ミクのお兄さん「KAITO」中の人と、第一世代ボカロPが出会った 「な音」インタビュー

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自分たちの終わりとこれからのはじまり

な音 ミニアルバム『ノスタルジック』ジャケット

──今回「な音」初の全国流通盤ミニアルバム『ノスタルジック』が完成してみて、手応えとしていかがですか?

風雅 bakerさんが生み出すメロディを、自然に歌えたのかなと思っています。

baker 曲をつくる前に、ふたりで飲みにいったんです。そこでいろんな話をしました。そのひとつひとつの話題から膨らませられるようなテーマを広げてますね。

──どんなお話しをされたんですか?

風雅 飲み行った時は使えない話ばっかりなんですけど(笑)。

baker 音楽をどうこうっていうよりは、なんでしょう。大げさに言うと人生っていうか、まあそれを酒飲んで話したっていう感じですね。真面目な話もあればゲスい話もあったりっていう(苦笑)。

インディーズ盤の時もつくる前に飲みに行って話したりしてました。今回はメイン曲「始まりのうた」がありまして。僕らはそれぞれ、何だかんだいろんな活動をしてきた上でユニットを組んだので、テーマは、それまでの“自分たちの終わりとこれからのはじまり”。

ただのはじまりじゃなくて、それまでを踏まえた上でこれからどうしていくか? という意味です。作詞してくれたマチゲリータPにもそのことはイメージとして伝えていました。
【Lyric Video】な音 / 始まりのうた
──特に曲作りでこだわった部分は?

baker アルバム全体としてアコースティックでわりと大人しめな中でも、それぞれバリエーションを付けようと思ってました。比較的音が厚めでゆったりしている「始まりのうた」を基準に、それ以外は、速すぎず厚くしすぎず、全体のバランスをみたイメージですね。歌詞は一貫してほぼ同じテーマなんですよ。

風雅 歌い手として好きなのは、スマホ向け音楽ゲームアプリ『Lanota』のタイアップ曲になった「vivid color」かな。8分の6のあのテンポが心地よいんです。
[Lanota Music Preview] な音 - vivid color
自分なりの課題を達成できた喜びという意味では1曲目の「始まりのうた」ですね。今までの自分の力だと歌いきれないところがあって、いい意味で課題を突きつけられたので、感慨深いですね。

baker 多分これが、発注されてやった仕事だとすると「物足りない」とか「もっとフックを」って言われると思うんですけど(笑)。良くも悪くも何も狙ってないっていうか、テーマに寄り添ったことをやっているだけですね。風雅さんのことをボーカロイドの中の人とかも意識してなかったですし、普通に知り合い同士が組んだ感じなんです。

ただ、リスナーとしてはライブで音源とは違うアレンジで聴けると嬉しいじゃないですか? そんなことを意識してアコースティックの形にたどり着きました。自分が得意とか、それが上手いとかじゃないんです。自分がお客さんの立場に立ったときに、どうしてほしいかってことを考えましたね。

生音の情報量はハンパない

──bakerさんは、風雅さんの歌声やボーカリストとしての魅力をどのように捉えられてますか?

baker 僕は普段からボーカロイドを使っていたので、生声とのギャップはすごい感じます。生音は歌のデータ量が半端なくて。抑揚だったり揺らし方だったりとか、そういうメリハリはコンピューターではできないし、普通の人と比べても風雅さんは情報量が多いなって思いますね。レコーディングの時も、僕は特に感情表現について指示をしないんですよ。

風雅 あ、そうそう。あまり指示しないから気を使ってるのかなと思って。どんどん言ってくれればと思うんですけどね。

baker 僕は(指示しなくてすむから)楽だなとしか思ってないですね。ありがたいですよ。録り直しもほとんどない。一発撮りレベルで、直しとかもほとんどしてないんですよ。

風雅 物理的に(録り直す)時間がなかったっていうのもあるけどね(笑)。

──曲を渡す時、仮歌(レコーディングの前に、作曲者が歌手に歌のイメージを伝えるために録音する仮の歌)はどうされたんですか?

baker 渡すときはボーカロイドで仮歌を入れてますね。

風雅 僕もbakerさんの作品だと、そのほうが逆に慣れているのでイメージがつかみやすいんです。

──面白いですね。

風雅 さっきも言った通り、僕は自分でボカロの声をやっておきながらボカロにまったく詳しくないし、興味もあまりなかったんです。逆に今はすごく好きなので、bakerさんの場合は初音ミクさんの声ですけど、仮歌でも聞き馴染みがあって歌いやすいんですよ。

──それも調声して渡されるんですか?

baker 仮歌は、歌詞をボーカロイドに打ち込むんですよ。ボーカロイドにテキストのファイルを打ち込んでって作詞していくので。必要があれば調声しますけど、ほぼそのまま渡してます。

風雅 歌詞の解釈に関しては、僕はすごく理解が遅いので。自分で読み解けないけど、あまりbakerさんにも意味は聞かないもんね。それでも何が好きかっていうと、時系列の物語だったら、意味よりも単語のはめ方で色が見えてきたり響きが綺麗だったりするから。それだけで歌い手としては満たされてますね。

紆余曲折の末の出会いに、意味を持たせたい

──bakerさんはかつて「下手したらネカフェ難民になるかもしれない」(外部リンク)くらい切り詰めた生活だったと語られていました。音楽で食べられるようになった現状をどういう風に認識していますか?

baker 安定かはわからないですけど、お仕事は事務所が頑張ってくれているので、食べていけるようになっています。僕がどうこうって言うよりは事務所のお陰ですね。

──ちなみに、2008年に一度、活動を休止されましたよね?

baker なんとなく自分のなかでやりたいことが一通り終わったというか、それで食べていくとか道筋がまだない時代だったんですね。アルバイト生活との兼ね合いが大変だったし。振り返ってみると、若いから引退とか言ってみたかったんですよ。

──実は風雅さんも、一時ご自分の活動を抑えられていましたよね。

風雅 ありましたね。僕は、世間でいう歌手みたいにピンで歌う活動を目指してたのですが、縁あって大学生の時にスタジオ・シンガーになりお仕事させていただくことになりましたが、常に葛藤してました。

実は僕も、キャリアの中で、完全に撤退した瞬間が1度だけあって。言われたことばっかり歌っていて、自分が無くなって精神的に参っちゃって……。「辞めます」って宣言したんですよ。丸1年まったく仕事しないで引きこもって、というかもう遊んでるだけの1年でした。それが30代の前半だったんですね。1年で復帰しちゃいましたけど(笑)。

──「自分の歌手人生はここまでなのかもしれない」(外部リンク)ってくらい悩んでらっしゃった時期もあったっていう。

風雅 それは常に思ってますね。歌うのは好きですけど、次から次へと歌い手さんも出てくるし、ましてや僕なんかより上手い人はごまんといるから。

あと、喉を壊してしまったことが大きくて。スタジオ・シンガーだと、すごい高くてしかも綺麗な声を要求される仕事が多かったので、それができなくなった時に仕事としてのシンガーはもう駄目かなって思いつめたことがありました。

──それぞれ浮き沈みを経験されたなかで、お2人が出会って新たにユニットとして活動を始めたことに意味があるんだと思います。

風雅 意味をもたせたいですよね

baker それがなかったらすぐ辞めてますよね。お互い面倒くさい性格なんで。さすがに若いときに組んでいたら、ケンカじゃないけど、すぐ疎遠になってたんじゃないかなって(苦笑)。

風雅 そうだね、確かに(苦笑)。

──最後に、「な音」として、今後どうしていきたいですか?

風雅 bakerさんのメロディが大好きなので、歌わせてもらえるなら「何でも歌います!」って姿勢なんですよ。音楽的なことで揉めることはないかなぁ。物理的に距離が離れているユニットなので、そこが大変なのかもしれないですけど。

baker 家が100km以上離れているんで。

風雅 本当申し訳ないですけど、宅録でサクサクとデータを送るとか、僕はそういうことができないアナログ人間なんです。それができたらもうちょっとペースを詰めて活動できるかもしれないですね。

──bakerさんは影響されたアーティストに日本のポップスを代表する小林武史さんをよく挙げていますが、ポップス・フィールドでの活躍は視野に入れていますか?

baker う〜ん……。どこで活躍したいとか具体的なことは決めてないんですけど、ただ、こういう曲を聴きたいって人に届く形がいいなっていう。そのためにはもっといろいろ考えないといけないとは思いますね。頑張ります。
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イベント情報

『ノスタルジック』発売記念イベント

日時
2017年3月26日(日)
開場14:30/開演15:00予定
会場
アニメイト新宿B2F animate hall SHINJUKU

【参加券入手方法】
「ノスタルジック」を、下記イベント参加券配布対象のアニメイトにて、ご予約(全額内金)もしくは、ご購入下さいましたお客様に、先着でイベント参加券をお渡しいたします。
※内金は現金のみの受付となります。クレジットカード、アニメイトポイントはご利用できません。
○参加券1人あたりの枚数制限:1枚

【イベント参加券配布対象店舗】
アニメイト池袋本店・渋谷店・横浜店・新宿店・AKIBAガールズステーション
詳細:https://www.animate.co.jp/event/77488/

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な音

アコースティックユニット

特撮楽曲『電磁戦隊メガレンジャー』『仮面ライダーアギト』やアニメ声優、VOALOID”KAITO”の音声提供者としても活躍する、ボーカリスト「風雅なおと」とCMやアニメ、ゲーム等にも数々の楽曲を提供し『タイムボカン24』ED楽曲である篠崎愛のTRUE LOVEや『B-Project ED 星と月のセンテンス』を担当するなど、多岐に渡る活躍をしているボカロP・アーティスト・クリエイター「baker」 によるアコースティックユニット

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