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“曲に込めた思い”みたいな嘘の上塗り、やめません?

TOKYO LOGICの代表・村田裕作4 ──確かに、ひとつの曲を通じて歌手だけでなく作詞や作曲に触れる楽しさ、それを伝える重要性は高いと思います。一方で、音楽をはじめとしたカルチャーは、コミュニケーションを盛り上げる消費財として扱われている傾向が強まっていると思います。かつ、その消費サイクルも年々早まっている。良いか悪いかではなく、現にそういう時代になっている中で、村田さんとしてはその流れに逆らっていく?

村田 クリエイターが尊敬されてないのって、日本くらいで。アメリカとかイギリスとか、音楽の本拠地では徹底してますよ。本当に。

自分が音楽の業界に入ったのは、20歳のときにイギリスへしばらく遊びに行って、そこで受けた衝撃が影響してるんだけど、現地の路上ミュージシャンのレベルの高さに引いた。お客さんからの投げ銭もすごい額をもらってて、演奏する方もそれを聴く方も、ここまで文化や環境が違うんだなって感じた。

──先ほどtofubeatsさんの話が出ましたけど、世界に目を向けると、ポーター・ロビンソンやマデオンなど、ネットを出自に持つアーティストが大ヒットしている実例があります。なぜ日本ではあまりそういう大きな流れが生まれないのでしょうか?

村田 フックアップのされ方の問題だと思うよ。日本だと「EDMのフェスに出た! すごい!!」とか、常に何らかのブランド志向がある。でも彼らは登場した瞬間から、「こいつはすごい曲つくるぞ!」と純粋に曲で評価されてる気がする。その違いが大きいんじゃないかなと感じます。

日本人は割と気質が受動的だから。もちろん、日本にもとんでもない才能をもったアーティストはいるんだけど、それをどうやって消費者に伝えるか。逆に言うと、伝え方が未熟だからユーザーが育たない。結果として、日本では彼らのような存在が生まれなくなっているのかも。

──ユーザーを育てるためにはどんなアクションが必要ですか?

村田 日本の「お客様は神様です」精神を見直さないと。ユーザーやお客のモラルの欠如は、昔よりずっと露呈しやすくなっていますから。

あとは、クリエイター自身がもうちょっと発信しなきゃいけないと思う。例えば、一般的な音楽雑誌だったら(前面に出てる)アーティストに対して取材するわけじゃん。でもさ、その裏でつくっている人間がまったく見えてこないのって、すごく違和感があるんだよね。

最近も、うちのアーティストが曲を提供した方が「この曲に込められた思いは?」っていう質問に答えてたんですよ。僕らとしては「えっ?」ってなるじゃん(笑)。「アナタつくってないよね?」って。

他にも「今回はなぜこの方向性? 意図は?」という質問の答えなんて、そうじゃない人もいるけど、「レーベルや事務所がそう決めたから」だよね。クリエイター選びまで本人でやってないわけだし。

ユーザーが育たない、スタッフやアーティストがクリエイターへの敬意を持たないのは、インタビューとか、公の場で、「一見すると最もらしい嘘の上塗りが過ぎてきたことが原因なんじゃないの?」と思います。

──そうなると、おっしゃる通り作詞家や作曲家が声を挙げるしかないと思います。

村田 作詞家・作曲家にも権利があるわけで、「自分たちはこういう思いでつくった」という声を挙げるのは、大事なことなんじゃないかな。

表面にしかスポットを当てないメディア側にも責任はある。みんな市場原理で動いているから、事情はわからなくもない。ただ、さも「私の意見です」とドヤ顔で言われるのは嘘くさいって、誰しも感じてるはず。口にはしないだけで。

──その場合、スポットを当てられる側、歌手はどうすればいいんでしょうか?

村田 「こういう気持ちを込めて歌いました」という話をすればいい。「私なりの解釈ではこう考えてます。」とか。と言うか、そんな感じで作詞家・作曲家に対してもっとリスペクトしたほうがいいと思う。昔は作詞や作曲する人は「先生」って呼ばれてて、歌手は彼らに厳しく磨かれてきた時代があったそうです。

現代にそれが必要だって話ではないけど、レコーディング現場で何も言わない、何も聞かないのは不健全。「この歌詞はどういう意味ですか?」「歌い方考えてきたんですけど、違ってたら言ってください」とかそういうコミュニケーションはあったほうがいい。

クリエイターに対するリスペクトの欠如は、音楽に限った話じゃないけどね。尊敬を込めて「この人と仕事がしたい」というよりは、単に売れてる人に頼むってケースが多くなってて、それはちょっと違うと思う。

売れてる人に集中するのは悪いことじゃないけど、じゃあなおさら大事にしてくださいよって思うことはある。クリエイターが大事にされれば、それが自然とファンにも伝わる。そうやってクリエイターが注目されることがもっと増えるといいよね。

印税は損害賠償じゃない

TOKYO LOGICの代表・村田裕作5 ──それは、アーティストだけではなく、メーカーにも責任があるような気がしますが。

村田 もちろん。作家業の場合はすごく指定が多くて、そこにどうやってオリジナリティを加えるか。その試行錯誤が続くのは、クリエイターにとってはある程度ストレスになると思う。

メーカーや人によることだけど、本当にクリエイターの実力を認めてるなら、自由にやっていいって言うだろうし、ガチガチの指定がくるってことはまだ実力が足りないのかもしれない。

「あの曲みたいな感じで」という指定が多い割に、肝心なところは言ってくれない。指定があっても、なぜそうするのかという理由を言わない。メーカーが明確につくりたいものがあって、クリエイターにはそれに必要な実力があると認めてくれてるから、なのであればいいけど、そういう意図やビジョンは、言わなきゃ伝わらないわけです。

背景を含めて細かく話してくれる人もいるけど、圧倒的に少ない。そういうお互いに対するリスペクトとコミュニケーションがあるだけで、僕らからお返しできることもあるはずなのに。

例えば、うちのアーティストが曲を提供した際、そのファンに叩かれたことがあって。正直、僕らもその方向性に疑問を持っていて、メーカーに「本当にその方向でいくんですか? 辞めた方がいいと思うんですけど」とまで言ったんですよ。それでもということで曲をつくってみたら、案の定「なんで今この曲なんだ」と、うちのアーティストがすごく批判された。

──良い時は歌手の手柄で、悪い時は作家の責任にされる。

村田 僕らも警告までしたのに耳を貸してくれなくて、いざ世に出したらその責任がこっちだけにくるっておかしいよね。

売れたら印税は入るから、それが損害賠償のつもりなのかもしれないけど、とはいえこのときはさすがに怒った。「いい加減にしてください、僕らはモノじゃないんです」って。

──ユーザーの育成という話がありましたが、レーベル側においても人材の育成が必要ということですね。

村田 僕もレーベルにいたからわかるけど、今のレーベルは人を育てられないと思う。そもそも努力してないディレクターが多すぎる。譜面が読めないなら習うとか、ディレクションがうまくいかないなら自分で歌ってみるとか。つまり、音楽に対して真摯じゃない気がする。

彼らがやっていることと言えば、書類を書いて、宣伝して、流通に意図を伝えて、ということの繰り返し。CD一つ一つの売り上げが減った結果、仕事量が増えてるからしょうがないのかもしれない。でも「しょうがない」で終わらせちゃったら、日本の音楽のレベルは下がる一方です。

よくみんなブラック企業で働いてますってSNSで文句言ってるけど、俺らもブラックディレクターの元で働いてますって言っていいかなって気持ちにもなるよ(笑)。

もっと言うと、クリエイター側にも問題はある。初音ミク以降、実力の伴わない似非クリエイターが増えて、それをメーカーが安く使ってる。アーティストも自分を担当するクリエイターのことを知らない。みんな何かしら抜けてるのかもしれない。

──環境として、真摯ではいられなくなっている面もあるとは思います。その部分を変えるとしたら、個人の意識からでしょうか。

村田 過去から学ぶことも必要だと思うよ。経験してないことは、自分の中で擬似経験をつくらないといけないから、「昔の現場はこうだった」みたいな話、僕は好きなんだよね。

そういう話を「ただの懐古主義か」って聞き流すか、感度高く聞けるかどうかって大事だと思う。

──先人に学びつつ、いまの音楽を取り巻く環境もきちんと見据えていく。

村田 そうだよ。いまこそ温故知新が流行るべきなんじゃない?

日本という市場を脱出したっていい

TOKYO LOGICの代表・村田裕作6 ──最後にTOKYO LOGICとしての今後についてお聞きします。2017年に入ってから、TOKYOLOGICMUSICやtoomidol(トゥーマイドル)と新たなレーベルを設立しています。特に空野青空さんのリリースが決まったアイドルレーベル・toomidolは、なぜこのタイミングなんでしょうか?

村田 結局は人のつながりだよね。発端としては、空野ちゃんが、ヒゲドライVANのドラマー・あやと君(篠崎あやと)の曲を聞いて「この曲をつくった人に(曲を)書いてほしい」って言ってくれて。そういうリスペクトがなかったら、うちがレーベルやる必要もない。

アイドルがやりたいというよりも、「空野ちゃんがたまたまアイドルだった」だけ。もちろん、いつかは自社でアイドルをやりたいとは思う、アイドルを通じて自分たちの好きな音楽をやってみたいと思ってるから。

ちょ、ちょちょ、ちょ、ちょーこれいと!!

──TOKYO LOGICのアーティストについて言えば、最近アジアからの引き合いも増えていますが、本格的に海外展開も視野に入っているんでしょうか?

村田 そうだね。外国人も雇ったし、人の力というか、僕らのクリエイティブをきちんと輸出したい。例えばK-POPだったら、ダンスミュージックは洗練されてるけど、ロックでカッコイイ曲ってあんまり目立ってない。そこは僕らが挑戦できるんじゃないかなって。

実になる/ならない以前に、自分たちに合っている市場がどこなのか、見定めるのが大事だと思うんだよね。これは国だけでなくあらゆるレイヤーで、という意味だけど。

外国では、多様性が認められるところが素晴らしいと思っていて。日本だと、例えば僕が今日のような話をぶっちゃけると「何偉そうに勝手なこと言ってんだコイツ」となるけど、諸外国では「そういう意見もあるよね」って受け入れたりちゃんと議論になったり、生産的なんだよね。

いろいろな場所で挑戦して、いろいろな人と出会っていく中で、結果的に、TOKYO LOGICのアーティストは、日本という市場が合ってないってことに気付いて皆でNEWYORK LOGIC立てたりしてね(笑)
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