ゲーム実況主・幕末志士インタビュー ニコ動異端児の正体とは?

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ゲーム実況主・幕末志士インタビュー ニコ動異端児の正体とは?
ゲーム実況主・幕末志士インタビュー ニコ動異端児の正体とは?

笑の神に愛されしゲーム実況主・幕末志士インタビュー ニコ動の伝説と呼ばれる異端児に迫る

みなさんは、ニコニコ動画における「ゲーム」カテゴリの合計再生数ランキングの第1位から第3位まで、すべて同じゲーム実況主による動画であることはご存知だろうか?

再生数ランキング第1位の動画「幕末志士達のスマブラ64実況プレイ」は1千万再生を超えており、その正体は、近年加熱している「ゲーム実況」の中でも、頂点に立つゲーム実況主だと言っても過言ではない男たちだ。

彼らの名は、幕末志士。2008年より、ニコニコ動画を舞台に土佐藩の剣豪・坂本龍馬と薩摩藩領主・西郷隆盛になりきって活動する、2人組ゲーム実況主ユニットだ。

平成のゲーム実況界に維新の嵐を巻き起こした幕末志士のゲーム実況動画は、動画初投稿から7年が経過した今でも衰えることを知らず、唯一無二の1千万再生の壁を破った『スマブラ64』、投稿からわずか2日で100万再生を超えた『マリオカート64』など、その神がかったおもしろさは、視聴者から「笑いの神に愛された」と評されるほど。いつしか彼らの動画は「ニコニコ動画の伝説」とも呼ばれている。

その一方で、「ゲーム実況界の冨樫」とも呼ばれており、一時は2年ほど1本も動画が投稿されない時期もあるくらい、活動ペースが遅いことでも知られている。

しかし、そんな彼らが2015年に入って、新作動画を1年半ぶりに投稿。チャンネルも開設し、さらに12月18日には初のニコニコ公式生放送へ出演と、まさに「幕末志士復活」と呼ぶにふさわしい活動を行っている。

今回は、そんな幕末志士の坂本龍馬と西郷隆盛にインタビュー。

笑いの神が舞い降りた数々のゲーム実況動画は、一体どのように生まれたのだろうか?

「今度は簡単にはいなくならない」と力強い宣言をしてくれた幕末志士に、ゲーム実況ランキングトップに君臨する彼らの「おもしろさ」に隠された努力、そして、幕末志士の秘密に迫った。

取材/安倉儀たたた、よしだゆうや 文/安倉儀たたた

幕末志士になりきって遊んでいた小学生時代



──『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』や『マリオカート64』の実況プレイ動画など、数々の人気ゲーム実況動画を生み出している幕末志士ですが、はじめて動画を投稿したのは2008年の『くにおくんの時代劇だよ全員集合!』……

坂本龍馬(以下、坂本) ……ではないんですよ(笑)。その前にこっそり『メダル オブ オナー』と『真・三國無双2』の実況プレイ動画を投稿していました。それらは幕末志士とか関係なく、普通の実況プレイ動画でした。

しかし、全然見てもらえなかったので、一風変わった企画で実況してみようと思い、幕末志士というキャラクターになりきって実況することにしたんです。ゲームソフトも、幕末に近い世界観ならマッチするだろうと思い、『くにおくんの時代劇だよ全員集合!』を選びました。そのため、幕末志士としては、くにおくんが初めてですね。

──そもそも、幕末志士というキャラクターのアイディアはどこからきたんでしょうか?

坂本 小学生時代にやっていた遊びからですね。当時、カセットテープレコーダーが家にあって、よく声を吹き込んで遊んでいたんですよ。

最初は適当に声を入れてるだけだったのですが、だんだんとこだわりが出てきて、ラジオ番組とかラジオドラマっぽくなっていった。その中に「侍になりきってゲームをプレイする」という変な企画がありました。これが幕末志士の原型になってますね。

──幕末志士として初投稿された2008年というと、ゲーム実況というカテゴリは盛り上がっていたのでしょうか?

坂本 2008年はゲーム実況がブレイクした年だと記憶しています。hacchiさんとかゆとり組さんとか。

僕らもその辺りからニコニコ動画を見るようになりました。ニコニコ動画のコメントシステムって、ゲーム実況に凄くマッチしてると思うんですよ。友達同士で集まって、誰かのゲームプレイを見ながら、あーだこーだ言い合うあの雰囲気がそのまま楽しめる。

ニコニコ動画でゲーム実況動画を見るようになって、それまで、ゲームって自分で遊んで楽しむものだと思っていたのが、隣で実際にゲームを一緒に遊んでいるような楽しみ、人が遊んでる様子を「見る楽しみ」のような新たな一面に気づかされましたね。

スマブラとマリオカートは1万時間以上はやり尽くした



──幕末志士の2人は、どんなゲームで遊ばれていたんでしょうか?

坂本 ファミコンだったら、『ドラゴンクエスト』『スーパーマリオブラザーズ』『くにおくん』シリーズ……。あぁ、これ挙げきれないですね(笑)。

西郷隆盛(以下、西郷) ファミコンなら坂本さんに誕生日にもらったやつ、結構やりましたよ僕。

坂本 それ、なんだっけ?

西郷 『アタックアニマル学園』と『六三四の剣』ですよ。僕、それ小6くらいに坂本さんからの誕生日プレゼントでもらったんです。でもなぜか最初から封が開けてあって。「ん? あ、こいつ先にやったな」って(笑)。

坂本 あー! あった! いや、それは不良品だったら悪いと思ったので……。

何でここでその話するかな(笑)。まぁ、一番遊んだのはニンテンドー64ですかね。『スマブラ64』と『マリオカート64』はプレイ時間でいうと1万時間を超えるぐらいは西郷さんとやり尽くしました

──そんなにやって飽きないんですか?

坂本 1人でやってると流石に飽きますが……。西郷さんと2人でやればどれだけやっても飽きないですよ。この人ずっと笑っててテンション下がらないですし。

西郷 坂本さんもずっと奇声あげてプレイしてるしね(笑)。

坂本 取材中にそういうの言わないでもらえます(笑)?

──2人はどのくらい強いんですか?

坂本 僕はそれほどでもないです。ひいき目に見ても、学校で1位レベルとかその辺だったと思う。でも、西郷さんの強さはガチです。

俺より強いプレイヤーに会いに行く」とか言って、関東とか関西にまで遠征して、各地のスマブラプレイヤーと対戦しまくってた。『スト2』かよ。公式の大会とかはなかったけど、当時の全国レベルで強かったと思います。

西郷 今思うとなんであんなに熱心だったんだろう(笑)。

坂本 西郷さんはヨッシー使いなんですけど、ヨッシーにはブロッキングという、ガードすると一瞬だけ無敵になる技があるんです。

それを実戦投入するために、毎日、トレーニングモードでCPU(コンピューターによる自動操縦で動くキャラクター)に攻撃させまくって、1人で延々とブロッキング練習してるんですよ。頭おかしいですよ、この人。

西郷 もうその辺で勘弁してくださいよ(爆笑)。

ゲーム実況動画に対する幕末志士のこだわりとは?



──毎日のように動画を投稿するゲーム実況主がほとんどの中で、幕末志士は新作動画が投稿されるまでに1〜2年もの月日が空くことでも知られていますが、1本の実況動画に対して、どのくらいの時間をかけられているのでしょうか?

坂本 まず、自分たちがワイワイと楽しめる、我々のスタイルにあっている作品を調査するところからはじめます。どのソフトの実況をやればおもしろいか──やっぱり我々のスタイルに合ってる合ってないがあるので、買ってプレイして調査するだけで何十時間もかかりますね。

収録する作品を決めたら、うまくいけば収録に5時間、編集・アップロード作業に10時間ってとこでしょうか。『奴が来る』や『スマブラ64』動画とかは別にして。

これは他の実況主さんも同じくらい時間をかけてると思いますよ。ただ、僕らは独自に「お蔵入り基準」を持っていて、基準をクリアした動画だけアップしています。頑張って収録しても、基準をクリアしていなければその動画はボツ

そういったボツ動画の時間も含めるなら、1つの動画をアップするまでに数十時間~数百時間かかっているかもしれませんね

──「お蔵入り基準」とは、どのような基準でしょうか?

坂本 シンプルに「僕か西郷さんがその動画を見て爆笑できるかどうか」です。

西郷 よくよく考えると、自分達のしゃべってることを聞いて爆笑するっておかしいですけどね(笑)。

坂本 でも、最低でも2人はその動画見て爆笑したってことだからね。動画をアップする前に最低限の保証がされてる。2人爆笑させれば勝ちですよ。

西郷 その基準は本当にわかりやすくて良いと思います。基準を超えるのが難しいですけど……(笑)。

──『マリオカート64』シリーズの実況動画なんて、めちゃめちゃおもしろいですよね。最後はまさかの……!

坂本 今までで一番時間をかけた動画ですね。プレイだけで100時間越えです。最後のバグ現象は世界初公開だったはずです。僕らも当時発見できませんでした。

西郷 あのバグ、任天堂さんに言ったら図書券とかもらえるんじゃないです(笑)?

坂本 久しぶりに死ぬほどやり込んだなぁ。『スマブラ64』の実況動画もそうだけど、もう一度撮れって言われても二度と撮れないです。

幕末志士のバイオリズムが合わない日は、録音しない



──ほかにも、動画をつくる上でこだわっていることはありますか?

坂本 音質はできるだけ良くしたいのでいろいろ試してますね。マイクとかオーディオインターフェースを変えてみたり、録音後のエフェクトをいじってみたり。それと動画にするときは、ゲーム音と音声のバランスが重要だと思ってます。アップする前に何度も聞き返してバランス調整をしていますね。

西郷 それから僕らのテンションの低い日は、集まっても録画ボタンを押しません。テンション上がらないな、2人のバイオリズムが合わないなっていう時には、そもそも録らないんです。

坂本 僕はともかく、西郷さんのテンションが低いのはヤバい。ゲラ役なのに。

西郷 ゲラて(笑)。

視聴者がいかに楽しめるかが大事



──動画1本にしても、とてもこだわっているんですね。

坂本 西郷さんには本当に素で楽しんでもらっていて、僕は「視聴者がいかに楽しめるか」ということを主眼に、視聴者が動画を見たときに、我々が楽しんでプレイしていると最大限感じてもらえるように動画をつくっています。

西郷 そのスタイルで自分たちが認知されている部分があるので、いかに自分たちが楽しむかを心がけるようにしています。

──ちなみに今まで投稿してきた動画の中で、幕末志士の2人が一番おもしろいと思う動画はありますか?

坂本 『スマブラ64』か『奴が来る 伍』のどちらかですね。

西郷 どちらかでしょうね。

坂本 周りの評判も考えれば『スマブラ64』になりそうですね。まぁ15年間かけてやってますからね。人生のすべてを賭けましたから。

──投稿コメントにある「15年の人生のすべてをここに」というのは本当だったんですね。

坂本 あれ、僕がやられっぱなしで終わったので悔しいんですよね。今、隠れて練習してるとこです。西郷さんをボコボコにできるレベルになったら、次を撮りたいと思ってます

西郷 え! それ聞いてないですよ。

坂本 言ってないもん。

西郷 ちょっと(笑)。

幕末志士は炎上しておわる?

──初投稿から2016年で8年目を迎える幕末志士ですが、これだけの長い期間を続けられた理由はなんでしょうか?

坂本 8年といっても、途中、西郷さんが転勤で離れていた期間は休止状態だったので、実際には5年くらいでしょうか。

続けられる理由は「ゲーム実況が楽しいから」以外にないです。僕らにとってゲーム実況は、遊びの延長戦上にありますから。おもしろいゲームを2人で遊んで、さらにおもしろいプレイができれば、ニコニコ動画に記録として残すといったイメージですね。

──これまでの活動の中で、辛かった時期などはなかったんですか?

坂本 1回ですね、※2炎上芸をやってみたいなと思った痛い過去がありました。動画の投稿者コメントに荒れそうな内容の文章を掲載したら本当に炎上して、それが自分の予想をはるかに超える燃え上がりでパニックになりましたね。

西郷 深夜に坂本さんから電話がかかってきましたよ。「西郷、やってしまった!」って(笑)。

坂本 結局、その炎上は「幕罰 -BAKU BADGE-」という動画で収まりましたが、本当にやらなきゃよかったと思ってます

西郷 ファンの人達に迷惑かけただけですからね、あれは。

※2 2010年8月に起きた幕末志士の炎上騒動。本人たちは最終的に謝罪し、バッジを400個つくって全部ネタだったと動画で説明したことで、騒動は沈静化している。詳しくは「幕罰 -BAKU BADGE-」の動画概要欄をご覧ください

最後は炎上して終了 幕末志士は今後どうなる?



──最後に、今後、幕末志士はどうなっていくのでしょうか?

坂本 炎上しておしまいでしょうね。

西郷 ちょっと(笑)。

坂本 いよいよ僕たちがおもしろくなくなったら、それしか残ってないと思いますよ。

西郷 最後の打ち上げ花火的なですか?

坂本 うん、謝罪動画も大々的にアップして。まあそのときは西郷さんも一蓮托生で心中してもらいますけどね。

西郷 最後の謝罪動画は笑ってはいけないのが逆に辛そう(笑)。

坂本 ただ、活動を再開したばかりなので、それは当分先の予定です。しばらくはまっとうにゲーム実況動画をアップしていきますよ。

──目標はあるんですか?

坂本 目標ですか。とりあえず、『スマブラ64の動画は超えときますか

西郷 確かに。あれに縛られ続けるのもしゃくだしね。

坂本 枯れる前に絞りきっていきますので、今後も遠巻きに見て楽しんでもらえればうれしいです!

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幕末志士

ゲーム実況主

ニコニコ動画を舞台に土佐藩の剣豪・坂本龍馬と薩摩藩領主・西郷隆盛になりきって活動するゲーム実況主。時代劇のような口調で展開されるゲーム実況動画は、毎回神がかったプレイや笑いが降臨し、2014年2月に投稿された動画「幕末志士達のスマブラ64実況プレイ」は、ゲーム実況動画では唯一無二の1千万再生を超えている。そのほかの動画も凄まじい再生数を誇っており、幕末志士の動画は「ニコニコ動画の伝説」とも呼ばれている。
2015年12月には、自身のチャンネル会員が参加できるオンラインゲーム「幕末志士ONLINE」を発表。これまでにない画期的な試みで注目を浴びている。
ニコニコチャンネル「幕末志士」:http://ch.nicovideo.jp/bakumatsu
Twitter:https://twitter.com/kirizaki_ei

1件のコメント

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editoreal

AOMORI SHOGO

こんなおもろい人がいるんですね。まだまだ世界は広い

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