2017年8月16日(水)、17日(木)千葉県・幕張メッセで「BS スカパー! BAZOOKA!!! 第12回高校生RAP選手権in幕張」が開催された。
今回は初の2days開催となり、初日に「高校生RAP選手権」に出場経験のあるEINSHTEIN&言xTHEANSWERやフリースタイルダンジョンで活躍したR-指定さん率いるユニット・CreepyNuts、ハードコアな生い立ちで多くの人に影響を与えるラッパー・ANARCHYさんらによるライブも行われた。
そして17日は、大阪・東京会場の予選オーディションを勝ち抜いてきた16名のラッパーが登場。高校生日本一のMCを決めるべくトーナメントで死闘を繰り広げた。 本大会では、本戦初出場のラッパーが11名というフレッシュなメンツ。それぞれのキャラクターやスキルに注目が集まる中、年々レベルが上がり続けている「高校生ラップ選手権」だけに、混戦が予想された。
前回大会でラップ初心者ながらもベスト4入りの大番狂わせを見せた北海道のMC・MOGURAさんが登場。対するは、高校で養蜂部に属する大会初出場のラッパー・よんろくさん。
優勝候補の一角として優勢が予想されていたMOGURAさんは、じゃんけんに勝って先行を選ぶ。ビートはKANDYTOWNの「GET LIGHT」。
MOGURAさんは「蜂蜜好きで太ってる。こいつはプーさんか。ピグレット連れてディズニーランドに帰っていいよ」と1ターン目でディス。 よんろくさんは、ピグレットのワードに韻を被せた流れから「バックステージの上から落とし込んだバンジージャンプ、ちゃんと乗りこなすこのビートはKANDYTOWN」というパンチラインに加え、リズミカルなフロウのラップを続けざまに見せた。 次のターン、MOGURAさんがライム重視のMCバトルシーンを批判して会場を沸かせたが、勢いのあるKANDYTOWNのビートにうまく乗りこなしスキルフルなフロウを見せたよんろくさんに軍配が上がった。
大阪・西成区をレペゼンするHardyさんが登場。第10回大会王者・じょうさんの後継者として期待されているが、前回大会では初戦敗退という悔しい経験を経て今大会に挑んだ。
一方の相手は、前回大会に初出場で準優勝という鮮烈なデビューを飾ったCore-Boyさん。
Zeebraさんが手がけるヒップホップラジオ・WREPの番組でアシスタントをつとめ、Twitterではビジネスや政治などに関する高校生らしからぬ発言を行うなど、ラップ以外の活動でも注目を集めている。
そんな両者の対決は前評判を上回るほどに、白熱したものとなった。
ビートは、今最もシーンを賑わせているJP THE WAVYさんの楽曲「Cho Wavy De Gomenne」。
Hardyさんは、Core-BoyさんがWREPに出演していることについて「音源1個も聴いたことがない。なのにラジオでそれを評価する」と強烈なディスを浴びせる。 それに対してCore-Boyさんは「音源を出しても、お前ミュージックビデオ再生3万回もいかねーじゃねーかよ」とアンサー。
R-指定さんから審査員長・漢 a.k.a. GAMIさんへの要望もあり延長戦へともつれ込んだ。
KREVAさんの「挑め」のビートに乗せて先行のCore-Boyさんが「ラップは上手さじゃねえ。気持ちがなければ伝わらねえんだよ」と言ったのに対して「ラップのバトルは上手さだぜ。俺はマイメンは疑わねえ」とHardyさん。
観客の盛り上がりはHardyさんがまさっているようにも感じたが、冷静で的確なラップを見せ続けたCore-Boyさんが、僅か1票の差で勝利。1回戦から勝敗をつけるには酷な試合となった。
幼少期から非行を繰り返してきたアウトローラッパー・Red Eyeさんと、前回大会に出場したミメイさんとクルーを組むTERUさんがぶつかった。 序盤から安定感あるライミングをみせたTERUさんに対して、しゃがれた鳴りのいい声と圧巻のステージパフォーマンスで応戦するRed Eyeさんの試合は延長へ。
それまでアウトローのバックグランドを活かして観客を沸かせていたRed Eyeさんだが、その内容がドラッグやストリートの話題に偏っていたため、延長戦ではネタ切れにより、厳しい戦いになることが予想された。
しかし、延長戦の2ターン目になるとRed Eyeさんは、突如レゲエ調のオリジナルフロウを披露したことにより、TERUさんに傾いていた流れを引き戻す。これを受け審査員の5人のラッパーは苦渋の決断のうえ、大会史上初となる再延長の判定を下す。
再延長でも2人の勢いは止まらず、先行のTERUさんが「落としてやるナイアガラの滝。討ちにきたぜ相方のカタキ」というパンチラインみせたあと、自身が所属する枚方サイファーの名前をあげつつ「周りの為だ」とラップ。
この言葉を拾ったRed Eyeさんは「俺はオリジナルヒップホップ。いつも自分の為にやってる」と一蹴。 TERUさんに全くの不足はなかったものの、延長戦からの流れもあってRed Eyeさんが勝利を納め、大会史に残る名勝負となった。
というのもG-HOPEさんは紹介VTRの中でCore-Boyさんの名前をあげ、高校生ラップ選手権に出る前に、Core-BoyさんからTwitterで「私はあなたを超える自身があります」とリプライがきたというエピソードを話した。
前回大会では2回戦で激突した両者だが、G-HOPEさんは悔しい敗退を喫し、前回大会後にはTwitterのフォロワー数や出演のブッキングなどに歴然とした差が。ラッパーとしてキャリアやプロップスが大きく開いてしまったという。
G-HOPEさんは、その借りを返しに今大会に出場しているといっても過言ではない。
一方のCore-Boyさんは「優勝するのは当たり前」としたうえで、一人のラッパーとして遥か先までビジョンを掲げている。
両者にとって負けられない戦いとなった決勝戦。最初のビートにはANARCHYさんの名曲「FATE」が流れた。 G-HOPEさんは持ち前の固い韻を連発しながら、2ターン目の小節末に「これで終わりだ。Core-Boyお前の時代は来ないな」とラップ。
これに対して、Core-Boyさんは「もうすでにお前より時代きてるからTwitterのフォロワーが多いんだよ、ばーか」とおちょくるようなアンサー。 試合が終わり、司会者の小籔千豊さんが出演者をステージに呼びかけたが、そのタイミングで審査員長の漢さんから延長の判定が下される。
決勝の延長戦も両者引けを取らない韻の応酬となった。結果、名実ともにラッパーとして上だというポジションを崩さずに的確なラップを続けたCore-Boyさんが優勝した。 Core-Boyさんが優勝後に何を語ったのか、知りたい方はこちらの記事をご覧いただきたい。
開催を重ねると共に人気が増し、今回で第12回大会を迎えた。スタート当初、本企画は不良少年たちの更生の役割を持つこともテーマの1つとして掲げていた。
しかし、ヒップホップの多様化によって、オタクやナードなラッパーの登場も増加。かつての「ラップは不良やヤンキーがするもの」といった世間体は薄れ、その多様化の一翼を担っていた「BAZOOKA!!!高校生RAP選手権」には、むしろ生粋の不良が登場することが少なくなったように見える。
そんな中、今大会のRed Eyeさんの登場は異様だった。
アウトローのバックグランドから生まれる即興のラップは、見ている最中は放送できるのか不安になるような内容だったが、同時にユーモアと説得力にも溢れており、観客を巻き込むパフォーマンスは確かなもので、独壇のライブにも思わされた。
もちろん、そのラップの内容が道徳や法的にどうなのかとみれば別問題であるが、ラッパーとして強烈なインパクトを残したのは間違いない。
また今大会、地元千葉・船橋市出身の女性MC・CESIAさんが「BAZOOKA!!!高校生RAP選手権」史上はじめて女性MCとしてベスト4入りを果たしたことも快挙となった。
© BSスカパー!BAZOOKA!!! 第12回高校生RAP選手権in 幕張
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今回は初の2days開催となり、初日に「高校生RAP選手権」に出場経験のあるEINSHTEIN&言xTHEANSWERやフリースタイルダンジョンで活躍したR-指定さん率いるユニット・CreepyNuts、ハードコアな生い立ちで多くの人に影響を与えるラッパー・ANARCHYさんらによるライブも行われた。
そして17日は、大阪・東京会場の予選オーディションを勝ち抜いてきた16名のラッパーが登場。高校生日本一のMCを決めるべくトーナメントで死闘を繰り広げた。 本大会では、本戦初出場のラッパーが11名というフレッシュなメンツ。それぞれのキャラクターやスキルに注目が集まる中、年々レベルが上がり続けている「高校生ラップ選手権」だけに、混戦が予想された。
繰り広げられる死闘……ベストバウトを紹介!
蓋をあけると予想通り、過去を類を見ないほどに延長戦までもつれ込む試合が続発。その中から筆者が独断で選んだベストバウトを選出しお伝えしていく。MOGURA vs よんろく
大会初戦となった1回戦Aブロック1試合目。前回大会でラップ初心者ながらもベスト4入りの大番狂わせを見せた北海道のMC・MOGURAさんが登場。対するは、高校で養蜂部に属する大会初出場のラッパー・よんろくさん。
優勝候補の一角として優勢が予想されていたMOGURAさんは、じゃんけんに勝って先行を選ぶ。ビートはKANDYTOWNの「GET LIGHT」。
MOGURAさんは「蜂蜜好きで太ってる。こいつはプーさんか。ピグレット連れてディズニーランドに帰っていいよ」と1ターン目でディス。 よんろくさんは、ピグレットのワードに韻を被せた流れから「バックステージの上から落とし込んだバンジージャンプ、ちゃんと乗りこなすこのビートはKANDYTOWN」というパンチラインに加え、リズミカルなフロウのラップを続けざまに見せた。 次のターン、MOGURAさんがライム重視のMCバトルシーンを批判して会場を沸かせたが、勢いのあるKANDYTOWNのビートにうまく乗りこなしスキルフルなフロウを見せたよんろくさんに軍配が上がった。
Hardy vs Core-Boy
事実上の決勝戦とも噂された1回戦Bブロックの第4試合。大阪・西成区をレペゼンするHardyさんが登場。第10回大会王者・じょうさんの後継者として期待されているが、前回大会では初戦敗退という悔しい経験を経て今大会に挑んだ。
一方の相手は、前回大会に初出場で準優勝という鮮烈なデビューを飾ったCore-Boyさん。
Zeebraさんが手がけるヒップホップラジオ・WREPの番組でアシスタントをつとめ、Twitterではビジネスや政治などに関する高校生らしからぬ発言を行うなど、ラップ以外の活動でも注目を集めている。
そんな両者の対決は前評判を上回るほどに、白熱したものとなった。
ビートは、今最もシーンを賑わせているJP THE WAVYさんの楽曲「Cho Wavy De Gomenne」。
Hardyさんは、Core-BoyさんがWREPに出演していることについて「音源1個も聴いたことがない。なのにラジオでそれを評価する」と強烈なディスを浴びせる。 それに対してCore-Boyさんは「音源を出しても、お前ミュージックビデオ再生3万回もいかねーじゃねーかよ」とアンサー。
R-指定さんから審査員長・漢 a.k.a. GAMIさんへの要望もあり延長戦へともつれ込んだ。
KREVAさんの「挑め」のビートに乗せて先行のCore-Boyさんが「ラップは上手さじゃねえ。気持ちがなければ伝わらねえんだよ」と言ったのに対して「ラップのバトルは上手さだぜ。俺はマイメンは疑わねえ」とHardyさん。
観客の盛り上がりはHardyさんがまさっているようにも感じたが、冷静で的確なラップを見せ続けたCore-Boyさんが、僅か1票の差で勝利。1回戦から勝敗をつけるには酷な試合となった。
Red Eye vs TERU
2回戦Bブロックの第3試合はレペゼン大阪同士の対決となった。幼少期から非行を繰り返してきたアウトローラッパー・Red Eyeさんと、前回大会に出場したミメイさんとクルーを組むTERUさんがぶつかった。 序盤から安定感あるライミングをみせたTERUさんに対して、しゃがれた鳴りのいい声と圧巻のステージパフォーマンスで応戦するRed Eyeさんの試合は延長へ。
それまでアウトローのバックグランドを活かして観客を沸かせていたRed Eyeさんだが、その内容がドラッグやストリートの話題に偏っていたため、延長戦ではネタ切れにより、厳しい戦いになることが予想された。
しかし、延長戦の2ターン目になるとRed Eyeさんは、突如レゲエ調のオリジナルフロウを披露したことにより、TERUさんに傾いていた流れを引き戻す。これを受け審査員の5人のラッパーは苦渋の決断のうえ、大会史上初となる再延長の判定を下す。
再延長でも2人の勢いは止まらず、先行のTERUさんが「落としてやるナイアガラの滝。討ちにきたぜ相方のカタキ」というパンチラインみせたあと、自身が所属する枚方サイファーの名前をあげつつ「周りの為だ」とラップ。
この言葉を拾ったRed Eyeさんは「俺はオリジナルヒップホップ。いつも自分の為にやってる」と一蹴。 TERUさんに全くの不足はなかったものの、延長戦からの流れもあってRed Eyeさんが勝利を納め、大会史に残る名勝負となった。
G-HOPE vs Core-Boy
待ちに待った決勝戦は、G-HOPEさんとCore-Boyさんの因縁の対決に。というのもG-HOPEさんは紹介VTRの中でCore-Boyさんの名前をあげ、高校生ラップ選手権に出る前に、Core-BoyさんからTwitterで「私はあなたを超える自身があります」とリプライがきたというエピソードを話した。
前回大会では2回戦で激突した両者だが、G-HOPEさんは悔しい敗退を喫し、前回大会後にはTwitterのフォロワー数や出演のブッキングなどに歴然とした差が。ラッパーとしてキャリアやプロップスが大きく開いてしまったという。
G-HOPEさんは、その借りを返しに今大会に出場しているといっても過言ではない。
一方のCore-Boyさんは「優勝するのは当たり前」としたうえで、一人のラッパーとして遥か先までビジョンを掲げている。
両者にとって負けられない戦いとなった決勝戦。最初のビートにはANARCHYさんの名曲「FATE」が流れた。 G-HOPEさんは持ち前の固い韻を連発しながら、2ターン目の小節末に「これで終わりだ。Core-Boyお前の時代は来ないな」とラップ。
これに対して、Core-Boyさんは「もうすでにお前より時代きてるからTwitterのフォロワーが多いんだよ、ばーか」とおちょくるようなアンサー。 試合が終わり、司会者の小籔千豊さんが出演者をステージに呼びかけたが、そのタイミングで審査員長の漢さんから延長の判定が下される。
決勝の延長戦も両者引けを取らない韻の応酬となった。結果、名実ともにラッパーとして上だというポジションを崩さずに的確なラップを続けたCore-Boyさんが優勝した。 Core-Boyさんが優勝後に何を語ったのか、知りたい方はこちらの記事をご覧いただきたい。
不良の方が珍しくなった「高校生RAP選手権」
「高校生RAP選手権」は、バラエティ番組「BS スカパー! BAZOOKA!!!」の人気企画として2012年7月より第1回大会がスタート。開催を重ねると共に人気が増し、今回で第12回大会を迎えた。スタート当初、本企画は不良少年たちの更生の役割を持つこともテーマの1つとして掲げていた。
しかし、ヒップホップの多様化によって、オタクやナードなラッパーの登場も増加。かつての「ラップは不良やヤンキーがするもの」といった世間体は薄れ、その多様化の一翼を担っていた「BAZOOKA!!!高校生RAP選手権」には、むしろ生粋の不良が登場することが少なくなったように見える。
そんな中、今大会のRed Eyeさんの登場は異様だった。
アウトローのバックグランドから生まれる即興のラップは、見ている最中は放送できるのか不安になるような内容だったが、同時にユーモアと説得力にも溢れており、観客を巻き込むパフォーマンスは確かなもので、独壇のライブにも思わされた。
もちろん、そのラップの内容が道徳や法的にどうなのかとみれば別問題であるが、ラッパーとして強烈なインパクトを残したのは間違いない。
また今大会、地元千葉・船橋市出身の女性MC・CESIAさんが「BAZOOKA!!!高校生RAP選手権」史上はじめて女性MCとしてベスト4入りを果たしたことも快挙となった。
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