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  • 2021.02.18

大学生オーナーが年俸1000万円を選手に払う理由 無双中のe-Sportsチーム「REJECT」インタビュー

選手に年俸1000万円払うのも、渋谷の街頭ビジョンでCMを流すのも、すべてコスパの良い戦略──

ある日いきなりプロe-Sportsチームのオーナーになった大学生が語る生存戦略。

大学生オーナーが年俸1000万円を選手に払う理由 無双中のe-Sportsチーム「REJECT」インタビュー

日本からe-Sportsのイメージと常識を覆す。所詮ゲームなんて言わせない。」と挑戦的なコンセプトを掲げるプロe-Sportsチームがある。

それが『PUBG MOBILE』や『VALORANT』といった8部門で活動しているREJECTだ。

国内の数々のe-Sports大会で上位入賞、特に『PUBG MOBILE』部門では世界大会への出場経験も豊富だ。

ラッパー・Jinmenusagiさんが楽曲提供したコンセプトビデオ「NOT JUST A GAME」を渋谷のスクランブル交差点で放映。『Overwatch』や『PUBG』など数々のタイトルで活躍してきた『VALORANT』部門所属、「神の子」の異名を持つDep選手に年俸1000万円を支払う。話題に事欠かないチームでもある。

REJECT CONCEPT VIDEO 『NOT JUST A GAME』

e-Sportsシーンの中では主流のPCゲームから外れた、モバイルゲームに注力していること自体も異色だ。

しかも、REJECTを率いるオーナーは、なんと21歳の現役の大学生・甲山翔也さん。REJECTを運営する株式会社CYLOOKの代表も務める。

自身もFPSのトッププレイヤー。プロゲーミングチームのメンバーとして勧誘されるも、オーナーが失踪してしまう。そこで自身が会社を立ち上げチーム運営を始めた。それがREJECTの始まりだった。

スクランブル交差点でのCM展開。スタープレイヤーへの年俸1000万提示。一見、派手なだけにも映るREJECTの展開には、彼の中にあるしたたかな哲学があった。

目次

  1. レジェンドプロゲーマーを目標にゲームに没頭する日々
  2. 自身でも大会で2度優勝するゲームの腕前
  3. チームオーナー失踪、そして自らがチームオーナーの道へ
  4. 「NOT JUST A GAME」。REJECTはビジネスサイドを強化していく
  5. REJECTがモバイルe-Sportsに注力する理由とは
  6. プロ意識を持たせるために
  7. REJECTはあえて1,000万円を選手に出す。そうすることは“コスパが良い”

レジェンドプロゲーマーを目標にゲームに没頭する日々

──甲山さんは現役の大学生でもあるんですよね。

甲山翔也(以下「甲山」) 今は同志社大学の4年生です。といっても休学3年目になるので今何年生かわからないのですが……(笑)。現役で入っているので、休学しなかったら今年で卒業の年になっています。

出身は大阪の八尾で、従業員2,30人のそれほど大きくない会社をやっている父親の元に生まれました。

小学校、中学校くらいまでは「人を救うためにやるんだ」って言って空手とか柔道を習う正義感の強い子供でした。ただ正義感の強い子供だったからこそ、逆に僕自身がいじめのターゲットにもなってしまいました

──そうだったんですね。ゲームとは、どんなタイミングで出会ったんですか?

甲山 小学生の時、いじめられてあまり外に出たくなくなっていて、帰って家でずっとゲームする日が続いていました。当時は『メイプルストーリー』とか、学校のゲームが好きな友達とやっていましたね。

中学生になっても、帰宅後は朝までずっとゲームをやるような生活でした。その時に今もREJECTで活躍するDep選手と出会って、一緒に『Counter-Strike』というゲームをするようになり、そこでチームをつくりました。

──アマチュアのクランのようなチームでしょうか?

甲山 レジェンド的存在のプロゲーマーのnoppoさんとかを目標にしながらやっていました。

どちらかというとリアルの生活を楽しむよりは仮想空間というか、ゲーム空間でSkypeとかTeamSpeak3といったツールを使いながら遊んでいたあの時代ですね(笑)。

自身でも大会で2度優勝するゲームの腕前

──競技シーンを目指すきっかけは何だったんでしょうか?

甲山 詳しくは覚えていないですが、単純にゲームが楽しかったのと、競技というよりも強さを追求している人が周りに多かったからですかね。

あとは、小さい頃から何に関しても負けず嫌いだったというのが響いてきたのかなと思っています。

──周囲の影響もあり、ご自身の性格的にもどんどんのめり込んでいったわけですね。

甲山 当時も大会が開催されていたので、「カッコいいよなー」と思いながら、そこを目指していました。

「Counter-Strike」シリーズが好きで、『Counter-Strike: Global Offensive』(CS:GO)が出てからはそちらに移行していきました。『CS:GO』は海外でDreamhackやESLのような大きな大会が開催されていて「カッコいい!」みたいな。

ゲーミングPCを買って、とにかく朝から晩まで毎日やるみたいな堕落した生活をひたすら送り続けていました。それで、大学生の時に『Counter Strike Online 2』のオフライン大会に2回出て、2回とも優勝しました。

実況とか解説や憧れの選手が目の前にいるというのが、当時アマチュアの選手だった自分には嬉しくて、「俺は強いぞ!」みたいな、そこら辺にいるめっちゃ強いけど礼儀のなってないキッズみたいな感じでしたね(笑)

チームオーナー失踪、そして自らがチームオーナーの道へ

──そのころ所属したチームのオーナーが失踪したのが、ご自身でオーナーを務めるきっかけになったとうかがっています。

甲山 そうなんです。イベントで出会った大学の別キャンパスの先輩に、プロチームをつくりたいって声をかけられて。

最初は「今流行ってる『PUBG』でチームをつくりたいんだ。君は他のタイトルで実績を残しているからきっと強い。君に選手を集めてほしい」と言われました。

選手になると毎月1人8万円もらえると聞いたので、その先輩がオーナーという形で、当時強かった選手を集めて4人でチームを結成しました。

「このくらいもらえるならバイト辞められるね」とか言ってみんなで活動していたら、1ヶ月くらいでオーナーが消えてしまったんです

選手も呆れて僕に怒ってきていたのですが、なんとか『PUBG』の大会に僕含めて出場しました。ギリギリで勝ち上がれたので、流石にオーナーから声をかけてくるだろうと期待していたのですが、そんなこともなく......。なので自分は選手を引退して、僕が代わりにオーナーとして会社をつくって頑張ろう、と決意しました

──なるほど、そういう経緯があったんですね……。

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オーナーになった大学生は、どうやってチームを大きくしたのか