9月21日から24日にかけて千葉・幕張メッセで開催された国内最大級のゲームの見本市「東京ゲームショウ2017」(TGS)。
「さあ、現実を超えた体験へ。」と題されたイベント全体のテーマや、“VR元年”と呼ばれた昨年を上回り、出展タイトルを110から117に伸ばしていることなどから、VRに対する期待はまだまだ高いことがうかがえる。
しかしながら、『PlayStation VR』(PS VR)や『HTC VIVE』などのヘッドマウントディスプレイが大きなサプライズとなった昨年以上の衝撃を受けるのは難しいのでは? と思うのが正直なところ。
映像に革命をもたらしたと言っても過言ではない視覚的VR技術の先には、どんなものが私たちを驚かせてくれるのだろうか。TGS2017で注目されていたVR新技術・動向を紹介したい。
文:杉山大祐 写真、編集:ふじきりょうすけVAQSO VR_PV
チョコレート菓子「スニッカーズ」のような大きさ/形状のデバイスで、ヘッドマウントディスプレイに取り付け、匂いを出す。
ブースではさまざまなコンテンツが試せるのだが、なかでも目についた「VRサクラ」と「カウンターファイト」を体験させてもらった。 イリュージョンが制作するソフト「VRサクラ」。
女の子と2人きりの部屋で、近くに置かれたスイカや彼女が口にしているポッキー、そして、彼女自身の匂いをかぐことができる。
ちなみに、女の子の匂いをかいでみると、ほのかに香水の匂いがした。 一方「カウンターファイト」はラーメン店の店主となり、次々に現れる客の注文に応え、売上を競うというもの。
餃子を焼くときやラーメンを作るときにそれぞれ匂いが出るコンテンツだったが、体験者があまりに多くデバイスの調子が悪かったのか、総じて焦げ臭い匂いという印象だったのが残念だった。
視覚と比べると、嗅覚の情報量は少ないが、映像に合わせた匂いを感じられるのはたしかにリアリティが増す。
リリース後は、BtoBサービスとして匂いのカスタムに応じるとのことで、どんな匂いが開発されるのか楽しみな製品だ。
なんでも熱伝導モジュールを利用したデバイスで、モジュールを貼り付けたコントローラーやスティックを握りながらゲームをプレイすると、設定した場面に合わせて、熱さや冷たさ、痛みが手に伝わるというもの。
ちなみに、熱さと冷たさを同時に感じさせることで「痛み」を再現するということだったのだが、ただただ同時に熱いと冷たいという感触で、痛いという感じはしなかった……。
しかしながら、熱さと冷たさは本物。画面上でドラゴンが炎を吐く場面では、思わずコントローラーを離してしまうほど熱い。また、ボブスレーの画面に切り替わると、瞬時にコントローラーが冷たくなった。
はっきり言うと、あまり積極的に味わいたくない感覚だが、実装されていけばゲームに臨場感を与えてくれるのは間違いないだろう。
有線で何かに接続しながら遊ぶのは、動きづらいとまでは言わないものの、頭を動かす際に機器を壊さないよう気を遣ってしまうのだ。通常のゲーム機よりも接続する手間もあるため、プレイのハードルも高いように感じる。
そんな問題を解消するのがスタンドアロン型VR「pico」。ブースでは、すでに販売されている「pico goblin」のほか、開発中のデバイスも体験させてもらった。
いずれも、CPUやバッテリーなどをヘッドマウントディスプレイに集約させたスタンドアロン型にも関わらず、重さは400グラム程度と軽量。
特に開発中のデバイスに関しては、センサーが優秀なのか、自分の動きが画面上に違和感なく反映されていたように感じた。 ブースでは、複数の赤外線のようなものをくぐったり避けたりして、ゴール地点に向かうゲームを遊んだが、スタンドアロン型ならでは体験が印象的だった。
筆者のように部屋が狭い一人暮らしではどこまで楽しめるかはわからないが、従来と違った遊び方ができるのが強みだろう。
視線や頭の動きを感知してポインターのように使うのは操作が限られるし、別途コントローラーを用意した場合は、画面上に表示しないと落とした後に拾えない問題が発生し、表示する場合は世界観を崩さないようにしなければならない。
そもそも別途コントローラーを購入すること自体がライトユーザーを遠ざけてしまうかもしれない。
H2L社が開発したのは、そんな課題が解決できるかもしれないデバイスだ。その名も「FIRST VR」。 腕時計のような形状のデバイスを腕に巻くと、ベルトの裏側についたセンサーが筋肉の動きを検出し、AIが短期学習することで、手の動きに合わせて操作ができるという。First VR プロモーション 「母ご乱心編」
ブースでは腕を振ったり握ったりといった直感的な操作で皿割りを体験できる「母ご乱心」を遊んだ。
もちろん自分の腕がコントローラー代わりなので見失う心配がない上、動かすだけでなく掴むという操作も可能だ。
スマホをセットするタイプのヘッドマウントディスプレイで、9,980円(税込)と比較的安価なのもライトユーザーを呼び込めそうな点である。
VRとボクシングの組み合わせはまだわかるが、なぜそこにカラオケを足したのか……? と思ったのだが、試しにやってみたところ、ハマってしまいそうな爽快感があった。
VRで映し出されたリングでは、目の前に対戦相手がいる。それに向かってパンチを出してノックアウトするのが目的だ。パンチの威力は声量によって左右され、カラオケで声を出せば出すほど、強いパンチを繰り出せる。
無謀な組み合わせと思ったが、意外と納得してしまったのは、通常のカラオケより思い切り歌えたから。
歌詞が画面下部に表示されているものの、じっと見ている暇がないところが難点だろうか。出オチ感があったものの、想像以上に楽しめたコンテンツだった。
トレンドは早くも、視覚に何を加えれば、より臨場感が味わえるかという方向になっているようだ。
新しいゲーム体験が味えそうな分野なだけに、今後も動向を見守っていきたい。
「さあ、現実を超えた体験へ。」と題されたイベント全体のテーマや、“VR元年”と呼ばれた昨年を上回り、出展タイトルを110から117に伸ばしていることなどから、VRに対する期待はまだまだ高いことがうかがえる。
しかしながら、『PlayStation VR』(PS VR)や『HTC VIVE』などのヘッドマウントディスプレイが大きなサプライズとなった昨年以上の衝撃を受けるのは難しいのでは? と思うのが正直なところ。
映像に革命をもたらしたと言っても過言ではない視覚的VR技術の先には、どんなものが私たちを驚かせてくれるのだろうか。TGS2017で注目されていたVR新技術・動向を紹介したい。
文:杉山大祐 写真、編集:ふじきりょうすけ
女の子の匂いがかげる!? 匂いをプラスする「VAQSO VR」
国内外の9社とコラボし、VR/ARエリアのなかでも一際目立っていた「VAQSO」ブース。同社が発表したのは、VR体験に匂いを加える「VAQSO VR」である。ブースではさまざまなコンテンツが試せるのだが、なかでも目についた「VRサクラ」と「カウンターファイト」を体験させてもらった。 イリュージョンが制作するソフト「VRサクラ」。
女の子と2人きりの部屋で、近くに置かれたスイカや彼女が口にしているポッキー、そして、彼女自身の匂いをかぐことができる。
ちなみに、女の子の匂いをかいでみると、ほのかに香水の匂いがした。 一方「カウンターファイト」はラーメン店の店主となり、次々に現れる客の注文に応え、売上を競うというもの。
餃子を焼くときやラーメンを作るときにそれぞれ匂いが出るコンテンツだったが、体験者があまりに多くデバイスの調子が悪かったのか、総じて焦げ臭い匂いという印象だったのが残念だった。
視覚と比べると、嗅覚の情報量は少ないが、映像に合わせた匂いを感じられるのはたしかにリアリティが増す。
リリース後は、BtoBサービスとして匂いのカスタムに応じるとのことで、どんな匂いが開発されるのか楽しみな製品だ。
熱さ/冷たさがリアルに伝わる「THERMO REAL」
視覚に嗅覚をプラスして臨場感を出すのが「VAQSO VR」なら、触覚を追加しようと考えたのが、TEGwayブースの「THERMO REAL」だ。なんでも熱伝導モジュールを利用したデバイスで、モジュールを貼り付けたコントローラーやスティックを握りながらゲームをプレイすると、設定した場面に合わせて、熱さや冷たさ、痛みが手に伝わるというもの。
ちなみに、熱さと冷たさを同時に感じさせることで「痛み」を再現するということだったのだが、ただただ同時に熱いと冷たいという感触で、痛いという感じはしなかった……。
しかしながら、熱さと冷たさは本物。画面上でドラゴンが炎を吐く場面では、思わずコントローラーを離してしまうほど熱い。また、ボブスレーの画面に切り替わると、瞬時にコントローラーが冷たくなった。
はっきり言うと、あまり積極的に味わいたくない感覚だが、実装されていけばゲームに臨場感を与えてくれるのは間違いないだろう。
ワイヤレスですっきり! スタンドアロン型VR「pico」
『PS VR』を持つ筆者が思うVRデバイスの欠点は、コードを繋ぐことのわずらわしさ。有線で何かに接続しながら遊ぶのは、動きづらいとまでは言わないものの、頭を動かす際に機器を壊さないよう気を遣ってしまうのだ。通常のゲーム機よりも接続する手間もあるため、プレイのハードルも高いように感じる。
そんな問題を解消するのがスタンドアロン型VR「pico」。ブースでは、すでに販売されている「pico goblin」のほか、開発中のデバイスも体験させてもらった。
いずれも、CPUやバッテリーなどをヘッドマウントディスプレイに集約させたスタンドアロン型にも関わらず、重さは400グラム程度と軽量。
特に開発中のデバイスに関しては、センサーが優秀なのか、自分の動きが画面上に違和感なく反映されていたように感じた。 ブースでは、複数の赤外線のようなものをくぐったり避けたりして、ゴール地点に向かうゲームを遊んだが、スタンドアロン型ならでは体験が印象的だった。
筆者のように部屋が狭い一人暮らしではどこまで楽しめるかはわからないが、従来と違った遊び方ができるのが強みだろう。
自分の手がコントローラーに 筋肉の動きを検出する「FIRST VR」
ヘッドマウントディスプレイで目を覆ってしまう構造上、コントローラーをどうするかはVRコンテンツの課題だろう。視線や頭の動きを感知してポインターのように使うのは操作が限られるし、別途コントローラーを用意した場合は、画面上に表示しないと落とした後に拾えない問題が発生し、表示する場合は世界観を崩さないようにしなければならない。
そもそも別途コントローラーを購入すること自体がライトユーザーを遠ざけてしまうかもしれない。
H2L社が開発したのは、そんな課題が解決できるかもしれないデバイスだ。その名も「FIRST VR」。 腕時計のような形状のデバイスを腕に巻くと、ベルトの裏側についたセンサーが筋肉の動きを検出し、AIが短期学習することで、手の動きに合わせて操作ができるという。
もちろん自分の腕がコントローラー代わりなので見失う心配がない上、動かすだけでなく掴むという操作も可能だ。
スマホをセットするタイプのヘッドマウントディスプレイで、9,980円(税込)と比較的安価なのもライトユーザーを呼び込めそうな点である。
VR×ボクシング×カラオケ 無謀な組み合わせがなぜか楽しい「撲カラ」
最後に、新技術ではないが、VRコンテンツとしてかなりの異色を放っていたサービスを紹介したい。それは、プロディジ社が発表したVR×ボクシング×カラオケの「撲カラ」だ。VRとボクシングの組み合わせはまだわかるが、なぜそこにカラオケを足したのか……? と思ったのだが、試しにやってみたところ、ハマってしまいそうな爽快感があった。
VRで映し出されたリングでは、目の前に対戦相手がいる。それに向かってパンチを出してノックアウトするのが目的だ。パンチの威力は声量によって左右され、カラオケで声を出せば出すほど、強いパンチを繰り出せる。
無謀な組み合わせと思ったが、意外と納得してしまったのは、通常のカラオケより思い切り歌えたから。
VR空間を見ているため、人前にいる意識が薄れたのと、ボクシングをしながら歌うことで、ある意味うまさを気にする場合ではないので、歌うのが苦手な人でも楽しめそうだ。ボクシング×カラオケというアクティブなVRにあえてバラードで挑む杉山さん pic.twitter.com/QYmiHHepIC
— ふじきりょうすけ (@ryotankaiyou) 2017年9月29日
歌詞が画面下部に表示されているものの、じっと見ている暇がないところが難点だろうか。出オチ感があったものの、想像以上に楽しめたコンテンツだった。
VRコンテンツ、さらなる臨場感へ
久々にゲーム業界に技術的な驚きを与えてくれたVR。トレンドは早くも、視覚に何を加えれば、より臨場感が味わえるかという方向になっているようだ。
新しいゲーム体験が味えそうな分野なだけに、今後も動向を見守っていきたい。
TGSを振り返ろう
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杉山大祐
編集者、ライター
有限会社ノオト所属の編集者、ライター。企業のオウンドメディアの編集や執筆、SNS運用を担当。家庭用ゲーム機からPCゲーム、アーケード、アナログゲームまでをまんべんなく遊ぶ無類のゲーム好き。Twitter ID:@doku_sho
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