メル先生に憧れてアイドルになった? 大塚望由さん登場
──大塚望由さんは、現役中学生でアイドルグループ・虹コンのメンバーでもありますよね。また、メル先生にイラストも指導されているということですが、まず、虹コンの活動について教えてください。大塚 虹のコンキスタドールは、pixiv発のアイドルグループとして活動しています。虹コンは、イラストレーター・コスプレイヤー・声優・振付師というチームに分かれています。基本はアイドルとしての活動がメインですが、そのチームに特化したレッスンも受けていて、アイドルとしてもクリエイターとしても活躍するようになるというのが目標のアイドルグループです。
──大塚さんは、メル先生に憧れてイラストレーターチームに入ったと聞いたんですが、本当ですか?
大塚 中学一年生の時からメル先生のツイッターをフォローしていて、それがきっかけで虹コンを知って、虹コンのオタクになったんです。それで、メンバーやメル先生に会いたいな、と思って応募して、二期生として加入しました。
私は、俗に言う※「ゆめかわいい」というものに憧れていて、メル先生の描くイラストが可愛いな、と思ってフォローしてたんですよね。それでツイートを見て、人柄もすごい面白い人だなって。
※ゆめかわいい:主に若い女子の間で使われる、メルヘンチックで幻想的な、女の子の夢を具現化させたようなものを指すインターネット上の造語。淡いパステルカラーの色合いで、セーラー服や魔法少女といったモチーフが多用されるのが特徴
メル 大塚は、たまに僕のTwitterにファボをくれてたんですよ。それも特にひどいツイートに(笑)。それでアイコンを見て「よくファボしてくれる人だな」って認識してて、20歳そこそこの男オタクだと思ってたら、こんな若い女の子でびっくりしました。
──実際、メル先生と会ってみて、どんな印象でしたか?
大塚 すごいハキハキしゃべってて、迫力があると思いました。Twitterから感じる人柄とあまり一致しないなって……。最初ちょっと怖いと思ってました。
メル よく言われるんですよ、初対面のとき、ハキハキして早口で怖いって(笑)。
──ハキハキして早口なのは事実ですね(笑)。イラストの指導というのはどういうことをされているのでしょう?
大塚 デッサンの基礎や、人物画クロッキーをしています。デジタルでのイラスト制作のレッスンの時には、いろいろなアドバイスやコツを教えてもらっています。
メル もともとみんなイラストを描くのが好きな子たちなので、黙ってても絵は描くだろうし、放っておくとやらない基礎を教えるのが一番効率的だと思うんです。絵を描く人はなかなか人物デッサンのモデルがいないのが悩みですけど、それがやりやすい状況でもあるし。今は、そういった描いた経験が生きてくる基礎体力づくりをやっています。
虹コンはライブ回数が多くて、普段のアイドル活動が大変だと思うんですよね。でも、みんな若いので、今から描いていれば、技術の方は正直どうにでもなれますから。
──まずは基礎体力が大事、ということですね。
メル 今後は簡単なイラストだけじゃなくて、もう少し時間をかけたきちんとした作品も描いてもらいたいな、と思っています。それもレッスンやステージの合間を縫って、ということなので、長い目で見てやっていけたらいいですね。
ちなみに、大塚はこれからこんなことをやりたい、とかある?
大塚 みんなの作品を展示して一般の方に見られるような機会があったら、楽しいなって思います!
──アイドル活動とイラストの両立は大変じゃないですか?
大塚 大変です。でも、まずはアイドルとして一人前にならないと、というのがあります。だから、今は歌やダンスのほうに力を入れてますね。
メル アイドルのピークは、どうしても若いうちになってしまう。イラストに関しては、20代前半を過ぎても全然遅くないんですよね。だから、ちゃんと本業としてアイドルをやりながら、今はイラストレーターの見習いとして基礎を学んで、絵を描き続けていれば良いと考えています。
メル先生のように、格好良い大人になりたい!
──大塚さんがメル先生を尊敬している部分はどんなところですか?大塚 イラストを描きながら、アイドルとかラーメンとか、自分の好きなものを楽しんでいるところが格好良い大人だな、と思いました!
メル 格好良い大人なんて、今まで言われたことない(笑)。
──虹コンに入ったこともそうですが、大塚さんも自分の好きなことをやりたい! と強く思っているように見受けられます。
大塚 はい。やっぱり自分のことをちゃんと出来るようになって、余裕のある人になりたいです。言ってるだけなんですけど(苦笑)。
メル 口に出して言うのは、大事なことだよ。言葉にしているとそうなる、ってこともあるから。
──大塚さんはまだ中学生ですが、将来のことは考えていますか?
大塚 夢はあるんですけど、具体的にどういう学校に行って……みたいなのはまったく考えてないです。私、小学生の頃から『ジャンプ』連載のマンガ家になりたくて。絵を描き始めたのも、それがきっかけです。でも、絵だけでお金を稼いで生活していくのは不安定なので、勉強して公務員になりたいです。どっちも選べないんですよね。
──また両極端な夢なんですね……! それでは、今後やってみたいお仕事はありますか?
大塚 アイドルをやりながらマンガ連載をしたり、アニメオタクの人たちからの支持も得れたらすごい嬉しいな、と思っています。まだアイドルはアニメオタクの人から否定的な目で見られがちなので……。自分もTwitterとかで貶されたことがあって、悲しかったです。
でも、メル先生のファンで私のファンになってくれた人もいて、嬉しいですね。 ──実際のアイドルの仕事は、入る前のイメージとのギャップはありましたか?
大塚 アイドルになったら、毎日がキラキラして楽しくて、胸を張って生きていけると思ってたんですけど……。アイドルになったらなったで、学校でバカにしてくる人もいて、アイドルがコンプレックスになって悲しいこともありました。
メル 中学生って、そういうことを言いたいだけだから気にすることないよ。といっても、気にしちゃうとは思うけど。でも、悪口を言うような人は精神年齢が低いから、そういう人が言っていることには価値がないって思うしかないよ。
大塚 私、ネガティブだから、言われたこととか自分の実力の低さに落ち込んでしまうこともあるんです。でも、もし「アイドル辞めなよ」って言われたら「嫌です」って答えます。だから、やっぱりアイドルが好きなんです。絵もそうで、「続けていればなんとかなるかな」って思ってます!
──メル先生のお話でもあったように、「続けていればいい」ということですよね。
大塚 (メル先生の話に)すごい励まされました!
メル 言わせてる感じになってる(笑)。
大塚 いや、本当に励まされてます(笑)。
編集後記
インターネットをよく利用している人であれば、そのコスプレか作品は「ネット上で一度は目にしたことがある」と言っても過言ではないほど、イラストレーターの中でも上位のネット人気を誇るのが岸田メル先生です。もちろん、一言で「イラストレーター」と言っても、そこに至るまでの経緯や活躍ジャンル、作風など、どれをとっても千差万別です。
そしてまさに、今回ゲストで登場していただいた大塚望由さんの所属する虹のコンキスタドールをプロデュースするイラストSNS「pixiv」が牽引する形で、日本のイラスト人口は増え、ソーシャルゲームなどの台頭で活躍の機会は多くなっている一方、インタビュー中で挙がったように、イラスト制作費などの問題が取り沙汰される傾向にあります。
メル先生の来歴や方法論も、決して一般化できるようなものではありません。ただ、自分の立ち位置を見定めながら、自らのモチベーション維持のための新しい挑戦とファンからの需要とのせめぎ合いの中でも、常に自らに素直に楽しいことを追い求めようとするメル先生の姿勢に、これだけ多くの支持者を集めている理由の一端を垣間見た気がします。
イラストレーター岸田メル インタビュー前編「家族も友達も信用できず、アニメやゲームだけが救いだった」
この記事どう思う?
関連リンク
岸田メル
イラストレーター
名古屋在住のイラストレーター。
ゲーム『ロロナのアトリエ』以降シリーズ3作のキャラクターデザインを手がけ、一躍有名に。テレビアニメ『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』や『花咲くいろは』のキャラクター原案ほか、様々な作品のイラストを手がける。
また、Twitterで年に一度、奇妙なコスプレを投稿し、「岸田メルのコスプレ」をするコスプレイヤーが登場するほど人気を博すまでになっている。
ほかにも、テレビ番組やラジオのパーソナリティー、自主イベントの開催、アイドルグループ・虹のコンキスタドールの審査員や衣装デザインなど、「イラストレーター」という肩書きに留まらない手広い活動を精力的に行う。
http://transient.babyblue.jp/
https://twitter.com/mellco
大塚望由
アイドル
2000年生まれ、この春に中学校を卒業。イラストSNSサービス「pixiv」がプロデュースするアイドルグループ・虹のコンキスタドールのメンバー。当初は予科生だったが、2015年8月から正式に虹のコンキスタドールメンバーとなった二期生として、イラストレーターチームに所属している。
https://twitter.com/otsuka_miyu
http://www.pixiv.net/member.php?id=16916891
http://pixiv-pro.com/2zicon/
0件のコメント