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『カゲプロ』作者じん ロングインタビュー 「大人を喜ばせてもしょうがない」

「カゲロウプロジェクト」じんさん

今年5周年を迎え、MX4D™専用の劇場版映画『カゲロウデイズ-in a day's-』が11月から公開されるなど大きな動きを見せる『カゲロウプロジェクト』。

プロジェクトを手掛けてきたじんさんは、今回はGARNiDELiAのメイリアさんらとバンド「GOUACHE」(ガッシュ)を結成し、映画の主題歌『RED』を発表した。


2011年、『カゲロウプロジェクト』は、じんさんがニコニコ動画に投稿した一つの動画から始まり、音楽、小説、コミック、アニメと様々なフィールドに広がった。

ミュージシャンと小説家の両方の顔を持つじんさんは、楽曲制作と小説執筆の両方を手がけ、「音楽×物語」による新たなエンターテイメントの形を生み出した。今も、特に若い世代に熱狂的なファンを多く持つ同作は、2010年代を代表するコンテンツの一つと言っていいだろう。

そんなじんさんが、今、新たにバンドを結成したのは何故なのか? そして、5年が経った今、「カゲロウプロジェクト」というプロジェクトを自身ではどう捉えているのか?

音楽について、小説について、そして「常に『これでいいのか?』という疑問があった」と振り返るテレビアニメ『メカクシティアクターズ』制作時の体験も含め、さまざまな角度から活動について語ってもらった今回のインタビュー。「大人を喜ばせてもしょうがない」と言い放つじんさんの哲学と美学に迫った。

取材・文:柴 那典 撮影:高比良美樹 編集:新見直

3年前に届いた「バンドをやらないか」という手紙

_I9C0014──GOUACHEというバンドの結成はどういうスタート地点から始まったものなんでしょうか?

じん 3年前に僕がライブをしたとき(2013年4月に開催された「ライブ・イン・メカクシティ」)、メイリアさんに「是非ゲストボーカルで歌ってください」とお願いをしたんですね。実際、出演していただいてすごくよかったし、僕自身も楽しかったんです。そうしたら終わった後にメイリアさんから手紙をもらって。そこに「バンドをやらないか」ってあったんです。

──きっかけはメイリアさんだったんですね。

じん そうなんです。でも、僕としては当時パーマネント(持続的)なバンドをやるというイメージはなくて、特に話も進まず。ただ、メイリアさんとその後もいろんな曲をつくっていく中で「バンドやりたいね」という話だけが悶々とあったんです。

──それが3年間続いていた。

じん 踏み切らない感じで、ウジウジしてました。メイリアさんにはGARNiDELiAの活動もあって、それもすごい大事にされてたので。「実際どうなんだろうね」「そもそもバンドってどういうものだと思ってるの?」という話から始まって、そこから今のメンバーが集まっていきました。

──メンバーは具体的にどう集まったんでしょう?

じん 最初にメイリアさんと僕がいて、まずもともと僕の曲のベースを弾いてくれてた白神真志朗さんに話したら「お前がやるって言うなら俺もやる」と言ってくれて。ドラムの伊吹(文裕)くんは同郷の北海道出身で、僕が初めてライブをやった15歳くらいの時の対バン相手のドラムだったんですよ。東京に来て親交もずっと続いてて。ギターのグシミヤギヒデユキさんは、ボーカロイドの活動の中で出会って気投合して。それでこの5人になりました。

──これまでじんさんがやってきた「ライブ・イン・メカクシティ」というライブは、あくまでカゲロウプロジェクトという物語があってのライブでした。それとGOUACHEの活動は違う位置づけですよね。

じん そうです。自分の中でも明確に違いますね。

──では「RED」という曲をつくるようになったきっかけは?

じん 僕はずっと小説を書いていたのもあって、劇場版の制作には関わってません。だから、「カゲプロの映画」というか、オフィシャルな二次創作、アンソロジーに近い感じですね。「その主題歌を書いてほしい」と言われて、いろいろ思ったことがありまして。

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『カゲロウデイズ-in a day's-』キービジュアル

前にアニメ『メカクシティアクターズ』の主題歌「daze」をやった時は「じん ft. メイリア」という名義だったんですけど、一つの鋭いテーマで曲をつくる時に「フィーチャリング」っていうのが個人的になんかイヤだったんです。「ft.〜」って付いていると、予防線を張ってるように見えてしまう。一本気なメッセージ、今抱えてる鋭い哲学をドンと打ち出そうとしているのに、僕が聴く立場だったら「それは誰の意見なの?」と思っちゃう。

──自分のプロジェクトとしてちゃんと旗印を打ち出したい、と。

じん そうですね。やっぱり何か言うんだったら、ハッキリ言いたい。レーベルの人からは「じん」という名前を出したいという意見もありましたけど、最終的には僕が無理言って「バンド名でいきたい」となりました

大人を喜ばせてもしょうがないって思った

──「鋭い哲学を打ち出したい」という、その哲学はどういうものなんでしょうか?

じん 今まで僕はストーリーを内包する曲とか、ギミックを通して自分の意見をパッケージングするようなことが好きで、そういう音楽のつくり方をしてきたんですね。でも、それじゃあ煮え切らない、もっとメッセージがみなぎった音楽をやりたい、と思ったんです。これまでは避けていたところがあったんですが。

──避けていた?

じん ある意味、そういう哲学って無防備なもので。飾ったら弱くなってしまうと思うんです。だから「鋭い」、一言で刺したい、という。

──これは僕の印象なんですが、「カゲロウプロジェクト」っていう作品の核心は、ある種のジュブナイル性というか、10代のときの悶々とした感じをいかに鮮やかに取り出すか、というところにあると思っています。

じん おっしゃる通りです。

──「RED」という曲もその核心は変わらないと思いました。

じん まさにそういう曲ですね。僕がつくるものはみんな、そんな感じなんです。童心というものがテーマになっている。大人を喜ばせてもしょうがないっていう思いが、どんどん大きくなってます。自分が大人になった今もそうなんです。

僕がそうなんですが、大人になると、音楽にしても、どうしても“ファッション”として聴いてしまう感覚があるんですよ。つい「これをしている自分が格好いい」というステータスで考えてしまう。でも、自分が子供の頃に音楽を聴いてた時は、そんなものではなかった。初めて観たものとか、初めて食べた味とかに鮮烈な印象があって、音楽もそういう風に感動していた記憶があって。だから僕としてはあの時の自分にガッと響くようなものをつくりたい。

それこそ僕にとってはTHE BACK HORNがそうだったんです。10代半ばでTHE BACK HORNを聴いて、歌詞の世界観やサウンドに救われたことがあった。今回の「RED」という曲は、そこにようやく手が届きそうになってきた手応えがあるんです。だからバンドとして、題材としてこの曲でよかった。

──どういう手応えが大きかったんでしょうか?

じん バンドで曲をつくろうということになって、歌詞の言葉も曲調も、ある意味無防備になれた。臆病じゃなくなった感じがあったんですね。「ああ、そうそう、俺、こういうバンドがやりたかった」っていう曲になった感じです。「やっぱりもっと早くバンドやればよかった」ってすごく思いました。

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