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  • 2019.03.27

「勝負」についての考察

近年、e-Sportsの隆盛が喧伝されるなど、YouTubeやTwichを中心にゲーム実況における環境整備が続き「ゲーム」を取り囲む環境が大きく変化している。

果たして、ゲームの「プロプレイヤー」はいかにしてゲームと向き合っているのだろうか。

「勝負」についての考察

クリエイター

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平成が終わりを迎えようとする今、世はまさに“大ゲーム時代”と言えるだろう。

私はスーパーファミコンが誕生した年の2月に生まれ、それゆえに娯楽と言えばまずはゲームだった。学校ではアニメやゲームの話題が中心だったし、新作ゲームソフトの発売日には下校のチャイムと同時に学校を飛び出して友達の家に遊びに行っていたものだ──学校で出された課題のプリントを、教室の机に入れたまま。

そんなゲームに囲まれた世代と言える私でさえ、今のこの“大ゲーム時代”には驚きを隠せない。ゲームをプレイすることで生活をするプロが存在し、そんなプロの華麗なプレイを動画配信サイトで見て応援をする。こんな時代になるなんて

私たちが子供の頃に遊んでいた“ゲーム”は、平成が歳を取る間に老若男女に親しまれ、ゲームを用いた競技は「e-Sports」と呼ばれるようになり、今やオリンピック種目になろうかという話にまで発展している。日本のゲーム人口はおよそ3000万人とも言われており、つまり日本に在住する4人に1人はゲーマーなのだ。

いまやマイノリティからマジョリティとなった、ゲームという趣味。その魅力について、今回は話したい。

これから話す“ゲーム”とは、テレビゲームやPCゲーム、そしてカードゲームにボードゲーム、もちろんスマホゲームなど、あらゆるすべてを含めたものであることを、あらかじめ断っておく。

目次

  1. ゲームなんてやって何になるの? への回答
  2. 何故ゲームは面白いのだろうか?
  3. 『シャドウバース』をプレイするOLの話
  4. 勝利はすべてを癒し、解決する
  5. ゲームだからこそ、敗北できる
  6. 敗北を分析する
  7. もっとゲームを遊ぼう

ゲームなんてやって何になるの? への回答

かくいう私も、「ゲームなんてやって何になるの?」とこれまで幾度となく言われ続けてきた。

私はトレーディングカードゲームの元祖にして、全世界で2千万人以上のプレイヤーとファンを持つ、『Magic: The Gathering』(マジック:ザ・ギャザリング)を10年以上もプレイしている、根っからのゲーマーだからだ。

カードゲーム好きが高じてここ数年は、毎年海外の大会に数回程度参加するようになるほどのゲーマーで、その甲斐あって昨年はチェコで行われた2千人規模の大会で9位に入賞した。『マジック:ザ・ギャザリング』を開発する会社であるWizards of the Coast(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト)が定めるレベルプロの水準を現在も満たしており、いわゆるプロプレイヤーだ。

GPチェコ.jpg

筆者が参加したチェコでの『マジック:ザ・ギャザリング』大会の様子

また、私はプレイヤーとして『マジック:ザ・ギャザリング』を愛しているだけでなく、その面白さを言語化して他人に伝える、ライターの一面も持っている。

これまでに様々な記事を執筆し、戦略の解説やプレイヤーへの取材を通して『マジック:ザ・ギャザリング』の魅力などを多くの人に伝えてきた。

今回はその枠を飛び越えて、ゲームの魅力を伝えたい。だからこそ私は、この疑問から話をはじめることにする。

何故ゲームは面白いのだろうか?

その答えは千差万別だろう。テレビゲームとボードゲームでその面白さは異なってくるし、テレビゲーム一つ取ってもFPSとRPGとでその楽しい要素は全く異なる。

Fortnite』や『PUBG』などのFPSならば白熱した銃撃戦や集団戦、『FINAL FANTASY』や『ドラゴンクエスト』のようなRPGならばコツコツとレベルを上げて武器を集めて敵を倒していく喜びを味わえる。人と人に化けた狼が騙し合うという頭脳戦を楽しむことができるのは、ボードゲームならではだ。

だからあえて共通している点を挙げるならば、一つしかない。現実世界では得られない体験ができる、それがゲームの面白さだ。これだけはあらゆるゲームに共通している点だろう。

銃撃戦や騙し合いは現実世界ならば遊びでは済まないし、コツコツとレベルを上げても倒すべき敵や魔王はいない。

ゆえにゲームが問題視されることもある。現実世界では得られない体験ができる“ゲーム”という場所を、現実世界から逃げる先として捉えられてしまう。「現実世界とゲームの区別がつかない」といったメディアでよく見る糾弾も、ゲームが持つ良さのせいで生まれているのだ。

そして「現実世界で体験できないものをあえて体験する必要がない」というのもまた、ゲーム批判の材料としては上がる。家族や友人の言葉に倣うなら、「ゲームなんてやって何になるの?」だ。

でもこのご時世ならば胸を張って「上手くなればプロになって稼げる」と言えるかもしれない。e-Sportsの勢いはそれほどまでに激しい。

だがそれは本質ではない。何故ならば、人々が、もしくは貴方がゲームに熱中する理由は、「上手くなればプロになって稼げるから」ではないだろうからだ。

私がゲームをプレイしていて最も快感を得る瞬間は、自ら考案した戦略やロジックを用いて勝利した時だ。この快感を、ゲームをプレイすること以外で味わおうとするのはなかなか難儀で、だが一度体験してしまうと忘れられなくなってしまう。それほどまでに甘美だ。

だからこそ私は10年以上、同じゲームをプレイし続けている。

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