2014年にメジャーデビューを果たした2人組の音楽ユニット「ORESAMA」。デビューシングル『オオカミハート』は、テレビアニメ『オオカミ少女と黒王子』の主題歌に抜擢された。
2015年5月には2ndシングル『ドラマチック』をリリースし、同年12月には1stアルバム『ORESAMA』を発表。人気イラストレーター・うとまる氏を起用すると共に、90年代のブギーファンクを下敷きにしたサウンドは高評価を得るなど、順風満帆に思われていたORESAMAだが、予期せぬトラブルにより、たった半年間でメジャー活動の終わりを告げられる。
そんな中、ORESAMAのボーカルであるぽんさんが、10代に人気の音楽SNSアプリ「nana」にて変名で活動を続け、人気を獲得。今年6月にその正体を明かし、「nana」で活動をするようになった思いを綴ったブログが話題となったのは既報の通りだ。
今回、そのぽんさんにお話をうかがえる機会を得た。あわせて、ぽんさんもアプリを利用して精力的な活動を行っているように、現在、ユーザー数200万人を突破し、若年層を中心に人気を博しているアプリ「nana」を手掛ける株式会社nana musicの代表取締役社長・文原明臣氏、「nana」で人気を誇るユーザー・ちるまさんにもご参加いただき、ぽんさんが「nana」で綴った思いの丈から、音楽アプリ「nana」の実情やユーザー文化までを幅広く語ってもらった。
なぜ、彼女は「nana」に惹かれたのか──その答えを明らかにしていこう。
取材・構成:須賀原みち 撮影:市村岬
文原 「nana」は、世界中の人たちといつでもどこでも誰とでも、歌や演奏でセッションできることをコンセプトにしています。僕は歌が好きで、特に好きな歌手のスティービー・ワンダーが参加している「We Are The World」という楽曲があります。2010年にハイチ沖地震が起こった際、YouTubeにアマチュア57人が歌った「We Are The World 25 For Haiti (YouTube Edition)」という動画がアップロードされました。2010年末にたまたまその動画を見て、すごいしびれたんです。 僕、「音楽で世界をひとつに」っていうコンセプトが大好きなんですよ。1985年の「We Are The World」のコンセプトは“USA for Afirca”で、あの楽曲に参加している歌手は全員アメリカ人。でも、それがハイチ沖地震の際には、インターネットの力で国境や人種を飛び越えて、一緒に歌い合っている。ただ、この動画だと日本人がいないんです。
それで、当時買ったばかりのiPhone3GSのボイスメモに歌を吹き込んで遊んでいた時に、思ったんです。今後、パソコンを持てないような貧しい国の人でも、スマホはみんなが持つことになる。もし、さっと取り出したスマホがマイクになって、そこに歌を吹き込むだけで地球の裏側にも歌が届いたら、本当の意味で「音楽で世界をひとつに」というコンセプトが実現できる。そう思って、「nana」というサービスをつくりました。
──そうやって、2012年8月にアプリがリリースされ、サービスが開始されたわけですね。実際に利用されている2人、ぽんさんとちるまさんが「nana」を知ったきっかけは?
ちるま 僕は、友達とカラオケに行こうとした時にちょうど雨が降ってて、結局「家で何かしよう」ってことになったんです。その時、友達から「nana」を教えてもらって、実際に歌を録ってみたら「これ、面白いな!」って。そこからドハマりしました。もともと「歌ってみた」とかボーカロイド系の音楽はニコニコ動画でずっと聴いていて、自分でも一度高校生時代に挑戦してみたんです。でも、録音→ミックス→アップロードっていう工程が難しくて、すぐに諦めたことがありました。そうしたら、「nana」が舞い降りてきた(笑)。
ぽん 私は、いろんなことがあって気持ちが落ち込んでいる時に、知り合いの方から「nana」を教えてもらいました。ちょうどその時の私の気持ちとしては、ORESAMAのぽんとしてではなく、何者でもない私の歌を誰かに聴いてほしかった。でも、私は楽器が弾けないので、「ツイキャス」で弾き語りをしたり、一人で路上ライブをすることも出来ない。それで、自分に自信がなくなりかけていたんです。
──ぽんさんは、その時のことを後に「nana」のブログにも書いていますね。“(ORESAMAとして)活動していく中で様々なことが起こり、わたしは徐々に自分の歌に対する自信を失っていきました。”と。
ぽん そうです。でも、「nana」だったら演奏をアップしてくれる人がいて、その伴奏に声を載せることができる。それが衝撃で、教えてもらったその日から始めて、2015年末から半年以上、毎日欠かさず歌を投稿するようになりました。それは、「ORESAMAを知らない人から私の歌がどう評価されるのか?」っていう、自分に対する挑戦でもありましたね。
──なぜ毎日投稿を続けたんでしょうか?
ぽん 単純に、その方が歌を聞いてもらえるチャンスが増えると思ったんです。なるべく「新着」にあがるようにして、聞いてもらっている人には毎日聴く習慣がついてくれればいいな、って。多い時には1日で3〜4曲投稿してました。昼から夜までずっと歌いながら、最初は上手くいかない悔しさで泣きながら録ったりして。
──結果、「nana」内で1万人以上のフォロワーを獲得されることになったわけですね。
ぽん 私は結構(時間が)かかる方で、一曲アップするのに最初は3〜4時間くらいかかっていました。アップする前に聴き直すと、ピッチが気になったり改善点が見つかったりして、録り直すんです。基本、全部一発録りなので。
──すべて納得いくものが録れるまで録り直していれば、確かにそれくらいの時間はかかりますね。
ちるま すごっ! 僕は逆に、何回も重ねる(重ね録り)タイプですね。最近はパソコン上で一回録音して、その音源を少し加工してから、音質を上げるためにiPhoneに外部マイクとしてオーディオインターフェースをつけて「nana」にアップしたりしています。1曲、最低でも2時間はかかりますね。
あ、でも最初にカラオケ遊びで録った音源は一発撮り、90秒録音して終わりでした(笑)。
──今ちるまさんが言った通り、「nana」はアップする音源の上限が“90秒”になっています。これはなぜですか?
文原 リリース当初の2ヶ月間は、60秒でした。今、携帯デバイスの文脈として、どんどん人の時間は細分化されて、ひとつのことに費やす時間が減ってきている。そして、VINEの“6秒動画”やTwitterの“140文字”など、制約条件の中でリッチな情報を提示するようになってきている。「nana」は、初期のコンセプトからして“手軽さ”が重要だと考え、60秒という制約を設けました。
でも、60秒だと楽曲のAメロ〜サビまでが収まらないんですよね。それが90秒だと、ほとんどの楽曲の1番が収まる。いわゆるTVサイズも90秒です。だから、短すぎず長すぎないバランスとして、90秒が最適だという考えにたどり着きました。
──歌う側から見て、“90秒”制限の良いところはありますか?
ぽん 90秒だと歌う集中力が保つんですよね。聴く人からすれば「もっと聞きたい」って言ってもらえる長さだと思います。ただ、Aメロの半分をはしょらないといけなかったり、歌詞を全部読み込まないといけない曲もあるので、(90秒で表現できないから)もったいないと思うことはありますね。
ちるま 確かに、90秒だと集中できます。ただ、「nana」で知った曲をカラオケで歌ってみようと思ったら、2番がわからないっていう(笑)。
ぽん Cメロが入ってくるとわからないみたいな(笑)。
──実際にどういった場所で録音されるんですか?
ぽん 私はいつも家のリビングで歌ってます。でも、2階の足音がうるさい時には、脱衣所だったり、自分の部屋、車の中に移動して録音してます。iPhoneってけっこう音を拾ってしまうので。
──iPhoneに向かって、直に吹き込んでいますか?
ぽん 最近では音質を調整する場合もあるのですが、これまではずっと直で録音していました。iPhoneの上半分に歌いかけると、息の破裂音が入らないんですよ。
ちるま すごいわかります(笑)。僕はコンデンサマイクを使ってますね。「nana」を始めてから、良い音源を上げられるように研究しました。特に、「nana」はモノラルなので、ステレオと違って表面的に聞こえてしまう部分をどう上手く聴こえるようにするか。最終的には、スタジオで録るのが良かった(笑)。でも、「nana」で機材を使うユーザーはかなり少ないですよね。
文原 “手軽さ”が「nana」の特徴なので、増えているかもしれませんが少ないでしょうね。
ぽん ORESAMAの楽曲は作曲を担当する小島(英也)くんの音源がありきなので、アコースティックギターの弾き語りに歌を乗せるという経験が本当に久しぶりの挑戦でした。弾き語りだとブレスや声質が目立ってくるので、その魅せ方は研究するようになりましたね。
──一方、ちるまさんの初期の音源は、失礼ながら本当に素人さが溢れていました(笑)。年月を追うにつれて、どんどんキレイな音質になっていきましたが、あれも魅せ方を研究したのでしょうか?
ちるま 昔の音源を消そうと思ったこともあるんですけど…「nana」では、歌がうまくなっていく過程をストーリーとして魅せられるかな? と思って残しています。
歌い方は、もらったコメントを参考にすることが結構ありますね。「もうちょっと音を切るタイミングを早くしたほうが良い」とか、専門的な方が現れてアドバイスをくれるんですよ。そういったコメントを真摯に受け入れています。アドバイスしてくれた方と仲良くなって、TwitterやLINEで絡むこともありますね。
最近では“ちるさぽ”っていう、僕をサポートしてくれる人たちもいます(笑)。“ちるま”というキャラクターを好きになったメンバーがつくってくれた集まりで、「今後どうしたら『nana』でちるまが面白く活動できるか?」という話をして、学校の部活動みたいなノリで活動しています。
ぽん 私の場合は、コメントを返すくらいのやり取りしかできてません。でも、「nana」のコメント欄には、良い曲には「すごく良い!」ってコメントをくれたり、純粋に歌を聴いてくださる方が多くて、全部のコメントをありがたく受け取ってます。
──ちなみに、歌う楽曲というのはどんな基準で決めているんですか?
ぽん 基本的には自分が歌いたい曲とか、「nana」でほかのユーザーの方が歌っていて気に入った曲を選んでいます。リクエストを募集した時は、全部こたえていました。
ちるま 僕は9割方リクエストです。“ちるさぽ”が曲を提案して、リスト化してくれてるんです。その曲を僕が聴いて、「良いな」と思ったらチェックを入れる。そうすると、“ちるさぽ”がチェックした音源を持ってきてくれます。それで、僕が歌を録ったら、加工してくれる人にお願いして投稿用音源の出来上がり。最後に僕が「nana」に投稿します。
──完全分業制みたいな感じですね…! 文原さんはこういう使われ方を想定していましたか?
文原 あまり想定してなかったです(笑)。でも、どんどん音楽仲間が増えていく、「ひとりでやっても楽しいけど、みんなとやると実はもっと楽しい」というフローは最初からすごく重視していました。
ほかのユーザーとコラボする際に、ユーザーのみなさんは善意で「この音源をお借りします」ってコメントしていますけど、あの承諾コメントが必須だったら、多分面倒くさいと思うんです。なので、運営としては投稿された時点で音源の利用は自由としています。コラボの関係にあるユーザー同士の趣味嗜好って近いはずなんですよ。だから、フォローし合っていたら、自然に仲間やファンが増えていた…というフローができるようにはしています。
──ちるまさんの場合、ご自身がフルで歌う楽曲と一部分だけ自分の歌を抜いたコラボ音源を制作して、同時にアップしていますが、どういったきっかけで制作するようになったのでしょうか?
ちるま やっぱり「nana」は、誰かとコラボして投稿するというのが普通じゃないですか。僕もピアノで「弾いてみた」音源を投稿してコラボしてもらっていたこともありましたけど、「歌ってみた」の方が多くなってきていました。それで、歌の方でもいろんな人と関わりたいと思って、コラボで歌える仕組みを考えたんです。それが、歌ったら一番気持ち良いところをユーザーに歌ってもらって、一緒にコラボしているような疑似体験が出来る音源。結果、いろんな方が歌って、それのおかげでコラボしたユーザーのファンに“ちるま”を知ってもらえることもけっこう多いですね。
──「nana」のコンセプトを体現するような広がりを見せていますね。一方、ぽんさんはスタンダードな演奏と歌のコラボが多いですね。
ぽん 私が歌いたくて始めたので、どの伴奏音源とコラボするかは重要視していました。一方で、コラボ音源の存在を知って、私も少しだけアップしてみたことがあります。たくさんのユーザーさんがコラボしてくださって、「音楽には、こういう楽しみ方もあるんだ!」って学ばせてもらいました。
──「nana」では、ユーザー自身がさまざまな楽しみ方を考えているんですね。
文原 「nana」としては、「90秒制限、サウンドオンリー、重ね録りという機能がある、以上。あとはみなさんが自由に発想して自由に使ってください」くらいに考えています。今は、朗読劇とか環境音、ユーザーと掛け合う声面接といった形で、さまざまな音源が「nana」にアップされています。それに対して「音楽アプリなのに、なんで歌じゃないの?」という声もありますが、決まった制約条件の中で、自由にイマジネーションを膨らませて楽しい音源をつくってくれればいい。だから、いろんな使い方が勝手に生まれていっているのはすごく嬉しいです。
そんな中、ORESAMAのボーカルであるぽんさんが、10代に人気の音楽SNSアプリ「nana」にて変名で活動を続け、人気を獲得。今年6月にその正体を明かし、「nana」で活動をするようになった思いを綴ったブログが話題となったのは既報の通りだ。
なぜ、彼女は「nana」に惹かれたのか──その答えを明らかにしていこう。
取材・構成:須賀原みち 撮影:市村岬
「nana」誕生のきっかけは「We Are The World」?
──音楽アプリ「nana」は現在、非常に注目されています。会社のビジョンとして「孤独がない世界」とも掲げていますが、まず最初に、「nana」についてうかがわせてください。文原 「nana」は、世界中の人たちといつでもどこでも誰とでも、歌や演奏でセッションできることをコンセプトにしています。僕は歌が好きで、特に好きな歌手のスティービー・ワンダーが参加している「We Are The World」という楽曲があります。2010年にハイチ沖地震が起こった際、YouTubeにアマチュア57人が歌った「We Are The World 25 For Haiti (YouTube Edition)」という動画がアップロードされました。2010年末にたまたまその動画を見て、すごいしびれたんです。 僕、「音楽で世界をひとつに」っていうコンセプトが大好きなんですよ。1985年の「We Are The World」のコンセプトは“USA for Afirca”で、あの楽曲に参加している歌手は全員アメリカ人。でも、それがハイチ沖地震の際には、インターネットの力で国境や人種を飛び越えて、一緒に歌い合っている。ただ、この動画だと日本人がいないんです。
それで、当時買ったばかりのiPhone3GSのボイスメモに歌を吹き込んで遊んでいた時に、思ったんです。今後、パソコンを持てないような貧しい国の人でも、スマホはみんなが持つことになる。もし、さっと取り出したスマホがマイクになって、そこに歌を吹き込むだけで地球の裏側にも歌が届いたら、本当の意味で「音楽で世界をひとつに」というコンセプトが実現できる。そう思って、「nana」というサービスをつくりました。
──そうやって、2012年8月にアプリがリリースされ、サービスが開始されたわけですね。実際に利用されている2人、ぽんさんとちるまさんが「nana」を知ったきっかけは?
ちるま 僕は、友達とカラオケに行こうとした時にちょうど雨が降ってて、結局「家で何かしよう」ってことになったんです。その時、友達から「nana」を教えてもらって、実際に歌を録ってみたら「これ、面白いな!」って。そこからドハマりしました。もともと「歌ってみた」とかボーカロイド系の音楽はニコニコ動画でずっと聴いていて、自分でも一度高校生時代に挑戦してみたんです。でも、録音→ミックス→アップロードっていう工程が難しくて、すぐに諦めたことがありました。そうしたら、「nana」が舞い降りてきた(笑)。
──ぽんさんは、その時のことを後に「nana」のブログにも書いていますね。“(ORESAMAとして)活動していく中で様々なことが起こり、わたしは徐々に自分の歌に対する自信を失っていきました。”と。
ぽん そうです。でも、「nana」だったら演奏をアップしてくれる人がいて、その伴奏に声を載せることができる。それが衝撃で、教えてもらったその日から始めて、2015年末から半年以上、毎日欠かさず歌を投稿するようになりました。それは、「ORESAMAを知らない人から私の歌がどう評価されるのか?」っていう、自分に対する挑戦でもありましたね。
ぽん 単純に、その方が歌を聞いてもらえるチャンスが増えると思ったんです。なるべく「新着」にあがるようにして、聞いてもらっている人には毎日聴く習慣がついてくれればいいな、って。多い時には1日で3〜4曲投稿してました。昼から夜までずっと歌いながら、最初は上手くいかない悔しさで泣きながら録ったりして。
──結果、「nana」内で1万人以上のフォロワーを獲得されることになったわけですね。
「nana」、どう使ってる?
──実際、歌を録音してアップロードするには、どれくらい時間がかかるものなのでしょうか?ぽん 私は結構(時間が)かかる方で、一曲アップするのに最初は3〜4時間くらいかかっていました。アップする前に聴き直すと、ピッチが気になったり改善点が見つかったりして、録り直すんです。基本、全部一発録りなので。
──すべて納得いくものが録れるまで録り直していれば、確かにそれくらいの時間はかかりますね。
ちるま すごっ! 僕は逆に、何回も重ねる(重ね録り)タイプですね。最近はパソコン上で一回録音して、その音源を少し加工してから、音質を上げるためにiPhoneに外部マイクとしてオーディオインターフェースをつけて「nana」にアップしたりしています。1曲、最低でも2時間はかかりますね。
あ、でも最初にカラオケ遊びで録った音源は一発撮り、90秒録音して終わりでした(笑)。
──今ちるまさんが言った通り、「nana」はアップする音源の上限が“90秒”になっています。これはなぜですか?
文原 リリース当初の2ヶ月間は、60秒でした。今、携帯デバイスの文脈として、どんどん人の時間は細分化されて、ひとつのことに費やす時間が減ってきている。そして、VINEの“6秒動画”やTwitterの“140文字”など、制約条件の中でリッチな情報を提示するようになってきている。「nana」は、初期のコンセプトからして“手軽さ”が重要だと考え、60秒という制約を設けました。
でも、60秒だと楽曲のAメロ〜サビまでが収まらないんですよね。それが90秒だと、ほとんどの楽曲の1番が収まる。いわゆるTVサイズも90秒です。だから、短すぎず長すぎないバランスとして、90秒が最適だという考えにたどり着きました。
──歌う側から見て、“90秒”制限の良いところはありますか?
ぽん 90秒だと歌う集中力が保つんですよね。聴く人からすれば「もっと聞きたい」って言ってもらえる長さだと思います。ただ、Aメロの半分をはしょらないといけなかったり、歌詞を全部読み込まないといけない曲もあるので、(90秒で表現できないから)もったいないと思うことはありますね。
ちるま 確かに、90秒だと集中できます。ただ、「nana」で知った曲をカラオケで歌ってみようと思ったら、2番がわからないっていう(笑)。
ぽん Cメロが入ってくるとわからないみたいな(笑)。
──実際にどういった場所で録音されるんですか?
ぽん 私はいつも家のリビングで歌ってます。でも、2階の足音がうるさい時には、脱衣所だったり、自分の部屋、車の中に移動して録音してます。iPhoneってけっこう音を拾ってしまうので。
──iPhoneに向かって、直に吹き込んでいますか?
ぽん 最近では音質を調整する場合もあるのですが、これまではずっと直で録音していました。iPhoneの上半分に歌いかけると、息の破裂音が入らないんですよ。
ちるま すごいわかります(笑)。僕はコンデンサマイクを使ってますね。「nana」を始めてから、良い音源を上げられるように研究しました。特に、「nana」はモノラルなので、ステレオと違って表面的に聞こえてしまう部分をどう上手く聴こえるようにするか。最終的には、スタジオで録るのが良かった(笑)。でも、「nana」で機材を使うユーザーはかなり少ないですよね。
文原 “手軽さ”が「nana」の特徴なので、増えているかもしれませんが少ないでしょうね。
ぽん・ちるま、それぞれの「nana」との向き合い方
──音へのこだわりというところですと、ぽんさんはORESAMAの楽曲に比べて、「nana」にアップロードしている歌はブレスが目立つように思えました。ORESAMAで歌うときと、“ぽん”として歌う時は意識的に歌い方を変えていたりするのでしょうか?ぽん ORESAMAの楽曲は作曲を担当する小島(英也)くんの音源がありきなので、アコースティックギターの弾き語りに歌を乗せるという経験が本当に久しぶりの挑戦でした。弾き語りだとブレスや声質が目立ってくるので、その魅せ方は研究するようになりましたね。
──一方、ちるまさんの初期の音源は、失礼ながら本当に素人さが溢れていました(笑)。年月を追うにつれて、どんどんキレイな音質になっていきましたが、あれも魅せ方を研究したのでしょうか?
ちるま 昔の音源を消そうと思ったこともあるんですけど…「nana」では、歌がうまくなっていく過程をストーリーとして魅せられるかな? と思って残しています。
歌い方は、もらったコメントを参考にすることが結構ありますね。「もうちょっと音を切るタイミングを早くしたほうが良い」とか、専門的な方が現れてアドバイスをくれるんですよ。そういったコメントを真摯に受け入れています。アドバイスしてくれた方と仲良くなって、TwitterやLINEで絡むこともありますね。
最近では“ちるさぽ”っていう、僕をサポートしてくれる人たちもいます(笑)。“ちるま”というキャラクターを好きになったメンバーがつくってくれた集まりで、「今後どうしたら『nana』でちるまが面白く活動できるか?」という話をして、学校の部活動みたいなノリで活動しています。
ぽん 私の場合は、コメントを返すくらいのやり取りしかできてません。でも、「nana」のコメント欄には、良い曲には「すごく良い!」ってコメントをくれたり、純粋に歌を聴いてくださる方が多くて、全部のコメントをありがたく受け取ってます。
──ちなみに、歌う楽曲というのはどんな基準で決めているんですか?
ぽん 基本的には自分が歌いたい曲とか、「nana」でほかのユーザーの方が歌っていて気に入った曲を選んでいます。リクエストを募集した時は、全部こたえていました。
ちるま 僕は9割方リクエストです。“ちるさぽ”が曲を提案して、リスト化してくれてるんです。その曲を僕が聴いて、「良いな」と思ったらチェックを入れる。そうすると、“ちるさぽ”がチェックした音源を持ってきてくれます。それで、僕が歌を録ったら、加工してくれる人にお願いして投稿用音源の出来上がり。最後に僕が「nana」に投稿します。
──完全分業制みたいな感じですね…! 文原さんはこういう使われ方を想定していましたか?
文原 あまり想定してなかったです(笑)。でも、どんどん音楽仲間が増えていく、「ひとりでやっても楽しいけど、みんなとやると実はもっと楽しい」というフローは最初からすごく重視していました。
ほかのユーザーとコラボする際に、ユーザーのみなさんは善意で「この音源をお借りします」ってコメントしていますけど、あの承諾コメントが必須だったら、多分面倒くさいと思うんです。なので、運営としては投稿された時点で音源の利用は自由としています。コラボの関係にあるユーザー同士の趣味嗜好って近いはずなんですよ。だから、フォローし合っていたら、自然に仲間やファンが増えていた…というフローができるようにはしています。
──ちるまさんの場合、ご自身がフルで歌う楽曲と一部分だけ自分の歌を抜いたコラボ音源を制作して、同時にアップしていますが、どういったきっかけで制作するようになったのでしょうか?
ちるま やっぱり「nana」は、誰かとコラボして投稿するというのが普通じゃないですか。僕もピアノで「弾いてみた」音源を投稿してコラボしてもらっていたこともありましたけど、「歌ってみた」の方が多くなってきていました。それで、歌の方でもいろんな人と関わりたいと思って、コラボで歌える仕組みを考えたんです。それが、歌ったら一番気持ち良いところをユーザーに歌ってもらって、一緒にコラボしているような疑似体験が出来る音源。結果、いろんな方が歌って、それのおかげでコラボしたユーザーのファンに“ちるま”を知ってもらえることもけっこう多いですね。
──「nana」のコンセプトを体現するような広がりを見せていますね。一方、ぽんさんはスタンダードな演奏と歌のコラボが多いですね。
ぽん 私が歌いたくて始めたので、どの伴奏音源とコラボするかは重要視していました。一方で、コラボ音源の存在を知って、私も少しだけアップしてみたことがあります。たくさんのユーザーさんがコラボしてくださって、「音楽には、こういう楽しみ方もあるんだ!」って学ばせてもらいました。
──「nana」では、ユーザー自身がさまざまな楽しみ方を考えているんですね。
文原 「nana」としては、「90秒制限、サウンドオンリー、重ね録りという機能がある、以上。あとはみなさんが自由に発想して自由に使ってください」くらいに考えています。今は、朗読劇とか環境音、ユーザーと掛け合う声面接といった形で、さまざまな音源が「nana」にアップされています。それに対して「音楽アプリなのに、なんで歌じゃないの?」という声もありますが、決まった制約条件の中で、自由にイマジネーションを膨らませて楽しい音源をつくってくれればいい。だから、いろんな使い方が勝手に生まれていっているのはすごく嬉しいです。
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イベント情報
nana SPECIAL LIVE presented by nana × 2.5D
- 日程
- 2016年8月11日(木 )
- 時間
- OPEN16:00/START17:00
- 会場
- Zepp ダイバーシティ東京
- チケット
- OFFICIAL HP先行予約:7月11日(月)17:00より開始
- 先行販売:7月19日(火)より開始/一般発売:7月30日(土)より開始
- 料金
- 前売券:4,000円(税込)/当日券:5,000円(税込)
- 出演者
- HoneyWorks/CHiCO with HoneyWorks/sana/WHITE JAM
- /ORESAMA/廣野ノブユキ...and more
- 主催
- 株式会社nana music
- 制作協力
- 株式会社THINKR/株式会社インクストゥエンター
- イベント特設サイト
- http://nana-live.com/ (外部リンク)
- 問い合わせ先
- live@nana-music.com
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