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  • 2023.07.07

「誰かを救うために歌うんじゃない」VTuberの歌姫が秘めた初期衝動

越境する「VTuber/Vシンガーの音楽」。今こそ問われるその“真価”──

「誰かを救うために歌うんじゃない」VTuberの歌姫が秘めた初期衝動

バーチャルYouTuber(VTuber)/Vシンガー史上初となる「YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』への出演」「日本武道館公演の開催」を成し遂げた星街すいせいさんと花譜さん。

2人の歌姫による対談は後編へと突入し、さらなる表現の深淵、そしてシーンの外へ広がる「VTuber/Vシンガーの音楽」について思いを交わす。

今や、YouTubeやTikTokなどで楽曲やパフォーマンスが爆発的にヒットしたのを機に、VTuber/Vシンガーたちがテレビや雑誌、ラジオなどインターネット外のマスメディアに出演することも増えてきた。

逆にいえば、より多くの耳目を集めるようになったことで「VTuber/Vシンガーの音楽」はその真価──「人気なもの」「数字がとれるもの」という単純な意味ではない──が、今こそ問われている

バーチャルとかリアルとか、アーティストであるか否かに関係ない“──シーンを象徴する2人の対談から、「VTuber/Vシンガーの音楽」の未来を紐解いていく。

目次

  1. 花譜の学友「最近この曲が好きで……」 まさかの展開に
  2. バーチャルとかリアルとか、アーティストであるか否かに関係ない
  3. 武道館を夢見る星街すいせい、武道館でライブした花譜
  4. 「歌が好き。だから歌う」──歌は誰を救うのか

花譜の学友「最近この曲が好きで……」 まさかの展開に

──星街すいせいさんの「THE FIRST TAKE」への出演と、花譜さんが歌う楽曲「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」のバイラルヒットは、シーンの外にまで届く大きなできごとでした。お互いの活躍をどう見ていましたか?

花譜 すいちゃんが「THE FIRST TAKE」に出たのを見て、「ついにあの真っ白な空間にVTuberが現れた!」って衝撃を受けました。

最近は、学校の友だちからVTuberやVシンガーの名前を聞くことも増えたし、音楽以外でもいろんな場所で誰かしらが活躍しているし、もう自分のようなバーチャルな存在が当たり前になってきたなって。

渋谷の街中ですいちゃんの広告を見て「すいちゃんの声がする!」ってめっちゃテンション上がったし!

星街すいせい (笑)。 私も「『トウキョウ・シャンディ・ランデヴ』めっちゃバズっとるやん!」って思ったよ。

花譜さんが歌うMAISONdes「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」

花譜 そういえば、VTuberとかVシンガーとかぜんぜん知らない友達が「最近、この曲好きなんだよね」って教えてくれたのが「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」だったってことがあって(笑)。その時は私もすごい驚いた。

星街すいせい えっ、それ気づかれないの?!

花譜 気づかれなかった(笑)。

星街すいせい 気づかれないんだ?!??!(笑)

花譜 聞かれたその子には「えー! 知ってる知ってる!」って何気なく返事したけど、その時に「本当に広まってるんだな」って実感したなあ。

星街すいせい 面白い、そんなフィクションみたいなことあるんだね(笑)。

私の(「THE FIRST TAKE」の)場合も、それまでVTuberの音楽を聴いたことがなかった人たちにも届いた実感があった。みんな「そんなに?!」ってくらい褒めてくれたし。

星街すいせいさんが「THE FIRST TAKE」で披露した「Stellar Stellar」

星街すいせい 収録したときよりも、公開当日の方が緊張してたかな。

「THE FIRST TAKE」はいろんな有名アーティストさんのパフォーマンスが公開されている場所だし、音楽通な人たちも注目しているコンテンツだから、「大丈夫かな」「受け入れてもらえるかな」って不安すぎて……。

これで私がめちゃくちゃ下手くそだったら、「VTuber/Vシンガーの音楽」そのものの評価も決定づけてしまうっていう事の重大さに、収録した後に気付いてしまって。「やばいぞお!」って(笑)。

でもいざ公開されてみたら、受け入れてもらえて安心したよ。

花譜 いや本当にめちゃくちゃすごかったよ!

星街すいせい よかった〜〜ありがとう~〜(泣)。

──公開当日、「Stellar Stellar」の作・編曲者であり収録にサポートメンバーとして参加したTAKU INOUEさんが、「すいせい星街まじで肝座ってて本当にすごいなと思った」と賞賛していたのも印象に残っています。

星街すいせい 収録当日は緊張したら終わりだと思ってたので、「緊張しちゃいけない」って言い聞かせてました。

そもそも、一発撮りと言われているとはいえ、なんだかんだリテイクとかあるんじゃないかって疑ってたんです。けど、実際は本当に一度切りでした(笑)。特に歌いだしはアカペラだからめちゃくちゃ緊張して……!

でも逆に「そこさえ決まれば!」って思っていたので、最初のたっけぇ“だって僕は星だから”がちゃんと声が出せて、「これはイケるぞ!」って確信しました。

バーチャルとかリアルとか、アーティストであるか否かに関係ない

──「VTuber/Vシンガーの音楽」がシーンの外側にも届くようになった今、ご自身に対するイメージの変化など感じることはありますか?

花譜 ん〜……なんだろう……? それこそ「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」とか、曲は知ってるけど歌ってる私自身のことは知らないって人が増えてきていて。

花譜 それって、本当にフラットに「曲がいい」と思って聴いてもらえている、ということだと思うんです。私も自分が歌わせていただいている曲が大好きなので、それがより多くの人に届いているのが嬉しいです。

「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」はTVアニメ『うる星やつら』EDテーマに使用された

星街すいせい 私も「THE FIRST TAKE」に出たこともあって、普通にリアルのアーティストと同じように見ていただけることが増えました。でもだからこそ、その中でバーチャルという異質さが目立っているようにも感じているんです。

悪意があってのことではない、純粋な疑問ではあるとは思うんですが、「歌が上手いんだから、バーチャルじゃなくてもいいんじゃない?」って言われることが増えてきて。

逆に、「Adoさんとかずっと真夜中でいいのに。みたいに顔出しをしないアーティストと同じだ」って反論してくれる人もいるんですけど。

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星街すいせいと花譜、なぜ2人は“歌う“のか?