漫画家・藤田和日郎さんによる『からくりサーカス』がTVアニメ化され、10月11日から放送をスタートした。
原作は小学館『週刊少年サンデー』で1997年から2006年まで連載。独特のダークな雰囲気を備えつつも、魅力的なキャラクターによって熱く壮大な物語が繰り広げられる少年漫画らしい魅力溢れる作品で、漫画好きの中でもオールタイムベストに挙げられることも多い。TVアニメ『からくりサーカス』第3弾アニメーションPV
文字通りの名作が完結から10年以上の時を経てアニメ化するとあって、発表当時は大きな反響を集めた。
多くはアニメ化を喜ぶものだが、心配の声があったことも事実だ。特に“単行本43巻に及ぶ壮大な作品を36話という尺でどう描くのか”という点については、熱心な原作ファンを含んで議論となり、原作者である藤田さんが直接言及するほどだった。
今回は放送に先駆けて開催された「プレミア先行上映イベント」をレポート。
植田千尋さん(才賀勝役)、小山力也さん(加藤鳴海役)、櫻井孝宏さん(阿紫花英良役)のメインキャストに加え、シークレットゲストとして藤田さんも参加し、実際にアニメ1話を見たファンの前で制作の裏側と名作のアニメ化に挑む意気込みを語った。
原作のファンであり生粋のアニメオタクでもある筆者から見て、アニメの1話はパーフェクトと言える出来だった。
『からくりサーカス』の魅力である人形によるバトルはハイクオリティな作画で描写され、原作においては漫画ならではの方法で表現されていた部分はアニメ化にあたって問題なく再構築されていた。 特に心を打たれたのは声優陣による熱のこもった演技だ。林原めぐみさんによるしろがねはまさしく完璧で、原作ファンならイメージにピッタリと思うに違いないだろう。
加藤鳴海は小山力也さんが演じるキャラクターとしては歳の若いキャラクターだが、大ベテランの演技力によってコミカルなシーンも熱いシーンも感情豊かに表現されており、優しく力強く勝を導く存在として仕上がっている。 そして才賀勝を演じる植田千尋さんは、アニメ初出演にも関わらず、まったく違和感や粗さを感じさせず、運命に翻弄される少年を見事に演じきっていた。
再三述べるが、ハイクオリティでありながら、物語として引きもあるまさしくパーフェクトな1話だった。そう感じたのは筆者だけではなかったようで、上映が終わると会場からは大きな拍手が巻き起こった。
小山さんは派手な柄シャツにバンダナという鳴海を意識したファッションで登場し、軽快なステップを繰り出すと会場の笑いを誘った。
それぞれ役に選ばれたときの気持ちを聞かれると、オーディションによって2500人以上の中から選ばれたという植田さんは、「緊張を感じながらも大役に選ばれたことで気合いが入った」と前向きな心境を語った。 小山さんは『うしおととら』に続いて、藤田作品への出演となっており、加藤鳴海という役については「“とら”に比べれば18歳ですよ?!」と、前作で演じた妖怪との年齢差に驚愕したという。
櫻井さんは阿紫花のことを「あまり経験のないダーティな役どころ」と評し、妖しい魅力に溢れるキャラクターと感じたという。
続いて現場の様子についての話題へ。「基本的には和気あいあいとしつつも、アフレコが始まると一気に空気がピリピリする」と植田さん。
ほかにも同じシーンの多い林原さんと仲がいいことや、ステージ狭しと動き回っている小山さんが現場では非常に寡黙なことなど、共演者についても明かしてくれた。 そんな植田さんについて櫻井さんは「勝手のわからないアニメの現場でだんだん空気をつかむようになった」と順応力の高さを称える。
小山さんも「植田さんの成長と共に、現場もいい空気になっている」と、現場での空気をつくり出す様子について言及。2人とも植田さんを高く評価をしていることがうかがえた。
注目ポイントである「壮大な原作をどこまでアニメで描ききるのか」については、最初こそ途方に暮れるかと思ったが、「俺が途方に暮れてちゃいけない」と奮起。自身と同じくシリーズ構成を担当した井上敏樹さんと共に、9年分の物語を36話に再構成していった。
制作チームに対しては、藤田さんが「このシーンは絶対に入れたい」という意見を伝えている。「みなさんそれぞれ好きなシーンはあると思いますが、おおむね入ってます」と自信をのぞかせた。 一方で、主人公である勝や鳴海のシーンに比べ、「阿紫花については“見たかったあのシーンがない”ということもあるかもしれない」と、正直に語る場面も。
それでも「単なる(シーンの)カットじゃなくて、想いを込めた再構成」と説明。原作者として、魂を込めて再構成を施していると宣言した。
植田さんの印象について話が及ぶと、アフレコ現場を見学に行った際に、彼女の演じる姿を見て「声優は俺にはできない」と痛感。
その理由を「漫画家と違って声優は修正の指示に対して、その場ですぐ対応しなくてはならない。しかも他のキャストやスタッフに囲まれながら」と、現場の過酷さを目の当たりにしたそうだ。
林原さんも『うしおととら』に引き続きの藤田作品への出演となっており、「続投できて幸せ」とキャスティングされたときの喜びを語った。
最後は、情熱あるキャストとスタッフによって、スタジオは緊張感の漂う非常にいい空気になっていると言い、そんなスタジオの空気ごと味わってほしいとメッセージを締めくくった。
そんな林原さんについて藤田さんは、一発目のセリフでもうこれしかないと確信。「まさに理想のしろがね」と太鼓判を押す。 続いて追加キャストとして、才賀正二役の田中正彦さん、才賀善治役の大塚明夫さん、ルシール・ベルヌイユ役の朴璐美さんが発表された。物語上で重要なポジションのキャラクターをベテラン声優陣が演じるとあって、発表のたびに会場からは大きな歓声が上がった。
なかでも才賀善治はかなり凶悪なビジュアルが添えられており、藤田さんもまだ聞いてはいないものの「(大塚さんの善治は)かなり悪いヤツになっているに違いない」と期待を寄せる。 序盤の悪役となる善治については「こんなヤツいていいのかと思うくらい憎たらしく描いた」と明かす。実際に最後まで生かすかどうかを悩んだと原作の裏話ものぞかせ、主人公たちを中心に明確に行動に指針のあるキャラクターもいる中で、「阿紫花は迷いのキャラ」と語るなど、キャラクター造形にも話は広がった。
ルシールについて聞かれると、藤田さんは老人を書くの好きだそうで「描いてて感情がこもった」と執筆当時を振り返った。物語上でかなり重要なポジションを担うこともあって、その登場シーンは再構築にあたってかなり難航したという。TVアニメ『からくりサーカス』第2弾アニメーションPV
フロントマンである藤原基央さんは最後に会場のファンへ一言とコメントを求められたにも関わらず、現在連載中の藤田さんの漫画『双亡亭壊すべし』も楽しみにしてますと述べ、かなり本気のファンっぷりが感じられた。
放送直前にしてかなり濃いトークが繰り広げられたイベントも終わりを迎える。
最後の挨拶として植田さんは「かっこいい男になる勝を見届けてほしい」と初出演、初主演の意気込みを語った。 そして藤田さんは、最後にしてかなり具体的な話を始める。脚本は30話くらい、絵コンテは18話くらいまで完成しており、そこまで実際に目を通した上で「(作品として)全く問題ない」と自信をみせた。
自身によるシリーズ構成については「ただカットするわけじゃない」と改めて念を押し、「再構成された部分の意図も味わってほしい」とアニメ化に込めた想いを直接ファンに伝え、イベントは幕を閉じた。
(C)藤田和日郎・小学館/ツインエンジン
原作は小学館『週刊少年サンデー』で1997年から2006年まで連載。独特のダークな雰囲気を備えつつも、魅力的なキャラクターによって熱く壮大な物語が繰り広げられる少年漫画らしい魅力溢れる作品で、漫画好きの中でもオールタイムベストに挙げられることも多い。
多くはアニメ化を喜ぶものだが、心配の声があったことも事実だ。特に“単行本43巻に及ぶ壮大な作品を36話という尺でどう描くのか”という点については、熱心な原作ファンを含んで議論となり、原作者である藤田さんが直接言及するほどだった。
今回は放送に先駆けて開催された「プレミア先行上映イベント」をレポート。
植田千尋さん(才賀勝役)、小山力也さん(加藤鳴海役)、櫻井孝宏さん(阿紫花英良役)のメインキャストに加え、シークレットゲストとして藤田さんも参加し、実際にアニメ1話を見たファンの前で制作の裏側と名作のアニメ化に挑む意気込みを語った。
緊張感ある現場が生み出したパーフェクトな1話
MCをつとめる鷲崎健さんが登壇して挨拶を済ませるとさっそくアニメ本編が上映された。原作のファンであり生粋のアニメオタクでもある筆者から見て、アニメの1話はパーフェクトと言える出来だった。
『からくりサーカス』の魅力である人形によるバトルはハイクオリティな作画で描写され、原作においては漫画ならではの方法で表現されていた部分はアニメ化にあたって問題なく再構築されていた。 特に心を打たれたのは声優陣による熱のこもった演技だ。林原めぐみさんによるしろがねはまさしく完璧で、原作ファンならイメージにピッタリと思うに違いないだろう。
加藤鳴海は小山力也さんが演じるキャラクターとしては歳の若いキャラクターだが、大ベテランの演技力によってコミカルなシーンも熱いシーンも感情豊かに表現されており、優しく力強く勝を導く存在として仕上がっている。 そして才賀勝を演じる植田千尋さんは、アニメ初出演にも関わらず、まったく違和感や粗さを感じさせず、運命に翻弄される少年を見事に演じきっていた。
再三述べるが、ハイクオリティでありながら、物語として引きもあるまさしくパーフェクトな1話だった。そう感じたのは筆者だけではなかったようで、上映が終わると会場からは大きな拍手が巻き起こった。
新人 植田千尋、小山力也と櫻井孝宏はどう評価する
MCの鷲崎さんに呼び込まれ、トークパートに登場したのは植田千尋さん(才賀勝役)、小山力也さん(加藤鳴海役)、櫻井孝宏さん(阿紫花英良役)の3人。小山さんは派手な柄シャツにバンダナという鳴海を意識したファッションで登場し、軽快なステップを繰り出すと会場の笑いを誘った。
それぞれ役に選ばれたときの気持ちを聞かれると、オーディションによって2500人以上の中から選ばれたという植田さんは、「緊張を感じながらも大役に選ばれたことで気合いが入った」と前向きな心境を語った。 小山さんは『うしおととら』に続いて、藤田作品への出演となっており、加藤鳴海という役については「“とら”に比べれば18歳ですよ?!」と、前作で演じた妖怪との年齢差に驚愕したという。
櫻井さんは阿紫花のことを「あまり経験のないダーティな役どころ」と評し、妖しい魅力に溢れるキャラクターと感じたという。
続いて現場の様子についての話題へ。「基本的には和気あいあいとしつつも、アフレコが始まると一気に空気がピリピリする」と植田さん。
ほかにも同じシーンの多い林原さんと仲がいいことや、ステージ狭しと動き回っている小山さんが現場では非常に寡黙なことなど、共演者についても明かしてくれた。 そんな植田さんについて櫻井さんは「勝手のわからないアニメの現場でだんだん空気をつかむようになった」と順応力の高さを称える。
小山さんも「植田さんの成長と共に、現場もいい空気になっている」と、現場での空気をつくり出す様子について言及。2人とも植田さんを高く評価をしていることがうかがえた。
単なるカットじゃなくて、想いのこもった再構成
ここでシークレットゲストとして原作者である藤田和日郎さんが登場。登壇するやいなや「見ました!? スゴいでしょ!!」と原作者としてアニメ化された喜びを大興奮で伝えた。あの1話を見たあとでは、藤田さんの興奮ぶりにも納得だ。注目ポイントである「壮大な原作をどこまでアニメで描ききるのか」については、最初こそ途方に暮れるかと思ったが、「俺が途方に暮れてちゃいけない」と奮起。自身と同じくシリーズ構成を担当した井上敏樹さんと共に、9年分の物語を36話に再構成していった。
制作チームに対しては、藤田さんが「このシーンは絶対に入れたい」という意見を伝えている。「みなさんそれぞれ好きなシーンはあると思いますが、おおむね入ってます」と自信をのぞかせた。 一方で、主人公である勝や鳴海のシーンに比べ、「阿紫花については“見たかったあのシーンがない”ということもあるかもしれない」と、正直に語る場面も。
それでも「単なる(シーンの)カットじゃなくて、想いを込めた再構成」と説明。原作者として、魂を込めて再構成を施していると宣言した。
植田さんの印象について話が及ぶと、アフレコ現場を見学に行った際に、彼女の演じる姿を見て「声優は俺にはできない」と痛感。
その理由を「漫画家と違って声優は修正の指示に対して、その場ですぐ対応しなくてはならない。しかも他のキャストやスタッフに囲まれながら」と、現場の過酷さを目の当たりにしたそうだ。
しろがね役 林原めぐみさんから届いた手紙
その後、MCの鷲崎さんがとあるキャストから届いたという手紙を読み始めた。そのキャストとは、今回参加が叶わなかったメインキャストの1人・林原めぐみさん(才賀しろがね役)。林原さんも『うしおととら』に引き続きの藤田作品への出演となっており、「続投できて幸せ」とキャスティングされたときの喜びを語った。
最後は、情熱あるキャストとスタッフによって、スタジオは緊張感の漂う非常にいい空気になっていると言い、そんなスタジオの空気ごと味わってほしいとメッセージを締めくくった。
そんな林原さんについて藤田さんは、一発目のセリフでもうこれしかないと確信。「まさに理想のしろがね」と太鼓判を押す。 続いて追加キャストとして、才賀正二役の田中正彦さん、才賀善治役の大塚明夫さん、ルシール・ベルヌイユ役の朴璐美さんが発表された。物語上で重要なポジションのキャラクターをベテラン声優陣が演じるとあって、発表のたびに会場からは大きな歓声が上がった。
なかでも才賀善治はかなり凶悪なビジュアルが添えられており、藤田さんもまだ聞いてはいないものの「(大塚さんの善治は)かなり悪いヤツになっているに違いない」と期待を寄せる。 序盤の悪役となる善治については「こんなヤツいていいのかと思うくらい憎たらしく描いた」と明かす。実際に最後まで生かすかどうかを悩んだと原作の裏話ものぞかせ、主人公たちを中心に明確に行動に指針のあるキャラクターもいる中で、「阿紫花は迷いのキャラ」と語るなど、キャラクター造形にも話は広がった。
ルシールについて聞かれると、藤田さんは老人を書くの好きだそうで「描いてて感情がこもった」と執筆当時を振り返った。物語上でかなり重要なポジションを担うこともあって、その登場シーンは再構築にあたってかなり難航したという。
藤田和日郎「再構成された部分の意図も味わってほしい」
サプライズはまだまだ続く。スペシャルなムービーとして主題歌を担当するBUMP OF CHICKENからのメッセージが上映された。全員が「学生の頃から藤田作品のファン」というメンバーは、「オファーがくるとはまったく思っておらずとてもうれしかった」と語った。放送直前にしてかなり濃いトークが繰り広げられたイベントも終わりを迎える。
最後の挨拶として植田さんは「かっこいい男になる勝を見届けてほしい」と初出演、初主演の意気込みを語った。 そして藤田さんは、最後にしてかなり具体的な話を始める。脚本は30話くらい、絵コンテは18話くらいまで完成しており、そこまで実際に目を通した上で「(作品として)全く問題ない」と自信をみせた。
自身によるシリーズ構成については「ただカットするわけじゃない」と改めて念を押し、「再構成された部分の意図も味わってほしい」とアニメ化に込めた想いを直接ファンに伝え、イベントは幕を閉じた。
(C)藤田和日郎・小学館/ツインエンジン
原作者 藤田和日郎が吠えた理由
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作品情報
TVアニメ『からくりサーカス』
- スタッフ
- 原作
- 藤田 和日郎 (小学館 少年サンデーコミックス刊)
- 監督
- 西村 聡
- シリーズ構成
- 井上 敏樹 / 藤田 和日郎
- キャラクターデザイン / 総作画監督
- 吉松 孝博
- メインアニメーター
- 菅野 利之 / 菅野 芳弘 /平山 貴章
- 美術監督
- 清水 友幸
- 色彩設計
- 堀川 佳典
- 撮影監督
- 魚山 真志
- CGI ディレクター
- 高橋 将人
- 編集
- 神宮司 由美
- 音楽
- 林 ゆうき
- 音響監督
- 三間 雅文
- OP
- BUMP OF CHICKEN 「月虹」
- ED
- ロザリーナ「マリオネット」
- アニメーション制作
- スタジオヴォルン
- 製作
- ツインエンジン
- キャスト
- 才賀 勝
- 植田 千尋
- 加藤 鳴海
- 小山 力也
- 才賀 しろがね
- 林原 めぐみ
- 阿紫花 英良
- 櫻井 孝宏
- ギイ・クリストフ・レッシュ
- 佐々木 望
- タランダ・リーゼロッテ・橘
- 黒沢ともよ
- ヴィルマ・ソーン
- 井上 麻里奈
- 仲町 信夫
- 江川 央生
- 仲町 紀之
- 岩崎 諒太
- 仲町 浩男
- 石川 界人
- 才賀 正二
- 田中 正彦
- 才賀 善治
- 大塚 明夫
- ルシール・ベルヌイユ
- 朴 璐美
- アルレッキーノ
- 福山 潤
- パンタローネ
- 中田 譲治
- コロンビーヌ
- 悠木 碧
- ドットーレ
- 大友 龍三郎
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