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  • 2019.11.30

グローバル化するアニメ、現場の制作支える通訳者の仕事

グローバル化するアニメ、現場の制作支える通訳者の仕事

「全てを表現できてしまうんじゃないか──。翻訳/通訳も作詞も、そんな自由な感覚とどこか共通してる」

そう淡々と言葉を放つのは、ラッパー・Meiso。フリースタイルMCバトルの黎明期に般若漢a.k.a.GAMIらとヒップホップを盛り上げた、シーンの立役者のひとりだ。

Meiso "Eclipse" Prod. DJ OKAWARI

ハワイ在住時、一時帰国した際に「外人21瞑想」の名で飛び入り参加した2003年のB-BOY PARK (※1)の目玉イベント・MCバトルにて、般若、漢a.k.a.GAMIらを押しのけ優勝。その後、2009年にリリースされたデビュー・アルバム『夜の盗賊』は10年経った現在でも、ヒップホップ・ヘッズを唸らせ続けている名盤中の名盤だ。今月にリリースした新曲「Eclipse」はSpotifyのセレクトプレイリスト「New Music Wednesday」にも選出された。

※1:1997年から2017年まで、毎年夏に代々木公園・野外ステージで行われていた日本最大規模のヒップホップのブロックパーティ。MCバトルでは、KREVAや漢、 晋平太、輪入道など錚々たるMCが優勝を収めている。

そんなMeisoは、何を隠そう、現在はプロの通訳者でもある。6月に開催された国内最大の通訳大会「同時通訳グランプリ」で優勝するほどの実力の持ち主であり、さらに驚くことに、大手アニメ制作スタジオで翻訳・通訳チームの一員としても活躍している。

今年の8月に山田孝之主演のドラマシリーズ『全裸監督』がNetflixで配信を開始した。「日本が世界で戦える映像コンテンツはAnimeだけではない」。その狼煙は「全世界同時配信」という形で上げられた。同作品に限らず、Netflixの注目タイトルは全世界同時配信がスタンダードとなっている。

全裸監督

190ヶ国・28の言語での同時配信を可能にするためには、もちろん字幕を制作する必要がある。日々コンテンツが大量に制作され、かつグローバル化を念頭にローカライゼーションすることがデフォルトとなっている現在の映像作品の市場において、「翻訳」のプロセスは欠かすことのできないものとなっている。

その加速度的なコンテンツの供給速度に追い付くべく、精度の向上著しいGoogle翻訳をはじめとしたAI翻訳を用いた「ポストエディット(機械翻訳の出力結果を人手で後編集する工程)」が、多くの制作現場で導入が進んでいる。

しかしながら、機械翻訳の品質には大いに疑問が残り、各企業がグローバル化を念頭にローカライゼーションを進める中で、多くの「珍訳」が消費者の目に触れることもしばしばだ。これも機械翻訳の過渡期にある現在ならではの事象だと言えるだろう。

こうしたストリーミングサービスが加速させた映像コンテンツのグローバル化による影響は、「言語」という側面においてアニメ制作の現場にも及ぶ。

今回は、言葉を武器に、アニメ制作業界における創作の最前線に立つ「言葉の達人」Meisoに聞いた。ストリーミング時代のアニメ制作現場、「翻訳/通訳」の最前線。

取材・執筆:LIT_JAPAN 企画・編集:和田拓也

目次

  1. アニメ制作現場で増す、“言語の媒介者”の重要性
  2. グローバル化するアニメ制作、通訳/翻訳者の仕事
  3. 翻訳/通訳が、作品にクリエイティブを注ぐ瞬間

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