Twitch Prime始動インタビュー「日本は“e-Sports後進国”ではない」

Twitch Prime始動インタビュー「日本は“e-Sports後進国”ではない」
Twitch Prime始動インタビュー「日本は“e-Sports後進国”ではない」
12月8日より、ソーシャルビデオプラットフォーム「Twitch」の新サービス「Twitch Prime」の日本版が正式スタートした。

このサービスはAmazonプライム会員向けのもので、TwitchとAmazonプライムの連動によって、Twitch上でさまざまな特典が提供される。また同会員であれば、追加料金を払う必要もない。

今回、本サービスの正式提供開始に合わせて、Twitch社シニア・ヴァイス・プレジデントのマイケル・アラゴンさんが来日。「Twitch Prime」の内容や、日本でもにわかに注目を集める「Twitch」についてプレゼンを行った。

本稿ではその内容だけでなく、「Twitch」を取り巻くゲーム市場についてマイケルさんの見解もお伝えする。

取材:ふじきりょうすけ 文:須賀原みち

急成長を遂げるTwitch

PUBG、ハースストーンをはじめ、さまざまなゲームが日夜配信されている/画像はTwitchのスクリーンショット

ソーシャルビデオプラットフォームである「Twitch」は、主にストリーマー(実況配信者)によるゲーム実況が盛況だ。

さらに、近年ではゲームに限らない雑談カテゴリなどのストリーマーの番組、アニメの一挙放送プロレスといったスポーツ配信など、種々多様なビデオが配信されている。

世界全体での数字を見ると、日毎の訪問者は1500万アカウント、生放送配信者は月あたりに220万アカウントにも上るという。そのうちの約2万5000アカウントがTwitchのパートナー・ストリーマーとして、同社と契約をし、Twitchの担当者がついて収益化が望める番組を提供していると、マイケルさんは語る。

また、全世界のユーザー1回あたりの視聴時間は平均して106分とのこと。1回の視聴で約2時間弱も配信を見続けるという、滞在時間の長さも「Twitch」の特徴だ。そんな中で、日本の「Twitch」利用者の1回あたりの視聴時間は平均300分、実に5時間(!)という驚きのデータも公表された。

これは、国別の平均視聴時間として見てもNo.1とのことで、日本人のTwitchユーザーがいかに熱心に配信を見ているかがわかる。

加えて、日本国内ではチャットのコメント数も年間で2倍となり、1カ月のアクティブユーザーは100〜200万人を数えるとのこと。こういった数字から、Twitchが日本で急速に普及しつつあることがうかがえるだろう。

ちなみに、筆者もゲーム『Overwatch』(オーバーウォッチ)の世界大会や国内外の有名配信者のゲーム配信を試聴する際に「Twitch」を利用している。

長時間の視聴や国内配信者のチャットの盛り上がり、配信者へのサブスクリプション機能「スポンサー登録」の増加は、実感を持って受け取れるところだ。

Twitch Prime日本上陸

こうした状況を受けて、Twitchでは今年9月に日本オフィスを設立。同21日には「東京ゲームショウ 2017」に大規模なブースで出展するなど、日本市場の開拓に注力しているのだという。 そして今回、満を持して「Twitch Prime」の日本サービスが正式に提供が開始される。「Twitch Prime」を利用すると、「Twitch」で使えるスタンプのほか、提携しているゲーム内アイテムやスキンを特典としてもらうことが可能だ。

12月は『ポッ拳 POKKEN TOURNAMENT DX』『鉄拳』のスタンプに加え、『ハースストーン』『アサシンクリード オリジンズ』といった作品のゲーム内コンテンツが提供されている。

加えて、一月に1チャンネルへの「スポンサー登録」が無料となる。「スポンサー登録」とは、配信者に対するサブスクリプションサービスで、視聴者が配信者のスポンサーとなるシステムのこと。通常は5ドルを一口として、配信者のチャンネルをスポンサードすることとなるが、「Twitch Prime」会員であれば、この「スポンサー登録」が毎月一口無料になるのだ。

この「スポンサー登録」について、マイケルさんは「(配信者は)広告収入に頼っていると、自分のパフォーマンスに関係なく、(広告の有無によって)収入が乱高下することがある。しかし、ファンからスポンサードされるのであれば、クリエイターが好きなことをしながら、安定した収入を得る良いツールになる」と語っていた。

「Twitch Prime」が導入されることによって、視聴者はより気軽に「スポンサー登録」を行うことができるだろう。事実、2016年にアメリカで「Twitch Prime」が始まって以降、同国では「スポンサー登録」がそれまでと比べて50%増加したのだという。

「日本がe-Sportsで遅れているとは考えていない」

「Twitch Prime」の概要を一通り説明し終えると、記者陣からマイケルさんへの質問タイムと移行。ここでは隆盛する「Twitch」というサービス自体への質問も飛び交った。

まずは「Twitchでは『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(通称:PUBG)や『League of Legends』(通称:LoL)といった海外発のタイトルが人気という印象があるが、日本のユーザーに人気があるゲームジャンルの傾向は?」という質問だ。

それに対し、「日本で特徴的なのは、格闘ゲームが人気ということだ『ストリートファイター』は、ほかの国(の視聴ランキング)では20位前後だが、日本ではTOP5あたりに入っている。ほかの格闘ゲームも上位に来ることがある。

また、『ファイナルファンタジー14』はアップデート/パッチが当たった後の1カ月あたりは視聴数が増加するなど、さまざまなイベントに影響を受けることが多い。『PUBG』に関しては、例外的とも言えるほど、全世界で爆発的な人気があった。」と、マイケルさんは語る。

続けて「Twitchではe-Sportsとされるゲームが人気のように思われる。日本は“e-Sports後進国”とも言われているが、こうした状況をどう見ているか?」という質問に対して、以下のように応える。

「ゲーム業界全体の拡大に対し、e-Sportsは重大な面を持っている。e-Sportsは、オリンピックやワールドカップのように、同じ瞬間に多くの人が観に来るコンテンツであるということだ。

つまり、(e-Sportsが盛り上がることによって)多くのお客さんがそのゲームの話をするという現象が起こる。それこそが大事だと思っている。そこから、そのゲームのほかの動画を見てみたり、スター選手のファンになったりすることもあるだろう。

ただ、私としては日本がe-Sportsで遅れているとは考えていない。法律といった大人の事情があって、ゲーム大会で賞金をもらって“プロ”ということを言いづらい側面があるんだろう。

だが、時が経てば然るべき人が然るべき人を説得するので、これから日本のe-Sportsは整備されていくだろう。その時に、(e-Sports文化の)土台としてTwitchも協力して取り組んでいきたいと思っている」

最後に、国内発の動画配信プラットフォームとして一世を風靡した「ニコニコ動画」が11月末の発表会で大バッシングを受けた件を引き合いに、「動画配信プラットフォームとして、『Twitch』が大事にしているもの」を問う質問が上がった。

マイケルさんは「我々は、ほかのプラットフォームが何をしているかについてはあまり気にしていない

Twitchは今のユーザーが要求することにひらすら応えている。そもそも、Twitchでゲーム以外の配信を解禁したのも、ユーザーからの要望がきっかけだった。

Twitchで大事にしているのは、リアルタイム・エクスペリエンスだ。つまり、ゲームにかぎらず、視聴者と配信者がさまざまなことをリアルタイムで共有する体験を大事にしている。そのために、ユーザーの意見やパートナーとなっている配信者からのフィードバックを元に、新しいサービスやコンテンツにつながる取り組みをしているんだ」と答えた。

──ゲーム実況を中心とした動画配信プラットフォームとして、日本市場でも確実に頭角を現してきた「Twitch」。今回の「Twitch Prime」日本版サービス本格スタートによって、さらに存在感を増していきそうだ。

今、このゲームがアツい!

SHARE

この記事をシェアする

Post
Share
Bookmark
LINE

関連キーフレーズ

0件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。

コメントを削除します。
よろしいですか?

コメントを受け付けました

コメントは現在承認待ちです。

コメントは、編集部の承認を経て掲載されます。

※掲載可否の基準につきましては利用規約の確認をお願いします。

POP UP !

もっと見る

もっと見る

よく読まれている記事

KAI-YOU Premium

もっと見る

もっと見る

ゲームの週間ランキング

最新のPOPをお届け!

もっと見る

もっと見る

このページは、株式会社カイユウに所属するKAI-YOU編集部が、独自に定めたコンテンツポリシーに基づき制作・配信しています。 KAI-YOU.netでは、文芸、アニメや漫画、YouTuberやVTuber、音楽や映像、イラストやアート、ゲーム、ヒップホップ、テクノロジーなどに関する最新ニュースを毎日更新しています。様々なジャンルを横断するポップカルチャーに関するインタビューやコラム、レポートといったコンテンツをお届けします。

ページトップへ