『乱歩奇譚』監督×声優×ED座談会 ショッキングに描かれる美しき狂気の裏側

『乱歩奇譚』監督×声優×ED座談会 ショッキングに描かれる美しき狂気の裏側
『乱歩奇譚』監督×声優×ED座談会 ショッキングに描かれる美しき狂気の裏側

『乱歩奇譚 Game of Laplace』特別座談会/左から岸誠二、高橋李依、さユり、白石慶子

没後50年となる日本を代表する作家・江戸川乱歩さんの幻想的な作品世界を原案としたオリジナルアニメーション『乱歩奇譚 Game of Laplace』が、7月からフジテレビ・ノイタミナ枠ほかで放送中だ。

劇中では「人間椅子」「影男」「怪人二十面相」「パノラマ島綺譚」など、耽美かつ奇怪な物語が現代にチューニングされ、美しさすら感じるショッキングな映像が描かれている。

加えて、主要人物の1人・コバヤシは、不思議な魅力のなかに狂気が見え隠れするキャラクターとして、作品性を一層際立たせている。

今回は、一言では簡単に言い表せない──『乱歩奇譚 Game of Laplace』の世界をより楽しむべく、特別座談会を実施。

監督である岸誠二さん、コバヤシ役の声優・高橋李依さんに加え、エンディングアニメーションを制作した白石慶子さん、そして、8月26日(水)にリリースされる本作のエンディングテーマ「ミカヅキ」でメジャーデビューを果たす女性シンガーソングライター・さユりさんに、『乱歩奇譚 Game of Laplace』がさらにおもしろくなる、さまざまなお話を聞いてきた。

取材・企画/吉田雄弥 文:恩田雄多

江戸川乱歩の狂気を原案にした、現代版ショッキング・エンターテインメント

『乱歩奇譚 Game of Laplace』/(C)乱歩奇譚倶楽部

──7月から放送開始となりましたが、反響はいかがでしょうか?
※座談会収録時では第3話まで放送

 「なんだこのアニメ」「イカれてる」など、いろんな意見がありますが、見た方から無視されない、何かしらの反応が確実に生まれているので、テレビ番組として力強い反響をいただけているようです。

さユり イカれてるなって思いました(笑)。私自身、血とかグロテスクなものが好きで、たまに調べたりすることがあって。だから、第1話(「人間椅子(前編)」)の冒頭から椅子になった死体がでてきて、キュンとしました(笑)。しかも、死体のそばにはコバヤシが凶器を持って倒れてるじゃないですか? すごくかわいいコバヤシが死体を前にして凶器を持って倒れている。そのアンバランス感も絶妙で、個人的にどストライクでした(笑)。

高橋 そこに!?

 いやぁ、さすがです(笑)。実際、そういった好奇心の強い人にこそ引っかかってほしい、とは思っています。作品としても「ショックを与える」というのは追求したい要素のひとつなので、狙った部分に反応していただけるのは本当にありがたいです。放送が終わってからも、「あの作品は頭がおかしかった」と言われてなんぼみたいな(笑)。

さユり 私は原案の江戸川乱歩さんの作品も昔から好きなんですけど、暗いというよりは閉鎖的というか、不思議な感触の文章だな、と。ゆがんでいる結末が救いという、ほかにはない温度感があると思います。

岸誠二

 江戸川乱歩さんの作品は、エログロと耽美、変態や狂気の肯定などがよくピックアップされるイメージですが、そういう要素を含めて、自分としては一言で表現すると「狂気」だと思っています。だから『乱歩奇譚』でいえば、彼の持つ「狂気」という一面は受け継がせていただきました。まぁ、大部分をコバヤシが背負っているような気もしますが(笑)。

コバヤシは私か?

さユり

さユり 私はコバヤシが一番好きなキャラクターで、正直いうと「君は私か?」というくらい共感できる部分が多いんです。

高橋 『乱歩奇譚』を見た方で、コバヤシに共感するという意見をなかなか聞いたことがないので新鮮です!

さユり 私は普段、生きている実感が薄いと感じていて、毎日地図を見て、歩いた道や行った場所を確認する作業が好きなんです。

その建物のことを調べると、「ここは殺人事件があった場所」とか、意外な事実があったりして、実際にそこで起きたことと自分の妄想を混ぜながら、自分に関係のない建物を自分に関係のある建物にする。そうすることで、生きている実感を得ているんです。

私のこの部分は、中学生のときに人間関係がうまくいかなかった頃に生まれたので、もしかしたらコバヤシの中性的な服装や狂気という部分は、コバヤシが経験してきたネガティブな過去だったり、私と同じように生きている実感が薄いと感じていることからきているのかな、と勝手に想像していました。

 いまはまだ謎の部分が多いかもしれませんが、もうちょっと待っていてください。きっと、さユりさんの思いを裏切らないコバヤシが見れるので(笑)。

『乱歩奇譚 Game of Laplace』に登場するキャラクター・コバヤシ/(C)乱歩奇譚倶楽部

高橋 実はオーディションでコバヤシのイラストを見たときは、今よりもっとクールな雰囲気で、どちらかというとかっこいいのかなっていう印象だったんです。でも実際に声をあてるときは「もっとかわいく」と言われて。

結果として、想像していたよりもかわいくなりました。今思うと、かわいさに重点を置きながらキャラクターができあがっていったような気がします。

──先ほどさユりさんもおっしゃっていましたが、コバヤシには狂気のような独特の不気味さが垣間見えますよね。

高橋李依

高橋 コバヤシを演じるにあたって、「狂気」を演出しようとか、怖がらせようという気持ちはなくて、むしろ話すときに「狂気」を感じさせないように意識しているかもしれません。

だからこそ、コバヤシの明るさや爽やかさ、天真爛漫な部分が、みなさんの感じる「狂気」と化学反応を起こして、気持ち悪さやいびつな感じにつながっているんじゃないかと思います。

気持ち悪くて嫌いになるかもしれない。でも、嫌いでもいいから、コバヤシがそこにいるということを認めてほしいですね。

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