この3月までTBSアナウンサーとして活動しながら、たびたびアニメや漫画好きとして作品への愛を語ってきた彼女。
4月には女性誌『anan』でのグラビアも話題となったが、公式コスプレイヤーとしてコスプレイベントへの参加も大きな注目を集めたことは言うまでもない。
5月11日・12日に開催されたコスプレイベント「Ultra acosta!@池袋サンシャインシティ」において、メイクアップブランドの「KATE」(ケイト)ブースに登場。“黒の魔女”というオリジナルキャラのコスプレを披露し、現場にはテレビ含めて多くの報道陣が駆けつけた。 その様子はすでに報じた通りだが、囲み取材後には短い時間ながら個別インタビューをおこなった。
忙しいスケジュールの合間を縫って、宇垣さんはメイクと自分らしさについて、自らの考え、そしてコスプレの魅力について答えてくれた。
撮影:Diora(@Diora_by_tot)
宇垣美里の考える、自分らしさとコスプレの魅力
──囲み取材と撮影、おつかれさまでした。宇垣 (報道陣の)カメラの数がすごくて、(フラッシュで)目がまだチカチカしてます(笑)。正直、まだ慣れないなーと。
──すごい数の報道陣でしたね。実は目立つことに抵抗もある、ともおっしゃっていますよね。
宇垣 でも、今日はもはや私じゃないので、そのままの私で人前に出るより、キャラになりきれたので逆にそこまで違和感はありませんでした。
──宇垣さんのコスプレ披露は事前の発表(関連記事)から大きな反響でしたが、どう受け止めていましたか?
宇垣 友達から(自分のコスプレが取り上げられているニュースの)スクショがたくさん送られてきました。「あなた、何の仕事してる方なの?」って(笑)。
でもみんなに「似合ってる」「世界観強くていいね」って言ってもらえたので嬉しかったですね。
──今回コスプレされたKATEオリジナルキャラクターの“黒の魔女”オプシディアンは、「外見は無表情だけど内面は純粋なところがある」という二面性も表現されています。このキャラはどのように生まれていったのですか?
宇垣 もともとキャラクターのイラストがあって、それに寄せてメイクしていきました。イラストを見て「どういうキャラだと思いますか?」と聞かれて、わたしの考えを取り入れていただいた部分もあります。
無表情だけど実は優しい子なのかな? とか。だから目はパッチリしているよりトローンとしている方がいいのかな? 肌は白くて、陶器みたいなメイクがいいのかな? とか、メイクさんと相談しながら。
──一番気に入っているポイントは?
宇垣 やっぱり目ですね。赤と青の色使いが魔法使いっぽくもあり。テープを貼ってつり目にもしていて、よりキャラに近付けたかなと思っています。
「自分が好きな自分でいられるかどうか」
──KATEの今回のコンセプトは“あらゆる枠を超えて自分らしく輝く”だとうかがっています。宇垣さんがコスプレされているのも、それを体現したキャラです。ただ、「自分らしく輝く」というのは簡単なことではありません。宇垣さんはフリーになられたばかりで、より自分らしくあろうと意識されているかと思いますが、普段から自分らしくあるために決めていることはありますか?
宇垣 あとで振り返ったときに、自分で自分を嫌いになることを絶対にしないと決めています。小中高…特に高校生のときの自分が今の自分を見て、恥ずかしいと思うようなことは絶対にしないと決めて行動してます。
例えば、この人がやってることを自分としては「違うな」と思っていたとして、ウフフって笑って済ませておいた方が良いこともあるんですけど、その頃のわたしはウフフって笑って過ごす人のことが嫌いでした。(自分でそれをやると)あとからすごく自己嫌悪に陥ったので、そういうことはやらないようにしています。
人に好かれるのも大事です。だからと言って、人に「こっちの方がいいよ」って言われて自分の好きじゃないメイクするのも違うと思うんです。
「すっぴんの方がいいよ」って言われても、「だって私まつ毛がパッと上がってる方が好きなんだもん!」と思えば、「そうですかー」と言いながら自分の好きなメイクをした方が精神衛生上良いかなと思っています。その方が自分らしくいられる。
──高校生の頃に嫌いだった自分にはならないように行動されている宇垣さんは今、なりたい自分になれているということですね。
宇垣 そうですね。2年前くらいは、自分らしくあろうあろうと思いすぎてちょっと攻撃的だったところがありましたけど、フリーになってからなのかもう少し前からなのか、自分らしくあろうとして攻撃的である必要もなく、上手にそのバランスをとれるようになってきたかなと思えています。
──周囲を尊重しつつ、自分を損ねないで済むやり方を身につけてきた?
宇垣 そうですね。ちょっとした伝え方もありますし、表し方もありますし。
宇垣 「その人らしさ」って相対的なものだと思っています。取材のみなさんの前の私の私らしさ、中学からの友達の前での私の私らしさ、全然違います。
ただ、その場その場において「これは私じゃない」と思わない、自分の内面から出た私であれば、どんなに人間性が変わろうが、キャラクターが変わろうが全然いいと思っているんです。
そのときに、自分が好きな自分でいられるかどうか。それが自分らしさなのかな、と。
──ある種のペルソナ的な、その時々の振る舞いがそれぞれ違っていても、それも全部含めて自分だということですね?
宇垣 そう考えています。
「アナウンサーのコスプレ」と思って働いていたら全然平気
──もう一つ、「自分らしさ」を追求する上で、周囲から求められるイメージと自分とのギャップがあるかと思います。その溝を埋めるのもやはり簡単ではありませんし、そのギャップについての悩みを、宇垣さんご自身も以前『QuickJapan』のコラム(2017年7月発売の号で掲載されたコラム「あなたに名前で呼ばれたい」)で書かれていました。宇垣 読んでいただいてありがとうございます! ほんとうに長い文章でごめんなさい(笑)。
──とんでもないです、楽しく読ませていただきました。その求められるイメージとなりたい自分とのギャップを埋める上で、コスプレは何かの役割を果たすと思いますか?
宇垣 役になりきるという意味では、局アナ時代も「アナウンサーのコスプレ」と思って働いていたら全然平気なこともあったんです。
「それも自分だ」と思うとしんどいですけど、求められているからそれを演じている自分だと思えば楽になれた。求められて、応じるだけ。演じるだけ。例えばテレビってみんなでつくり上げるものですから、そういうキャラが必要な場面もある。それを演じることは全然差し支えないです。
ただ「それはわたしが望んでやったわけじゃない、パーソナルなものから出た自分じゃない」ということはスタッフさんにも言いますし、ここまでの積み重ねで、(視聴者の)みなさんにも伝わってる部分もあるかなと。
「宇垣はぶりっ子をやってるけど、裏ではケッて思ってるだろうな」というキャラが出来上がってるので(笑)、今さらぶりっ子しても全然平気です。
──そのときのキャラ、外から求められて演じた自分は、さきほどおっしゃっていた「いろいろな場面によって振る舞いが異なるけれど、それも含めて全部自分だ」というときの自分とは、また別のものとして捉えているということですか?
宇垣 そうですね、私の中では分けて考えています。
昔はそれが一緒ですごくしんどかったときがありました。けれど、この5年間の社会人生活の中で、(求められているキャラまで)全部私だと思う必要もないかなって気づいて、うまく住み分けできるようになっていきました。
──ありがとうございます。宇垣さんは、コスプレの魅力についてどうお考えですか?
宇垣 やっぱり、自分じゃない自分になれることじゃないでしょうか。普段は言えないこと、できないメイクを、コスプレ、二次元の好きなキャラに寄せていくことで、自分も乗り越えた気持ちになれる、強くなれる。
好きなキャラになりきるという意味でも、コスプレは究極の愛の表現だと思っています。すごく素敵なことだなと。
宇垣 うーん……動物の耳をつけてる女の子とか?
──ケモミミですか?
宇垣 そう、めっちゃ可愛くないですか?
──めっちゃ可愛いと思います!!!
宇垣 ですよね!(笑) やるなら中途半端なクオリティでやるより、しっかり可愛くしたいですね。
あとは、小さい頃に勇気をもらってきた(以前コスプレした)『美少女戦士セーラームーン』もそうですし、『カードキャプターさくら』や『少女革命ウテナ』、『魔法騎士レイアース』とか、やってみたいですね。
──今後も、そういう仕事のオファーがあったら受けてみたいですか?
宇垣 1人じゃ絶対このクオリティでできないですから、機会があればなんでもチャレンジしてみたいと思ってます。
──楽しみにしています、ありがとうございました。
宇垣 ありがとうございました。