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2年以内に革命を起こさなければカードゲームは滅びる 市場を10年支えるブシロード木谷高明社長インタビュー

ブシロード 木谷社長

ヴァイスシュヴァルツ』『カードファイト!! ヴァンガード』(以下『ヴァンガード』)『フューチャーカード バディファイト』(以下『バディファイト』)etc…

いずれかのうち、名前くらいは耳にしたことがあるという人も多いはずだ。これらは全て、ブシロードが生みだしてきたカードゲームタイトルのごく一部で、現在もアニメ化や漫画化など、多角的な展開が行われている。

代表取締役の木谷高明氏は、自らが創業した株式会社ブロッコリーを退社、新たに旗揚げしたブシロードで、2007年からカードゲームに特化した事業を展開してきた。

その後、ゲーム事業としてブシモを立ち上げ『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』や『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』などを手がけ、さらには音楽事業としてブシロードミュージックを、声優事務所として響などを次々と立ち上げ、エンタメ領域に深く広い根を張っている注目企業でもある。

あるいは、今ではブシロードについて「新日本プロレスのオーナー企業」という印象の方が強い人も多いかもしれない。木谷氏こそ、低迷していたプロレス業界を見かねて「プロレスもキャラクターコンテンツだ」と唱えて、新日本プロレスをグループ会社化し、業績をV字回復させた立役者だ。

KAI-YOU.netでは1ヶ月余り、トレーディングカードゲーム(TCG)及びデジタルカードゲーム(DCG)について、様々な側面から取材・企画を行ってきた。2011年に一度はそのピークを迎えたと言われる国内カードゲーム市場だが、特にDCGの隆盛を背景に、現在、国内外で盛り上がりを見せ始めている。

しかし、木谷氏は意外にも、現在のカードゲームには大きな課題が横たわっていると語る。プロデューサーとして辣腕を振るいカードゲーム市場を10年支え続けてきた氏が捉えているその全容とカードゲーム業界の未来への光明について、特集の締め括りとしてお話をうかがった。

取材・構成:須賀原みち 編集:新見直

ブシロードがTCGを始めた2つの理由

reIMG_0042 ──TCG会社として2007年に立ち上げ、その後、ブシロードは破竹の勢いを見せています。まずはじめに、木谷さんがTCGで起業するに至った理由について、お教えください。

木谷高明社長(以下、木谷) TCGの歴史はまだ新しく、93年からスタートしています【『Magic: The Gathering』の発売】。ブシロードの創業は、まだ約14年ほどしか歴史がなく、開拓され尽くしていない新しいジャンルとして、可能性があると考えました。

逆に言えば、すでにエンタメ業界で走っているプレイヤーがいる中で、カードゲーム以外の業種で勝てる気がしませんでした。

ここ15年のエンタメ業界で、パブリッシャーやメーカーとして売上200億円レベルにまで至った新興企業というのは、スマホのゲーム会社を除くと、ブシロードとグッドスマイルカンパニー(以下、グッスマ)くらいしかありません。つまり、玩具会社や出版社、アニメ会社、音楽会社、映像会社などの新興エンタメ企業でそんなに大きくなった会社というのはあまりない。

なぜブシロードとグッスマが大きくなったかというと、ほかでは真似できないものがあったからです。グッスマはフィギュアの「ねんどろいど」シリーズのブランド化と中国での製造ノウハウで、ブシロードでいえばカードゲーム。あとは新日本プロレスを成功させたのもあります。今は、ブシロードならではの音楽コンテンツを作ろうとしています。

──つまり、07年当時、TCG市場の発展を牽引できる可能性があったから、そこを狙ったということですね。そもそも、木谷社長とTCGの出会いはいつになるのでしょうか?

木谷 99年に、前の会社(ブロッコリー)で美少女TCG『アクエリアンエイジ』を作って、「TCGは面白い」と感じました。TCGのプロモーションが、僕にすごく合っているんですよね。

──と言いますと?

木谷 TCGのプロモーションっていうのは、ものすごく難しいんです。TCGを立ち上げる時には、全国各地で一斉にアナログなコミュニティを創り上げないといけない。

TCGは立ち上がってから時間がたつほど、(ルールやカードを)覚えるのが難しくなるので、どんなに規模が膨らんでも最初に作ったユーザー数の3倍までしかいきません。最初にユーザーを1000人しか作れないと、そのTCGの人口は3000人までしかいかない。けれど、最初に2万人ユーザーを作れば6万人になる。

だから、TCGのプロモーションっていうのは、選挙活動に似ています。初心者講習会を開催して、全国に支持者を作って歩く。そうすれば、その支援者が一緒に選挙活動(プロモーション)をやってくれます。

──ブシロードではテレビCMなどを含めて、かなり積極的にプロモーション活動を行っている印象です。

木谷 新しいTCGでは、スタートダッシュとして垂直立ち上げ(始めた時から大規模に資金を投下して展開していく手法)をしないといけません。でも、その宣伝費の割り出し方は普通の会社じゃ難しいんです。普通、宣伝費は目標売上の何%という形で割り出しますが、そもそも(発売前で)売上が立っていないものに対して、いくら宣伝費を使うんだという話になります。

だから、立ち上がってから3年以上続いたTCGのタイトルというのは、ものすごく少ない。3年以上続いた世界のTCGの半数は、僕絡みなんじゃないかな(笑)。

これはTCGに限ったことじゃないですけど、今は作品のストーリーだけではなくて、プロモーションにもストーリーが必要な時代です。すでに誰かがやっていることを後からなぞってやるのに、アイディアだけでうまくいくわけがない。ユーザーが勝手にコンテンツを見つけて盛り上がってくれる時代は終わったんです。

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「ブシロード10周年祭」 撮影:坂東樹

──2009年には、『ヴァイスシュヴァルツ』を取り上げたバラエティ番組『カード学園』をTBSで放送されていて、驚いた記憶があります。それもスタートダッシュとして必要だったんですね。

木谷 創業したばかりの会社としては(宣伝費を)使いましたよね。だけど、それが大事なことなんです。加えて、雰囲気作りやコミュニティ作りもものすごく大事です。

──TCGのコミュニティというと、ブシロードさんは自社TCGの講習会や大会を多く開催しています。

木谷 「このカードゲームは、このためにやるんだ」という明確な大義がすごく大事なんです。

例えば、六本木ヒルズで行った『カードファイト!!ヴァンガード』制作発表会のときには、DAIGOさんをはじめ、制作関係者やキャストの皆さん、媒体関係者に流通関係者など、600人くらいがいらっしゃった中で、僕は「この作品が業界をもっと伸ばすし、本来であればメーカーがやるべき講習会や大会を、我々の代わりにやってくれているショップさんのためにもやらなければいけない」という挨拶をしました。

そうしたら、自分たちの苦労を思い出したのか、ショップ関係者の中には感動して涙を流した方もいらっしゃいました。ほかの来場者の方がその様子を見てびっくりしていました。

そうやって、僕やブシロードがそのプロジェクトにかける意気込みと思いを広げることが、『ヴァンガード』の初期の大ヒットにつながったんだと思います。その挨拶では僕も本音で話していますし、やっぱりガチでないと物語は作れないんですよ。

スポーツでも技のスゴさで盛り上がることもありますが、本当に盛り上がるのは、そのスポーツにストーリーがあるからです。今の時代、全てがエンターテインメントになっていってるんだと感じます。

現在のカードゲーム市場は、ヤバい兆候が出ている?

──ここ数年はデジタルカードゲーム(DCG)が盛り上がってるとされています。また、トレーディングカードゲームの国内販売額も2015年度には1000億円弱と、再興の兆しを見せています。木谷さんから見て、カードゲーム市場全体の動向をどのように見ていますか?

木谷 ここ2年間の盛り上がりは、ほとんど『遊戯王OCG』と『デュエル・マスターズ』が伸びてただけなんです。他のタイトルはどんどん下がり、ブシロードも現状維持が精一杯でした。なので、周りが下がっていく分、相対的にブシロードのシェアが上がってきていて、今年度はブシロードが業界1位を取れる可能性もあると思っています。(ここ最近の市場としては)なんとか上位クラスのTCGが頑張っていて、それ以下のタイトルは全部シェアを落としていってる状況です。

ただ、上位のブランドに集中するのは、そのマーケットがヤバい時の兆候なんです。僕は元々証券マンでしたが、株の最終局面(ヤバい時)も一部の銘柄に集中するようになります。上がるから買う、買うから上がるというサイクルになるんですね。

要するに、ショップとしては『遊戯王OCG』と『デュエル・マスターズ』を扱ってないと売り上げが上がらない。そうなると、本当は他のTCGをやりたいお客さんがいても、シェアは『遊戯王OCG』と『デュエル・マスターズ』に集中してしまう。それが破綻したら、急激に下がって戻らなくなってしまう。実際に、今はマーケット自体が縮んでいます。

今、ブシロードがカードゲームの未来に見出している光明とは

ブシロード・インタビュー4 ──そうした状況で、ブシロードが今後仕掛けようと考えている施策はありますか?

木谷 プロモーションを含めて、アナログのTCGはデジタルを上手く使えてないと思います。今後の施策について、今はあまり話せませんが、来年にかけて一生懸命準備しているところです。アナログを伸ばすためのポイントは、アプリですね。

──DCGアプリを製作するということですか?

木谷 もちろんオリジナルのDCGも開発していますし、色んなタイプのアプリをやっていくつもりです。

まず、なにより先にアプリでカードゲームに触れてもらうこと。YouTubeやテレビなどで音楽を聴いていたらライブに行きたくなるのと同様ですが、カードゲームでいきなり「カードを買おう」とか「大会に行こう」と考えるのは難しい。それが出来るのは、友達に誘われた場合のみだと思います。そう思ってもらうためには、デジタルで先にカードゲームを経験してもらわなければいけません。

だから、TCGアニメやプレイ動画の配信など、アナログTCGもデジタルの良いところをもっと取り入れていくべきだと考えています。やっぱり、デジタルとアナログをどうやってつないでいくかというのが大事な時代ですね。

──今、DCGがヒットしている要因としては、プレイまでの敷居の低さも大きいでしょうね。

木谷 ただ、今のところアナログとデジタルを上手くミックスして、デジタルを上手く使いこなしてる例はまだないんじゃないかと思います。まだまだトライすべきです。

──ブシロードでは2015年に『ジーンクロス』、2016年には海外向けのDCG『Cardfight!! Online』のβテストを行うなど、すでにDCGにも乗り出していますが。

木谷 試行錯誤の連続です。『ジーンクロス』は予想より人が集まらず、『Cardfight!! Online』もβテスト【実際の運用前に、公募したユーザーなどにプレイしてもらうテスト】のみ行いました。もう「ダメだったらやめる」という選択肢を入れることにしたんです。

──開発費をかけたにもかかわらず、ですか?

木谷 これ以上ダメージを受けたくありませんから。ブランドの修復ってものすごく大変なんです。

──2012年に始めたDCGの『キングオブプロレスリング』も、今年3月にサービスを終了していますね。

木谷 あれはプロレスを盛り上げるきっかけとして出しました。プロレスのブロマイド回帰に活躍したし、ゲームを楽しんでくれた人もいて、良かったかな。やるべきことであり、やってよかったと感じています。

──今のDCGの盛り上がりはどう見ていますか?

木谷 たぶん他社さんも悩まれてるところだと思いますけど、消費速度はDCGのほうがはるかに早いんですよ。なぜなら、ネット上でゲームができるので、どのカードやデッキが強いのかといったことがすぐわかってくる。遊ぶのも情報を得るのもネットで完結してしまう。

──ゲーム用語でいうと「メタ」といった情報がすぐに伝播するということですね。

木谷 もうひとつは意識の問題で、アナログTCGは「友達同士でパックを開けて楽しい」といった、対戦以外の楽しみ方ができるのですが、DCGだと対戦以外の楽しみ方が少なく、早く消費されてしまう。『アンジュ・ヴィエルジュ』のように、イラストとブランドだけを共有して、アナログとデジタルのルールが全く異なる、といったものであれば、あまり問題ないんでしょうけど。

それにDCGの場合は、画面が狭いので出来ることに限界があります。アナログTCGをDCGに移植したとしても、全く同じルールにするのは難しいでしょう。

──アナログTCGのほうがルールを複雑にできる?

木谷 させやすいと思います。なので、3年後、5年後、DCGがどうなっているのか。実は今のところよくわかっていません。良くなる気もするし、もしかしたらアナログTCGに戻ってきてしまう気もしています。ただ、アナログTCGの進化する余地があまり残っていない一方、DCGはまだまだ発展の余地があるとは感じています。

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