連載 | #13 コミックマーケット95

【コミケ95】「オタクのためのデザイン」を考える エポックな同人誌が10年ぶり新刊

【コミケ95】「オタクのためのデザイン」を考える エポックな同人誌が10年ぶり新刊
【コミケ95】「オタクのためのデザイン」を考える エポックな同人誌が10年ぶり新刊

左から『オタクとデザインの消費』と『イヤホンちゃん』

POPなポイントを3行で

  • 同人誌『オタクとデザイン』10年ぶり新刊がコミケで
  • 染谷洋平とパナソニー、2人のグラフィックデザイナー
  • 女の子にイヤホンをつけられる同人誌も
東京ビッグサイトで開催中の「コミックマーケット95」(C95)。3日目となる12月31日(月)に、評論系同人『オタクとデザイン』の10年ぶりとなる新刊『オタクとデザインの消費』と、女の子にイヤホンをつけられる同人誌 『イヤホンちゃん』が頒布される。

著者はアニメ業界でも活躍するデザイン会社・BALCOLONY.(バルコロニー)の染谷洋平さんと、イヤホンコードでつくられた「音楽を聴く女の子」などがTwitterで話題を呼ぶパナソニーさん。

場所は「東タ49a」。ともにグラフィックデザイナーとして注目を集める2人の新刊だ。

オタク界隈のグラフィックデザインを手がける染谷洋平

『オタクとデザインの消費』

染谷さんが代表をつとめるバルコロニーは、『魔法少女まどか☆マギカ』のパッケージにはじまり、アニメスタジオ・シャフトの設立40周年記念展のWebサイト、『コミック百合姫』の表紙などを手がけている。

『オタクとデザイン』は染谷さんが2006年から発行している同人誌だ。それまで並列に語られることが少なかった「オタク」と「デザイン」をあえて結びつけた。

そういった新しい方向性は、『交響詩篇エウレカセブン』をはじめアニメ・ゲーム領域でも活躍する草野剛デザイン事務所草野剛さんからも評価されている。 染谷さんとして10年ぶりとなる新刊。『オタクとデザイン』から『オタクとデザインの消費』へとタイトルが改められている真意とは何なのか。染谷さんからは、この10年を振り返るコメントが届いている。

ダサい袋文字とドロップシャドウ絶対殺すマンであった若き日の自分が、オタク界隈の商業グラフィックデザインを請け負うようになってからのこの10年余りの仕事生活とは、つまるところ先人が築いてきた定石…漫画誌の表紙を彩る高密度なレイアウト文法、タイポグラフィと呼ぶべきか思わず躊躇を禁じ得ないもはや絵そのものであるゲームタイトルロゴ、オタク趣味の原点とも言える児童向け玩具を彩る過剰なまでの装飾袋文字…そうしたオタク分野を取り巻く「あたりまえの風景」との戦いでありました。

しかし戦う以上は敵を知らねばなりません。それらの風景が産まれ育まれ受け入れられていった背景を考えるうちに、僕はいつしかそれらの憎むべき風景はオタクであった我々の原風景でもあり、またオタクの精神性の写し鏡でもあることを知ってしまったのです。

なんということでしょう。ダース・ベイダーに「ほ〜らパパだよ〜」と言われた時のルークの気分です。我々がドロップシャドウの闇を覗く時、ドロップシャドウもまた我々を見ていたのです。こうして多くのデザイナーが絶望に駆られ闇のフォースの使い手たるシスとなっていったのであります。

しかしアナキンが真に悪人であったなどと誰が言えましょう。僕だってこんな意識の高そうなことを考えた10分後にはどうせエロ動画を観ながら自家発電をしているに違いありません。誰だってそんなものです。たぶんね。

果たして我々デザイナーは清廉潔白な君主のためにだけ力を行使すべきでしょうか。いいえ、涙を流しながらえっちな薄い本を読んでいる孤独な同胞のためにこそ、我々デザイナーは仕えるべきなのです。

さあ今こそ本当のオタクのためのデザインを考えようではありませんか…それではまずは、ドロップシャドウを落とすところから。(そんな感じの本です) 染谷洋平さんコメント

ネットで話題を呼ぶ謎のグラフィックデザイナー パナソニー

『イヤホンちゃん』

一方、パナソニーさんといえば、Twitterに投稿するアート作品がたびたび反響を集めているグラフィックデザイナーだ。

11万以上のRTと40万以上の「いいね」を記録している「音楽を聴く女の子」を筆頭に、ユーモアの中にセンスを感じさせる作品を投稿している。 いったい普段は何をしているのか気になるところだが、「音楽を聴く女の子」の記事掲載時に聞いてみたところ、「ブルーノ・ムナーリを目指してグラフィックデザインをしています」とコメント。

ブルーノ・ムナーリは、絵画、彫刻からグラフィックデザイン、プロダクトデザイン、絵本など、幅広い分野で活躍したイタリアの芸術家/デザイナー。代表作としては「役に立たない機械」が知られている。

幅広いジャンルで活躍しているであろうことを想像させるパナソニーさんと、アニメやゲームといったオタク系コンテンツを代表するグラフィックデザイナーの1人・染谷洋平さん。

両者の新刊が並ぶ平成最後のコミケに、ぜひ足を運びたい。

平成最後のコミケを特集中

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イベント情報

コミックマーケット95

開催
2018年12月29日(土)から12月31日(月)
場所
有明・東京国際展示場(東京ビッグサイト/有明臨海副都心)
時間
出展サークル:10時から16時
企業ブース:10時から17時(最終日は16時)
コスプレ:10時から17時頃(最終日は15時45分頃)
午前中は入場待機列がありますので、初めて参加される方は午後到着するように来て下さい

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