「ジュンク堂に住んでみる」ツアーで本屋に宿泊する貴重な体験をしてきた

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「ジュンク堂に住んでみる」ツアーで本屋に宿泊する貴重な体験をしてきた
「ジュンク堂に住んでみる」ツアーで本屋に宿泊する貴重な体験をしてきた
ナイトミュージアム、ナイトアクアリウム、ナイトサファリ……など、普段親しんでいる施設の「夜の姿」を見られるイベントが、近年増加しています。そんな中、丸善ジュンク堂書店が開催しているのが、夜の書店に泊まって蔵書を読むことができる「ジュンク堂に住んでみる」ツアー。

2014年から不定期に開催されているこのツアーは、抽選で数組だけが招待される限定イベント。第3回が週末の10月29日〜30日に開催されるという情報を聞きつけ、その模様をのぞいてきました。

臨場感を少しでもお伝えできるよう、時系列でレポートしていきます。

文:ひらりさ 編集:新見直

22:00〜 『ガールズ&パンツァー』爆音上映のかたわらで

これまでに霞が関のプレスセンター店、大阪の千日前店で開催されたジュンク堂の宿泊ツアー。今回の会場となったのは、今年の2月にオープンしたばかりの立川高島屋店。『劇場版 ガールズ&パンツァー』爆音上映のロングランで話題の映画館・立川シネマシティの横に位置しています。

高島屋のワンフロアを借りての営業ではあるのですが、なんと売り場面積は1,000坪、蔵書数は約100万冊

宿泊当日、集合時間に高島屋の裏手に集まり、業務用エレベーターをのぼると、縦にも横にも広がる無限の本棚が出迎えてくれました。 集まったのは、298通の応募の中から見事当選した「住人」のみなさん5組10名と、われわれのようなマスコミ参加者、そして協賛企業のみなさん。

なんと今回の滞在が快適なものになるように、Twitterでの公開コンペによって選ばれた12社もの企業が、さまざまな物資を提供してくれているのです。 自己紹介、オリエンテーションを済ませた参加者たちは、ひとまず荷物を置いておくレジャーシートのエリアへ。キングジムさんから提供されている「エアーマット」を膨らまし、福助さんから提供された「ルームシューズ」に履き替えて、リラックスしたスタイルになってから、本棚の物色に出発です。

23:00〜 まずはおそるおそる店内を探検

1000坪の売り場面積はあまりにも広大で、「自由に見て大丈夫!」と言われても、まだ落ち着かない様子のみなさん。エアーマットを設置して、どこの本棚前で寝そべって読書してもOKというルールになっていますが、ひとまずは立った状態でさまざまな本棚を物色するモードです。

書店側から「実況ツイート大歓迎です!」と言われていることもあり、本棚の前で自撮りしあっている方もいました。ちなみに、荷物エリアに充電ができるコンセントも用意されていて、いたれりつくせりです。 姉妹で参加している20代女性の方は「普段から本は読みますが、今日は美術書をじっくり読みたいです。美術書は大きくてかさばるのと、大きめの本屋じゃないと種類がないので」と語り、美術書の棚の方へ。

なるほど、せっかくなら私もいつもなら手に取りにくい本を見てみようと思いたち、児童書のコーナーへ。立川店は家族連れが多いということで、児童書や絵本のコーナーが充実していて、その表紙を見ているだけで気持ちが盛り上がってきます。

もともと気になっていたヒグチユウコさんの『ギュスターヴくん』、そして本棚のなかで特に存在感を放っていた山本美香さんの『これから戦場に向かいます』をカゴに入れます。

『ギュスターヴくん』

なお、今回のツアーで読んでいいのは、シュリンク包装されていない本のみ。というわけでコミックコーナーは眺めるだけでしたが、『ガールズ&パンツァー』関連書籍にフィーチャーしたコーナーなど、地域色の出ている棚もあり、通り過ぎるだけで楽しめました。

0:00〜 歩けども歩けども本棚がなくならない

「最初に店内を一通り回って読む本を決めよう」と考えていたのに、店内が広すぎて一向にまわりきらないという、つらいけどしあわせな状況に陥ってしまった深夜0時。

コトブキシーティングさん提供のとっても座り心地のいい椅子に腰掛けて、現時点で手にとっている本を読むことに。

特に惹き込まれたのは、特設コーナーに平積みされてあった『アート・オブ J.C.ライエンデッカー』。世界史の教科書で見覚えがあるくらい有名な、アメリカン・イラストレーションの旗手ライエンデッカーのイラストがこれでもかと収録されています。

1:00〜 店長、おつかれさまです

3冊読んだらさすがに目がしょぼしょぼしてきたので、眠気覚ましにふたたびカフェエリアへ。ふと店内を見回すと、次第に寝そべりだす人が現れました。みんなくつろぎながら思い思いの本を読んでいて、本当にジュンク堂に住んでいるかのようです。 私もどこかに陣取ろう!と思って店内探検を再開したところ、店長の下田さんに遭遇。

もともと池袋本店で美術書の棚を担当していたという下田さんは、立川店オープンとともに店長に就任。新店ということで、まずは地域のお客さんに愛してもらえるよう、地域密着型のイベントをいろいろと行っているそうです。

下田店長

特に好評だったのが、立川を舞台にした『聖☆おにいさん』新刊発売時の企画です。位置情報ゲームのIngressともコラボして、『聖☆おにいさん』にまつわるスポットをまわり、Ingressのミッションを達成すると、立川店で『聖☆おにいさん』の描き下ろしイラストが手に入るというイベントを開催しました。2日間で配る予定だったイラストが初日にはなくなってしまいましたね

現在は立川発のサブカルチャーイベント「立川あにきゃん」の開催にあわせ、『バーナード嬢曰く。』の複製原画展を実施中。

ところで……もしかして、今日は徹夜かつスタンディング勤務ですか?

そうです……でも、いつもよりもお客様とじっくり話すことができて、みなさんが本を楽しんで読んでいる姿を眺められるので、つらくはないです!

おつかれさまです……!

2:00〜 大量のBLに囲まれて

さすがに眠くなってきたので、着る布団を身につけ、エアーマットを持って店内を徘徊し、どの本棚の前で寝るかを検討。 迷った末に私が選んだのは……コミックコーナーの「BL」(ボーイズラブ)の棚。シュリンクがかけられているので今回のお泊りで読むことはできないが、大量のBLの横に寝転がれるというだけで異常にアドレナリンが出る!気がしました ゴロンと寝転がって読むことにしたのは、フェルナンド・イワサキの『ペルーの異端審問』。もともとは著者が博士論文を書くために16〜17世紀のペルーのリマでの異端審問の記録を集めたものから生まれたらしいのですが、とにかく「夢魔に憑かれた女の懺悔を聞いた司祭たちが聞いているうちにムラムラしちゃってその女とやっちゃってアウト」みたいな話ばっかり。BL棚の前でぐうたら読むにはうってつけの本でした。

3:00〜 昨日寝だめしておくべきだった

『ペルーの異端審問』を一息に読んだら、いよいよ眠くなって頭が働かなくなってきました。『世界の文豪の家』、『わかってほしい』など、あまり文字の多くなさそうな本をせめて斜め読みしようとするけど、全然頭が働かない……。

4:00〜 もっと起きていたかったけど……

結局コンタクトレンズを外して就寝することに。しかし、住人の中にはこの時間になってもまだ本棚の海を歩き回り、新たな本を探している人が。タフだ……。

とはいえ、さすがに睡眠しはじめた人が増えてきたようで、フロアの電気が1段階暗くなりました。

5:00〜

スヤスヤ……

6:00〜

グッスリ……

7:00〜 あっという間に終わりが近づく

返却台

……というわけで、3時間寝たところで起床。借りていた本を返却台に置き、カフェに向かうと、コーヒーがふるまわれていました。コイケヤのポテチとギンビスのアスパラガスを食べつつ、周りの住人の方とお話。

母親と一緒に来たという20代前半の女性、なんと6時半まで起きていたとのこと。

すごく楽しみにしていたので、昨日十分に睡眠をとっておいたんです。5冊くらい読んだんだけど、文房具の本が好きで、『ふせんの技100』とかおもしろい文房具の本をいろいろと知れたのがよかったです

『ふせんの技100』

一方、美術書を物色していた女性は、レジで英語の本を購入していました。

美術書も気にはなったのですが、いつもは手に取らない英語の発音の本を読んでみたらおもしろかったので、買うことにしました。自分だけでは気づかなかった本に注意を向けたり、店員さんにいろいろおすすめを聞いたりしながら本を選ぶことができたので良かったです

8:00〜 今日から「丸善ジュン区」の民

いよいよ全員が集合し、まとめの時間です。

完徹できたという人は、10人中3人。「読み足りない!」とちょっと後悔している人も少なくありませんでした。もっとも、もともと「3冊以上お買い上げ」が条件ということで、この一晩で数冊を読み切る!という読書の仕方ではなく、多めに流し読みした中から興味を持った本をレジに持っていっている方が多いように感じました

「読書って頭を使う行為だから、本当は徹夜に向かないよね」と笑っていたのは、ご夫婦でいらしたという40代男性。それでも、「今回は娘を家においてきちゃったから、もしまた参加できるなら、娘と来たいなあ」などとも語っていました。

そしてツアーのクライマックスは、「住民票」の配布。

住民票を配布中

そう、このツアーに参加してジュンク堂に住んでみた人には「丸善ジュン区」の住民票がもらえるのです! 私も「ひらりさ」名義で発行してもらいました。

店長 本日は誠にありがとうございました。ツアーを開催して、本屋の仕事をやっていてよかったなと改めて思いました。僕自身、人生のうちの長い時間を本屋で過ごしてきましたが、今回のツアーはとても励みになりました。みなさんが今まで以上に本を買ってくださったらうれしいです。今後もご贔屓にしてください

店長あらため丸善ジュン区長となった下田さんからの挨拶に、私までジーンとしつつ、たくさんのお土産をかかえて、 お店を後にしたのでした。

ツアーを終えて……

というわけで、たっぷり時系列でお届けしてみましたが、いかがでしょうか。
自分が参加者の方にまじって「住んでみた」体験をしてみて思ったのは、

・普段本屋をぶらぶらしているときは、どうしても見ている棚が偏っている
・一晩あっても100万冊はチェックできない!
・1,000坪を真剣に歩くとめちゃくちゃ疲れる(翌日レポ記事を書こうと思っていたのに爆睡しました……)
・本屋さんはピカピカに磨き上げられていて、寝っ転がってもゴミも落ちていない
・来店したすべてのお客さんに出会いと発見がもたらせるように、書店員さんはさまざまな点に気を配り、つねにいろいろなフェアを行っている

といったことでした。

みなさんも、実際に泊まらずとも、ぜひ一度ゆっくりと本屋の中を散策し、ふだんはスルーしていた棚や、自分には関係ないと思っていたコーナーなどの前で足を止めてみてはいかがでしょうか。

※記事初出時、本文に誤りがございましたのでお詫びして訂正いたします
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