2日目の現地にて、漫画系同人誌の中で盛況だったのが、『逆境ナイン』『アオイホノオ』などで知られる漫画家・島本和彦さんのサークル「ウラシマモト」だ。
島本さんは2000年ごろからコミックマーケットに参加し続け、大阪芸術大学時代の同級生・庵野秀明さんが総監督をつとめた『シン・ゴジラ』の同人誌などでも話題を読んだ歴戦の参加者。 イベント前には、ファンがTwitterに島本さんのような画風のファンアートと共に、「島本和彦の描く『ウマ娘 プリティーダービー』が読みたい」という声を投稿。
そのツイートが拡散され、なんと島本さん本人が反応し、実際に『ウマ娘』本の頒布が発表されるという流れもあった。読みたい…のか… https://t.co/v2946VIm39
— 漫画家島本和彦ウラシマモト12/31金曜日 西あ33ab (@simakazu) December 2, 2021
今回は現地にて島本さんにインタビューを実施。『ウマ娘』本がどうやって誕生したのか、その経緯をインタビューした。
ファンアートに背中を押された『ウマ娘』本
──今回、『ウマ娘』を題材に選ばれた理由はなんだったのでしょうか?島本和彦さん(以下、島本) 実はうちのスタッフが『ウマ娘』の大ファンで、彼が私に『ウマ娘』を描いて欲しがってたんですよね。
私の同人誌の題材はいつも、流行っているもので、かつ私の作品と何か関連性があり、私が描いても違和感がないものを選んでいるんです。
──具体的には、どういった部分の関連性を基準に選んでいるのでしょうか?
島本 物語の構図とかですね。
例えば、以前同人誌を描いた『ラブライブ!』は物語の最初に「高校の廃校を避けるために部活で結果を残す」っていう物語の目標が提示される。
これは、「野球部の廃部を撤回させるために甲子園優勝を目指す」という『逆境ナイン』に通じるものがある。
島本 『ウマ娘』にはそういった私の作品との関連性があまり無かったので、勉強はしつつもどうしようかと思っていてまして。『ウマ娘』はファンの人たちが厳しいという話も聞いたので、「だったら余計なことをしない方がいいのかな」とも思ってたんです。今回の夏コミのラブライブ本(シマライブ)の中味その2です。頑張ったら少しずつ少しずつ似て描けるようになってきたあたり(笑)。 画像ちょっと荒いです。http://t.co/CySqGTLQFm pic.twitter.com/llublDzftR
— 漫画家島本和彦ウラシマモト12/31金曜日 西あ33ab (@simakazu) August 13, 2015
そこに、Twitterでファンアートと一緒に「島本和彦の描く『ウマ娘』が見たい」っていう声が出てきて。その投稿に賛同する声も多くバズっていたんです。
──元から『ウマ娘』本の構想はあったものの迷っていたところに、ファンからの声で背中を押されたんですね。
島本 漫画を描いてTwitterに載せてはいたかもしれないですが、ファンアートがなかったら本はつくってなかったかもしれないですね。
でも、ファンアートを投稿してくれた人のツイートに、みんなが「島本さんならこのウマ娘をこう描くんじゃないか」って言ってくれていて。
私が一言「読みたい…のか…」と書いたことでみんながさらに盛り上がったのを見て、「そんなにみんなが見たいんだったら描いても許されるかな」と感じて『ウマ娘』でいくことに決めました(笑)。
──内容はどのように制作されたんでしょうか?
島本 形式としては、私の漫画のキャラクターがトレーナーになってウマ娘を育てる話が見たいってTwitterで言われてたので、その通りにしました(笑)。
内容の部分では、元々読みたいって言ってくれてたスタッフと色々話をして、アニメを見たらすごく面白くて泣きもしました。2期が特に泣けたね!
ただ、アニメやTwitterでの反応を見ていく中で、みんなはアニメの物語を漫画にしてほしいわけではないんだなというのはなんとなくわかってきて。
実際に自分でゲームをプレイしてみたら「メイショウドトウ」をガチャで引いたんです。彼女は腕のフリルとかもあって走る姿が凄くキレイだったので、描くことに決めました。
──SNSでは、「サクラバクシンオー」が島本さんと親和性が高そうという意見もありました。冬コミの新刊の告知です!!
— 漫画家島本和彦ウラシマモト12/31金曜日 西あ33ab (@simakazu) December 28, 2021
1冊目
「シマ娘 バーニングダービー」
B5判50ページ‼︎
こんな感じになりました‼︎
どうぞよろしくお願いします!!
#C99A pic.twitter.com/kVqKIuHBGH
島本 みんなサクラバクシンオー好きなんだよねぇ! バクシンオーは、みんなの期待もあるし描いてみたんだけど、凄く難しかった。
彼女の顔は、オデコが広くて口が小さくて、基本的にはシンプルなんだけど、逆になかなか似なくて。髪の毛が特徴的だったり装飾が多くて顔が隠れてる子の方が描きやすいんですよ。
最初はアナログで描いて、デジタルで仕上げもしたんだけど、やっぱり違うなと思って何回も描き直しました。
──そうなると、今の島本先生のお気に入りはメイショウドトウなんですね。
島本 今のところはね!(笑)
「コミケが失われるのは国の損失」カオスな創作の場の重要性
──改めて、20年以上参加されている島本さんとしては、2年ぶりに今日コミケのこの場に立ってみて、率直にどう思われましたか?島本 やっぱり、コミケはやらないとだめだと思いましたね。
グレーゾーンでもあるけど、創作に対して〇も×も△もいろんなものがカオスな状態で、ぐちゃぐちゃになっている。それを許せる人もいれば許せない人もいるんだろうけど、それも含めて混然としているということが重要です。
コミケは日本の文化の凄く重要な部分にいるし、この場が失われると、国としても非常に大きな損失になると思います。
──ありがとうございます。次回は記念すべきコミケ100回記念ですが、どういったものをつくるか決まっていますか?
島本 いつも私が同人誌をつくるときは、もちろん例外もあるけど、原作の物語でファンが「謎」だと感じる部分を解明をするようにしていまして。
私自身もそれが面白くて同人誌をつくっているところもあるんですが、今回はそこまでできなかった。もし次回タイミングがあれば、『ウマ娘』をもっと深めたものを描きたいですね。
──次回作も楽しみにしてます!
コミックマーケット99の思い出
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連載
2021年12月30日(木)・31日(金)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット99(C99)」を特集。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で中止・延期を経て、2019年12月の冬コミ「コミックマーケット97」以来2年ぶりにリアル開催される世界最大級の同人誌即売会。 参加者の入場に新型コロナワクチンの接種証明やPCR検査結果証明の確認を実施、東西エリアが自由に行き来できないなど、従来とは大きく異なる中で1日あたり約10000サークルが参加。 サークル、コスプレ、一般、さらには準備会と、コミケにおける全参加者の状況を特集する。
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