さてさて、新年度が始まったと思ったら、あっという間にゴールデンウィークも過ぎ去り、そろそろ5月病が流行る時期に突入しようかという今日このごろ。アニメファン的には、「4月から始まったアニメの継続視聴を判断する時期」でもあるのではないでしょうか。
作品世界の説明や主だったキャラクター紹介も一段落し、ストーリーもそれなりに進んだくらいのタイミング。ピクシブ百科事典には「第3話の悲劇」なんて単語もありますが、それだけ物語が大きく動いたり、作品の方向性が決まる時期と考えることもできます。
でも一方では、新年度の忙しいこの時期、なかなかアニメを見る時間が確保できず、録画がたまっている人もいらっしゃるのではないかと。
そんなわけで本記事では、現在絶賛放送中の春アニメのなかから、個人的なおすすめを6作品をピックアップしてご紹介! 「この作品を見てないなんて、遅れてるぅーーー!!」的なツッコミなどありましたら、Twitterでシェアする際などにコメントいただけますと幸いです。
文:けいろー 編集:ふじきりょうすけ目次
1. 『エロマンガ先生』
2. 『Re:CREATORS』
3. 『進撃の巨人 Season2』
4. 『サクラクエスト』
5. 『正解するカド』
6. 『月がきれい』
要素てんこ盛り! 業界ドタバタコメディ『エロマンガ先生』
原作は伏見つかささんのライトノベル。かんざきひろさんがイラストを担当しており、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(通称:俺妹)タッグによる作品ですね。既刊8巻。アニメ版は『俺妹』第2期同様、A-1 Picturesが担当しています。なんだか出落ちっぽいタイトルではあるものの、「ライトノベル作家の兄と、イラストレーターの妹が織り成す、業界ドタバタコメディ!」の文言からもわかるように、れっきとした業界モノ。
兄妹2人のほかにも、複数人のラノベ作家とイラストレーターが登場します。劇中では実在する作品もちらほらと見受けられ、ちょっとした小ネタも楽しめる模様です。 『俺妹』が人気作だったこともあり、原作未読者からも放送前の注目度は高かったようですが……いざ放送が始まると案の定。作品自体のおもしろさは言うに及ばず、“エロマンガ先生”こと和泉紗霧ちゃんの人気っぷりがさらにすごい。 pixivのランキングや作品閲覧データを見るかぎりでは、今期のアニメキャラクターとしては最上位に入るほどに多く描かれ、同時に閲覧されているようにも見えますね。Twitterでもよく見かける気がする。
「高校生ラノベ作家の主人公が書いている作品の担当イラストレーターが、同じ屋根の下で暮らす引きこもりの義理の妹だった」という、なんかもう諸々の要素と偶然性を積み重ねまくった展開によって、1話から掴みはばっちり。こんなの、おもしろくないはずがないじゃないか……!
また、本作のアニメ化に伴って『俺妹』とのコラボレーション展開が盛り上がっている点も、ファンにとっては嬉しいのではないでしょうか。
関連イベントでのコラボ企画やアニメイトでのグッズ販売のほか、『俺妹』の2人のヒロイン、きりりん(@kirino_kousaka)と黒猫(@kuroneko_daten)の両Twitterアカウントも活発に。
どうやらアニメ本編に『俺妹』キャラが登場するとの噂もあるらしく、放送から目が離せません。来年4月から、ついに『エロマンガ先生』のアニメが放送するわ。ニコ生によると、私たちも少しだけ登場するそうだから……期待して頂戴。
— 黒猫 (@kuroneko_daten) 2016年12月10日
アニメ好きや創作者にこそ深く突き刺さる! 『Re:CREATORS』
ちらっと世界設定を見て気になっていたのですが、「Fate」シリーズの奈須きのこさんがブログでべた褒めしているのを見て視聴を決定。こりゃあ見るしかあるめえ、と。奈須さん自身、『Fate/stay night』と関連作品で過去の英雄を数多く登場させているシナリオライター。そんな人が、“漫画、小説、アニメ、と多くの娯楽を楽しんできたユーザーほど、『レクリエイターズ』は突き刺さる”とまで書いていたら、そりゃあ気にならないわけがありません。
実際に4話まで視聴した実感としても、同様の感想を持ちました。付け加えるなら、「クリエイター」として何らかの創作活動をしている(していた)人にこそ、特に深く突き刺さりそう。
アニメ劇中世界の創作作品のキャラクターたちが現世に現れ、彼ら・彼女らを生みだした「創造主」である原作者たちも巻き込みながら、突如として起こった一連の現象と、核心に近いところにいるとされる「軍服の姫君」の謎に迫っていく、そんなストーリーです。
「創作物のキャラクター(あるいは実在した歴史的人物)が一堂に会するバトルもの」と考えれば、それなりに事例が思い浮かぶかもしれません。
ただ本作の場合、登場するキャラクターはみんな「創作者によって生み出された架空のキャラクター」であり、しかも個別には何の関連性もないキャラクターが集っているため、ごった煮感があっておもしろいんですよね。
第2話では、そんな多種多彩な創作物のキャラクターが集うことによる設定の妙が感じられました。「魔法少女アニメ」から現れた、魔法少女・煌樹まみかの異色っぷりがとにかくすごかった。
けれど、現実世界(もしくは一定レベルのリアリティが保証された創作世界)でその理屈は一切通用せず、痛みはあれば血も出るし、話し合いで解決しない問題だってある。
まみかの「おかしいな……こんな……普通、血なんて出ないのに……」という台詞が、そのギャップを端的に示していました。
そういった、作品ジャンルによってはっきりと異なる「価値観≒お約束」の存在と、それが戦闘能力にも影響しているらしいことが『Re:CREATORS』では描写されており、見ていておもしろく感じられたのでした。
上記のような設定部分を考察するのも楽しいですし、4話ではすべての創作者に対して「創作活動にへの向き合い方」「自分の作品に対して真摯であること」を問うような、メッセージ性も見え隠れしていました。
また本作は、原作・脚本・シリーズ構成・キャラクター原案を、漫画『BLACK LAGOON』の広江礼威さんが担当。
監督は『Fate/Zero』『アルドノア・ゼロ』などを手掛けたあおきえいさん、そして『アルドノア』と同じく音楽を担当し、アクションシーンを彩る澤野弘之さんの楽曲も魅力のひとつ。全体的にクオリティの高い作品として、最後まで安心して見ることができそうです。
……ふと思ったのですが。「魔法少女アニメ」が現実世界に即した『Re:CREATORS』であのように変換されるなら、「ギャグ漫画」のキャラクターが登場してしまったら、もしかすると能力的には最強クラスになるのでは……?
4年ぶりの第2期も高クオリティ『進撃の巨人 Season2』
2013年4月から半年間にわたって放送された『進撃の巨人』の第2期が、4年の時を経て放送開始! 第1期最終回の25話に続く形で、26話から1クール分の放送となるようです。アニメ版『進撃』と言えば、第1期が人気を博していたことを覚えている人も多いのではないでしょうか。放送前こそ、「立体機動を映像化することなんてできるの……?」という声もあったと記憶していますが、蓋を開けてみれば、超高クオリティの作画とカメラワークによってド迫力のアクションシーンになっていました。
しかも、最後まで迫力のアクションシーンとして維持されているというとんでもなさ。Linked Horizonの主題歌「紅蓮の弓矢」やリヴァイ兵長などのキャラクター人気も手伝って、幅広い層から支持を集めました。
やっぱり映像になるとアクションが映えるし、声優さんの演技が加わることによる臨場感。原作と時差があるため、「そういえばこんなエピソードもあったなー」と若干の新鮮さも感じられるのがおもしろいですね。
原作でも人気のある、クリスタに介抱されるライナーのシーン「(結婚しよ)」では、なぜか妙な緊張感が走った。
最新22巻(2017年5月時点)まではやらないにしても、1期の半分の枠でどこまで進めるのかという部分は気にかかります。
ストーリー展開のペースやオープニング映像を考慮して、だいたいあの辺までやるのかしらと想像することもできそうではありますが、区切りよく最終話を迎えられるような構成となると……?
また、5月17日には、『進撃』の世界を存分に堪能できるLinked Horizonの2ndアルバム『進撃の軌跡』も発売されるので、そちらも要チェックですね。【2nd AL『 #進撃の軌跡 』5月17日発売】現在放送中のTVアニメ「進撃の巨人Season2」OP主題歌『心臓を捧げよ!』を含む歴代の主題歌5曲を全て収録!#LinkedHorizon がアルバム1枚で描く「進撃の巨人」の世界…必聴です! #リンホラ #shingeki pic.twitter.com/rIx8dqUVtF
— Linked Horizon 情報局 (@L_Horizon_info) 2017年5月1日
アニメ1期、2期、劇場版の主題歌やイメージ曲らしき楽曲リストに混ざって、「14文字の伝言」という曲があるのが無性に気になる……。Sound Horizonのアルバム『Roman』に収録されている「11文字の伝言」と関係が……?
国王と町おこしとチュパカブラ!PAのお仕事ドラマ第3弾は、人間味ある「町」の物語〜『サクラクエスト』
『花咲くいろは』『SHIROBAKO』に続く、アニメスタジオ・P.A.WORKSの“お仕事シリーズ第3弾”。──とくれば、見ないわけにはいかないでしょう!高校生と新入社員、それぞれの奮闘を描いた第1、2弾に続く本作の主人公は、卒業間近の短大生・木春由乃。1話のっけから就職活動の面接シーンで始まるという──数年前に就活を経験した身としては、胃が痛くなりそうな第一印象を持ちました(ピンク髪は合否に関係ないから! ……たぶん)。
木春が流されるままにたどり着いたのは、廃れたミニ独立国をいまだ続ける過疎地域・間野山。「こんなはずじゃなかった!」と東京に帰ろうとするも、なんだかんだで国王として観光大使を続ける決意をする。
同世代の仲間も得て、どこにでもいる普通の女の子5人による、1年間の町おこし活動が始まった……! という、(きっと)ハートフルなアニメ作品。
口うるさく空回りしがちだけれど、地元への思いはアツい観光協会長のおじいちゃんに、会長と犬猿の仲の商店会長のおばあちゃん。妙な発明品を作る製作所のおじちゃんに、謎の金髪イケメン外国人・サンダルさんなどなど(サンダルさんは5話でいろいろと明らかになりましたね)。
魔法やバトルがあるわけでもなし、劇的な変化が起こるでもなし、急に何かが大成功したり大失敗したりするようなこともなく、4話時点でも淡々と進んでいる印象。とはいえ、過去の“お仕事シリーズ”同様、メイン5人と周囲のキャラクターの背景と性格、各々の関係性を丁寧に描いていて、話を重ねるごとに愛着が湧いてきている感じ。
改めて4話までを見返してみても、基本的には主人公を軸にして物語が進む一方で、ほかの主だったキャラクターもほぼ毎回のように顔を出しており、大なり小なりストーリーに関わってきているんですよね。 つまりは、5人の女の子の成長物語でありながら、同時に「町」の物語でもあることが伝わってくる構成といえるでしょうか。それも住人A、Bといった記号的な人物ではなく、ちゃんと名前があり、各々が町に対する思いを持ち、日常を過ごしていることがわかる、生きたキャラクターとして描かれているように感じられました。
各々に思うところがあり、理不尽なようでいて、裏では理由があったり、全否定しているように見えて妥協している面もあったり。……サンダルさんだけは、なんか「うっかり別世界から飛んできた」と言われても違和感のない色モノに見えなくもないけれど。あれ、ここだけ『Re:CREATORS』かな?
そんななか、ゆるーくお話が進んでいるように見えながら、4話では表立った「衝突」も描かれるなど、徐々に物語が動き出していることが感じられるこのごろ。
テンプレート的な“わかりやすさ”を持ったキャラクターばかりではなく、人間味の感じられる町の人たちに対して、彼女らはどのようにアプローチし、そのギャップを埋めていくのか。今後の展開が気になります。
「交渉」によって描かれる未知との遭遇と、人類に投げかけられたメッセージ『正解するカド』
東映アニメーションによるオリジナルアニメ。作品世界を構築するにあたって、『「映」アムリタ』『2』『know』などで知られる小説家の野崎まどさんが脚本として参加しています。PVを見て気になっていたので、Amazonプライム・ビデオで配信中の第0話から視聴。これは、メインキャラクターである真道幸路朗と花森瞬を中心とした「交渉」にまつわる前日譚が描かれており、ラストが1話冒頭につながる内容です。
というのも、第0話では超常的な存在である「カド」がラストまで登場せず、ほとんどキャラクター同士の会話劇の形で進んでいたこともあって、まったく「CGらしさ」が感じられなかったんですよね。
今の今までCGアニメを見ていたとまったく気づかず、終盤の飛行機への搭乗シーンを見て、やっと初めて違和感を覚えたくらい。「……あれ? なんかこの動き、CGっぽくない?」と。それで公式サイトに飛んでみたら、“この動き”どころか1から10までフルCGだったという。マジでびっくりしました。
これほどまでにCGキャラクターに違和感を感じなかったのは、映画『楽園追放 -Expelled from Paradise-』以来──。
そう思って作品情報をよくよく見てみたら、そもそも『楽園追放』も『正解するカド』も同じく東映アニメーション制作であり、どちらも同じ野口光一プロデューサーが関わっている作品とのこと。そりゃあ違和感もないっすよね……納得。
他方で現時点でのストーリー展開を見てみると、「未知との遭遇」を描いた作品でありながら、その中心にいるのは外務省の交渉官であり、最初から対話ありきの「交渉」によって物語が展開していくのもおもしろい。#正解するカド pic.twitter.com/nWXVQa0YxI
— 「正解するカド」公式 (@Seikaisuru_Kado) 2017年3月23日
第1話では政府と関係各省の連携、会話劇が描かれていることから、昨年の映画『シン・ゴジラ』を思い浮かべた人も多いかもしれませんね。
ただ、本作における政治的な駆け引きは一要素でしかなく、焦点となるのはむしろ異方より訪れた謎の存在・ヤハクィザシュニナとの「交渉」であり、人類が何を考え、何を選択するかという「過程」にあるという印象を受けました。
2話ラストのザシュニナの台詞からしてメッセージ性の強い物語であることは間違いなく、劇中でもたびたび物事の本質に迫るような問いが投げかけられている本作。
ともすれば説教臭く感じられるテーマかもしれませんが、個人的にはまったくそのようなイメージは受けず、エンタメ作品として純粋に楽しんでおります。“貴方達は考え続けなければならない。私が敵なのか味方なのか”
“常に思考し続けること、それが世界における唯一の……正解だからだ” ヤハクィザシュニナの台詞/第2話「ノヴォ」より
「中学生あるある」と思春期男女の恋愛模様『月がきれい』
今期、個人的にイチオシの作品。特に前情報もなく1話を見てみたら、最初に画面に映ったワンカットで「これ川越だー!」と興奮した元埼玉県民、それが私です。……もちろん、何も「身近な街が舞台になっているから」視聴を決めたわけではございません。一口に言えば、1話のわずか24分程度からあふれんばかりに感じられる、「これだよ」感がすごかった(どれだよ)。
中学生の初々しい恋愛模様と、思春期の心の機微を描き出す淡い色彩の映像。そして随所に散りばめられた「中学生あるある」なキャラクターの細かな所作と声優さんの演技。諸々の要素が組み合わさった結果、「これだよ……!」と強く惹きこまれてしまったのでした。──顧客が求めているもの? そんなの知らん! これは、僕個人が強く求めていたアニメです。わぁい!
『月がきれい』は、思春期真っ只中にいる中学3年生の男女の恋愛模様を描いた物語。『瀬戸の花嫁』『Angel Beats!』『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』などを手掛けた岸誠二監督によるオリジナルアニメです。
主人公の男の子とヒロインの女の子、2人を中心に物語が展開していきますが、公式サイト上で「相関図」が用意されているあたり、複数のキャラクターが大なり小なり関わりながら物語が進んでいくと想像されます。今のところ、恋の矢印が入り乱れるドロドロ展開にはならなそうだけれど……?
1話の時点から、校内をはじめとする背景の作画や、教室内でのキャラクター同士の絡みや、それを演じる声優さんの自然な演技など、リアルな経験に根ざしたような「中学生らしさ」がビンビン伝わってきてすごい。
気心の知れた男友達との絡みを見て己を振り返り、無意識に気になる異性を見てしまう視線の動きと聞こえる呼吸音から、「ちょっと気になる」くらいの恋心の萌芽が垣間見えてドキドキする。……わかるわ、始業式の教室ってあんな感じだった。
さらには、「あまり話したことのないクラスメイトと学外で会うと気まずい」という身に覚えのあるエピソードにクスッと笑い、「だけど保護者はそんなことはお構いなしに挨拶に行ってウフフ、オホホを始めるから、さらに気まずくなる」流れにはニヤニヤせざるを得ない。
加えて、「中学男子あるある」としてはおなじみの、「女の子の視線を意識して、普段は飲まないコーヒーを飲もうとする」主人公に思わずほっこり、生暖かい目線を送ってしまうのです。お前は俺か……。
舞台が川越ということもあり、地元民や観光で訪れたことのある人であれば、よく知る町並みや寺社仏閣が見られるのもポイント。ことあるごとに主人公が引用する「太宰治」だったり、近所のお兄さんから借りたレコードが「はっぴいえんど」だったりと、随所から古き良き“文化”の匂いもする。(何かこじらせたことのある)文系男子は必見ですぞー!
ちなみに、南健プロデューサーへのインタビュー記事によれば、“「アニメで『中学生日記』をやる」というのが僕らの標語の一つ”なのだとか。
……なるほど、納得。この標語にピンときた人は、今からでも遅くありません。見ましょう。いや、見るのです。
アニメ好きにオススメなインタビュー!
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