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超弩級インターネットフェス「ニコニコ超会議2」で一体何が行われていたのか?

《ニコニコ動画のすべて(だいたい)を地上に再現する》

(「ニコニコ超会議」のコンセプトより)

2013年4月27、28日の二日間に渡って開催された「ニコニコ超会議2」。ニコニコ動画やニコニコ生放送などを擁するniconicoが開催する「ニコニコ超会議」は2012年に第一回目が開催。総来場者数はなんと初回にして9万人を越えたにも関わらず、赤字額は4億7000万円にものぼったことでも話題となった。その赤字額のあまりの大きさからか、主催であるドワンゴの株価も一時的に下落。そのため次回の開催は4年後(オリンピック周期)、あるいは10年後などと巷では噂されていたが、ユーザーからの強い希望もあってか、無事に2013年も開催される運びとなった。

そして、蓋を開けてみると2日間での会場来場者数は10万3561人。参加者のマナーをはじめ様々な問題点が指摘されつつも、一つのWebサービスが10万人規模のユーザーをイベントに動員させたという、世界的に見ても類のない快挙となったのは間違いないだろう。また、イベントの模様はネットからも生配信され、そちらの視聴者数は509万4944人と、リアル/ネットの双方ともとてつもない盛況だったことは数字から見ても明らかだろう。

しかしながら、実際に足を運んでいない人、ニコニコ動画やニコニコ生放送が生み出し、日々ユーザーがつくり出している文化に詳しくない人にとって、「ニコニコ超会議」で一体何が行われているのか、まったく理解ができない人も多いと思う(その催し物やコンテンツ、出演者、出展企業、参加者の多さから、ある程度詳しい人間であってもその全貌を把握するのは困難ではあるのだが……)。

会場案内をしてくれる運営さん声を張って誘導してくれていた運営の方

開催終了から数日が経ったということで、当日参加した編集部の目線から「ニコニコ超会議2」で何が行われていたのかをレポートしたい。当日行けなかった人、興味があるけどなんか怖い、なんか気持ち悪りい! と思っている人にこそ面白さが伝わる記事になればいいなと思って書きます。膨大すぎる全貌の一部分でも伝われば良いかと。

① 企業から政党、痛車までが無作為的に展開 展示ホール1,2,3

まず、入場者が足を踏み入れるのがここ。GRRE、日本マイクロソフト、Yahoo!といったIT企業から、アニプレックス、マジック:ザ・ギャザリング、バンダイナムコゲームス、グッドスマイルカンパニーいった時代を牽引するオタクコンテンツ系の企業、はては民主党、共産党、日本維新の会などといった政党までが参加している。そのどれもがユーザー参加型の企画や、イベント限定グッズの販売などを行い、閑古鳥の鳴いているようなブースはほぼなかった。

さらに「BLUE STAGE」と呼ばれるエリアでは世界20カ国以上からコスプレを競い合う「世界コスプレサミット」の代表選考会も行われ、中川翔子さんらによるラジオの公開生放送や、バンド演奏なども行われた。のっけから全力を投入しているところが、なんともニコニコらしい。
JOYSOUNDブースJOYSOUNDブースでは飛び入り参加OKのカラオケ大会が開催。有名な歌い手なども参加し、会場を盛り上げていた。ちなみにJOYSOUNDのランキング上位をボカロ楽曲とアニソンが占めているのは有名な話。
奇怪な生物ふつうの展示系のイベントに比べ、やけに着ぐるみの多さが目立った。こんなのがうようよしている。
痛車1-GUMI一画では痛車の展示も行われていた。
痛車2-ガールズ&パンツァー飛ぶ鳥を落とす勢いの「ガールズ&パンツァー」の痛車。戦車じゃないけど、戦える。

その他、小説家・夢枕獏さんによる公開執筆等、もはや「ニコニコ動画」なんてあんまり関係ないような企画まで展開されていた。夢枕獏さん曰く、インターネットユーザー/デジタルネイティブに直筆で原稿執筆する最後の世代の姿を見せたい、とのことで、超会議運営の粋な計らいがうかがえた。

というのも、まず会場となった幕張メッセのある海浜幕張駅で降りて気付いたのは、10代の圧倒的な多さだった。高校生、中学生が主な客層だったように思う。2006年に「ニコニコ動画」がリリースされてからというもの、常に新規ユーザーの取り込みに成功してきた結果だといえるだろう。例えばVOCALOID文化───近年だと初音ミクはもちろんだが、じん(自然の敵P)さんを中心としたIA PROJECTも若いユーザーから強く支持されている。そういった来場者にあえて異質なものを提供するような設計もなされているように感じる部分があった。

② 超密度のコスプレ〝路地〟

展示ホール1,2,3を抜けると、次のホールに抜けるための屋外通路に入る。ここは「コスプレ撮影推奨区」になっていて、多くのコスプレイヤーや彼らを撮影するカメラマンさんで溢れかえっている、
詳しくは下記の記事にまとめさせていただいたが、このレポートでもいくつか写真を掲載させていただく。

カリスマコスプレイヤーのくろねこさんがニコニコ超会議に降臨していたのでインタビューしてみた!
【ニコニコ超会議2】一日目 ミクさんコスプレ写真大集合させてみた
【ニコニコ超会議2】コスプレ写真をノンジャンルでまとめてみました
【ニコニコ超会議2】企業ブースのコスプレコンパニオンさんの写真をまとめてみた
ボカロジェンヌのやまさん「ボカロジェンヌ」として活動するフランス人レイヤーのやまさん。
青鬼コスカルト的な人気を誇る同人ゲーム「青鬼」の青鬼さんコス。相当インパクトがありました。

ボカロジェンヌのやまさんの写真を見ていただけると分かるが、「ニコニコ超会議2」宛のお祝いの花も見物だった。なぜか世界最大の無脊椎動物・ダイオウイカさんやプロレスラーの武藤敬司さん、きゃりーぱみゅぱみゅさんや巨匠・宮﨑駿さんにいたるまで、人外から日本国内の各界著名人・文化人からの花のオンパレードだった。「カルチャーの中心はここなのか!」と叫んでらっしゃる方もいた。


コスプレの比率としては、やはりVOCALOID関係や東方関係は人気があり、中でも初音ミクについては、2012年にGoogl eChromeのCMをはじめテレビ露出も増え、さらにその人気は普遍化し、「マカンコウサッポウ」が行えるほどの数だった(四方にふっ飛ぶミクの図)。
初音ミクさん's-による「マカンコウサッポウ」初音ミクさんズ による「マカンコウサッポウ」を激写!

③ ニコニコ文化の島宇宙的空間、展示ホール4,5,6

ここからがいよいよ本番。ニコニコ運営が企画するブース群が並ぶ展示ホール4,5,6に入っていく。
ニコニコ動画、及びニコニコ生放送には「タグ」と呼ばれるコンテンツ分類のための機能があり、そのそれぞれのタグやカテゴリー分類の中で、日々様々なコンテンツが投稿され、同時にそれらのコンテンツを楽しみ、コミュニケーションし、また生成するというユーザーコミュニティが形づくられている。そのユーザーコミュニティをリアルの場へと再現したのが展示ホール4,5,6における各ブースということになる。つまりは「ニコニコ超会議」のコンセプトをストレートに表現しているのがこのホールだ。

例えば、「超踊ってみた」は《踊ってみた》のカテゴリ、「超のど自慢from歌ってみた」は《歌ってみた》のカテゴリ、「超ニコニコ言論コロシアム」は《言論》のカテゴリ、「超囲碁・超将棋」は《囲碁・将棋》のカテゴリ、「超ニコニコ学会βシンポジウム」は《研究発表》のカテゴリといったように、ニコニコ動画・生放送上で日夜行われているコミュニティ内の活動を現界させたのがこのホールの特徴だ。もちろん、それらほぼすべてがユーザー参加型のブースだった。
超囲碁・超将棋ブース-電王戦超将棋ブース。コンピュータVSプロ棋士という歴史的な対局を実現させた「電王戦」が記憶に新しい。当日は実際にプロを打ち負かしたコンピュータとの対戦や、プロ棋士との対戦を申し込むことができた。

中でも盛り上がっていたのが、「超のど自慢from歌ってみた」ブース。場内でもとびきり大きいステージと音響が備えられたステージに、ユーザーが抽選で登壇し、歌を披露するというもの。「歌ってみた」といえば「ニコニコ超会議2」が開催されるほんの数日前にとある事件が起きたばかりではあったが、他のブースを圧倒する盛り上がりで、このジャンルの人気の高さをうかがわせた。歌われるのはニコニコ動画でおなじみの楽曲ばかり。2日目のフィナーレではレミオロメンの「粉雪」の大合唱が行われ(100人以上ステージに上っていたと推測される)、よもや想像がつかないかもしれないが、「感動的」に締めくくられた。

超会議全体の中でも最高に盛り上がってた歌ってみたブース 超会議-超歌ってみた なぜかこのホールでは自衛隊もブースを出展していて、戦車の展示や試乗(さすがに動かない)や鉄の溶接体験なども行われていた。

自衛隊ブースにこやかに撮影に応えてくれた自衛隊の方。鉄、溶接したかった!

④ サプライズ演出 兄貴こと〝ビリー・ヘリントン〟や著名人の大名行列

ニコニコ超会議の開催中、ブース以外にも様々な突発的なイベントが各所で開催された。仮釈放されたばかりの堀江貴文さんが各ブースに顔を出す「ホリエモンクルーズ」が行われたり、GACKTさんなどの著名人が黒服のSPを連れて練り歩いていた(公式サイトにも載っていない情報なので、完全にプライベートで来場していたのかもしれない)。特に盛り上がっていたのが、アメリカの元ポルノ男優・ビリー・ヘリントンさんが突如出現し、大所帯で会場内を練り歩く「ビリークルーズ」だ。ビリーさんはニコニコ動画では「兄貴」との愛称で親しまれ、彼が出演する映像作品が様々なMADに使用され、その人気の強さからフィギュア化までされている人物。
アニキ!-アニキ!-アニキ!-と鳴り止まないコール東京の満員電車が生易しく感じるような混雑の中心にいる人物が、ビリー・へリントンさん。
アニキ人気の凄まじさ「アニキ!アニキ!アニキ!」とコールが鳴り止まない
出発!ボディーガードとクルーズ隊を連れ、会場内へと突入する瞬間。ビリーさんの気合いが凄まじい

「ビリークルーズ」で彼と一緒に練り歩く人は事前に応募が必要で、屈強な精神を持っていること(ニコニコ動画では「歪みねぇ」精神と呼ばれる)が採用の条件となっているようだ。クルーズ隊員は彼の命令によって、その場で腕立て伏せを命じられるなど、その行動原理はハイコンテクストすぎて、とにかく意味不明だが、一目で分かるテンションの高さとほとばしる熱量にみんな自然と笑顔になっていた。

本当に様々な場所でサプライズ的な演出がなされていて、前述したJOYSOUNDブースではなぜか作曲家のサンプラザ中野くんさんも登壇。
サンプラザ中野くんさんがJOYSOUNDブースにサプライズ出演 広い会場のそこかしこで、こういった突発的な「降臨」が行われ、おそらく運営ですらそのすべてを把握していないのではないかと思われるが、Twitterやニコニコ動画上では常に目撃情報が垂れ流されて話題となり現場の来場者にも周知されていった。こういった仕掛けもインターネットとリアルという二つのメディアを組み合わせた試みとして、非常に有効だった(一昔前に流行した「フラッシュモブ」的な面白さがある」。とにかく撹拌され、掌握不可能な情報量にまみれる、というのがニコニコ超会議の楽しみ方で、その複雑性こそがニコニコ文化に明るくない人でも「なんか楽しい気分になっちゃう」由縁だろうと思う。

⑤ 混沌の最終地点 展示ホール7,8

RedStage蒼井エイルさんのライブアニメ『Fate/Zero』のEPで一躍有名になった藍井エイルさんのライブ(撮影禁止のため写真は公式素材)

最後のホールこそ、そういった「ニコニコ超会議」のカオス性と膨大さを象徴するような場所になっている。同人即売会の「THE VOC@LOiD M@STER(ボーマス)」や「文学フリマ」そして「博麗神社例大祭」がそれぞれ「超」の名を冠されつつ併催され、日本カルチャーのコアな部分と大勢かつ多ジャンルの同人作家が一堂に会するほか、その横目ではBiSやアップアップガールズ(仮)といった最前線をひた走るアイドルユニットのライブ、さらにsasakure.UKさん、八王子Pさん、DJ'TEKINA//SOMETHING a.k.a.ゆよゆっぺさん、emonさんといったボカロPのDJまで行われ、並の音楽イベントの追随を許さないフェス空間となっていた。なんと国民的アイコンのガチャピン&ムックまで出演。なんでもあり、もここまで極まっていると潔さすら覚える。
超ボカニコ村 「超文学フリマ」には、世界一即戦力な男・菊池良さんも出店側として参加していた。当日、奇跡的にインタビューも行うことができたので、下記記事を参照して欲しい。
LIGに入社したあの世界一即戦力な男・菊池良、ニコニコ超会議に現る!

世界一即戦力な男・菊池良さん(二代目水嶋ヒロ)菊池さんと「サカナクション最高Yシャツ(3000円)」。彼のアンニュイな表情に虜の女性も多いようだ

そろそろ総括したいけど

編集部が二日間取材させていただいた「ニコニコ超会議2」。ここまで書いた通り、人間の認知限界を完全に上回る「超」祭りだったのは間違いない。すでに各所に多くのレポートがあがっていると思うが、いずれも全容を包括したようなものはなく、断片にとどまっている。このレポートも例外ではなく、一部分しか拾い上げることができなかった。

CGM(Consumer Generated Media)、UCG(User-Generated Contents)と呼ばれるメディアや新しいコンテンツの登場からすでに長い時間が経ち、それらが表舞台や従来の商業のシーンに姿を現すのは当たり前となっている。だがこうも意図的に、このような規模で、しかも1サービスがこのような祭典を実現できるのは前例がない。それが喜ばしいことだし、ユーザーとしてはこれ以上の発展形を望んでしまうけれど、来年の「ニコニコ超会議3」ではどうなっているのか、まったく想像がつかない。
「ニコニコ超会議3」開催決定!!

これまで目に見えなかった、あるいは外部からみれば閉塞的なコミュニティに見えたネット文化だが、いざリアルの場所へ顕現してみせると、そのどれもが凄まじいパワーを持っていることに驚かされた。これまで意識することのなかった自分の知らない他分野の文化の盛り上がりや面白さを垣間みる上で、「ニコニコ超会議」はなによりも優れたイベントだったのは間違いないだろうと思う。
運営より終了間際、運営さんがメッセージを書き込んでいた
「ニコニコ超会議2」で一体何が行われていたのか? というタイトルを付けさせていただいたけれど、「ネットで行われてるだいたいすべての事が行われていた」という回答が、遠からず近からず、当てはまるのではないだろうか。超規模、超情報量、超熱量に打ちのめされたい方は、是非とも来年の「ニコニコ超会議3」に足を運んでみてほしい。いままで理解できなかった世界を知ることができるきっかけになるはずだ。

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