すごいことである。DVDとして発売されているものを全部公開してしまうなんてなかなかできない。これを機会にぜひラーメンズを見てほしい。さてさて、ラーメンズ全17公演のうち、100本のコントが映像ソフト化されているのですが、本日2017年1月1日、全部YouTubeにアップしました。 「小林賢太郎のしごと」より
さて、これから、ラーメンズファン歴が人生の半分を超える井口(28歳無職)が、独断と偏見でラーメンズのコントをおすすめしていくのだが、その前に、そもそもラーメンズってだれ? というところから、簡単に紹介したい。
私の考える、ラーメンズが他のお笑い芸人と違うところは「小林賢太郎と片桐仁の人間的な魅力」である。また、それを小林賢太郎がよく熟知しており、ネタに反映させているところ、だと思う。ラーメンズとは:
ラーメンズは日本のお笑い芸人。トゥインクル・コーポレーション所属。
自身で立ち上げた多摩美術大学の落語研究会出身。
爆笑オンエアバトル(NHK)に出演したことから、名前を全国区に広げた。
第1回公演(ナンバリングされている公演としては初であるが、大学内や、他大学でのライブはこれ以前にも行っていた)は1998年6月、シアターDで行われた『箱式』。
第7回公演『news』より全国ツアーをスタート(公演名はnorthのnなどと東西南北をあらわす意味合いを含んでいる)。本公演のチケットは即日完売の人気ぶりをみせている。
コンビ名の由来は、片桐仁(小林賢太郎)の実家がラーメン屋だから、ドイツ語で「箱」がrahmenだから、など諸説あるが、どれも噂の域を出ない。
シンプルなセットと衣装で、最小限の小道具と「箱」を使い、ことばとパントマイムで世界を掘り下げていくのが特徴。
いや、どの芸人だってやっていることなのだが、自分たちの魅力・どう見えるかをとことん追求している、そのとことん具合が半端ではない。
なかなか黒いシャツとパンツ、つまりほとんど体ひとつでコントをやろうとは思わない。余白が不安で、面白く見えるような衣装を、小道具を、どんどん増やしてしまいがちだ。その方がウケる確率が上がるし、伝わりやすいからである。
体ひとつの方が自分たちにはよい、と判断できる潔さが強い、と私(井口)は考える。
では、ラーメンズを愛するあまり、模試の志望校に多摩美術大学と書き続けてきた気持ち悪いタイプのラーメンズファンである井口可奈が、独断と偏見で選ぶ、「これだけ見れば通ぶれる! ラーメンズコントベスト10」をお送りする。
文:井口可奈 編集:新見直
これだけ見れば通ぶれる! ラーメンズコントベスト10
小道具を極力使わないスタイルのラーメンズが、縄跳び一本で広げていく妄想、紡がれていく物語(のようなもの)に浸ってしまう一本である。
余談だが、私(井口)は、無限大、の部分を再現したく、中学生の頃大縄跳びの縄を柱に縛りつけてやってみたことがある(友達がいないので)。もちろんうまくいかなかった。それも素敵な思い出である(友達はいまも少ない)。
前半パートで見せる、小林賢太郎の得意技、顔芸にも注目である。テツandトモの笑点ネタを思わせるものがある(お笑いをお笑いで例えるな)。
顔芸、という、一般的なラーメンズのスタイリッシュなイメージからかけ離れている(であろう)、バカ、なボケである。
そう、ラーメンズは、バカ、なのだ。
全然敷居高くありません。安心してください、2人とも、バカです。
『CLASSIC』は、全編、帝王閣ホテルというホテルが舞台になっている。1本目のコントで少しだけ歌われる応援歌のフルバージョンがこのコントである。
メロディに関して皆が感じるだろう疑問にも、終盤でちゃんと答えてくれている。ラーメンズは歌いがちである。
構成も綺麗なのだが、小林賢太郎の大喜利的に自由にボケるパートが楽しいもののうちの1つとして選んだ。
好きにボケていいとなると生き生きしてくる小林賢太郎の性質は、2016年に行われた、コントマンシップ・カジャラ#1(第一回公演)『大人たるもの』でも存分に発揮されている(DVD化が待たれるところである)。
『home』『FLAT』『news』の三公演は、権利などの大人の都合がいろいろあって、DVD化が不可能だと言われてきた。そのため超高値で取引されているVHSを買えなかった者たち(私など)は、小林賢太郎戯曲集で繰り返し繰り返し読んで補完してきた。DVDが出た時は泣いた。そして即買った。
コントの台本(戯曲)というのは不思議なもので、勿論読んで面白いのだ。しかし、それが三次元に立ち上がってくると、立ち位置があって間があってセリフの強弱がある。読んでいたときと見るときの面白さは、同じだけど違うのが、面白いと思う。
小林賢太郎戯曲集もどうぞ(Amazonへ)。
例えばごっつ(ええ感じ)などにもよく考えたらやや怖いコントはあると思う。ただ「怖いコント」というジャンルをつくったのはラーメンズではないかと私は考えている。
特に本作を収録したATOMのDVD化以降、似た構成の怖いコントをやる芸人さんが、一時期すごく増えたという印象がある。私の見に行っていたライブの傾向かもしれないが…。
もちろん、怖いのがメインではなく、おもしろがたくさん詰め込まれているので、あの怖いやつでしょ、と思わずに見てほしい。ちゃんと見ていればそんなに怖くない、と思う。私はお化け屋敷に入って5秒で泣く28歳無職だが、大丈夫でした。
中学生くらいの社会科の知識(田中角栄中心に)を掘り返される作品である。
お笑いにおいて、何が面白いか。緊張と緩和。裏切り。など、いろいろあるが、「ぎりぎり覚えていたけどほとんど忘れていたラインのこと」をボケに使われると人は笑ってしまうと私は思う。
内容に気を取られて気がつかなかったが、今見ると、カメラワークが過剰なところも面白い。
似たコントに、『爆笑オンエアバトル ラーメンズベスト』DVD収録のにっぽん語(Amazonへ)があるが、こちらもいい。設定がよく生きている。
日本語学校シリーズや不思議の国ニポンなど、ラーメンズのコントはどうでもいい知識を増やしてくれる。
どっちかがどっちかに何かを教える、という形式はラーメンズによくみられる。
「人にものを教える」ということが面白いと感じている小林賢太郎をどこの大学も客員教授として呼ばないのが不思議だが、小林賢太郎はつくる方に専念したがるだろう。
と思ったが、近年小林賢太郎は、テクネ(NHK)や、公式サイト(外部リンク)などで手の内をちょっと明かしたりしている。やり方は教えてくれてもタネまでは教えないあたりが、手品の実演アルバイトをしていた小林賢太郎らしい。
好き勝手ボケ続ける30歳の小林賢太郎を、おじさんだなーと思って見ていた私だが、もう28歳になってしまった。そして気がついた。30のおっさんにこのかわいらしさは普通出せない。
その嘘かわいらしさがちゃんとボケになっている、笑われていなくて笑わせているところがすごいと思う。
カジャラ(前述)にもフリースタイルボケなところがあるが、小林賢太郎、御年43歳である。おそろしいパフォーミングアーティスト(パフォーミングアーティストwwwと草を生やしたくなる人たちの気持ちもわかるが、そうとしか言いようがない)である。
ベスト10に絞れるならラーメンズファンこじらせてないわーー!!!!!
と思いながら選んだ。
私の言葉が見えますか(弱気)、私の言葉が見えますか(完結)と続くコント群の一作目である。
小林賢太郎の良さ、の話ばかりしてしまったので、片桐仁の良さ、について語ろうと思ったのだが、「怪傑ギリジン」だと直接的すぎるな、と思って、これをチョイスした。「怪傑ギリジン」もすごくいいです。
女の裸が見たい、というセリフが何度か出てくる。片桐仁の言う、女の裸が見たい、の切実さをぜひ見てほしい。現在では、美人と結婚して、くそかわいい子どもも2人いる片桐仁ですが、当時は「女の裸が見たそうレベル」がとにかく高い。
コントの構成もきれいです。女の裸が見たい。
コントで泣かせるのやめてほしいんだが、時々泣かせにくるのがラーメンズである。毎回じゃなくて、時々、なところがずるい。
ラーメンズ公式チャンネルの再生リストは、公演順、かつ上演順に並んでいるので、器用不器用が好きだという方は、『ATOM』を通して見て、最後のコントで泣いてください(私はぼろ泣きしたが人によるかもしれない)。
という感じでベスト10をお送りしました!
独断すぎて、ファンの中では評価の高い「TEXT」や「TOWER」から一作品も挙げてないあたりちょっとひどいなと思ったが、10本におさまらなくなってきちゃうので、そこはすみません…。
私はラーメンズが好きなので、ラーメンズでの活動をぜひ今年こそはお願いしたい。カジャラはとてもよかった。よかったんだけどね! ラーメンズファン向けの「ほらこういうのが好きなんでしょ?」という箇所が散見されて、ちくしょう、見透かされている、と思いながらも、ますますラーメンズが見たくなった。
大竹まこと・きたろう・斉木しげるのコントユニットであるシティボーイズもライブタイトルに「ファイナル」が入るようになった。「ファイナル part.1」というわけわからないやつだけれど、みんな、終わりを見据えながらやっているのだなという気がしている。
「やりたいことをやる」から、TVシーンからやや距離を置いていた小林賢太郎が小林賢太郎TVをはじめて何年になるだろう。
ラーメンズのコントを見ていると、終わりなんてないような気がしてくるのが不思議だ。まだまだ終わらせないでほしい、というのは勝手な願いだろうか。なんか、すげえ、かっこよかったんだよね(器用不器用より)。
カジャラを見た感じでは、まだまだコントやりたくて仕方がない、ように思えた。
楽しみにしています。
ラーメンズ好きをこじらせてお笑いサークルに入り、就職後上司に「なにか面白いこと言え」と無茶振りされて、プーチンとマーチンの歌をうたい、めちゃめちゃウケたことのある(本当にごめんなさい)井口可奈でした。
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井口可奈
小説を書く無職
1988年生まれ。世界と遊ぶ文芸誌『界遊』の元編集メンバー。大学在学中、フリー芸人として活動。プロの芸人を志すが親に泣かれたため公的な仕事に就き、現在無職。第三回京都大学新聞文学賞大賞。
https://twitter.com/yokaikinoko/
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