「夜を使い果たして ft.PUNPEE」で大ブレイクしたSTUTSだが、これまでいつも傍らにKMCの存在があった。
今回は、KMCがSTUTSを見出したきっかけ、そしてこれまでの二人の功績などを振り返りながら『Let's Break The Night Together』の醍醐味を解説していく。
「夜を使い果たして」のブレイク STUTSの目を見張る活躍
昨年11月にリリースされたKMCのアルバム『Let's Break The Night Together』。STUTSによる新曲を収録しながらも過去の代表曲がしっかり収められている。そしてコラボ曲なども新たにリミックスして収録された。まさにKMCの音楽活動の集大成となる名盤だ。MIX CDという扱いながらも素晴らしい出来に仕上がっている。アルバムの表記はKMC単独名義だが、実質はSTUTSとの共作となり、全面プロデュース&ミックスを手掛けている。タイトル曲の「SEPTEMBER(LET’S BREAK THE NIGHT TOGETHER)」はKMC & STUTS名義で収録されているほか、STUTS名義のインスト曲も収録されており、「夜を使い果たして ft.PUNPEE」でSTUTSにハマったという方にもおすすめできる内容だ。
昨年のSTUTSの活躍には目を見張るものがあった。もともとKMCやHAIIRO DE ROSSI、BOBO THE TRIMMERなどに曲を提供していたSTUTSだが、一昨年PUNPEEを客演に迎えた「夜を使い果たして」をリリースして遂に大ブレイク。一気にその名をシーンに知らしめた。 昨年もKMCの新曲のほかにあっこゴリラの「黄熱病 -YELLOW FEVER- × STUTS」、JJJの「ORANGE ft. STICKY」など良質な楽曲をプロデュースし続けたほか、STUTS×SIKK-O×鈴木真海子として「Summer Situation」、Alfred Beach Sandal + STUTSとして「Horizon」をリリースするなど、精力的に活動している。
KMCとSTUTSの出会い『東京WALKING』
そんなSTUTSを見出したのがKMCだ。二人は、KMCが2006年前後から地道にMCバトルに参加したり、ライブをこなしたりしているときに出会った。遊び友達だったという二人だったが、KMCが2010年に1stアルバム『東京WALKING』を出すとなったときにSTUTSが「曲を作らせてください」と名乗り上げた。それが縁となり、この長い長い二人三脚は始まったのだ。また、STUTSがビートバトルに出場した際にセコンドをKMCが務めたというエピソードもある。 そういった活動を経ながら二人は信頼関係を築き上げてきた。そしてSTUTSが大きく参加した『東京WALKING』もなかなかの出来だった。
表題曲の「東京WALKING」のほか、後にMVが制作されて話題になった「HIPHOPが好き」や「パラダイスシティー」など名曲揃い。KMCのまっすぐで熱く、そして碧いラップとSTUTSのジャジーながらもキャッチーで柔らかみのある音色が見事にマッチしていた。
そしてKMC曰く「荒れていた」というブランク期を少し挟みながらも2015年に2ndアルバム『KMC!KMC!KMC!』を術ノ穴からリリースしてシーンにカムバック。このアルバムではKMCの最大の代表曲「KING」が収録されて話題になった。 ほかにもタイトルからして「KMC & STUTS」という二人の信頼関係が伺える曲が入っているなど、STUTSがMPCから紡ぎ出す世界が存分に楽しめる内容になっている。
しかしそれだけではない。THA BLUE HERBのO.N.Oが制作した「Singin' The Rain」やアルバム『2017』も好調なvlutent recordsからvoloやPiz?を迎えた「JAPANESE KARATE NO.1」など、より多彩になったKMCの音楽性が楽しめる名盤だ。
イベント開催や音源リリース…KMCとSTUTSのそれぞれの活躍
その後もKMCは自主企画イベント「東京KRUSH GROOVE」を開催しながら、フリーEP『more KMC』をリリース。CommonとNasの「GHETTO DREAMS」をビートジャックした「KMCのGHETTO DRAEMS」や、ゴーストバスターズのテーマをモロ使いした「ゴーストバスターズのテーマ(行くぞ!ゴーストバスターズ!)」のほか、客演で参加したRatchildの「D.O.T.H.E.R.A.T」のNEZUMIによるリミックス、そして押忍マンとMC☆ニガリa.k.a赤い稲妻がゲスト参加した「JAPANESE KARATE NO.1」のリミックスなど無料でリリースするのはもったいないと思える内容だった。
一方で、STUTSも初のソロアルバム「Pushin'」をリリース。PUNPEEを迎えて制作された「夜を使い果たして」が大ヒットとなったほか、KID FRESINOやJJJ、呂布カルマなど旬のラッパーを迎えており、どの曲も良作に仕上がっている。
また、Alfred Beach Sandalとの「Sail Away」や「Special day ft. Chiyori」などラップだけでなく、歌も楽しめる内容になっており、「Renaissance Beat」などのインスト曲も素晴らしく、アルバムとしてのバランスも絶妙。
そして隠れた名曲として名高いのがKMCを迎えて制作された「Rock The Bells」だ。あっこゴリラの「黄熱病 -YELLOW FEVER- × STUTS」にも通じるアップテンポな曲で熱いKMCのラップがアルバムに華を添える。
KMCとSTUTSの集大成『Let's Break The Night Together』
現在、それぞれに活躍しているKMCとSTUTSだが、『Let's Break The Night Together』はまさにその二人三脚の集大成となった。1stアルバムからは「HIPHOPが好き」を収録し、この度新たにMVも公開された。呂布カルマや押忍マン、VLUTENT ALSTONEやratchildも参加した豪華な仕上がりとなっており、実に7年の時を経て再評価されている。 2ndアルバムからは「KING」「KMC & STUTS」が収録された。タイトル曲の「SEPTEMBER (LET'S BREAK THE NIGHT TOGETHER)」や「Rock The Bells」のリミックスなど、STUTSとKMCが織り成す世界が存分に楽しめる。また、ほかにもoakの「seventeen-seventeen」をサンプリングした「尋問Seventeen(Revolution)」、呂布カルマの「ロクでもナイスガイ ft.K Lee」に勝手に乱入した「ロクでもナイスガイ 勝手にRemix」などを収録しており、KMCの音楽的な遊び心が伺える充実した内容になっている。
新鋭ビートメーカーのALTOと組んだ「Wish You Were Here」も浮遊感が心地のよい名曲だ。この手の浮遊感はKMCにとっても新境地だろう。
今回のアルバムでは音楽性だけでなく、ラッパーとしても成長したKMCの姿を楽しむことができる。「Wish You Were Here」は<酔いどれ詩人が眠りに堕ちるまでその時あなたがここにいてほしい>という今までになかった詩的なラブソングだ。
また、「SEPTEMBER(LET'S BREAK THE NIGHT TOGETHER)」でもノスタルジックで抽象的なリリックが確認できる。年齢を重ね、経験を積み、リリックもよりポエティカルになったKMCのラップをぜひ堪能してほしい。
2月11日のパーティには呂布カルマや押忍マン、OMSB、Hi'Specらも
この『Let's Break The Night Together』のリリースを記念して、2月11日(日)に渋谷Gladにおいて「Let's Break The Night Together」というパーティが開催される。呂布カルマや押忍マンといったバトル界隈でも人気を集めるラッパーのほか、SIMI LABからOMSBとHi'Spec、KMCと付き合いの長いVLUTENT ALSTONESにRatchild、そしてYasterizeが手掛けた新曲「NEW STEP」も好調なSMOKIN' IN THE BOYS ROOMが華を添えるという。あまりにも豪華な内容にKMCとSTUTSの人望が読み取れる。しかし、あくまで主役はKMCとSTUTSだ。
きっとKMCはステージでマイクを掴んでこう言うだろう。「二人でここまでやってきたんだ」。そう、これまでKMCとSTUTSは二人三脚でずっとやってきた。そしてその二人三脚はまだまだ続くことだろう。
そんな二人三脚で創り出される極上のHIOPHOPをぜひ会場で生で味わってもらいたい。
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イベント情報
KMC Mixtape & MV Release Party "Let's Break The Night Together"
- 日時
- 2018年2月11日(日)23時
- 会場
- 渋谷Glad
- 料金
- ADV: 3000YEN/1D DOOR : ¥3500/1D
- 出演
- KMC & STUTS、呂布カルマ、HIT、OYG、押忍マン、VLUTENT ALSTONES、OMSB & Hi'Spec、SMOKIN' IN THE BOYS ROOM、突然少年、Ratchild、ALTO、SHOTO、IRONSTONE
【KMC】
16歳からラップを始め、都内を中心に精力的にLIVEを行なっているラッパーKMC。 HIPHOPとパンクロックをこよなく愛する28歳。 DOMMUNE、KAIKOO、ササクレフェスなど東京中に転がる多種多様な音楽に節操無く首を突っ込み、ラップしながら拾い集めてきた音で聴く人の心をロックし続ける。 希望、怒り、孤独、情熱を剥き出しにした言葉は聞いた人全てを勇気づけるだろう。 矢吹ジョーの隠し子、本当の名前は柳原一仁。
【STUTS】
1989年生まれのトラックメーカー/MPC Player。2013年2月、ニューヨーク・ハーレム地区の路上でMPCライブを敢行。オーディエンスが踊り出す動画をYouTubeで公開して話題になる。MPC Playerとして都内を中心にライブ活動を行う傍ら、ジャンルを問わず様々なアーティストよりトラック制作、リミックスの依頼を受けるようになる。2016年4月、縁のあるアーティストをゲストに迎えて制作した1stアルバム『Pushin’』を発表し、ロングセールスを記録。2017年5月、LAで開催されている老舗パーティー”Low End Theory"に出演。2017年6月、Alfred Beach Sandalとのコラボレーション作品『ABS+STUTS』を発表。現在、国内外でのライブ活動を中心に、楽曲プロデュース、CM音楽制作を行いながら、新しい作品制作に没頭している。
関連リンク
鼎
ジャパニーズHIP HOPが好きなゲイライター
これまでの記事はこちら
http://mosthigh.tokyo/2018/04/07/profile/
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