【ニコニコ動画】【OSTER project】アルバム「Recursive Call」【クロスフェード】
OSTERさんと言えば、ボーカロイド黎明期を代表する一曲「恋スルVOC@LOID」が190万再生を突破するなど、ボカロPとしての活動と知名度は言うに及ばず、一方で2014年には、コナミのレーベル・beatnationから推薦された若手コンポーザー集団・beatnation RHYZEに加入。beatmania IIDXをはじめ、BEMANIタイトルに数多くの楽曲を提供している。
今回、同じくbeatnation RHYZEに所属するアーティスト、P*LightさんとHommarjuさんを迎え、BEMANIやインスト音楽についてなど、3人でざっくばらんに語っていただいた。音ゲーとの出会いから、「中の人」のプレイ事情、インスト曲に対するこだわりなど、話は多岐に展開。
そして、古参インディーズ音楽配信サービス「muzie」時代の楽曲の新録を含め、「原点回帰」を意味するアルバムに込められたOSTERさんの思いとは──?
取材・文:けいろー 撮影:市村岬
OSTER project「小6でDDRにハマった」
OSTER project(以下「OSTER」) それぞれ会うことはあるけど、この3人でこうやって話すのって初めてだよね(笑)。P*Light 確かに! 1年くらい前にイベントであって以来かも。
──今回は、「beatmania」(以下「BEMANI」)にゆかりの深いアーティストを集めたレーベル「beatnation RHYZE」で活動されている3人をお呼びしました。それぞれ、「BEMANI」との出会いはいつだったのでしょうか?
OSTER 私は小学6年生のときでした。初めてプレイした音楽ゲームは、BEMANIシリーズの「DanceDanceRevolution」(以下「DDR」)ですね。友達が家庭用のDDRを持っていて、やらせてもらったらハマって。それで、DDRのためにプレステを買ったんです。あのマット型の専用コントローラーも一緒に(笑)。
中学に入って、ゲームセンターでもプレイするようになりました。高校では友達が「『弐寺』※1っていうのがあるんだよ」って勧めてくれて、それが本家BEMANIとの出会いになります。私は負けず嫌いだったからその日から本気でプレイして、一週間くらいで友達を抜いた記憶があります(笑)。
※1 弐寺:「beatmaniaIIDX」の略称
家庭用のBEMANIで初めて買ったのは、「beatmania 6thMIX」でした。そこから昔の作品を遡ってプレイするようになって。私、こう見えて家庭用派なんですよ。アーケード版だと皿の距離が違うし、視界が近すぎるので、ゲーセンでプレイするときはこう…体は離して…腕を伸ばしてこうやって……(筐体に向かうジェスチャー)。
(一同、笑)
OSTER 音楽をつくり始めたのも、13・14歳くらいからです。DDRとかに収録されている音楽を聞いて、自分で耳コピするところから始めました。そのころから作曲が楽しくて、オリジナル曲もつくっていたのですが……変な趣味ですよね(笑)?
P*Light DDR以外だとどんな音楽を聞いてたんですか?
OSTER J-POPも普通に聞いてましたけど、特に多かったのはクラシックです。ネット上にクラシック曲のMIDI音源を載せているサイトがあったので、そこで打ち込みのスキルを磨くことができたというのもあるかも。MIDIを自分のシーケンサーで開いて、「こうなってるんだ」と音のつくり方を学んでいきました。
あと、BEMANIではいろいろなインスト曲を聞くことができたので、そちらの影響も大きかったかもしれません。当時からオリジナルのインスト曲をつくっていましたが、そういえばボーカル曲はほとんどノータッチでしたね……。歌ものに関しては、ボーカロイドと出会ってから初めて形にしていったんですよね。
「10th」で受けたBEMANIの衝撃
P*Light 僕の場合は、BEMANIについては小学生の頃は「知ってる」程度で、その頃は友達とゲーセンには行かなかったし遊ぶような機会もなかったんです。中学は真面目に部活をやっていたので、ちゃんとアーケードゲームとしてをプレイしたのは高校生になってからです。自分でお金を払って初めてプレイしたのが、ナンバリングで言うと「beatmania IIDX 10th style」。そこからはOSTERさんと同じで、現行の機種を追いながら過去作品を遡ってプレイしていました。
──P*Lightさんが楽曲制作を始めたのはいつですか?
P*Light もっと後になってからですね。時期も、OSTERさんと比べるとかなり後になりますね。それこそ2007年くらい……?
OSTER そうなんだ! じゃあ、本当に「ニコニコ動画」のβが出て(初音)ミクが発売された年だよね。
P*Light まさにちょうどその頃だったと思う。中田ヤスタカさんが注目され始めた時期で、パソコン1台あれば音楽がつくれる恵まれた時代になっていて。もともと周りにバンドやってる友達が多かったんですが、しがらみとかがめんどくさそうで、やるなら一人でできることを、って思っていたんです。
P*Light Live at SPEED BALL EVOLUTION RELEASE PARTY
Hommarju 僕も小学生ですね。家庭用の「5鍵」※2と呼ばれる一番最初の作品を買ったのが始まり。最初は友達と一緒に遊んでいたんだけど、徐々にみんな興味がなくなって僕だけが一人残るという……。アーケード版があるのも知ってはいましたが、近くにゲーセンがなかったんですよ。だから、しばらくはずっと家でやっていました。
※2 5鍵:前述の「弐寺」こと「beatmaniaIIDX」以外の「beatmania」シリーズを主に指す。鍵盤(ボタン)が5つあることから
その後、ゲーム自体から離れていたんですが、高校の通学路の途中で見つけたゲーセンにふらっと入ってプレイしてみたら、収録されている曲がめちゃくちゃかっこいい。僕は「9th」だったんですが、「なんだこれ!」って驚いたのを覚えています。その曲に出会った結果、BEMANIの虜になりました。
自分の曲なのにクリアできない!
──OSTERさんは中学でゲーセンに通っていたとのことですが、同世代に女性のBEMANI好きっていましたか?OSTER 女の子の友達とプリクラを撮りに行くことはありましたけど、私の周りで音ゲーをプレイしている子はほとんどいませんでした。一緒にプリクラを撮ってみんながワイワイ落書きしてる間に、私は筐体の前でビートを刻んでいました(笑)。
P*Light 「プリクラ切っといてー! わたし、BEMANIしてるからー!」って(笑)。
OSTER それだけハマってたよねこっちは(笑)。学生時代は、一人でもゲーセンに行ってプレイしていましたけどね。
しばらくプレイしないと、怖くて人前でできなくなっちゃうんですよ。「絶対下手になってるな」というのが明らかなので……。
P*Light 僕も、最近はゲーセンに行くとしても、遊びに行くというよりは、プレイヤーさんが「どんな曲をプレイしているのか」をリサーチするために足を運ぶようになりました。あと、自分の曲が収録されたら「どんな聞こえ方をするんだろう」とか、「ゲーム上ではどういう譜面になっているんだろう」とかをチェックする。
OSTER 自分の曲をやってみたらクリアできなくて、すごく悲しい気持ちになったことが……。
P*Light だいたいそうなる(笑)。
Hommarju 自分で作曲しても、ゲーム上でどういう譜面になっているか、までは想像しかできないからね。
この記事どう思う?
関連リンク
OSTER
トラックメイカー
作詞、作曲、アレンジからサウンドプロデュース、さらに映像制作までをもこなす、マルチクリエイター。
2007年からニコニコ動画にオリジナル楽曲を投稿。「恋スルVOC@LOID」(190 万再生) をはじめ、多数の" 伝説入り楽曲"(100 万再生以上) を発表し続けている。
ボーカロイドブームのパイオニアとして現在でも不動の人気を誇る彼女だが、beatmania IIDXなど数々の音楽ゲームへの楽曲提供、TVアニメ主題歌のプロデュースなど、その活躍は多岐に渡る。
近年では、aikoのシングル表題曲のアレンジャーとして連続で抜擢されるなど、その音楽センスに対する評価はさらに急上昇中である。
Hommarju
トラックメイカー
楽曲制作やDJとして活躍する日本のクリエイター。「beatmania」シリーズはじめ、「SOUND VOLTEX」や「REFLEC BEAT」など、様々な音楽ゲームへ数多く楽曲を提供している。
2006年にdj TAKAが中心となって設立したbeatnation Recordsの中でも、気鋭の若手コンポーザーを集めたレーベル「beatnation RHYZE」に、OSTER projectやP*Lightと共に所属。
P*Light
トラックメイカー
2007年から本格的に音楽制作を開始。トラックメイカー、DJ、リミキサー等、活動は多岐にわたる。
「形に囚われない、ポップで透明感のあるサウンド」をコンセプトにHAPPY HARDCORE、UK HARDCOREを中心に制作しており、一度聴いたら忘れないキャッチーでポップな唯一無二のP*Lightサウンドを生み出している。
また、自身のレーベル「pichnopop」での精力的なリリース、KONAMI BEMANIシリーズへの楽曲提供の他、beatnation RHYZE、HARDCORE TANO*Cでの活動等、今後の活躍が益々期待されている。
0件のコメント