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文化を混ぜ合わせて届けるということ──イラストレーター・STAGインタビュー

文化を混ぜ合わせて届けるということ──イラストレーター・STAGインタビュー

STAG「livetune『Re-Dial』PV一部背景設定」

様々なクリエイターをご紹介するカイユウクリエイターズファイル。二回目にはイラストレーターのSTAGさんにインタビューさせていただいた。

STAGさんは同じくイラストレーターの虎硬さんが主宰するイラストサークル「百化」に所属しつつ作品の発表を続け、編集部が2011年にpixiv Zingaroにて開催した「世界と遊ぶ!展」に参加、その後美術家の村上隆さんの目に止まり、Kaikai Kiki Galleryにて開催された「A Nightmare Is A Dream Come True:Anime Expressionist Painting(AKA:悪夢のどりかむ)展」にJNTHEDさん、Mr.さんといった作家らとともに参加する等、常に多彩な活動を続けられ、注目を集めている。最近では、livetune feat.初音ミク『Re:Dial』PV中に登場するスタジオのデザイン設定を担当もされている。

しかも、実はSTAGさんの本職は某書店の店長。イラストだけでなく本職でもその手腕は評価されている。そんな特殊な環境で作品を制作するSTAGさんは一体どんな考えのもと、作家活動を続けているのかを伺った。

店長とイラストレーターの両立の秘訣!

──STAGさんは書店の店長さんという本職を持たれつつ、フリーランスとしてカイカイキキさんとの仕事はじめ、多くの作品を発表されていますが、どのようにバランスを取られているのでしょうか?

STAG 基本的には本職がメインですね。会社の人間なので当たり前ですが。けれど、最近はおかげさまでプライベートワークをいただく機会が増えてきたので、今後の舵取りをどうしようかなと悩んでいます。小売りという仕事は好きですし、作品にもフィードバックはあるのですが、さすがに店長職じゃなくてもいいのかなと思うようになりました。毎日人を動かしながら仕事をしつつ、イラストを描くというのがどんどん大変になってきているというのと、うちの会社はそんなに大きな会社ではないので、わりとトップダウンと言うか、店長の先という役職があまりないんです。あと二つくらいランクがあって、その上はもう社長なので。あとはできる店長かできない店長かという差くらいです。経理も兼ねた事務的な仕事が増えていくので、どんどん面白みがなくなってくるんですよね。僕はお客さんを相手にする仕事が好きなのだと思います。

──そんな中でどうやって作品をつくる時間を捻出していらっしゃるんでしょうか?

STAG 基本的には、寝ないことですね(笑)。それしかないですね。根性だけです。

STAG「Havin'-A-Party-alternative」

──本職のお仕事とイラストのお仕事で、何か決定的に違う部分はありますか?

STAG イラストや漫画の場合は、明確なクライアントがいるので、その人に対してどう応えるかという仕事だと思います。クライアント含め、近しい人の反応を見てみたい、そこが一番のモチベーションになっています。その先に読者さんのことを想像して制作を続けている感じです。本職の場合は、店舗なので売り上げ目標もありますし、小売りというのもある種の仲介業なので、誰かがつくったものをどういう形で届けよう、と考えるのが好きです。数ある商品の中から何をどうピックアップするか。幸い漫画関係は仲良くさせていただいている方が多いので、そういった作家さんや編集者の方々が熱意を込めてつくったものをどうやってお客さんに届けるか、という試行錯誤が楽しいですよ。実際に印刷され本としてかたちになったものが店頭に並んだときに「売るぞ!」っていうモチベーションはすごく高くなります。

──これは印象ですが、本職を持ってしまうと副次的にすら創作活動をやらなくなってしまう人が多くいると思います。イラストにしてもそうですが、 学生の頃にすごくかっこいい音楽をつくっていた人が会社に入ってしまうとあっさりと辞めてしまったり。どうしてSTAGさんは両立できて、しかもその両方で評価されながら続けることができるのでしょうか??

STAG そういう方はたしかに多いと思います。ただ、僕の場合は会社に入ったほうがイラストを本格的に描くことよりも先だった、というのが大きいと思います。ちゃんと意識的に作品を描いて外部に発表するようになったのは2008年ごろで、「pixiv」が始まって1年ほどの頃です。それでも、もう5年も経ったのかといま驚いていますが(笑)。

何かと何かを繋げるイラストレーションの役目

STAG 絵を描こうと思ったきっかけというのは、例えば周りで音楽をやっている友達がいたのですが、これまでの彼の 音楽のファンやコミュニティとは全く関係ないところに届けたいなと思ったことなんです。そういう新しいプロモーションの手段としてイラストは使えるな、と。普段、ふつうに生活しているだけでは決して交わらないような何かと何かを繋げるパイプになろう、というのがまずはじめにあって、イラストを 描くにしても、僕は周りの細かいものを描くのが楽しいし、好きなんです。小売りで店長をやっているのもそういう理由なんじゃないかと思います。そこに反応してくれたら嬉しいというか。「僕の表現が」とか「作家性が」とか、目立ちたいとか有名になりたいっていうのは一番じゃないんですよね。そういう気持ちだから続けてこれたのかもしれません。

STAG「Music's in me」

──ミックスする精神ですね。「編集」的な感覚だと思います。STAGさんの作品はクラブやライブハウスをモチーフとしていたり、部屋でパーティーしていたり、というものが多く、都会的な印象を受けますが、いまは東京ではなくて富山県に住んでいるんですよね?

STAG そうなんです。最近異動になったんですが、僕は何を描くにしても情報を詰め込みたがるので、インプットをするにしても富山県には基本的に何もないので困っています……。今日は久しぶりに東京に来たので、とにかく写真を撮りまくっています。

クラブはこっちにも大きな箱も一ヶ所だけあって。でもそういう箱って大人向けのイベントしかやっていないんですよね。「ド」が付くような分かりやすいハウス、レゲエ、ヒップヒップとかを流していて───そういった場所からは新しいカルチャーやムーブメントのようなものは生まれ難いなと思います。ただ、調べてみたら富山にもDJバーみたいなところがあるらしくて、そこではアニソンイベントやAKB48のオンリーイベントなどが行われてるみたいなんですね。だから、少しずつ変わってきているんじゃないかなぁ、とは思いますけど。

──地方のそういう閉塞したところが嫌で東京で暮らしている人が、いまの東京を構成しているのかもしれませんね。パイプになるというお話もありましたが、今後はイラストをどういった方向に使っていきたいですか?

STAG これまではずっと頼まれ仕事が多かったんですが、もうちょっと独り立ちというか、作品でも「STAGってこういう感じ」という感覚をもっとつくっていければと考えています。さっきまで言っていたこととは正反対のことを言っている気もしますが……。あとはもっと漫画を描いていきたいですね。自主制作漫画誌の「ジオラマ」に作品を掲載させてもらったおかげで、ある程度認知してくれる方も増えてきましたが、技術的にも表現的にもまだまだ勉強しなければいけないことは山ほどあるので。

漫画というジャンルと、僕がこれまで活動してきたアートやイラストという世界は、近いようで実はかなり読者層が違うものだと思うので、僕はもう30歳ですが、あくまで新人として心を入れ替えてがんばっていきたいと思います(笑)!

STAG「瓦版004」(百化発行)

STAGさんのpixiv
http://www.pixiv.net/member.php?id=62460

STAGさんのTwitter
https://twitter.com/snobby_snob

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STAG // スタッグ

イラストレーター

都内の書店員。イラストレーターとしてレーベル・百化やジオラマに所属。2011年に行われた『KAI-YOU presents 世界と遊ぶ!展』『百化展』(ともにpixiv Zingaro)に出展。現在も副業禁止の職場で働きながら同人誌『ジオラマ』への参加と絵画・イラスト制作を続ける。現場意識の強いプレSNS世代。

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