OxTインタビュー Tom-H@ckとオーイシマサヨシが熱弁「アニソンが物語を失ってる」

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OxTインタビュー Tom-H@ckとオーイシマサヨシが熱弁「アニソンが物語を失ってる」
OxTインタビュー Tom-H@ckとオーイシマサヨシが熱弁「アニソンが物語を失ってる」
風を切り裂いていくような疾走感のあるボーカルとギター。爽快なサウンドで『プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ』(以下『プリスト』)のOPを飾る「STRIDER'S HIGH」に心奪われた視聴者も多いことだろう。あらゆる作品に対応する高いスキルでシーンに旋風を起こすユニット・OxTは、ここでも新しい風をアニメーションに吹き込んでいる。

OxTは、『けいおん!』をはじめ、デジロックを中心に圧倒的なサウンドを生み出すTom-H@ckさんと、バンド・Sound Scheduleのボーカルとしても活躍し、ソロとしては『月刊少女野崎くん』のOP「君じゃなきゃダメみたい」でiTunes Store総合ランキング1位を獲得したオーイシマサヨシさんによるユニット。2015年の結成から約半年の間に『ダイヤのA』、『オーバーロード』といった話題作を手がけてきたOxTは、2月3日には4thシングル「STRIDER'S HIGH」をリリースした。

【MV】OxT「STRIDER'S HIGH」Music Clip ショートVer.

3月にはアルバムリリース、4月にはワンマンライブと、さらに新しいステージへと登ろうとしているOxTが目指すアニメサウンドとはどのようなものなのか? そして、2人は「アニソンが物語を失っている」と熱弁、現在のアニソンシーンに一石を投じる──。

文:安倉儀たたた 写真:Yosuke Mochizuki

OxT結成のきっかけは「運命」

──OxT結成のきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

オーイシ 3年前、Tomくんが『ダイヤのA』第1期のOPを担当する時にボーカルを募集していて、そこに僕が抜擢されたんです。当時のマネージャーさんがオーディションに応募していて、一次審査通ったって言われて、スタジオにいって顔合わせして、仮歌を歌ったら、それが採用されたんです。

こう言うと、適当に決まったんじゃないかと思われそうですが……適当に決まったよね?

Tom うん。適当にきまった(笑)。

オーイシ 『プリスト』的に言うと「運命始まっちゃった」んだよね!

──Tomさんも運命を感じましたか?

Tom うん。嘘偽りなく、この人と階段を昇っていけたらいいなって思いました。

──最初は正式なユニットではなかったはずですが、OxTをはじめようと持ちかけたのはTomさんからだったんですよね?

Tom そうですね。『ダイヤのA』ではTom-H@ck featuring 大石昌良でしたが、2年後ぐらいに、ユニットとしてやろうって話をして。

オーイシ いろんなところで言ってるんですけど、僕としては、自分はただのアニメファンなわけですよ。その素晴らしさを知っているだけに、アニソンシンガーと名乗るのもおこがましいぐらいで。ただのアニメファンだけど、曲がつくれて歌も歌えたからアニメの主題歌を歌う仕事をさせてもらって、作品に貢献できている。その上で、Tom-H@ckというクリエイターの活動とたまたま交わることができて、ユニットを組んでいるっていう感覚です。

Tom まずそれぞれのソロ活動があって、機会があればOxTもやる。こういうテンションのユニットは珍しいんじゃないかな。いい意味で自由にやれています。

オーイシ そうですね。現場でもとにかく楽しくやれていますね。

Tom まあ、現場が楽しいのは全部オーイシさんのおかげですけれどもね?

オーイシ まあ……そーなるよね?

Tom 否定しないんだ(笑)。

「誰かと思った」と言われるくらい変わっていってる

──OxTは作品にあわせて色彩豊かな楽曲を提供する「カラフル」というコンセプトを掲げていますよね。

Tom 僕は作曲家としてどんなジャンルの楽曲でもつくるっていうスタンスでやってきたんですが、OxTではもう1人、歌の面でもそれができる人がいる。OxTなら、どんな依頼が来ても、他のユニットより高水準なものをつくれそうだなと。そういう意味でのカラフルですね。

オーイシ 僕は、作品に対するリスペクトを作家魂で形にしていくので、いろんな作品に対応しながら自分たちなりの色を発揮する。この作品が金色なら僕らも金色になりましょう、赤なら赤の曲をかきましょうと。

Tom アニメもそうだけど、コンテンツがあって音楽をつくる場合、「これはやっちゃいけない」とか、制約される部分があるんです。でも、2人だったら制約を越えて、スキルを使って自由自在に楽しくできる。それは本当に技量がないとできないんですが、OxTならできますね。

オーイシさんをユニットに誘ったのもやっぱりそこで、すごい才能の持ち主だから、音楽的にさらに上を目指せるんじゃないかって思ったんです。その手応えもある。

──2人の才能が掛け合わさったユニットということですね。曲をつくるときには、作曲・編曲みたいな分担はあるんですか?

Tom 分担は決まってないね。

オーイシ バンド時代には、メンバー全員が歩み寄って正解を導き出す、それか意見を「ぶつけ合う」っていう感じだったんですが、OxTではちょっと違ってます。僕はTomくんをリスペクトしているから、彼に対する疑問があまりないんですよね。「自分ならこうするかな」みたいな意見も言うんですが、Tomくんの曲も僕の意見も、どちらでも正解なんだと思えるんです。だから今は全部Tomくんにお任せです。

Tom オーイシさんも大人になったんじゃないの(笑)?

オーイシ いやいや(笑)。でも、アップデートされていく。人間的にも、お互いに影響を受けあって変わっている感じはあるよね。だってTomくんもさ、業界の人に「誰かと思った」って言われるぐらい人が変わったって聞いたよ(笑)。

Tom なんか変わったらしいんですよ。見た目もしゃべり方も、オーラとかも含めて、全部オーイシさんから影響を受けてる。

オーイシ それは表舞台に立つようになったからだと思うよ。

Tom そうだね、それまでは作家として、あくまで裏方だったのが、アーティスト活動としてOxTを組んだというのが大きい。

オーイシ 僕自身もTomくんと音楽をつくり始めてから、変わったって言われることが多くなりましたね。昔はもっとヒリヒリしていて、下をむいてネガティブな気持ちを歌にするところがあって、それはそれで受け入れられてはいたんですけれども、今はもっとポジティブに、エンタメ寄りになりました

すべてがハマったオールAな「STRIDER’S HIGH」

「STRIDER’S HIGH」

──2月8日に『プリスト』の主題歌「STRIDER’S HIGH」が発売されました。この曲は先ほどの「カラフル」でいうと何色でしょうか?

Tom 僕は青かな。

オーイシ 僕も青ですね。このアニメは「ストライド」っていう架空の、陸上競技を模した町中を走り回るスポーツをモチーフにしていて、爽快感とか疾走感がある。その青色に自分たちのスキルをあわせていったらこの曲ができたんです。

Tom そうですね。OxTらしい曲。

──『プリスト』の原作にはどんな印象を持たれましたか?

オーイシ ビジュアルノベルを読んだんですが、最初は女性向けコンテンツというイメージだったんだけど、読み進めていくとめっちゃ熱い物語で。僕もいちアニメファンとして、毎週いろんなアニメ見ますが、『プリスト』には普通に魅了されてしまってますね。作品がもつエネルギーを感じて、歌もそこにあわせています。

Tom この曲、ボーカルがうまく録れたよね。

オーイシ そう! オンエアされたOPを見ても、よく録れてるなって思う。

──「ボーカルがうまく録れている」というのはどういった状態を指すんですか?

オーイシ シンガーも人間だから、レコーディングの日の喉のコンディションとか、気分や心構え、マイクや機材の選択、現場の雰囲気だったりスタジオだったり、そういうものに左右されるから、全部完璧なんてなかなかありえない。でも、今回はそのすべてがオールAだった感じ。僕は収録に向けて、ボーカルプランをいくつか練っていくんですよ。熱唱パターンと、クールパターンと、普通に歌いあげるパターン。あとスキルでドヤ顔するパターンとか。

Tom それ顔の話でしょ?(笑)

オーイシ いや、ドヤ声ってがあるの(笑)! で、そういうパターンを綿密に練習していくんですけれども、「STRIDER’S HIGH」は僕のプランに1回目の録音から完全にハマった感じです。

──そのボーカルプランは2人で事前に相談されるんですか?

Tom 最初の頃はしてましたが、最近はしないですね。オーイシさんは、ピッチをコントロールする精度も高い。それに、クールに歌ってくださいとお願いした場合と、熱く歌ってとお願いした場合の振り幅はすごく大きい上に、求められている歌い方の中でブレない。

ヒット曲って、喉の鳴り方とか、歌い上げとか、ほんのちょっと聴かせる部分のいくつもの積み重ねで、それぞれがCDの売り上げに影響してる。オーイシさんは、その「ほんのちょっと」を全部コントロールできる。これはテクニックがないとできないことで、そこは本当にすごい。

オーイシ いやぁ、天才っておるんやなぁ。

Tom うるせえ(笑)!

臭いけど嗅ぎたいという精神

──今まで携わってきたアニメやゲームの原作を見たり楽しんだりされますか?

オーイシ 自分が関わったアニメが終わっても原作を読み続けている作品とかありますね。いい作品に出会わせてもらえるから、この仕事はすばらしいです。

Tom 僕は、作曲家として主役をどう輝かせるかっていう立ち位置が一番しっくりくるんです。だから、何かの楽曲をつくる場合、客観的に見ているところがありますね。

オーイシ エンタメとしてっていう目線でね。

Tom そう。『プリスト』も初めて見たときには「コンテンツとしてよくできてる」って(笑)。「面白くないな」と思いながら曲をつくってると、やっぱり面白くない曲ができるんですよね。というか、基本的に面白くないものなんてないと思っていて。ほら、世の中には、いわゆるクソゲーってあるじゃないですか(笑)。

オーイシ あるねー。

Tom でもそこにも、クソゲーって言いながらハマっちゃう何かがあるんですよ。臭いけど嗅ぎたいみたいな(笑)。

オーイシ それはなんか趣味が……でもわかる(笑)。

Tom 性癖なのかな?(笑) でも、そういうのこそ中毒性につながってくるじゃん。だから、見せ方の問題なんですよね。もし世間で悪く言われている作品でも、作品のいいところを見つけて、それを伸ばせるような音楽をつくりたい。そういう冷静さがプロデュースワークには必要な時もあるんですが、一方で正直ハマっちゃう作品もありますけどね。

僕らは「黄金のゼンマイ」にならないといけない

──様々な音楽の仕事をしながら、アニメの音楽も担当されているというスタンスだと思いますが、特にアニメーションやゲームの仕事によって影響を受けた部分はありますか?

Tom オーイシさんは特にたくさんあるんじゃない?

オーイシ ありますね。さっきの話ともかぶりますが、一番は、クリエイティブに対してポジティブになった。シンガーソングライターやバンドマンとして何年もクリエイティブをしてきて、それまでは、自分の中にある答えを掘り出してきていたけど、アニメやゲームには絶対的な正義、つまり原作があるんですよね。その時、監督さんの考え方や作品の世界観に自分たちが寄せていって、僕らは黄金のゼンマイにならないといけない

Tom おー、名言がでた!

オーイシ そう、ここ(原稿で)使ってください(笑)! でも冗談抜きで、作品にかっちりあった黄金のゼンマイになるのが、僕らの務めなんです。つまり、最高の下請けになるってこと。それが、クリエイティブに対してポジティブになったきっかけでした。これまで内向的になりすぎていた自分に気付いて、外にある絶対的な答えに向けてボールを投げていく快感に気づくことができて、外側に向けてポジティブなエネルギーを発揮できるようになったんですよね。

──もっと踏み込んで、黄金のゼンマイとして、絶対的な答えに向けて完璧なアンサーを返す以上に、その絶対的な答えの側にご自身が影響を与えたいと思うことはありませんか?

オーイシ すっごくあります。アニメファンの方に「オーイシマサヨシ」を浸透するきっかけにもなった『野崎君』で「あのOPがなかったら、ああいうスタイリッシュなイメージにならなかった」っていうご意見をいただいたことがあるんですけど、そういうのを聞くと、やっぱり嬉しいです。黄金のゼンマイは「部品でしかない」という意味ではなく、黄金だからちゃんと主張もあって輝いていられるように、スキルも含めてクリエイティブな能力を徹底的に磨き上げていきたいですね。

Tom いま話を聞いていて、驚いたというか、真相が分かったことがある。僕は、作家の中でもかなり個性が強い方だと自覚してるから、それを自分でも出そうと意識してるんです。だから、良い言い方じゃないけど、普通のものをつくるのは僕の仕事じゃないと思っています。

──普通のものを求められるなら、自分じゃなくてもいいと。

Tom そう。僕のところに仕事がきた時点で、オリジナリティの高い、特別なものをつくってもいいということで、そういう気持ちで曲をつくっていくと、最終的に自分の音楽が作品に影響を与えるまでになっている。まさに、僕の理想は、「この曲がなかったらこの作品は輝かなかった」という状態。だからいま話を聞いていて、オーイシさんと考え方は違うけど目指す結果は同じだと気付きました。

オーイシ 富士山を裏から登るから表から登るかの違いだっていうことですね。

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