UXデザインのプロが2ヶ月でつくったインディーゲームを遊んでみた!

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はじまりは「人生のシミュレーション」というアイデア

──そもそも、この企画はどんな風に立ち上がったのでしょうか?


藤井賢二 展示会場のGOOD DESIGN Marunouchiさんの公募に出てみないか? と声がかかったのがそもそものはじまりでした。

藤井 賢二さん:株式会社たきコーポレーション取締役。本企画の発案者。

藤井賢二 公募だったので、ゲームをつくる企画というのが通るのか、不安はありました。

ただ、僕は昔ゲームが好きで、社内にも結構なゲーマーがいたりして。もしここで審査に落ちたとしても、どうにかして実現させたいと思えるくらい、ゲーム制作への熱量があった。それで、思い切って提案してみたら採用されたんです。


企画を練っていく中で、最初に出たのは「日常の出来事がゲームになったら面白いんじゃないか?」というアイデアでした。会社の面接みたいに、人生の大事なポイントをゲームにしてシミュレーションする。

「結婚編」「老後編」のような形で、人生の役に立って、子供でも遊べるゲームがいくつかあれば、面白い展示になるんじゃないかと思ってましたね。

最終的には、ゲームとして面白いものにするためにも、「ゲームから学びとれる要素とは何か?」というのを分析して、ゲームに落とし込むという方針に変わっていきました。


──展示されている8種類のインディーゲームはどのように生まれたのでしょうか?


藤井賢二 展示全体を楽しんでいただくために、ゲームのジャンルはバラエティ豊かになるよう、ある程度意識していました。


それから、仮説として立てていた「ゲームから学びを得る」という体験についてディスカッションを重ねたり、実際に学びを得たという方のnoteやポストを分析したりして。


そのうえで、社内のメンバーに協力してもらって、ゲームで勉強になったことをバーっと洗い出していったんです。


最終的に、集まったデータを分類してみると「ゲームから得られる要素」として8つのテーマが生まれた。そこから各ゲームをつくっていきました。

各ゲームに設定された学び

若者から80代まで、ゲームから学びを得た人は6割

──会場には、Webアンケートの結果も展示されていますね。


藤井賢二 ただゲームをつくって展示するだけでは、我々の仮説を押し付けることになりかねない。

実際、世の中の人はどう思ってるんだろう?」というのを調査をして、結果を共有したほうが説得力が生まれると考えていました。

藤井賢二 そこで、500人ぐらいの方にご協力いただいて、Webアンケートを行ったんですね。


データが偏らないよう、ゲームが好きな人ばかりではなく、あまりゲームをやらないという人の回答も集めるように気をつけました。

プロジェクトメンバーの80代のお母さんもアンケートに答えたそう。さまざまな世代が答えている

「あなたはゲームからどのような学びを得たか」という質問に対しては、何か人生を生き抜くためのマインドセットや教訓、機微のような要素が多いのが印象的である。

重視したのは直感的にプレイできるデザイン

──今回はどうしてレトロゲームのような筐体をデザインしたのでしょうか?


川郁子 私は今回、ビジュアルのデザインやアートディレクションを担当しました。


検討段階では「スーパーファミコンっぽいデザインがいいかな?」とか、いろいろ意見が出ていたんですが、よりミニマムなデザインを考えていった結果、さまざまな世代がプレイしやすい、レトロゲームになっていきました。

川 郁子さん:株式会社たきコーポレーション UXデザインカンパニーIDEAL所属。今回の展示全体のデザインに加え、『ASTRO SURVIVOR』のゲームデザインも担当

藤井賢二 今の時代、ハイクオリティな映像を用いたゲームをつくることも可能です。ただ、僕たちはゲーム会社に対抗するようなゲームをつくりたいわけではなかったんです。

表現のレベルや仕組みを昔のレベルに落とすことによって、ゲームの新しい可能性を見つけたかったんですよね。


内山堅 シンプルなフォーマットには、理解がしやすいという利点もあります。今回は展示会なので、1プレイの想定時間は30秒から2分程度。

内山 堅さん:株式会社たきコーポレーション UXデザインカンパニー IDEAL代表。社外との進行窓口を担当。実はゲームを自分でつくった世代

内山堅 そのためには、プレイヤーが直感的にゲームを理解し、すぐ操作できるというスピード感が必要です。ストーリーや導入までの理解が長くなるとプレイしにくいですからね。


──レトロゲームのフォーマットでデザインしていくにあたり、意識したことはありますか?


川郁子 レトロゲームといっても、年代によって、絵のタッチが違うんです。そういうのにも詳しい人がメンバーにいるので、「あんな感じにしよう!」というアイデア出しはスムーズでした。

ゲームのデザインの一部

川郁子 今回出展しているゲームのうち、私がデザインした『ASTRO SURVIVOR』は、色数が多かったり、光の表現にこだわりました。どちらかといえば「最近のインディーゲーム」の雰囲気を取り入れた部分もあります。


ただ、全体的に、昔のレトロゲームのデザインをリスペクトしていきたかったので、そういう要素は研究して、取り入れていきました。


藤井賢二 まぁ、シンプルなゲームにしたのは、単純に2ヶ月しかない、という制作期間の問題もありましたけどね(笑)。

クリエイターたちの人生を変えたゲーム

──企画コンセプトの“ぼくたちは ゲームを通じて人生を 体験していたのかもしれない”というメッセージが印象的でした。皆さんの人生に影響したゲーム体験を教えてください。


藤井賢二 僕は、ベタですけど「ドラゴンクエスト」シリーズみたいなロールプレイングゲームが好きでした。

なんとなく誰かに話を聞いて、ヒントをもらいながら徐々に謎を解明していく。その経験は大人になっても、仕事に活かされている。未知のものに向かっていく時のノリは、なんとなくゲームから教わったような気がしますね。


川郁子 私の家ではゲームを買ってもらえなかったので、ゲームというと、小さい頃は友達の家でちょこちょこやるくらいでした。

それが、大人になってから「どうぶつの森」シリーズにめちゃくちゃハマってしまったんです。毎日何時間も同じゲームをやり続けるっていう体験をはじめてしました(笑)。

川郁子 田舎育ちなので、東京は、自然がなくて嫌だなと思うことがあって。それが、「どうぶつの森」の世界に行くと虫の声とかが聞こえてくる。なにもしないで、ただそこにいることを楽しんで、ふらふらするんです。

コロナ禍は特に癒しを求めて、虫の声を聴きにいったりとか、波の音を聴きにいったりとか。別世界への旅行みたいな感覚でゲームの世界に行ってました。


内山堅 僕はマイコン世代なので、自分でプログラムして簡単なゲームをつくったりしていた、最初の世代かもしれないですね。当時ハマったのは、ひたすら穴を掘ってエイリアンを埋める『平安京エイリアン』っていうゲーム(笑)。


※『平安京エイリアン』は、1979年夏に東京大学の理論科学グループ(略称:TSG)が開発した固定画面アクションゲーム


東大の学生さんがつくったゲームなんですが、ゲームコミュニティーですごい流行って、最終的にはコンソール(家庭用ゲーム機)のゲームソフトとして発売されたんですよ。小学生だった僕は、そのコンソール版を買ってもらって。めちゃくちゃ集中してプレイしてました。


基本的には、同じ挙動を繰り返す系のパターンがあるゲームが好きですね。シューティングとか、打つだけのゲームとか。自らの技術を上げていくトレーニング系のやつ。

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