生きてきたんだな」って感じましたね

──原点に回帰して、確かな手応えも感じた。

WILYWNKA 地元の信頼してるツレも「やっぱりコレやろ?」と言ってくれました。「素」の自分というか、自分の核の部分に関しては、これまで以上に尖らせていこうかなと思っていますね。

──このEP、変態紳士クラブのWILYWNKAしか知らない人が聴いたら驚くかもしれないですね。

WILYWNKA そういう人たちに言っときたいのは、変態紳士クラブだったり、1st、2ndみたいな音楽が嫌いになったわけでは全然ないってことです。あれも相変わらず僕が好きな音楽。ただ、僕が今まで聴いてきたような尖ったヒップホップも、聴いてみれば絶対ヤバいと感じるはずなんですよね。

丸くて、柔らかくて、キラキラした音楽が好きな人も、ちょっとだけ好き嫌いを置いといて、このEPを聴いてみてほしい。僕らのヒップホップはポップスを聴き続けてきた人でも好きになれる音楽だと思ってるんで。

──自分のルーツと言うか、核にあるものも味わってほしいと。 WILYWNKA ハードなヒップホップ以外の部分って、これまでの活動で少なからず伝えてこれたと思うんですよ。だから「入り口を広げた」みたいな感覚でもあります。

──たしかにヒップホップサイドから入って、グッドミュージック・サイドの良さを知るみたいなパターンもありそうです。それで言えば、今回リリースした「Chill Out」はソロ名義ですが、変態紳士クラブのファンにも響きそうな曲ですね。 WILYWNKA そうですね。こだわったのは、何と言ってもホーン・セクションです。

トラックはまさに変態紳士クラブのGeGがプロデュースしていて、ニューヨークを拠点に活動するヒップホッププロダクション「ブラストラックス(Brasstracks)」のアイヴァン(ジャクソン)がトランペットを吹いてくれてるんです。

Brasstracksのトランペットをサンプルパックという形じゃなくてガチの演奏で使ってるのは、日本では僕だけだと思います(超嬉しそう)。

──Brasstracksといえば、Chance the Rapperのシングル「No Problem」をプロデュースしたり、Anderson Paakの「Am I Wrong(feat. ScHoolboy Q)」に参加したり。

WILYWNKA すごく贅沢な曲になりましたね。僕とGeGにとって、アイヴァンにトランペットを吹いてもらうのは夢だったので。快く引き受けてくれて本当に感謝しています。

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