連載 | #29 漫画百景 いま読むべき漫画たち

傑作ファンタジー漫画『圕の大魔術師』のすゝめ 超画力と構成力で“王道”を征く

度肝を抜くコンセプトアートのような見開き

作者・泉光さんのそんな類まれなストーリーテリングを最大限に引き出しているのが、精緻な描き込みも大胆な見開きもお手のものな超画力です。

筆者は1話の冒頭からずっと「すげえ……!」と思いながら読んでいます。全ページ細部まで目を凝らしたくなる絵です。

『圕の大魔術師』5巻の書影。絢爛な表紙イラストは全巻見ごたえ抜群/画像はAmazonから

コマ割りはかなり細かく設計されているのですが、見辛さはなく読みやすい。見開きには殴りかかってくるような圧すら感じます。この漫画はこういう作品なのだ!と、強烈に伝えてくる。


不特定多数のチームで作品をつくりあげるゲームやアニメで、関係者全員にイメージを共有するため配られるコンセプトアートが、受ける感覚としては一番近いかもしれません。見るだけでなんとなく世界観が掴める、そんな絵がたびたび現れるのが視覚的に楽しいです。


また、キャラクターの目にも色々な感情が詰まっています。言葉にしなくても喜怒哀楽が伝わってくる。ことわざの“目は口ほどに物を言う”を絵で表現している稀有な漫画なのです。

出会い、別れ、そして彼は主人公に成った

ちなみに、筆者はここまで、主人公の少年の名前をあえて書いていません。これは1巻の構成上、彼の名前が出てくるタイミングに大きな意味があるからです。

この瞬間に彼は本当の意味で主人公に成ったのだと、分かる時が来ます。

これ以上語ると初読の感動が薄れるので、未読の方はぜひとも、1巻だけでも手にとってほしいと思います。そして1巻以降も加速度的に面白くなる物語にどっぷりハマってください。

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