今では数多くの配信サービスが存在するが、とりわけ、Amazonが運営する電子書籍サービス「Kindleストア」では、大幅な値引きセールが頻繁に行われ、紙よりも断然お得に購入できる機会が多い。KAI-YOU.netでも「Kindleストア」におけるセール情報は取り上げる頻度が高く、読者からの反響もある。
今年4月には、TVアニメ新シリーズが放送中の漫画『ぼのぼの』が99%オフの価格で販売されるという大規模なセールが行われ、もちろん、KAI-YOU.netでも取り上げた。「Kindleストア」のセール情報は、事前の告知やいわゆるプレスリリースなどがないため、編集部でも毎日細かくチェックしており、『ぼのぼの』のセール情報もそこそこに早くニュースとして伝えることができた。
たしかに、KAI-YOU.netでは「Kindleストア」以外のセール情報を取り上げたことは過去に1度もない。ただ、情報を無視しているのではなく、単純なリサーチ不足が正直な理由だ。KAI-YOUみたいな人気カルチャー系メディアが他電子ストアの情報無視してKindleのセールしかかかないんだから、そりゃ出版社もセール対象から外すわなぁ……。値引かなくても勝手に値引いて話題になるんだもの / “漫画『ぼのぼの…” https://t.co/n6N23MnMbE
— きんどう (@zoknd) 2016年4月8日
ツイート主は、Kindleを中心とした電子書籍に関する情報を毎日配信するニュースメディア「きんどう」を運営するきんどうさん。Kindleストアのセール情報や、無料、新刊などの情報をいち早く伝え、Twitter、Facebook、LINEなど、さまざまなSNSを運用しながら情報を拡散、電子書籍ユーザーにはおなじみのサイトだ。
そんなきんどうさんに痛いところを突かれてしまったKAI-YOU.net。繰り返しになるが、ただただ「Kindleストア」しか見てなかったことが原因。
そこで今回は、思いきって上記ツイートの真意、そして、我々よりも遥かに電子書籍について詳しいであろうきんどうさんに電子書籍に関するあれこれをうかがってみることにしたところ、快く快諾していただいたので、電子書籍に関するお話をしていきたいと思う。
Kindleユーザー向けメディア「きんどう」とは?
ツイートの真意を聞く前に、まずはきんどうさんが運営するKinleユーザー向けメディア「きんどう」について紹介していきたい。2012年11月に開設した「きんどう」には、今現在、どのくらいの電子書籍愛好家たちが訪れているのだろうか。
「直近30日以内が83万PV(ページビュー)、UU(ユニークユーザー)は9万2千ですね。リリース以来、82%から87%がリピーターという状態が続いていて、じわじわと新規読者が増え続けているようです」
続いて男女比については、「男性が85%、年齢は34〜44歳が46%、25〜34歳が34%となっています。サイトでよく売れているジャンルや作品の傾向を予測して紹介していますが、人力で選んでいるので、私の趣味に引っ張られるためか、どんどん男性寄りになっていくんでしょうね」との答え。
「きんどう」では、単純にきんどうさんが面白いと思ったもの、売れる傾向のあるものを取り上げている。また、実写化やアニメ化、受賞作、ネットで話題になっている作品など、時事性の強い作品なども優先的に取り上げているという。
クリエイターの生の声や編集者の声を届ける
「きんどう」では、前述したようにきんどうさんが選んだ新刊やセール情報などのほかに、クリエイターや出版社との連携を積極的に行っているのが特徴的。冒頭で述べたように、作家本人や出版社による寄稿(ゲストポスト)を無料で受け付けているのだ。【募集】「Kindleはいいぞ」4コマとかを書いてくれるマンガ家さん。記事下で新刊・既刊の告知や新連載、お仕事募集などを掲載します。
— きんどう (@zoknd) 2016年6月6日
ゲストポストを始めたのは、2014年1月、サイトを開設してから25ヶ月目に販売傾向を振り返った際、あまりにセール作品ばかりが売れていることに気づき、価格以外で読者が本を選ぶ理由を提供する必要があると考えたからだ。
そのために、クリエイター本人や出版社からPRとなる原稿や描き下ろしのイラストなどを寄稿として受け付けている。
「ゲストポストで最も売り上げに貢献できたのは、エンターブレインさんからいただいた、九井諒子さんの『ダンジョン飯』1巻の告知ですね。新刊が1週間で400冊以上でています。セールを組み合わせたものでは、作者の迂闊さん自身からいただいた『のみじょし』2巻の告知ですね。発売にあわせた1巻セールが50円だったので、1巻が1,100冊以上、2巻は発売直後に半額セールがはじまり、400冊ほどでました。
一方で、掲載すればなんでもかんでも売れるというわけではないので難しいですね。きんどうユーザーにウケそうな作品であること、紹介方法がマッチすれば売り上げが爆発するようなんですが。
原稿料などのお支払いはできませんが、無料で引き受けてますし、普通に申し込んでくれればたいていは掲載します。ただ、ユーザーにどう選んでもらうか・興味をもってもらうかという視点で検討いただかないと、上手くいかないと感じています」
大きな視点で見てほしい Kindleストア以外の特徴とは?
メディア「きんどう」について紹介したところで、きんどうさんに、件のツイートについて聞いてみた。特に「Kindleのセールしか書かない」という点について、「私たちのように偏った(きんどうはKindle中心のメディア)メディアは個人運営ならではで、カイユウさんのようにカルチャー全体を取り扱うメディアは、大きな視点で電子書籍を見てもらいたいと思った次第です」とのことだった。KAI-YOUみたいな人気カルチャー系メディアが他電子ストアの情報無視してKindleのセールしかかかないんだから、そりゃ出版社もセール対象から外すわなぁ……。値引かなくても勝手に値引いて話題になるんだもの / “漫画『ぼのぼの…” https://t.co/n6N23MnMbE
— きんどう (@zoknd) 2016年4月8日
実は私自身、「Kindleストア」以外の配信サービスはほとんど利用したことがない。セール以外でも、新刊が出れば「Kindleストア」で買ってしまうし、セール情報は「Kindleストア」しかチェックしていない。これは編集部全体に共通していることでもあり、自ずと取り上げる幅が「Kindleストア」のみになってしまっていた。大きな広い視野は間違いなく持てていなかった。
とはいえ、きんどうさんもその名の通り「Kindleストア」を中心としたサイトを運営しており、Kindleに関する情報を日々発信している。逆にきんどうさんは、他のストアをチェックしているのか……?
「Kindleだけを見ていると、セールとして紹介している作品が実は他ストアと較べて割高という場合があります。その情報を隠してユーザーに接するのは誠実ではないので、主な国内ストアの情報やプレスリリースのほとんどに目を通しています。
ストアごとの特徴として、例えば楽天Koboは、常時使える20〜30%ポイント還元クーポンを配布したり、各出版社や取次が実施しているセール複数をまとめて『スペシャルセール』と大きく銘打ってますね。電子書籍サービスの中で一番オトクなのはKoboだと思います」
その数があまりに多いため、自分にハマる作品が何かしらのセールやキャンペーン対象に含まれていてもおかしくない。
「国内の老舗・eBookJapanは出版社と組んだ特集に強い印象ですね。中のスタッフからのコメントなど人間味を感じるキャンペーンが目立ちます。
凸版印刷系のBookLive!さんはここ数ヶ月、アダルトのセールに半端なく力をいれてることが目につきます。
また、たまに実施する全商品に繰り返しつかえるクーポンが面白いです。角川直営のBook☆Walkerはセールはあまりしませんが、作家のサインキャンペーンなど、出版社としての強みを活かした取り組みが興味深いですね」
6月9日にヤフーが子会社化したイーブックイニシアティブジャパンが運営する「eBookJapan」は、アニメ『おそ松さん』で注目の原案漫画『おそ松くん』の全巻セットが50%オフで買えるキャンペーンを3月まで実施していたりと、きんどうさんが言うように出版社と連携した施策に強い。
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