S.S.ラージャマウリ×小島秀夫対談 インド映画『RRR』を通じて共鳴した創作論

直感や創造性に振り切った『RRR』の猛獣アタック

──あとはやはり、本作のすごさはとんでもない熱量ですよね……! 「ナートゥ」のダンスシーンひとつとってもエネルギーが異常です。

小島秀夫 本当にその通り。普通の映画だったら5分くらいでやめちゃうところをずっとやっている(笑)。

──このスケール感は仮に思いついてもなかなか実現できることではないと感じます。

S.S.ラージャマウリ そのマジックを実現するために最初に必要なのは、プロデューサーがつくり出すお金です(笑)。
映画『RRR』を象徴する高速ダンス
──たしかに(笑)。

S.S.ラージャマウリ そのうえでやっぱり、直感的に映像を考えることが大事だと思います。というのも、心配しだしたらきりがないから。「これは実現可能か?」「果たしてリアルだろうか?」「理に適っているだろうか」「論理的か」と考えすぎると、創造性が失われてしまうんです。

小島秀夫 ビームがトラックで突撃し、猛獣が檻から出てくるシーンも印象的でした。猛獣が暴れまわるんだけど、ビームが猛獣よりも怖い顔をしている。構造的にすごいし、映像的にも効いていました。
映画『RRR』観客の度肝を抜く猛獣アタック
──いま小島監督が挙げてくださったシーン、「冒頭のラーマ VS 暴徒のバトル」とも構造的にリンクするように感じます。

小島秀夫 ビームの「虎」に対して、あのシーンのラーマは冒頭では国家の「飼い犬」ですよね。そこも上手いなと。そうした伏線がすごく緻密に張ってあるけどセリフでは言わないから、3回くらい観たらわかると思います(笑)。

S.S.ラージャマウリ そうなんです。実はラーマが群衆の中に入っていくシーンから、2つ3つシーンを経過してようやく、つまり彼らが登場して15~20分してからようやく言葉を発するんですよ。

ラージャマウリ&小島秀夫、共通点は決めカット?

──おふたりは小島監督が1963年生まれ、ラージャマウリ監督が1973年生まれとちょうど10歳差ですね。対談されるなかで、見えてきた共通点はありましたか?

小島秀夫 僕たちの共通点は、世界中の映画を観ているところ。違いは、僕が日本人で彼がインド人であることくらい、という感覚です。僕は米(日本の主食)を食べながら世界中の料理を食べてきた(映画を観てきた)けど、やっぱり(映画でできている僕の)身体の何%かは米でできているんですよね。

S.S.ラージャマウリ 小島監督と先ほどいろいろな映画の話をしていたのですが(※)、同じような作品が好きなんだなという印象を持ちました。そして僕も、米が好きです(笑)。

そういった共通点がありつつ、クリエイティブに対する思想や哲学の部分に共鳴する部分が多くありました。もっともっと小島さんのことを知り、学んでいきたいです。 小島秀夫 キラーカット(決めカット)のつくり方が近いなと感じました。日本だと歌舞伎の“見得”のような決めポーズは侍映画でよくあって僕も好きなのですが、『RRR』は振り向きざまのカットなどでもちゃんとキマッている。

ラーマがドラムをたたくところなんて、かっこよすぎますよね。あれを逆光で撮っているのも良いんですよ。

※取材当日は小島監督のポッドキャストの収録が行われ、ゲストとしてラージャマウリ監督が出演していた。
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