【レビュー】娘を嫁がせるなら怪獣映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』がいい

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【レビュー】娘を嫁がせるなら怪獣映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』がいい
【レビュー】娘を嫁がせるなら怪獣映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』がいい

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

POPなポイントを3行で

  • 『ランペイジ 巨獣大乱闘』こそ誠実な映画
  • 地球で一番面白い男「ドウェイン・ジョンソン」をフル活用
  • 裏切らず、観たいものを観せてくれる
エンターテイメントにおいて、誠実であるということは一体どういうことだろうか

語義通りに考えれば、誠実であるということは真面目で真心があるということだ。であるならば、エンターテイメントにおける誠実さというのは、観客が見たいと思っているものをちゃんと見せ、盛り上げるべきところを盛り上げ、木戸銭のぶんだけは楽しませるということになりはしないだろうか。

現在公開中の『ランペイジ 巨獣大乱闘』は、まさにこの誠実さが魅力の映画である。「巨獣大乱闘」というサブタイトルの通り、巨獣がちゃんと大乱闘する。そこに嘘やごまかしは全くない。素晴らしいことだと思う。

文:しげる 編集:新見直

巨大化した動物たちを止める映画

『ランペイジ』のストーリーはシンプルである。悪い大企業が宇宙で実験していた「なんか動物を巨大化&凶暴化させ、さらに戦闘能力を高める物質」みたいなものが事故で地球に落下してしまい、それに感染した動物たちがシカゴを襲う。
映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』予告
感染したのは、サンディエゴの野生動物保護区で飼育されているアルビノのゴリラ"ジョージ"、ワイオミング南部の森林地帯に現れた巨大な狼"ラルフ"、フロリダの国立公園から北上するクロコダイルの"リジー"。

3種類の獣と、事態の隠蔽を図る悪い大企業、そして対応にあたる軍。その狭間で、我らがドウェイン・ジョンソン演じるデイビス・オコイエがなんとか収拾をつけてゴリラのジョージを助けようとする……というお話だ。

地球で一番面白い男 ドウェイン・ジョンソン

前述のように、主演はドウェイン・ジョンソンである。なんといっても最近のドウェインは完全に確変に入っている。今や何をやっても地球で一番面白い男となったドウェインの今回の役所は「元特殊部隊員で、軍を退役後は国連の対密猟チームに所属し、現在は動物学者」。盛りすぎである。

しかし、中身はドウェインだ。どれだけ設定を盛りに盛られても、あの体格ならば大丈夫である。というか、この設定で押し通せる人間は、現在地上にはドウェインしか恐らく存在しないだろう。 ゴリラのジョージを保護して育て、今や親友同然に心を通わせ、手話で下ネタのジョークまでやりとりできるという心優しいタフガイの動物学者を嬉々として演じている。

1秒もモタつかない

『ランペイジ』では、とにかく物事がハイスピードで発生する

「謎の研究によってなぜ動物が巨大化し、なぜそれが危ないのか」みたいな部分は全て冒頭の字幕のみで説明し、開始直後にいきなり宇宙ステーションが爆発! でかいネズミ! ネズミでアレなら他の動物ならどうなっちゃうの……! というところで動物が巨大化する物質が地表にブチ落ちてくる! この間5分である。 ドウェインがどういう役なのかという説明も、びっくりするほど早くてスマートでわかりやすい。

まず初登場の際、ドウェインは背中から画面に現れる。強い男は背中から現れるものだからである。ご丁寧に、その後ろにはモテようとして話を盛っているペーペーの飼育員みたいなのまでいる。こいつはすぐ顔から映る。強くないからだ。

ジャングルの中を歩くドウェイン一行。まだドウェインの顔は映らない。突如として「止まれ」というハンドシグナル(グーに握った手をサッと上にあげるやつ)を出すドウェイン。ハンドシグナルに合わせて「デーン!」みたいな音まで出る。

そしてゆっくりとドウェインが振り返り、ニヤリと笑いながら「お前、話を盛りすぎやで」みたいなことをペーペーに言うのである。圧倒的リズム感。誰がどう見ても「こいつが主人公で、強い」というのがわかる演出。惚れ惚れする……!

『ランペイジ』という映画は、1から10までこのペースで進む。

「ヘリがあれば……!」というシチュエーションでは2秒でヘリが見つかるし、「凶暴化を止める解毒剤があれば……!」というシチュエーションでは10秒で解毒剤が見つかる。

ドウェイン本人がヘリを操縦できる設定だから(このドウェインのヘリ操縦シーンは、昨年日本公開された大傑作『セントラル・インテリジェンス』を見ておくとより楽しめるだろう)「パイロットを探さないと」みたいなモタモタした展開もないし、悪役はマジで悪い。この映画の目的以外の部分には一切脇目をふらないのだ。

観たいものを観せてくれる。それが『ランペイジ』

では、この映画の目的とはなにか。それは「ドウェインとゴリラが戦ったりイチャついてるところを見たい」「でかいゴリラやオオカミやワニが暴れるところが見たい」という我々の欲求を満たすことなのである

『ランペイジ』は、この目的のためだけに猪突猛進する。徐々に凶暴化するゴリラ。巨獣を殺しに行ったつもりが、返り討ちに遭うPMC(民間軍事会社)たち。ビルが倒れ、ヘリが堕ち、攻撃機はコクピットごと噛み砕かれる。 巨獣と言いつつ、ゴリラのジョージは最大でも全高15mくらい、一番でかいワニのリジーですら全長70m弱というサイズ感なのも、独特の効果を生んでいる。というのも、ビルほどの巨大さではないので、ゴジラのように体格だけで外から建造物を倒すことができないのだ。

その代わり、巨獣たちは建物の表面を削るように飛び上がり、場合によっては中に入ってくるのである! 普通のビルは体長70mのワニが中に入ってくるようにはできていない。おまけに市民の避難もできていない。えらいことである。 おれは「ドウェイン・ジョンソンと巨大なゴリラが、同じくらい巨大な動物と殴り合う」という映画に1800円払った観客だ

だから、そういうものを見せてくれるものだと思って映画館の椅子に座る。それに対して、ちゃんとシカゴの街で暴れまわるゴリラとドウェインをフルボリュームで見せてくれる。おまけにワニもオオカミもついてくる。これが誠実で健全なサービス精神でなくて、なんだろうか。 「いい意味で観客の期待を裏切る」という言い回しを聞くことがある。だがしかし、いい意味だろうが悪い意味だろうが、裏切りは裏切りだ。『ランペイジ』にはそういうところが全くない。全身完全に誠実そのもの。娘を嫁に行かせるなら、こういう映画がいい。そんな、5月の空のような、大変に気持ちのいい作品だった。

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イベント情報

「ランペイジ 巨獣大乱闘」

公開
5月18日(金)より全国公開中
配給
ワーナー・ブラザース映画

【ストーリー】
ある遺伝子実験の失敗によって、ゴリラ、オオカミ、ワニなどの動物たちが巨大化、凶暴化してしまった。
しかも動物たちの巨大化は止まらず、その姿はもはや巨獣と化してしまう。巨大化が止まらない巨獣たちは、
ある場所を目指して、北米大陸を破壊しながら横断していく。やがて一か所に集結した巨獣たちは、街を舞台に大乱闘を始める。
崩れ落ちる高層ビル群。逃げ惑う人々。軍隊も出動するが、破壊を止めない巨獣たちには銃もミサイルも効かない。
巨獣たちの目的はいったいなんなのか?彼らはどこまでデカくなるのか?
人間は地上最強の生物となってしまった巨獣たちの大乱闘を止めることができるのか?
『パシフィック・リム』『キングコング:髑髏島の巨神』に続く、巨大怪獣パニック・アクション!

【スタッフ・キャスト】
監督:ブラッド・ペイトン 出演:ドウェイン・ジョンソン、ナオミ・ハリス、
マリン・アッカーマン、ジェイク・レイシー、ジョー・マンガニエロ、ジェフリー・ディーン・モーガン

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しげる

Writer

1987年岐阜県生まれ。プラモデル、アメリカや日本のオモチャ、制作費がたくさんかかっている映画、忍者や殺し屋や元軍人やスパイが出てくる小説、鉄砲を撃つテレビゲームなどを愛好。好きな女優はメアリー・エリザベス・ウィンステッドとエミリー・ヴァンキャンプです。
https://twitter.com/gerusea
http://gerusea.hatenablog.com/

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