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「私の歌で『ゴジラ』の絶望を希望に」19歳女性シンガーXAIが語る“祈り”
2016年、第8回「東宝シンデレラ」オーディションに新設されたアーティスト賞。その初代受賞者である女性ソロシンガー・XAI(サイ)が、ゴジラ史上初のアニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』(2017年11月17日公開)の主題歌「WHITE OUT」でデビューする。

プロデュースを中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)さんが担当し、作詞を蒼山幸子(ねごと)さんが手掛けた「WHITE OUT」。日本でアニメーション映画が公開されて100周年という節目に、60年以上続く「ゴジラ」シリーズ初となるアニメーション映画版の主題歌に抜擢された彼女は何者なのか?

わかっているのは短いプロフィール程度で、XAIというアーティストは謎に包まれている。

アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』本予告

彼女は「WHITE OUT」を「さまざまな〈救い〉を与える楽曲」と表現した。そして、自身もかつて「音楽に救われてきた」人間だったと語る。

彼女にとって歌とは、音楽とは何なのか? 弱冠19歳、偶然にも本作上映日の11月17日で20歳の誕生日を迎える彼女が逡巡しながら紡いでくれたのは、映画『GODZILLA 怪獣惑星』や「WHITE OUT」について、そして歌に込めた切実な思いだった。

取材:新見直 文:鈴木梢

「東宝シンデレラ」で歌ったのはシェリル「ダイヤモンド・クレバス」

XAIさん

XAIさん

──「東宝シンデレラ」オーディションは、ご自身で見つけて応募されたとうかがいました。

XAI そうですね。演劇を観に行ったときに、劇場でたまたまポスターを見かけて、直感で応募しました。「全国のシンデレラ、お迎えにあがります」というコピーが添えられていたのが印象的でした。

普通のオーディションはまず書類審査があると思うのですが、今回は「応募者全員に会う」というコンセプトで。しかも「こちらからうかがいます」とあって、本当に全国を周って直接会いに来てくださり、全員顔を合わせたうえで選考してくださったんです。歌って、音源だけじゃ伝わらないところがあると思うので、とても嬉しかったです。

──音源とライブではまた違いますしね。「歌を歌いたい」という思いは、どれくらいから持っていたんですか?

XAI 昔から、人間関係がうまくいく方ではなかったんです。中学でも高校でも、学校自体もあまり好きじゃなくて……そういうときに、何度も音楽に救われてきました。

これまで自分が音楽に救われたように、自分が歌うことで誰かの力になれたらという気持ちで、歌を歌いたいと思うようになりました。何かきっかけがあったというよりも、私としてはとても自然なことでした。

──それで、オーディションに応募されたんですね。『bounce』(タワーレコードのフリーマガジン)でのインタビューには、オーディションに向けて選んだ曲が、『マクロスF』シェリル・ノーム (starring May’n)の「ダイヤモンド クレバス」だったとありました。なぜこの曲にしたんですか?

XAI 私、『マクロスF』が好きで。もともと命を賭けて闘う作品が好きなんです。

『マクロスF』でも、シェリルもランカちゃんも、戦場で歌いますよね。生と死の間で闘う戦場に出て行って歌う彼女たちの姿に、憧れというか、すごく救われてきたんです。それで、オーディションではこの曲を選びました。

──まさに『マクロスF』は「歌で救う」話ですね。

XAI そうなんです。それでアーティスト賞をいただいた時は、嬉しいというよりは「私なんだ…!」とビックリして。正直、まだあんまり実感はないです。

『エヴァ』から『シン・ゴジラ』、そして『GODZILLA 怪獣惑星』へ

『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

────「東宝シンデレラ」オーディションって、実はゴジラとすごく密接な関係にありますよね

XAI 賞をいただくまでは、そこまで知りませんでした。東宝と言えば、(新宿の)TOHOシネマズにゴジラがいるなぁ……くらいに思っていました。

──歴代受賞者の沢口靖子さんや長澤まさみさんといった受賞者の多くが代々、何かしらの形でゴジラ作品に関わっているという特撮ファンからすると注目の賞です。

XAI そうなんですよね。

──だからこそ、新しく始まった「アーティスト賞」の初代受賞者であるXAIさんが、国産アニメ映画100周年でシリーズ初アニメ映画になる『GODZILLA 怪獣惑星』の主題歌を担当されるということで、大きな注目を集めています。ご自身としてはどんなお気持ちですか?

XAI 『シン・ゴジラ』がすごく好きなので、その延長にあるゴジラ作品、しかも東宝が大事にされている作品に関わらせていただけるのは、本当に光栄だなと思っています。

──『シン・ゴジラ』はどこに惹かれましたか?

XAI 『エヴァ』が好きなので、そのスタッフさんたちによる『シン・ゴジラ』ですし、音楽も『エヴァ』そのものだったのでグッと来ました。あと、「大人かっこいいな」ってなりました(笑)。

──たしかに。普通だったら足を引っ張る大人が登場したり組織同士が対立するみたいなリアリティーを持ち込みそうですが、『シン・ゴジラ』はほぼみんなが毅然と、同じ目的に立ち向かうという図式は印象でした。

XAI そうなんです! 『シン・ゴジラ』だけじゃなくて『GODZILLA 怪獣惑星』も、『マクロスF』と同じように、大事なもののためにみんな命を賭けて闘っていますよね。すごく簡単な言葉になってしまうんですが、感動しました。
『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

全3部作で、まだ第1部ですが、少なくとも観た後にずしっとくるものがあるじゃないですか。

──そうですね。本気で圧倒されました…。

絶望のち、希望

──最後、本編から「WHITE OUT」への入り方も含めて、作品にハマっていると思いました。物語やゴジラの壮大さに負けない、スケール感のある曲でした。
『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

XAI 曲の冒頭、ブレスで始まるんですが、それが、物語で絶望したあとに希望を感じさせるというか。他人事みたいですが、あったかい感じがしました。絶望に胸が詰まって、そこから息を吸う音でエンディングが始まる。

あそこでああいう風にブレスが使われることには、「始まり」とか「目覚め」とか、すごく意味があることだなと思ったんです。

──XAIさんの息遣いでハッと我に返る感覚はありました。演出的にも楽曲が考えられているというのは感じます。

XAI 始まりだけじゃなくて、曲の終わりもブレスの音で終わる。それも希望を感じられるように思いました。実は、(楽曲プロデュースの)BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之さんと、最後の歌い方については少しだけ認識の違いがあったんです。

レコーディングの際に、最後はもっとこういう歌い方をしたいとお伝えしたところ、中野さんは私の希望を少し違うように捉えて。その場では訂正したんですが、最終的にやっぱりブレスが印象的な終わり方になっていて、中野さんは曲の使われ方を含めていろんなことを汲んでくださったんだと今では思っています。

絶対に誰かの力になれる曲になった」と、そういう思いも含めて感動しました。『マクロスF』におけるシェリルがそうだったように、今回、作品における希望を表現するような主題歌を歌わせていただけたのは、本当に光栄でした。映画を観た方々にも胸に届くものがあればいいなと思っています。

闘いの中で人を想う歌があるのは自然なこと


──「WHITE OUT」が初めてのレコーディングだったそうですが、中野さんとはどのようにつくっていったんですか?

XAI 中野さんのスタジオへうかがって、ずっと一緒に話し合いながらつくっていただきました。曲ができていく過程をそばで聴いていました。

──具体的にどういったやりとりをされたんですか? 二人三脚でつくられたと中野さんはコメントされていました。

XAI 私の声の良いところはどこか、というのを考えながらつくっていただいて。さきほども言った通り、本当に丁寧に、いろんなことを汲んでいただいたなと感謝しています。

──作詞に関しては、ねごとの蒼山幸子さんですよね。蒼山さんとも作詞していただくにあたって事前にお話されたとうかがいました。

XAI そうですね。歌詞の中にある「花束」とか「冷たい星の果て」とか、私が言葉にした時に、どういう響きだったら綺麗になるかを考えてくださって。ほぼ「当て書き」という形でした。

──「WHITE OUT」という曲自体、XAIさんはどのように解釈されましたか?

XAI 中野さんが「これはラブソングだ」と仰ったときに、「あっ、そうだったんだ」と私は気づいて(笑)。

「惑星間の距離をも越えようとする力強く美しいラブソングになりました。歌声も素晴らしい。 作品に一つ世界観を与える曲が出来上がったと思います」 中野さん公式コメントより抜粋

──中野さんから聞く前は?

XAI 自然現象のホワイトアウトをイメージしていました。雪山とかで、周りが真っ白になって何も見えなくなってしまう現象。まさに今、これからデビューしていく自分もそういう環境にいて。

歌詞では「冷たい星の果て」と表現されていますが、広い場所で何かと出会っていく……今後私の歌を聞いてくださるかもしれない人、人だけじゃなくてこれからの未来に出会う。私は、そういった意味を込めて歌いました。

──真っ暗闇ではなく、何も見えないけど真っ白だから、これから自分の色で塗っていくことができるかもしれない、と。でも、なぜ『GODZILLA 怪獣惑星』の主題歌がラブソングだったのか、不思議でもありました。

XAI ラブソングは恋愛のことだけではないと思うんです。戦場に出て行ってゴジラと闘うのは、みんな、自分のためじゃなくて誰かを想ってのことでした。私にとって、闘いの中で人を想う歌が必要とされるのは、すごく自然なことのように思えます。
『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

──なるほど。『シン・ゴジラ』評の一つとして、ゴジラの原点に立ち返っている、という指摘を思い出しました。つまり、キャラクターとしてのゴジラを主題にするのではなく、ゴジラに壊される、奪われる人たちを主軸にしている。

『シン・ゴジラ』が奪われた人たちの物語だったように、『GODZILLA 怪獣惑星』でも、「住処だけではなく、誇りも尊厳も、すべてを奪われた」とハルオが語っています。

『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

XAI そうですよね。ハルオはゴジラに両親も殺されています。

──ゴジラを討つ。それはハルオにとって、奪われてしまった人や残されている人を想う気持ちだというのはその通りですね。

XAI この先どうなるのかは私も全く知らないので、皆さんと同じ気持ちで続きが楽しみです。

生きるとは?

──『GODZILLA 怪獣惑星』のテーマの一つに、「人間の哀しさ」があるという話を聞いています。「やるべきこと」と「できること」の間には往々にしてギャップがあって、全力を尽くしても何の意味もないかもしれない。かと言って、ただ手をこまねいていることもできず、あがいてしまう。それこそが人間で、人間の抱えている哀しさだと。

実際、『GODZILLA 怪獣惑星』は強烈でした。脚本はもちろん、「WHITE OUT」を聴いていても、包み込む優しさを表現されている一方で、物悲しさも感じました。


XAI 私は19年しか生きてないので、人間の悲しさみたいなものは正直まだわからないんです。でも、ゴジラを倒すために闘うしかないハルオには共感できました。だって、彼には、それ以外の選択肢がないじゃないですか。それが彼にとって「生きる」ということだと私は思うんです
『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

──XAIさんも「歌わないと生きていけない」と仰っていますね。

XAI 私も、「やるべきことをやる」というよりも、それ以外に選択肢がないというか……変に聞こえるかもしれないですけど。

──そんなことはないです。ただ、一般論で言えば、今19歳のXAIさんの目の前には未来の扉がいっぱいあって、選択肢は無限にあるはずじゃないですか。でもXAIさんは「私には歌しかない」と言う。それはなぜですか?

XAI なんでだろう……ハルオにとって闘うことが生きることであるように、私にとっても歌うことが生命活動において必要というか、生きることだと思っているんです。

確かにまだ19歳で、いろんな可能性を持っているのかもしれません。他にすべきこと、できることもあるかもしれません。けど、歌うことが私にとって生きるっていうことだと信じています。なんだか、うまく言葉で伝えられないですけど。

音楽は祈り

XAIさん

XAIさん

──今回同時にリリースされるミニアルバムに関わられている方々も、非常に豪華ですよね。カルチャー度が高いというか。TeddyLoidさん、agraphの牛尾憲輔さん、クラムボンのミトさん、『攻殻機動隊』脚本家の佐藤大さん……

XAI 豪華ですよね…PA-NONさんは劇場版『マクロスF』の歌詞をされている方ですし。皆さんが私の声を聴いて、どういう曲を書いてくださるのかすごく楽しみでした。

──提供いただいた楽曲から、どんなことを受け取られましたか?

XAI 皆さん、音楽で生きてらっしゃるじゃないですか。そういう大人に会うことが本当に初めてだったので、まずそこから印象に残っています。音楽の中にいらっしゃる方々じゃないですか。その感覚とか、すごいなって。

レコーディングの時も、一分一秒試されてるな……と思って。今までごく普通に生きてきたから、そういう大人の方々に出会ったことで、アーティストとして成長させていただいた感じがします。

──公式コメントでも、「中野さんがまだデビュー前である私を“アーティスト“にしてくださいました」と仰ってましたね。

XAI そうですね。技術的に「こう歌ったらこう聴こえるだろう」とか、そもそも「音楽をするってどういうことなのか」とか……皆さんといろいろ話し合わせていただきましたし、中野さんからもたくさんのことを教わりました。

人だけじゃなくて。レコーディングをする時間帯が遅いと、レコーディングブースの窓から見えるマンションの灯りの感覚とか、タクシーで夜の道を漂っている感覚とか、そういったひとつひとつが、私をアーティストにしてくれました。

──「音楽をするってどういうことなのか」、もしそれを言語化するとしたら?

XAI 音楽をするって、私にとっては「祈ること」だと思うんです。つらいことがあっても、「WHITE OUT」の歌詞にあるように、「どんな嵐の上も青空は今日も続いているでしょう?」みたいな気持ちを抱くこと。

──音楽は祈りだと。XAIさんの公式プロフィールには「混迷する時代に光を与える」というフレーズがありますが、今の時代をどう捉えていますか?

XAI 今までは明るくてフワっとした曲が売れていたのに、最近では欅坂46のような「闘うぞ!」といったメッセージ性が強いアーティストが人気ですよね。そういったものが必要とされる時代なのかなって思います、10代の感覚的には。

──なるほど。XAIさんは影響を受けたアーティストにビヨンセを挙げていましたが、話をうかがっているとXAIさんには「強い女性、芯のある女性」が目標としてあるんですか?

XAI そうかもしれないですね。でも、「WHITE OUT」についてのコメントで、「さまざまな〈救い〉を与える」と言ったんですが、なんだか傲慢に聞こえてしまうかもしれないとは思っていて。「私の歌を聴いてもらうことで、少しでも力になれたら」という思いなんです。つらいときに思い出してもらえて、寄り添えるようなアーティストになっていきたいと思っています。

──最後に、今後の目標や野望みたいなものはありますか?

XAI 私はまだ、今後どういった音楽をやっていこうと決めているわけではないので、いろんなことに挑戦していきたいです。

ゴジラは作品の中でもあまり解明されていない未知の生き物ですよね。ゴジラの主題歌でデビューする私も、「未確認」を意味するXをアーティスト名に入れています。
『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

『GODZILLA 怪獣惑星』場面写

だから具体的な姿とか、こういうアーティストになりたいとか、そういった像のようなものはまだ抱けていません。

ひとつ言えるのは、私の歌を聴いた人の力になれたらと。私は音楽に救われてきたので、そういう思いを抱いている自分が歌うことにすごく意味があると思うんです。誰かの力になりたいという気持ちは、大事にしたい。本当にそれだけを思っています。

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XAI // サイ

アーティスト

音楽が大好きな両親のもと、幼少期からオペラのような古典から流行のポップスまで、

さまざまな“歌”が溢れる環境で育つ。「歌っていないと死んでしまう」「私にとって歌は酸素と同じ」とまで語るほど、常に自らの歌声と向き合いながら生きてきた。そんな XAI の歌声は、壮大な音像を歌 で自由に描き切る神秘的な表現力と、聴き手の心に寄り添い語り掛けるような、温かみのある説得力をも併せ持つ。混迷する時代に光を与える、類稀な才能を有するアーティスト XAI が『GODZILLA』主題歌 「WHITE OUT」ではじめてそのベールを脱ぐ

XAI

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