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「不純物」と「免疫」で社会を読み解く? 現代アートの展覧会が東京・本郷で開催

若手キュレーター&アーティストによる展覧会「不純物と免疫」が10月14日(土)から11月26日(日)にかけて東京・本郷で開催される。

現代社会における「共存の技法」を6名のアーティストの実践から考える本展。

現代アートらしい難解な課題を掲げる一方、ユーザーフレンドリーなサービスを盛り込んだ新しいタイプの展覧会でもある。彼らの試みとそのねらいとは?

わたしとあなたが「共に生きる」とは、どういうことか?

現代社会における「共存」を考える展覧会「不純物と免疫」。キュレーションを手がけるのは若手キュレーター・長谷川新若山満大だ。

免疫といっても、病院やサイエンスを扱うものではない。現代社会の生きづらさを乗り越えるツールとして、彼らは「不純物」と「免疫」という概念を導入した。

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会場となる「トーキョーアーツアンドスペース本郷」(旧 トーキョーワンダーサイト本郷) 本展はリニューアル後、第一弾の企画となる。

異なる考え方や文化に触れることは、ときに恐怖や怒り、不快感をともなう。

その動揺は、自分の免疫細胞が体内の不純物を過剰に攻撃するアレルギー反応に近い。アメリカにおけるトランプ大統領の誕生、イギリスのEU離脱、北朝鮮ミサイル問題で緊迫する東アジア情勢――弱者の保護と強者の優遇、難民の救済と拒否、対話と暴力、相反する2つの思想がいま世界中で均衡を破りつつある。

皆それぞれが「免疫」を発動して「不純物」を除こうとし、またそれぞれが誰かにとっての「不純物」となり「免疫」の攻撃に晒されているとも言えるだろう。

いずれかの勝利や敗北ではなく、不純物と免疫が拮抗する緊張関係=共存はありうるのか。本展はアーティストの実践のなかに、現代社会の「共存の技法」を見出すための試みなのだ。

6つの実践に映り込む「いま、ここ」

佐々木健は福島県石川町の採掘場やと人造宝石、空や石を描いた油彩画たちを展示する。

これらの一見とりとめもなく、バラバラにも思える絵は、日本がかつて原爆を作ろうとしていたという事実と、「3.11」以降の現在の状況をあぶりだしていく。

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佐々木健《無題(採掘場)》2017年、出展予定作品

仲本拡史はベルリン映画祭などで国際的に評価される映像作家だ。現代アート展初参加となる今回は、カニが人間の生活スペースを跋扈(ばっこ)する3面マルチスクリーン映像を発表する。

ヒトである私たちにとって、その光景はとても「奇妙」に見える。しかし、カニたちにとってそれは「普通」の出来事──彼らは凹凸の上をただいつも通り歩いているだけ──なのだ。自分と他者との「ズレ」を意識することは、共存の条件であり、現代社会の困難な課題でもある。仲本の作品は「共存を考えるスタートライン」に私たちを導く。


百頭たけしは、人知れず郊外にできあがった風景を撮影した写真を発表する。あるルールに基づいて配置されたモノの横に、また別のルールでモノが置かれていく。

長い年月をかけて繰り返し行われてきたこうした営みは、結果として、だらしない「インスタレーション」を作り上げる。しかし、そこには思いも掛けない発見や驚くべき光景、くすりと笑えるおもしろさがある。百頭の写真は、日本のかたすみでひっそりと起こっている不思議な出来事を伝える「報告書」と言えるだろう。

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百頭たけし《無題》2016年

大和田俊は「音が聞こえるとはどういうことか」というラディカルな問題について考えるサウンドアーティストだ。最近では数億年前の生物の化石である石灰岩を溶かすときに生じる微小な音を増幅出力する作品を発表した。

今回、大和田が展示するのは、会場全体に影響するインスタレーション作品だ。板に挟まれた巨大な風船を会場に設置。ボンベに繋がれた風船は、あらかじめ会期中のどこかで破裂するようにプログラミングされている。

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大和田俊《(i, s, o, g, r, a, m)》2017年 Courtesy of YAMAMOTO GENDAI, Photo by Keizo Kioku

谷中佑輔は現在ベルリンに在住し、国際的に活躍するアーティストだ。一見相反するようにも思える「彫刻作品」と「パフォーマンス」を地続きのものとして考える彼は、今回クジラの在り方に注目し、国家や国境といったヒトの世界観の再解釈を促す。


迎英里子はこれまで「食肉の流通」「石油の精製」「日銀の金融政策」といった目に見えないシステムに独特の仕方で「かたち」を与えてきた。今回は「放射性崩壊」のメカニズムを「装置」として造形化し、パフォーマンスを行う。

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迎英里子〈食肉の流通経路〉

「展覧会」というメディアの拡張

「現代アートってよくわからない」「興味はあるけどハードルが高い」と感じる人は少なくないだろう。詰まるところ、「展覧会」というユーザーインターフェイス(UI)はもっと改良されても良いはずだ。

本展ではスマホ対応でユーザビリティが高いウェブサイトや、現代アート入門者のためのワイヤレス音声ガイドの無料貸出、カタログの無料配布(期間限定)など、ユーザーフレンドリーなサービスを提供する。また、会期中さまざまな興味深いイベントも開催予定だ。

「美術館」とは別のやり方で、自主企画展だからこそできる「展覧会」をつくるにはどうするべきか。本展はアートの中だけの閉じたイベントではなく、より開かれた場をつくる進行形の「実験」なのだ。

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「不純物と免疫」ステッカー(税込200円、好評発売中!)

現代社会のハードコアに切り込むクリティカルな表現を、「ハードル低め」の展覧会で観せる──。

アートに習熟したクラスタから「よくわからないけど興味はある」という入門者まで、本展はさまざまな人に開かれている。実験精神とギミックにあふれた試みを、ぜひ多くの人に楽しんでもらいたい。

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展覧会情報

不純物と免疫

会期 2017年10月14日(土)-11月26日(日)
会場 トーキョーアーツアンドスペース本郷(東京都文京区本郷2丁目4-16)
開館時間 11:00-19:00(最終入場は18:30まで) /月曜日休館
入場料 無料
キュレーション 長谷川新・若山満大(不純物と免疫実行委員会)
参加アーティスト 大和田俊・佐々木健・谷中佑輔・仲本拡史・百頭たけし・迎英里子

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