『乱歩奇譚』さユり×ノイタミナ編集長×編曲家ミカヅキ対談! 見た人が、これでいいんだと救われる

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『乱歩奇譚 Game of Laplace』特別座談会/左から江口亮、さユり、森彬俊

7月からフジテレビ・ノイタミナ枠で放送中の『乱歩奇譚 Game of Laplace』。作家・江戸川乱歩さんの怪奇・幻想の世界を原案としたオリジナルアニメーションであり、主人公・コバヤシを筆頭に、“クセのある”キャラクターが次々と登場することで、物語は加速度的に面白さを増している。

その面白さに一役買っているのが、エンディグテーマである「ミカヅキ」だ。放送直後から、アニメとのリンクが話題になり、歌詞とストーリーの関連性を考察するファンも現れた。

特別座談会第2弾では、「ミカヅキ」と『乱歩奇譚 Game of Laplace』との関係性にフォーカス。ノイタミナ編集長の森彬俊さん、「ミカヅキ」を歌う女性シンガーソングライターのさユりさん、そして、「ミカヅキ」のアレンジ(編曲)を担当した江口亮さんに、楽曲の誕生やエンディングへの起用の経緯、作品へもたらした影響などを中心に話を聞いた。

取材・企画/吉田雄弥 文:恩田雄多

断片的だった言葉が、2年越しにつながる

8月26日(水)リリース 酸欠少女 さユり デビュ­ーシングル「ミカヅキ」MV(short ver)

──まずは「ミカヅキ」が誕生したきっかけを教えてください。

さユり もともとは今から2年前の17歳のとき、サビの「逃げ出したいなぁ 逃げ出せない」「醜い星の子ミカヅキ」という歌詞とメロディーだけがパッと出てきたんです。当時は学校があまり楽しくなくて、家に引きこもりがちな時期で、曲づくりばかりしていました。

その時期の息ぐるしさと、普段から感じていた劣等感や後悔、そこからくる月や星への羨望が自然と歌詞に出てきたんだと思います。ただ、この2つのフレーズ以降は全然歌詞が書けなくて、2年経った今年の頭にようやく完成させることができました。

江口 2年前は完成できる状況ではなかったのかもしれないですね。自分の環境が変化する中で、当時は断片的だった言葉がつながり始めていく。アレンジでも、時間を経て気づくことが多いので、たとえ完璧だと思う場合でも、少し寝かせるようにしています。

断片的な欠片はすごく大事な要素なんだけど、どうやって作品にすればいいのかわからないことってある。

さユり

さユり 2年経っても根底にある思いは変わらなかったんですけど、「それでも」という言葉は、今だからこそ生まれたんだと思います。当時だったら「死にたい」とか、ネガティブな言葉しか出てこなかったので(笑)。

この2年間で、自分の気持ちとしても少し上を向けるようになって、誰かの助けになりたいと思えるようになったのが大きいと思います。

 アニメも同じかもしれません。アニメの制作は、チームで作品の全体像を共有してから始まりますが、本当の意味で「ゼロ」からのスタートではありません。

『乱歩奇譚 Game of Laplace』も、1年半前くらいから動き始めましたが、監督の岸誠二さんやシリーズ構成・脚本の上江洲誠さんは、きっと前々からやろうと思っていたテーマを詰め込んでいるだろうし、僕自身もずっと前からやりたかった企画でした。

制作に関わるみんなが以前から持っていた、「いつかこういう作品をやりたい」という思いの種を、ここぞとばかりにぶつけ合うわけです。欠片が集合して化学反応が起きることで1つの作品になるという意味では、アニメも音楽も共通する部分があるかもしれません。

思いを紡いで、曲の力を大きくする

江口亮

──「ミカヅキ」の原曲は、どのような曲だったんでしょうか?

江口 「ミカヅキ」は、一番最初の時点でさユりさんの表現したかった思いがしっかり感じられるくらいの弾き語りでした。とはいえ、このまま終わらせるんじゃなくて、さらに爆発力を注入するのがアレンジャーの仕事。もともと「ミカヅキ」にあった美しさと相反する要素を両立させるような楽曲に仕上げようと思いましたね。

さユり 最初のバンドアレンジから、だんだんとノイズのような音が追加されて、すごくいい雰囲気に「ミカヅキ」に近づいていくのを感じてました。

江口 アレンジは、基本的にディレクターやアーティスト本人の意向を反映しつつ、自分の意見も提案していく作業です。個人的には、それぞれの意見を汲み取って妥協点を探るのではなく、思いを紡いで曲の力を大きくする作業だと思っています。

「ミカヅキ」は、さユりさんのメジャーデビュー曲なので、今後の彼女の原点になるという意味でも、彼女に寄り添いすぎず、かっこよく見られるものにしたいと。

ノイズを入れたのは、どんどん汚していいという話だったので(笑)。ピアノのきれいな旋律とノイズの共存、異なる要素の両立は、さユりさん自身のアンバランスな魅力にも通じているんじゃないかと思います。

 今回は、少しイントロが長いバージョンもつくっていただいて、今、監督含め、どうやって本編で効果的に使うか試行錯誤しています。

江口 イントロつくってるときは、こんなに人が死ぬアニメだとは思ってなかったですよ(笑)。

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