不完全な欅坂46と完全な平手友梨奈。初の野外ワンマンで少女たちは何を見せたのか

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不完全な欅坂46と完全な平手友梨奈。初の野外ワンマンで少女たちは何を見せたのか
不完全な欅坂46と完全な平手友梨奈。初の野外ワンマンで少女たちは何を見せたのか

欅共和国 2017

デビューからわずか1年程度でトップアイドルとなった欅坂46

2017年7月19日に1stアルバム『真っ白なものは汚したくなる』をリリースしたばかりの彼女たちが、7月22日(土)、23日(日)の2日間、初のワンマン野外ライブ『欅共和国 2017』を富士急ハイランド・コニファーフォレストにて行った。

NHK紅白歌合戦ほか数々の歌番組への出演や、メンバーの雑誌モデル抜擢等の活躍により「笑わないアイドル」としてお茶の間レベルでも知られる存在となった欅坂46がこのライブで見せたものとは? ライブ2日目、23日に鑑賞した模様をレポートする。

文:照沼健太 撮影:Diora(@Diora_by_tot) 編集:ねりまちゃん

欅坂46のライブレポートはほかにも

『欅共和国 2017』は、彼女たちのキャリアにおける「番外編」か?

まず、この『欅共和国 2017』には大きく2つのトピックがあった。

1つ目は「欅坂46初のワンマン野外ライブ」であるということ。

提供写真

これに関しては大成功。富士急ハイランド・コニファーフォレストという富士山を望むことができる開放的なロケーションでのライブは、東京都内では実現し得ない貴重なもの。

そしてステージや客席がびしょ濡れになるほどの水柱が上がる演出や、メンバーが放水ホースや水鉄砲を使ってオーディエンスに水を撒くという試みは夏ならではだ。 これまではモノトーンでシリアスな印象の強かった欅坂46のワンマンライブだけに、このカラフルな『欅共和国 2017』は「単独での夏フェス」かのようなスペシャルなライブとなった。 2つ目は「1stアルバム『真っ白なものは汚したくなる』リリース後の初のライブ」であるということ。

これに関しては正直肩透かしを食らった印象であることは否めない。というのも、この『欅共和国 2017』において披露されたアルバム収録の新曲は、たった1曲「危なっかしい計画」のみ(しかも23日限定)だったからだ。

セットリストだけを見るならば「8月から開始される全国アリーナツアー前の中途半端なライブ」と言えるだろう。

以上、2つの「期待」とそれに対する「返答」からすれば、この『欅共和国 2017』は「欅坂46のワンマンライブ番外編」と位置付けられるかもしれない。

しかし、それは違う。このライブは彼女たちのキャリアにおいて間違いなく重要なものだった

不完全な欅坂46。完全な平手友梨奈。

この日はメンバーの米谷奈々未が学業により、今泉佑唯が活動休止中のために不参加という「メンバー2人が欠けた初のワンマンライブ」でもあった。

欠員によって変わるのは歌割りやダンスのフォーメーションだけではない。楽曲レパートリーもそれに含まれる。特に今泉は小林由依とのユニット「ゆいちゃんず」のメンバーであることから、アルバム以前の既発曲だけでも関連4曲が封印状態となっているのが現状。

ゆいちゃんずの2人がギターを抱えて歌うフォーク路線の楽曲群は欅坂46のライブにおいて特徴的なパフォーマンスとなっていただけに、良くも悪くもライブ全体の印象が変わっていたのは間違いない。

だが、そうした「いつもと違う欅坂46」が際立たせ、この日のライブを特別なものとした要素がある。それは平手友梨奈だ。

「平手が凄いのはいつものことじゃん」という声が聞こえて来そうだが、それも無理はない。全シングルのセンターとして、グループの象徴として、常に大きな期待とプレッシャーを背負いながらも、圧倒的なパフォーマンスを見せ続けて来たのが平手なのだ。

だが、この日の彼女はこれまでの全てを上回るかのような凄みだった。

まず、セットリスト冒頭に固められた「サイレントマジョリティー」「世界には愛しかない」「二人セゾン」というシングル3曲の時点で、彼女の一挙一動に理由も分からず感動し、涙が出そうになっている自分にハッとさせられた。

表情、目線、髪の毛先に至るまで、全神経を研ぎ澄ませたかのような繊細かつ豪胆なパフォーマンスが、さらなる精度と表現力を持って迫って来るのだ。 ソロ曲「渋谷からPARCOが消えた日」においては、ステージから会場後方まで続く花道を平手が歩くのに従い、通り道の観客が息を飲んでいくのが感じられるほど。

提供写真

アイドルのライブにおいては「超絶可愛い」という定番コールがあるが、正直なところこの日の平手にはそれが全く似合わなかった。ひたすらに「かっこいい」のだ。 そして、そんな平手無双の印象をさらに強め、それと同時に別の解釈の可能性を感じたのが、AKB48グループと乃木坂46、欅坂46によるユニット、坂道AKB「誰のことを一番 愛してる?」のカバーだった。

坂道AKBによるオリジナルでは、各グループの人気メンバーが火花を散らすような内容だったが、欅坂46によるパフォーマンスではまったく違う印象に。

振付を担当したTAKAHIROとセンター平手による同曲の解釈を、メンバー全員の力を合わせてより純粋に表現するかのような息の合ったパフォーマンスは圧巻であり感動的。

多人数グループであることを活かしながら歌詞のメッセージを最大限に表現するダンスは、当初から欅坂46の最大の特徴の一つだったが、この「誰のことを一番 愛してる?」のパフォーマンスは、メンバー全員が一点に向かう迷いのなさにおいて確実にネクストレベルに到達していた。

平手友梨奈を象徴としてセンターに立たせ祭り上げているのではなく、メンバーやスタッフ全員がお互いへの信頼を持って、平手を通すことでそれぞれの意志を一つの到達点に向かわせているかのようだった。

さらに続く「不協和音」ではそれが加速。オーディエンスの合いの手がパフォーマンス上の重要要素となる同曲においては、観客の意志すらも平手に集まり「僕は嫌だ」という叫びの一瞬で爆発するのだ。

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それは肯定か? 否定か? 両義性が溢れる、宙ぶらりんの圧倒的なカタルシスだ。

だが、そんな平手だからこそ常に心配されているのが、肉体的、そして精神的な負担だ。

「笑わないアイドル」なんて決め付けてんじゃねーぞ。

つい2年前まではどこにでもいるような中学生だった一人の少女が、一瞬にしてアイドル界を代表するカリスマとして注目と賞賛と罵声とを浴びるようになってしまった。そんな状況では、正気を保つだけでも一苦労なのは誰しもが想像するに難しくないだろう。

そして近頃は出演番組や告知写真における笑顔のなさ、声が出なくなってしまうなどの不調に対し、心配や不安の声が囁かれるまでに。

……もちろんこうした言説も、その負担の一端となっていることは間違いない。正直なところ筆者はこれまで欅坂46に関する原稿を書くたびに、どこか彼女に対する申し訳なさを感じていたのも事実である。

そんな思いが何度も去来する中、この日の平手は徹頭徹尾恐ろしいほどの集中力でパフォーマンスをこなし、先述の「誰のことを一番 愛してる?」と「不協和音」に至った。

「不協和音」の終盤で見せた平手の狂気的な笑みは、アイドルやショウビズにまつわるあらゆる角度からの期待と欲望を集めた末の断末魔であり「もう戻れない。行き切るしかない」という破滅的なニヒリズムかのようで、恐怖に背筋が凍る思いがした。

以前、筆者は彼女たちのアニバーサリーライブのレポートにいくつかの不安を綴った。 その後、それが的中したかのように、アイドル界には数々の事件が起こり、当の欅坂46においてもメンバーを狙った事件が発生したのは記憶に新しい。この不穏な笑顔は、そんな状況に対して強行突破を仕掛ける悲壮な決意表明のように感じられたのだ。

だが、それは違った。

そんな、あらかじめ結末が決められた悲劇を見るかのような感傷に浸った筆者をあざ笑うかのごとく、平手が笑顔を見せた

定番のアンコール最終曲「W-KEYAKIZAKAの詩」後、2度目のアンコールに応えて再びステージに表れたメンバーたち。

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ここで挨拶したのが平手だった。珍しい平手のMCに驚いていると、彼女が屈託無い笑顔を見せていることにさらに驚かされた。そして彼女は一瞬真顔に戻った後、いたずらっぽい笑顔を見せ楽曲タイトルをコールした。アルバムに収録された新曲「危なっかしい計画」だ。

「危なっかしい計画」は、大人しいコだと言われがちな女子学生が、制服をコインロッカーに預けて私服に着替え、恋を含めたひと夏のちょっと危ない冒険に踏み出す。そんなストーリーをモチーフに、変化や成長を歌う楽曲だ。

ナンパ男を軽くあしらう挑戦的な態度を取りながらも「遊ばない 生真面目なタイプって決め付けないで」と歌うこの曲を、平手ほかメンバー全員がいたずらっぽく笑いながら歌い、踊る。

さっきまで狂気的な笑顔を見せていた平手は「騙された気分はどうだい?」と言わんばかりに、等身大の16歳の少女らしい笑顔を見せて踊っている。それはまるで「笑わないアイドル」という世間の固定されたイメージを裏切って楽しんでいるかのようだった。

そして平手は同曲のパフォーマンスを終え、仲間たちと笑顔を交わし、歓声に沸く会場に向けて人差し指を立てた。彼女はマイクを外し、静まった満員の観客に向け本当に楽しそうにお礼の言葉を叫んだ!

欅坂46の、夏がはじまる

飄々と街を駆け、たまにはのんびり昼寝したりもしながら、結局は誰よりも高く跳ぶ。そんな彼女たちの未来に向けた夏が始まったのだと感じた。きっとこの夏が終わる時、彼女たちはこれまで我々に見せてこなかった、そして自分たちでも気付いていなかった、新しい一面を見せてくれることだろう。

少女たちは一瞬にして変わり、そして駆け抜けていく。

提供写真

そう、『欅共和国 2017』は、全国ツアーに旅立つ「初めての夏」の幕開けを告げる、高らかなファンファーレだった。

永遠は存在しない。しかし、それは「人は変われる」ということでもあるのだ。

※記事初出時、年齢表記に誤りがあったためお詫びして訂正いたします

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イベント情報

欅坂46 初野外ワンマンライブ「欅共和国 2017」(開催終了)

日程
2017年7月22日(土)・23日(日)
開場
15:30/ 開演:17:00
会場
富士急ハイランド・コニファーフォレスト

<セットリスト>
M1 サイレントマジョリティー
M2 世界には愛しかない
M3 二人セゾン
―MC―
M4 青空が違う
M5 僕たちの戦争
M6 渋谷からPAROCOが消えた日
M7 ひらがなけやき
―MC―
M8 僕たちは付き合ってる
M9 大人は信じてくれない
M10 エキセントリック
―MC―
M11 また会ってください
M12 制服と太陽
M13 微笑みが悲しい
M14 割れたスマホ
M15 語るなら未来を…
M16 誰よりも高く跳べ!
M!7 手を繋いで帰ろうか

EN1 誰のことを一番 愛してる?
EN2 不協和音
EN3 W-KEYAKIZAKAの詩
―MC―
DEN 危なっかしい計画 ※23日(日)のみ

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照沼健太

Editor / Writer / Photographer

編集者/ライター/カメラマン。MTV Japan、Web制作会社を経て、独立。2014年よりユニバーサルミュージック運営による音楽メディア「AMP」の編集長を務め、現在は音楽・カルチャー・広告等の分野におけるコンテンツ制作全般において活動を行っている。ブログメディア「SATYOUTH.COM」を運営中。http://satyouth.com

1件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:8347)

しょーもない
こういう「平手至上主義」な思考が欅を潰した
ダークサウンドに偏り、膨らみの無いグループ
それを良しとするファン
だが膨らみが無い分、ワンパタで中途半端になっていくグループ
一部のファン以外に受け入れられなくなるのは必至

櫻坂に変わって正解