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DOMMUNEインタビュー「降らぬ先の傘」宇川直宏の背負うカルマとは?

宇川直宏さん in 「DJ JOHN CAGE & THE 1000 WORLD WIDE DJS」@3331

観測史上最大の台風が関東直撃するっていう予報が出ていますね、悪夢が蘇ったよ(笑)」。

開口一番そう語るのは、2010年3月から日本初のライブストリーミングスタジオ兼チャンネル・DOMMUNEを運営する宇川直宏さん。

これまで、グラフィックデザイナー、映像作家、VJ、文筆家、大学教授、ファッションブランドディレクター、クラブオーナー、そして現代美術家と、枠にとらわれることのない全方位的な活動を展開してきた。

その宇川さんが立ち上げたDOMMUNEは、開局以来、トーク&DJライブを日夜全世界に発信し続けるインターネット放送局として、開局5周年を迎えた2014年も求心力を保ち続けている。

国内外のアーティストをゲストに放送される番組は、日々1万の試聴数を誇り、トータル視聴者数は4,500万人を超え、DOMMUNE自体が宇川さんの作品として、2011年には文化庁メディア芸術祭の推薦作品に選出されている。

2011年8月には、東日本大震災被災地支援イベントとして神奈川県での前代未聞の超大型無料フェス「FREEDOMMUNE 0 <ZERO>」を企画するも、開催当日、台風に見舞われて中止

そのリベンジとして、2012年・2013年と会場を幕張メッセに移して、どちらも数万人規模を動員し大成功を収めている。
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DOMMUNE University of the Arts -Tokyo Arts Circulation- @ 3331 Arts Chiyoda

そして2014年、「21世紀型オルタナティブ・アートスペース」として2010年にオープンした3331 Arts Chiyodaとコラボ。

まず、9月20日から11月3日(月)までの開催となる3331での現代美術解析プロジェクト「DOMMUNE University of the Arts -Tokyo Arts Circulation-」の展示。10月4日に秋田県のマタギ発祥の地と言われる隠れ里にあるトンネルで行った音楽イベント「根子フェス2014+DOMMUNE」。

そして、10月12日(日)に神田警察署前・東京電機大学旧校舎跡地の廃墟で行う屋内フェス「DOMMUNE/KANDA INDUSTRIAL」という3本柱でのおおがかりなプロジェクトが展開されている。

今回、そんな多忙を極める宇川さんを、3331で直撃インタビュー

インターネットについて感じる変化や、日々地下スタジオにこもって配信/収録されたアーカイブからDJ1000人分のプレイを使って同時再生する宇川さんご自身の最新作品「DJ JOHN CAGE & THE 1000 WORLD WIDE DJS」にどうしてプロミスが協賛しているのか。

そして、宇川さんが駆け出しの頃の意外な過去や次なるプロジェクトの始動まで、存分に語っていただいた。

さらに、「DOMMUNE/KANDA INDUSTRIAL」について、開催前日というこのタイミングで会場の変更が決定! タイムテーブルも独占公開!!

DOMMUNEにまつわる〝事故〟そして〝自然災害〟

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3331で開催中

──お忙しい中、お時間いただきありがとうございます。今展開されているDOMMUNEと3331のコラボ企画についてお話をうかがいたいと思っています。

宇川 まさに今、「KANDA INDUSTRIAL」の当日に、〝観測史上最大〟という、有り得ないほどおおげさでセンセーショナルな触れ込みで、ニュース/ワイドショーが煽りまくっている例の台風19号が接近していて、実はめちゃくちゃ焦ってます(笑)。

だって、マカオ人が名ずけた今回の台風のヴォンフォンっていう一見牧歌的なネーミング、スズメバチって意味らしいですよ、人間界がもし「みなしごハッチ」の世界であれば"殺略"を意味します。

──またも台風ですか!?

宇川 そう、またなんですよ…! 雨男を楽々更新して自然災害男と化しています!
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「DOMMUNE/KANDA INDUSTRIAL」

──最初の「FREEDOMMUNE」も、台風被害で当日に開催中止になりましたよね。嵐を呼ぶDOMMUNEですね。

宇川 まさにそのとおりです。僕が屋根のない現場で興行を起こすとかならず嵐が巻き起こりますね(笑)。もう、お家芸かっていう程に(笑)。笑いごとじゃなく、あの時は海抜0mの海が広がる東扇島東公園が会場でしたからね。「これは“大自然”の側から我々人間に対して挑戦状を叩き付けられているぞ」と、とにかくDVを受けているような感情を抱きました。

日々、無償の愛とたくさんの恵みを与えてくれるあの美しい“自然”が、“大自然”へと豹変し、暴風雨と共にバイオレントな猛威をふるい現場を支配している。あの現場では大自然の猛威に畏怖の念を抱きながら現実を直視する以外、ちっぽけな我々人間にはまったく何もできなかったわけですよ。要するに被災地支援を試みて、被災の疑似体験を自然の側から突きつけられたということです。なので、もちろん中止の決断を下しました。

実は、これはあまり知られていないかもしれませんが、去年、YCAM(山口情報芸術センター)とコラボした「YCAMDOMMUNE」でも、メインのプログラム時は、大雨洪水警報発令で、停電になりました。

そう、ドリフの「8時だョ!全員集合」の停電騒ぎなどはDOMMUNEでは日常茶飯事なのです。

今年、開局5年目に突入ですが、僕らは毎日毎日、生の現場を正面から受け止め続けています。年に1度とか、月に1度とかではなく、僕らは日刊のメディアですから、つまり毎日なんですよ! 2プログラムを平日毎日、週末はブッキングやオファーをまとめていますから、つまりほぼ365日体制で、パーティーを遂行しているわけです! 裏を返せば、人間、現世をまともに生きていると、雨の日、風の日、雪の日、嵐の日に必ず遭遇するはずで、毎日パーティーならば、嵐の日もあって当然! 晴れの日だけが祭りじゃない! つまり森羅万象全て教訓というわけです!

宇川 だからこそフェスティバルというミッションに必要な条件は「『ひとつ屋根の下』だ!」と悟り(笑)、会場を幕張メッセに移動して、その後2年間連続で「FREEDOMMUNE」を成功させるに至ったのですが、今年はなんと夏の幕張の会場を1年前から宇宙博が2ヶ月間も押さえて、つまり、NASAとJAXAに先を越され、開催不可能! 

さらに、震災後、3年が経過し、4年目を迎えた現在、このタイミングで『募金』を集めるには、新たなコンセプトが必要だと考え、今年はお休みしていたところ、3331の中村政人さんからお誘いを受け、DOMMUNEオーガナイズの展覧会とイベントをオファーいただきました。

しかし、困ったことに、会場は、東京電機大学旧校舎跡地ですから、当然の如く、屋根がないのです(笑)。しかも、今回は、2フロアありますが、冨田勲先生をヘッドライナーとして、ワイアレス・ヘッドフォン同時装着記録のギネスに挑戦するモジュラーシンセオンリーのフロアは、窓もない秘密の廃墟地下空間なので、もし当日台風が襲来した場合、会場に浸水、下手したらフロア沈没です!

なので、僕らは台風19号の存在を確認した段階から、10.12当日、天候が荒れる可能性を想定し、僕らが現在、展覧会をやらせていただいている、廃校を改良した今回の共同主宰者の3331というギャラリーの2Fの体育館とコミュニティースペースに会場を移転する可能性をダブルスタンバイで備えてきました。

──でも、そういう、ある種の〝事故〟がDOMMUNEのキーワードになっているのも感じます。『TV Bros.』に掲載されたDOMMUNEを立ち上げて最初の独占インタビュー「事件はDOMMUNEで起きている」でも、「人間はなぜ、事故に魅了されるのか?」ということを語られていました。

宇川 語っていました。言い換えれば、SNSにおける"祭り"の大半は、事件/事故のことですよね。実際のところ、DOMMUNEでもハプニングが拡散されればされるほど、Twitterのタイムラインでバズって、ビューワーがうなぎのぼりという現象は頻繁に起こっています。

そう言った無秩序なモブ心理が、〝祭り〟の原動力になっているのは事実ですが、それは台風前夜の精神状態に似ていると僕は捉えています。

話は変わりますが、アメリカには台風の思い出を語ろうっていう沢山の「台風のファンサイト」がある。狂っていますよね(笑)!? この感覚はあの台風前夜の高揚にとり憑かれているのだと思われます。そのような人間の心理状態に興味があったので、僕は2005年にフロリダ〜ミシシッピ州に上陸したハリケーン・カトリーナをシュミレートする作品を7年前に森美術館で発表したりもしました。それが「A Series of Interpreted Catharsis episode1- typhoon」です!

──まさにいま、宇川さんご自身がその高揚感の真っ只中ですね…! DOMMUNEを取り巻く環境と、自らの作品が接続されているんですね。そこで今回は、開催前日にして、大きな発表があるということですが?

宇川 そうなんです! 10.12の降水量予想は、現在20%に激減したのですが、翌日10.13に台風が関東直撃との噂もありまして、そちらは80%になっており、天候が不確かな状況で博打をうつよりも、せっかくの備えを利用して、不確定要素をツブしていこうという考えに、昨日の金曜日の段階で「決断」しました!

なので、オーディエンスの皆様には、大変ご迷惑おかけしますが、会場を〝屋根のある〟3331に緊急移転します! 3331は、当初予定の神田警察横/旧電機大学跡地と、会場位置的にはかなり近所です! なので前売りをご購入いただいた方にも来場に関しては、スムーズだと思われます。ニーナ・クラビッツをヘッドライナーとしたメインフロア「KANDA INDUSTRIAL」は、2Fにそびえるキャパ1000人の巨大体育館で。「SILENT MODULAR WARS!!」は、コミュニティースペース、そして現在僕らが引っ越し中の3331DOMMUNEサテライトスタジオをラウンジにし、しかも現在開催中の「DOMMUNE University of the Arts」の展覧会も無料で大解放しますので、日本を代表する現代アーティストの作品と、僕らが現在、日夜撮りためている彼らアーティストの番組も大解放です! これは逆にお客さんにとっても災い転じて大変お得なイベントなのではないか、と。

また、自然災害に関しては「降らぬ先の傘」そして「備えあれば憂いなし」の精神で、オーガナイザーは先回りしてディフェンスしていかねばならないという、一度災害での開催中止を経験している僕らからのメッセージでもあります。言葉を変えれば、いまだトラウマが克服できていないだけとも言えます(笑)。当日もし晴天であれば、それも、ご愛嬌と受け止めていただけましたら幸いです。もし晴れましたら、その場合は、絶景の巨大な庭とオープンエアでつなげます!

そしてこのイベントシリーズ「DOMMUNE LIVE PREMIUM」は今回で2回目ですが (1回目は東京国際フォーラムでのmy bloody valentineのワールドプレミアムライブ)ライブストリーミングの予定はありません。DOMMUNEなのに(笑)。なので是非是非、当日現場のアウラを体感していただきたいです。

リアルタイムからアーカイブへ

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3331で開催中の「DOMMUNE University of the Arts -Tokyo Arts Circulation-」会場

──開催前日の大きな発表がありましたが、12日の「KANDA INDUSTRIAL」会場でも鑑賞可能な展覧会の方に話を移します。そもそも3331とコラボすることになったのはなぜなんですか?

宇川 まず、先程も言った通り、「FREEDOMMUNE」を予定していた幕張メッセを、NASAが「宇宙博」のために1年前から押さえていたことが判明し、今年はお休みしようと考えていた矢先に、3331から声をかけてもらったんです。もう一つ、DOMMUNEとして、5年近く撮り貯めているアーカイブにどう向き合っていくか、というテーマがありました。今すでに5000番組ほどの記録があります。 reIMG_8578 僕がDOMMUNEを開局させた2010年は、「ソーシャルメディアの夜明け」と言われた年で、ちょうどストリーミングにおける著作権/原盤権の話題が出てきたタイミングでもあった。Twitter人口が激増した当時、結局サイバースペース上において「結局、音楽は誰のものなのか?」という問いが再浮上していたからです。

ライブストリーミングで音楽を流すことだけでも世論が騒ぎ、色々な意味で、難易度が高い時代でした。もちろん、DOMMUNEは、開局前からJASRACを通して包括契約してます。しかも、実はアーカイブ配信の許諾権も持ってるんですよ。

しかし、そんな風当たりが強いタイミングだったからこそDOMMUNEは大きな問題定義になり、バズだけで一気に話題が広がった。しかし、アーカイブに関しては、残り続けるものなので、僕は穏便になり、インターネット上にそれを開放することはしなかったんです。

──それはDOMMUNEは生のメディアでありたいという思いからでしょうか?

宇川 そうです。先日、閲覧者が会員登録するともらえる換金可能のポイント狙いで、「FC2動画」にTVドラマやバラエティを投稿し続けていた人達が10人以上書類送検されましたが、今ネット上で見れないものはないと言っても過言ではないと思います。

そんな中で、DOMMUNEは、生身のフロア/それぞれの視聴覚環境/タイムラインにおけるエネルギーの共鳴作用に早くから着目してきました。もちろん全て一回性のものです。それぞれの体験としての「いま」そして「ここ」=「現在」がある。これは現代のテクノロジーを媒介として、映像に宿った今世紀的なアウラの表出だと考えています。なのでなおさらアーカイブの問題をデリケートに扱ってきました。

──その場限りのフローではなく、ストックになってしまうと。

宇川 そう。まさにテレビ放送黎明期みたいな、その時その瞬間にしか立ち会えない現場体験の復権を推し進めていました。

なのでいまだに僕の座右の銘は「偶発的事故を味方につける」です。確かにDOMMUNEは日本初のライブストリーミング・スタジオですが、今となっては配信自体がありふれたものになってしまった。

毎時発信されている情報量があまりに膨大で、DOMMUNEに限らず、リアルタイムで鑑賞出来なかったユーザーはアーカイブを求め、なければ諦めて関心を失うようになったという情報環境における変化もありました。 reIMG_8610 あと、もう一つは、僕らのスピード自体が速すぎて、もうDOMMUNE自体、誰も追い切れなくなっちゃっています。

──番組の更新頻度という意味ですね。

宇川 前半がトーク・後半がDJ/ライブという1日2番組5時間を週に4日、1週間で8番組/20時間、1ヶ月で最低32番組/80時間以上を無料で配信しています。

個人が無料で世界の側に映し出す映像にしては、クオリティも高く、ワールドワイドで、内容が濃く、厳格で、しかも膨大である、と。僕は、これら番組の、撮影・配信・記録行為を、自らの「現在美術」作品であると位置づけているので、当然、突き抜ける覚悟のもとに、妄信的に現在を切り取り続けていますが、この没入は、あまりにもハードコアに映るようですね(笑)。

──それで、番組のアーカイブを意識され始めた?

宇川 これら撮りためたアーカイブ自体は、僕のアート作品であると同時に、文化遺産として解放しようという発想もあり、しかし、その共有のトリガーを果たしていつ引けばジャストなのか? という自問自答も確かにありました。

そんな中、去年、YCAM10周年記念でコラボした時も山口県の商店街の元マクドナルドのビルを一棟借りて、ラウンジ/ギャラリー/スタジオが共存した、アーカイブシアターを設立したり、今回は3331のメインギャラリーを丸ごと使って、僕自身がキュレーターとなった展示に連動させ、ここにサテライトスタジオを開局し、日本を代表するアーティスト100人を紹介する「THE 100 JAPANESE CONTEMPORARY ARTISTS」という新番組シリーズを立ち上げました。

なので今夜も3331を現場にして、現代を生きる100人の日本人アーティストの肖像を、オリジナル作品の展示とともに『いつみても現代美術波瀾万丈』よろしく切り取っています。そして、これらは、英字字幕付きアーカイブとして後世に伝承するつもりです。

──インターネットのフェーズとして、2010年はリアルタイム性・同期性が新しかったけど、今はそれが当たり前になったから、逆に宇川さんはアーカイブを導入したということですね。
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