加藤ミリヤと渋谷の風景 とまん×アイナ×Spikey Johnが語り尽くす

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加藤ミリヤと渋谷の風景 とまん×アイナ×Spikey Johnが語り尽くす
加藤ミリヤというアーティストに対して、みなさんはどんな印象を持っているだろうか?

2004年に高校1年生という年齢ながらメジャーデビューし、ケータイ文化の発展と共に、若者の孤独感や飢餓感、恋愛の困難を歌い、ギャルを中心とする地方の若者から絶大な支持を受けた。

時には大人から「ギャル演歌」と揶揄されながらも、その実は深い音楽性にも裏打ちされており、特に日本語ラップからのサンプリングを用いた楽曲の多くはいまなお高く評価されている。

2017年には代表曲である「ディア ロンリーガール」をセルフアレンジした「新約ディアロンリーガール feat. ECD」をリリース。
加藤ミリヤ「新約ディアロンリーガール feat. ECD」
「ディア ロンリーガール」も1997年に発表された「ECDのロンリーガール feat.Kダブシャイン」へのアンサーとしてつくられた楽曲で、先行世代に中指を立てた極めてヒップホップ的な楽曲となっている。さらに、2017年にはアンサーの対象だったECDさんも招き、自らこの楽曲を歌い直すことに。

加藤ミリヤというアーティストはなぜ若者の代弁者としてなり得ていたのか。現在の若者像とはなんなのか。今回は、加藤ミリヤを聞き込んでいた3人のアーティスト/クリエイターの視点から探っていく。また、記事の末尾には座談会をうけての加藤ミリヤさんからコメントを掲載!

インタビュアー:かよちゃん 文:米村智水 撮影:山下智也

加藤ミリヤ座談会の参加者

アイナ・ジ・エンド

「楽器を持たないパンクバンド」BiSHのメンバー。年齢非公開。大阪府出身。そのハスキーボイスから繰り出される迫力のある歌声と、幼少期から行っている高いダンススキルによってBiSHを牽引する。渋谷は苦手だが、加藤ミリヤさんのファンクラブに入っていたほど楽曲を聴き込んでいたと語る。

とまん

「ジェンダーレス男子」や「絶食系男子」とも言われるほど細くてイケメン。音楽グループ・XOX(キスハグキス)のリーダーとしても活動。2018年1月をもって同グループを卒業する。加藤ミリヤさんが手がけるブランド「KAWI JAMELE 」でモデルをつとめるほか、楽曲「FUTURE LOVER-未来恋人-」のMVにも出演するなど、加藤ミリヤさんとの関係は深い。

Spikey John

映像監督。YENTOWNやkiLLa、SALUといったヒップホップアーティストのMVを中心に手がけている。2017年にはJP THE WAVY「Cho Wavy De Gomenne」のMVがバイラルヒット。加藤ミリヤ「新約ディアロンリーガール feat. ECD」の監督も手がけ、独自の質感で都市とアーティストを映し出す作品が高く評価される。

音楽だけでなく、ファッションでも牽引した加藤ミリヤ

──Spikey Johnさんは遅刻ということで……先にはじめちゃいます!

レコード会社の担当者 すみません!

──今回は、BiSHのアイナ・ジ・エンドさんと、XOXのとまんさん、そして「新約ディアロンリーガール feat. ECD」のMVで監督をつとめたSpikey Johnさんに集まっていただきました。ジャンルや活動の領域は違えど、みんな同年代で加藤ミリヤさんのことが好きということで、どんなきっかけで加藤ミリヤさんにハマっていったんでしょうか。

とまん 僕はもともと小学6年生くらいの時に、3つ上の姉が中学校で流行ってると教えてくれたのがきっかけです。人の名前がたくさん入ってるヤバい歌があるよって教えてくれて、それが12年前に発表された「ディア ロンリーガール」でした。

それを聞いて──もともとガラケーだったので、着うたでダウンロードして聴いたところからハマっていきましたね。まだ小学生だったんで、友達とかはまだ気づいていなくて。でも中学に進学したら一気にみんな聞いてたようなイメージです。

とまんさん(XOX)

アイナ 私は中学3年の時にハマりました。その頃は受験で塾に通い詰めていて、それが辛くて。塾への移動中の電車で、音楽を聴いてるときしか自由がないみたいな感じで……。本気で音楽くらいしか生きがいがなかったんですよ。それでいろいろな音楽を漁っているときに、加藤ミリヤさんの曲を知って好きになりました。なんか、加藤ミリヤさんというと精神的に辛い時期に聴いてたイメージが大きいです。

──そうですね。今回発表された「新約ディアロンリーガール feat. ECD」もそうですが孤独感というか、自分一人でも生きていってやるという雰囲気が強いアーティストです。

アイナ そうですね。一番最初に聴いたのは「SAYONARAベイベー」という曲で、『Ring』ってアルバムをたくさん聴いていました。
加藤ミリヤ「SAYONARAベイベー」MV
──当時、ほかにもソロの女性アーティストは何人も流行していたと思うんですけど、その中でも加藤ミリヤさんに惹かれた理由というか、どういう存在に映っていたんでしょうか? 中でもアイナさんはファンクラブにも入ってたとか。

アイナ 私は大阪の人間なんですけど、心斎橋のオーパ(OPA)っていうショッピングモールにミリヤさんがデザイナーをしているブランド「KAWI JAMELE」のお店があって。でも当時はお金がなくて買えなかったんですね。お店からすごく良い香水の匂いがしていて。買えないけど学校帰りに、その匂いだけ嗅ぎに通ってたんです(笑)。それで服は買えないけど「ファンクラブだったら(金銭的にも)入れるね」って感じで入りました。

とまん ほかの人と比べるのは失礼かもしれませんが、中学生の自分に一番刺さるのがミリヤさんだったんです。中学生の頃って恋愛とかしだすじゃないですか(笑)。ちょうどそういう時期で、恋愛に悩んだときとかかなり聴いてましたね……!

アイナ・ジ・エンドさん(BiSH)

──ライブにも行ったことはあるんでしょうか?

アイナ はい。ダンサーさんと一緒に「EMOTION」っていう曲を振り付けしているミリヤさんがめちゃくちゃかっこよくて。
加藤ミリヤ「EMOTION-DANCE ONLY VER.-」
アイナ その曲を観た自分の感情を思い出して、いま私もBiSHで振り付けをしています。ミリヤさんって自由なときはめっちゃ自由なんですけど、踊るときは型にばちっとハメて踊る感じがしていて。それがめっちゃかっこいいんです。

とまん ほんと僕は影響を受けていることだらけですね。自分の人生というか。ミリヤさんの存在とか歌詞、ファッションも。実際にミリヤさんとお会いすることになって、かっこいい女性だなっていうのを実感しました。ミリヤさんって実は小柄じゃないですか。でも大きく見えるんですよね。自分も身長が小さいから、人として器を大きく持てば、大きく見えるのかなあって。

はじめてお会いしたのは「KAWI JAMELE」の撮影でした。モデルをやらせてもらっていて。これまでタレントとか同業者の方にお会いしてもびっくりすることはなかったんですけど、ミリヤさんがスタジオに入ってこられた時は「うわ本物だ!」ってふつうになりました。メイクをしていても、撮影中もいろいろとアドバイスをしてくださって。自分がいままで聴いてきた音楽をつくった人、見てきた人にそう接してもらえて嬉しかったですね。

──私の周りでは女の子が多く聴いてるイメージだったんです。とまんさんは男性ですけど、ふつうに聴いていたんですね。

とまん 僕の周りではみんな聞いてましたね。王道ですけど「AITAI」とか「ディア ロンリーガール」はカラオケでも歌われていました。「AITAI」は清水翔太さんがカバーされていることも大きいと思います。あと男性でもキーが合うのかなと。他には楽曲でいうと僕は「WHY」という曲がすごく好きで。
加藤ミリヤ「WHY」
アイナ ああ〜!

とまん この曲に「ねぇ あなたにとって私は一体どんな存在?」っていうフレーズがあるんですが、それって恋人だけじゃなくて誰にでも当てはめて言えるなと思って。友達や家族や身の周りの人に当てはめて聞いていました。

アイナ 私は好きな曲は選べないです! 救われた曲がありすぎるんですけど──いまの私が聞いたら「Love me, hold me」が一番好きかもしれない。ジャズバーみたいな場所で歌っていそうなかっこいい曲で。

私もカラオケで加藤ミリヤさんの曲を歌うんですけど、人生経験が足りなくて、まだうまく歌えない。「Love me, hold me」は一冊の本を読み聞かせてもらっているような曲なんです。私にはまだそういう楽曲は歌えないなって。だから当時ミリヤさんに救われた私が、一人のシンガーとして目標にしている曲です。

新旧「ディア ロンリーガール」は何が違う?

──もともと加藤ミリアさんの「ディア ロンリーガール」は、ラッパーECDさんが発表した「ECDのロンリーガール feat.Kダブシャイン」をサンプリングしていて、その楽曲に対するアンサーになっています。「ECDのロンリーガール」もサンプリング元があって。実は深い歴史のある、受け継がれてきた曲なんです。そういった背景はご存知でしたか?

とまん そういう話があるのは知ってはいたんですが、もともとの曲は聞いたことがなかったです。そういうことだったんですね。実はもともとヒップホップはかなり疎くて……。

アイナ 私はもともとダンスをやっていたこともあって、ヒップホップというか海外のR&Bはよく聞いていました。

──ヒップホップを聴かないというわりに、とまんさんのファッションは結構ストリート系ですよね。

とまん もともとはこんな感じじゃなかったんですよ。自分の弱い面とか、みんなから見て弱そうって思われないように……あえて強めの服を着ています。服で気持ちが変わるんですよね。自分がいま強く生きたいと思っているから、ファッションも強めになっていきました。しばらくずっと「KAWI JAMELE」で着させていただいていたので、ますます気持ちを背負ってというか。服に気持ちを入れています。

──先ほども話に挙がった「KAWI JAMELE」の魅力ってどういうところにあるんでしょうか?

とまん ここまで自分の好みなブランドってなかったなと。他のブランドだと好きでも次のシーズンは好きなデザインじゃないなと思うこともあって。「KAWI JAMELE」はレディースなんですけど、強さがあってメンズでも気軽に着れるんですよね。僕はレディースの服を着ることも多くて嬉しいです。中学生のときは買えませんでしたけど、仕事するようになって、こんなかっこいい服がこんな値段で着れるんだって思いますね。

アイナ 私も大人になってから買いました! 東京にきてからアパレルの仕事をしていたことがあって。「KAWI JAMELE」にどうしても買いたい服があって、お昼ご飯を我慢して買いました(笑)。赤と紺と白の切り替えがあるトレーナーだったんですけど、カレーとかこぼしてるのにずっと着ていました。 ──「新約ディアロンリーガール feat. ECD」は渋谷の曲で、撮影も渋谷で行われていますが、渋谷で遊んだりとかしますか?

とまん はい。渋谷・原宿・新宿が多いですね。時間帯に寄るんですけど、昼間に原宿とか青山で買い物して、そこから新宿で映画とかみて、夜は渋谷で卓球とかボーリングとか。夜になったら渋谷に繰り出すみたいな。

アイナ え! 卓球で遊ぶんですか!?

とまん 渋谷に、お酒を飲みながら卓球できるところがあるんです。1Fがゲームセンターで、ボーリングも同じビルに入っていて、だいたいなんでもできます(笑)。けっこう通っていました。

アイナ 私は正直あまり渋谷では遊ばないですね……。渋谷というか代官山にはいきます。あとは高円寺とか古着屋さん巡ったり。青山とかも好きなんですけど、どうしても中央線が好きで。渋谷はギラギラしている感じがして、慣れないです。あと渋谷にいるハトが大嫌いで……。

とまん 僕ももともとは苦手でした。ギャルとか強そうな人が多いのかなって。でも行ってみたら実際ぜんぜん違っていました。いまの渋谷って本当にいろんな人が、誰でもいるというか。夜も明るいので、逆に安心できます。地元に帰ると夜の街が暗くて……安心します

レコード会社の担当者 すみません、Spikey Jhonきました!

Spikey すみません〜。

Spikey Johnさん到着

加藤ミリヤはヒップホップなのか?

──お待ちしていました! いまどこで遊んでる?って話から「ディア ロンリーガール」になぞらえて渋谷の話をしていました。Spikeyさんは渋谷をどんな街だと認識していますか?

Spikey 今回MVを撮らせてもらったクラブも渋谷で、よく遊びにいってます。めっちゃチャラいところなんですけど(笑)。人が多いと面白い絵が撮れる。けっこう自分の作品が影響を受けてる部分はありますね。実際に撮影するときは、撮るに必死すぎてどんな人がいるとかは気にしてないんですけど。

遊ぶのは基本深夜で、ヒップホップ系の友達が多いとそうなっちゃうんですよね。出身は岡山で、大学進学からこっちきてるんですけど。もともとそんなに渋谷のカルチャーには興味なくて。いまはそのへんで遊んでるんですけど、アメリカのカルチャーとかそっちには興味がありました。

アイナ 私はそんなに渋谷は得意じゃないんですけど、マネージャーが渋谷大好きで。事務所も渋谷にありますし、思い入れはあります。でも好きになれないからこそ、渋谷でワイワイできる人たちとか、楽しいんだろうなっていう憧れはありますね。

──Spikeyさんはヒップホップのイメージが強い人ですけど、そういう文脈から加藤ミリヤさんで知ったんですか?

Spikey いや、ミリヤさんと曲をやっていた清水翔太さんの超ファンです。そこから知りました。

今回は撮影できて、超ハッピーでした。実際会ってみても話しやすくて和気藹々と。でも撮影当日は大人がたくさんいてちょっと怖かったです。普段、撮影するときも打ち合わせするときもラッパーしかいなくて、だいたい友だちなんで。そういう面では正直やりづらかった(笑)。

渋谷で撮るということで、普段自分がやっている感じで撮りたかったんですが、どうしても加藤ミリヤさんという存在が有名すぎるので、ロケーション的にいつも通りにはいかない。でもゲリラ感というか、いつも通りの渋谷の雰囲気で撮りたくて。人が少ない深夜からはじめて。でも人が多くいるように見せたりとか、ぼかしたりとか、そういう工夫はしています。

Spikey Johnさん

アイナ Spikeyさんと会うのははじめてなんですけど、共通の知り合いがいて。マホっていうカメラマンなんですけど、その子が「若くてめっちゃヤバい奴がおる!」って教えてくれたのがSpikeyさんだったんです。

ミリヤさんをここまでゲリラな感じで、渋谷をゆらゆら歩いている、ふらっと来てふらっと歌って帰ったみたいな絵になっていて。そんなナチュラルな状態で撮れるというのがすごいなと思いました。ずっと渋谷だったから、それがめっちゃ良くて、渋谷やクラブに行っている感覚になった。

──「ディア ロンリーガール」と「新約ディアロンリーガール feat. ECD」を聴き比べるとどうでしょう?

とまん 「ディア ロンリーガール」は渋谷の歌じゃないですか。それこそ自分たちが生活している渋谷で、ここで歌ができて、MVができて、また新しい作品が生まれていくという観点で不思議でした。MVと一緒に「新約ディアロンリーガール feat. ECD」を聴いたとき、鳥肌が立ちました。

僕がミリヤさんの楽曲に出会ったのはすごく悩んでいる時期で……今も悩んでますけど(笑)。MVが出て、ミリヤさんのInstagramで見て、すぐ見たんですけど、頑張らなきゃというか、大丈夫だなっていう感じに思えた。もしかしたら今までの自分に一番フィットした曲かもしれない。

アイナ 私も歌っているから、一周回って同じ曲をまた歌うというのはプレッシャーに感じるというか。でもミリヤさんはまったくそんなこと感じさせない。とまんさんも言ってますけど、やっぱりミリヤさんは辛いときに聴いたアーティストで──私にとっては神みたいな存在で、仮にミリヤさんが世間的に悪いことをしてしまってもかっこいいと思ってしまうレベル(笑)。

だから今も昔もかっこいいし、私も曲を歌っている身として、12年後に同じように歌い直したりしてみたいなと思いました。

Spikey ……失礼かもしれないんですけど、俺はまったくミリヤさんの歌詞には共感してなかったです

一同 (笑)。 Spikey なんでこの人こんなに辛いんだろうって(笑)。俺は中高生のころなんて世の中に対する反骨心とかなかったし、ふつうに幸せに暮らしていたから。その時は映像にもまったく興味なかったし、YouTubeすらなかったですからね。でも共感しなくても、なんか普通に、加藤ミリヤってかっこいいな、とか良い曲だなって思って聴いていました。

10年前の10代/現在の10代が見ている景色

Spikey ミリヤさんの曲は、ベストアルバムばっかり聴いてたんですけど、ヒップホップを感じる曲が多い。でも前回の「ディア ロンリーガール」と比べると、「新約」はさらにヒップホップになりましたよね。歌い方もトラックも。俺はどっちかというと「新約」のほうが好きです。最近のUSヒップホップの感じとかをしっかり抑えてる気がする。

とまん 歌詞も10年以上を経験した人間のものになってますね。12年前の「ディア ロンリーガール」を聴いたときの気持ちから、僕もその分、成長していて。曲と一緒に成長している感覚になりました。歌詞もだからか、強くなっていますよね。昔は少しネガティブ要素があったんですけど、さらに大人に、強くなってる。

──私も中学生当時に、お母さんとうまくいってない友達とかとカラオケで歌ってたんですけど、やっぱり反抗心がこの曲にはあるなと思います。校則とか親とかに中指立てるような。

とまん 中学の頃ってミリヤさん、清水翔太さん、青山テルマさんって神のような存在だったんですよね。新しいMVにその3人が同時に出てるっていうのはすごいことです。

Spikey MVには渋谷のいまの流行りというものを入れたくて。そういう意味で、今年のストリートシーンを考えるうえでJP THE WAVYは外せないなと思って出演してもらいました。他にも入れたいなと思ったとき、青山テルマさんも清水翔太さんも最近出したMVで同じロケーションで撮影していて。ミリヤさんと同じ界隈の人を入れたかったというのもあるし、気付く人がいればいいなっていう隠しネタとして入れてみました。

MVには加藤ミリヤさんやSpikey Johnさんと関係の深い人が多数出演している

Spikey 実は女性はAwichiさん(YENTOWNの女性ラッパー)とミリヤさんしか撮ったことなくて。Awichiさんとはもう友達みたいな感じなんですけど、ミリヤさんは初対面だし、憧れだった人なんですけど、ラッパーよりはやりやすかった気がします(笑)。

──とまんさんはヒップホップを聴かないということでしたが、ミリヤさんに惹かれてるというのは面白いと思います。

とまん 僕は曲を好きになるのって、声とか人間性よりも、歌詞で好きになっちゃうタイプなんです。ミリヤさんの楽曲はぜんぶミリヤさんが作詞されているんですが「ディア ロンリーガール」は16歳のときに書かれていて。僕は16歳のときにこう思えたかな? とか考えてしまう。いつ聴いても大人というか、いろいろ経験されていたことを感じとります。気持ちの持ちようとか、ファッションとかも憧れますね。

アイナ 改めて言うと、私は声が好きです。『HEAVEN』というアルバムがめっちゃ好きで。高校生のころは毎日聴いていたんですけど。その時の声と、2014年に出した「神様」の声は出し方が違っていて。
加藤ミリヤ「神様」
アイナ 初期の楽曲も一通り並べて聞くと、ぜんぜん歌い方が違うんですよね。でもずっとシンガーって、ふつうな状態から自分の良いところをピックアップして、集大成を極めていって──でも極めすぎるとマスターベーションなっちゃったりするんですけど、ミリヤさんはそうなってなくて、声が進化し続けている感じがします。

いまでも『HEAVEN』を聞くとかっこいいが詰まってるというか、芯がちゃんとある。ミリヤさんを聞くと、私も成長していきたいし、彼女みたいになりたいなと。ミリヤさんって「上手いでしょドヤ!」って感じがしないんですよね。 とまん 自分がそんなに強い人間じゃないから、こういう風になりたいなって思うのかもしれないですね。

──いまの10代を見ていて、自分たちがミリヤさんにのめり込んでいた10代のころと違いを感じることとかはありますか?

Spikey 若者のファッションとか、ストリートとか、人間はふつうに変わっていますよね。むかしはNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDとかいろんなラッパーがManhattanRecordsの前でMVを撮ったりしてたけど、そういう場所も今はあまりない。

アイナ みんながスマホを持っているから、SNSとかLINEで常に人と繋がっている気がして。私が10代の子どものときは用事があるときとか、まあ遊びで集合するときに電話するくらいで。だから集まるまではその人のことを忘れるというか「繋がってない」時間が多かった。

でもいまは人と繋がっている状態があたりまえになっているから、「新約ディアロンリーガール feat. ECD」の中で「ひとりが好きなだけ」というフレーズが繰り返されるけど、もしかしたら「独り」が怖いって思ってる子が多いんじゃないかなって。

だからミリヤさんの視点をちょっとだけ自分の視点に変えてみたら、独りも怖くないって思ってもらえるんじゃないかなって。なんか自分が書いた曲みたいに語ってしまった(笑)。

とまん (笑)。そうですね。そういうところが──いまの子たちは中身は若いんですけど、見た目がすごく大人っぽくい気がする。いまはいろんなファッションアイコンが大勢いて、おしゃれも取り入れやすくなってる。それこそSNSがあるからこそ、いろんな人をたくさん見れるようになって。昔は芸能関係じゃないと、プライベートなブログとか覗けなかった。

Spikey アイナさんが言ってる通りだと思うっすね。「ひとりが好き」ってミリヤさんは歌ってるけど──最近、飛行機で海外に行くことが増えて、そうするとケータイの電波が繋がらなかったりすることがあるんですよ。TwitterとかInstagramとか見れなくなると、みんな何やってんだろ?って急に思っちゃう。

でも昔は繋がってないことがあたりまえだった。だから「寂しい」というか「他人が気になる」ってことが増えたと思う。でもこの曲は独りのほうが落ち着くって歌っていて。そこがいまの若い子とちょっと違う部分で、強い部分だなと思います。

加藤ミリヤさんからのコメント

知らぬところで私の話をしていただくなんて何だか小っ恥ずかしかったですが、私の下の世代の子達ともちゃんと時代を歩んで来られていたのだと思うと嬉しく有難かったです。自分のことは中々客観視できないもので、こうやって私のことを語ってくださる人たちの言葉で勇気づけられます。

10代の頃はとにかく怒りがパワーでした。自分の気持ちを発散させなければやっていられなかっただけで、そんな私の歌を大切に聴いてくださった若者達が今現在眩しく輝いていることは私の生きる希望でもあります。

最近やっと勝手な自惚れで感じていた使命感から解き放たれた気がしていて、10代の頃と変わらずにこれからも暴れたい気持ちです。10代の頃、自分が大人になった時に自分よりも若い世代の人たちに上からものを言わない大人になりたかった。かっこいい大人になりたいと思っていました。只々我が道を行くだけ。それがかっこいい生き方だと思って自由に羽ばたきたいのです。 加藤ミリヤ

加藤ミリヤさんの公式サイトに行く

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