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群像劇のストーリーを決定づけた一戦

2回戦では、まだその群像劇は多方向に散らばったままだった。だが、3回戦、つまりベスト16から、あらかじめ決められていたかのように歯車が回りはじめる

KENさんはMOL53君に敗退し、呂布さんはDragon One君に敗退し、TK君はLick-G君に敗退し、輪入道君はGADORO君に敗退した。ちなみに僕はPONYさんに敗退した。当たり前だが、ここで僕とKENさんの再戦の可能性もなくなった。

このあたりで、群像劇が最終的に2本のストーリーに収束していくのが目に見えて解ってくる。

ベスト8の前半が終わり、準決勝でMOL53君とLick-G君の対戦が決定した。だが、ベスト8最後の試合である「GADORO vs DOTAMA戦」が、この群像劇の方向性を決定づける

GADORO vs DOTAMA

DOTAMA2 ここまでの試合で、ことあるごとにMOL53君を引き合いに出していたGADORO君に、DOTAMAさんの「お前MOL53、MOL53って。MOL53とデキてんのか? この野郎!」というラインが決まる。この一撃がLick-G君の引退表明を薄めてしまったように僕は思えた。

そもそも、Lick-G君は全試合で引退の話を前面に押し出してきたわけではない。そのため、むしろ「薄めた」というよりはGADORO君の執念が濃度を強めたと言った方がいい。

GADORO君が糧にしているという2013年の「UMB宮崎予選」決勝は、16小節の2ターンだったのだが、その2ターンともGADORO君は小節数を間違えてしまう。しかも、MOL53君のバースの8小節目にも間違えて入ろうとしてしまう。

その時の天に唾を吐くような悔しさが「宮崎予選」を知らない人にも伝わっているように思えた。
mol53 vs GADORO 字幕付き UMB2013 宮崎予選決勝
「GADORO負けろ、GADORO負けろ」と呪うように試合を観ていたDOTAMA贔屓の僕だったが、観客が選んだのはGADORO君だった。

これが直接の原因とは言いづらいけど、GADORO君とMOL53による決勝の宮崎対決が真実味を増してきたことで、準決勝、Lick-G君が敗退する画はすでに観えてしまっていた

MCバトルはコードボールを制すものが勝つ

少し話は逸れるが、僕はこのKAI-YOUというメディアで、連載コラムを持っている。その第5回においてこんな話をした。

MCバトルはコードボールが多くなる、コードボールを制すものが勝つ コードボールというのは、テニスなどのスポーツにおいて、ネットにボールが当たってどちらのコートに落ちるか際どい球のことである。

準決勝以降、決勝を含めた3試合は、すべてコードボールだったと思う。甲乙のつけがたい非常に拮抗した試合だった。はっきり言って、コードボールのポイントを獲れるかどうかが全てのような状況になっていた。

Lick-G君もpeko君も、負けた理由が見つからないくらい高レベルな試合展開をつくっていた。

しかし、観客という名の神様の手でコードボールは転がされる。決勝の舞台に選ばれた名前は、やはりMOL53とGADOROの2人だった。

思い返してみると、最初からそうなることが決まっていたようなトーナメントだったような気もする。

そして、この「戦極15章」はベストバウトではじまり、ベストバウトで終わった。

導かれるように物語が描かれていく決勝戦

MOL53 vs GADORO

MOL53 vs GADORO ジャンケンで勝ったMOL53君が先攻を選択。その際に「呼煙魔のビートを選ぶために先攻をとった」と言って観客を沸かせた。
※一応、補足しておくが呼煙魔氏のトラックで彼は何度も曲を作っている。

するとMOL53君が「お前、やたら俺とやりかったらしいじゃん?」「お前、裁判所に出頭命令食らって56万円の借金あるらしいんじゃん、賞金の50万円なんてくれてやる。俺は2ndアルバムで200万円を稼ぐ」と、これまでの試合の流れを汲んだディスを続ける。

あえて、宮崎対決というストーリーに着目してここまで文章を書いてきたが、同時進行でGADORO君がしきりに言葉にしてきたのが、MOL53君もディスっているこの裁判所の話だった。

また、2015年の「KOK」で彼が、「元カノに50万円の借金がある」という話をしたのは有名で、「13章」ではGOTITさんにそこを突かれて敗退している。

そんなGADORO君の、屑ネタ(ほかに良い言い方がないか考え中だ)がパワーアップしているという点が、この大会では非常に強かった。

僕はといえばここ数年、1種のバトルインポというか、他人のバトルを観てもそんなに感動しない状態が続いていた。最近、感動したのは「戦極13章」でのMIRIちゃんとk-razy君の試合。「フリースタイルダンジョン」だとGADORO君とQさんの試合くらいだった。
MOL53

MOL53

だけど、この決勝のMOL53君のラップが本当に格好良かったし、久々に純粋な高揚感を得た気がした。

MOL53君のラインが次々と決まる。「お前は家なき子から勉強し直せ。俺は同情で金を貰わないgadoro4 ただ、後攻のGADORO君がまるで甲子園球児が厳し過ぎるノックに耐え、その球をすべて拾おうとするようにガムシャラな姿勢で、言われたこと全てにアンサーを返し続けた

どっちが勝つか全く予想ができなくなっていた。

多分だけど、バトルをすべて文字に起こしたら、言ってる内容はMOL53君の方が勝っているように観えたと思う。しかし、生のバトルは陸上競技のようにゴールテープを切る瞬間を見直したりはできない。この決勝も、どっちにコードボールが落ちてもおかしくなかった。

優勝者から辿ると、この群像劇は綺麗で野太い一本道を真ん中に携えていたことが明確にわかる。

物語の真ん中にいたのは間違いなく、優勝したGADORO君だったgadoro50

フリースタイルブームの先にいた本当の敵

こうして「戦極MCBATTLE15章」は、すべての試合が終わり韻踏合組合のライブにてフィナーレとなった。非常に感慨深いのは、その韻踏合組合のライブにラッパ我リヤが登場したことだ。

そう、「フリースタイルダンジョン」でGADORO君と名勝負をしたQさんが同じステージにいるのである。「ヤバスギルスキル」という曲のシリーズが続く限り、いつかラッパ我リヤ feat.GADOROというクレジットを観れるんじゃないかと個人的に楽しみにしている。
ラッパ我リヤ ヤバスギルスキル
そして、僕がずっと感じていた底の知れない何かの正体が少しずつわかってきた。

いつものコラムやレポートに比べて楽屋ネタが多かったり、ラッパー同士が仲良く見える記事になったのはハハノシキュウらしくない。今まで僕にとっての敵はあくまでラッパーだったし、似たり寄ったりの同じような言葉しか歌詞に使わず、ライトノベルみたいに感じていたヒップホップシーンもある種の敵だった。

だけど、フリースタイルブームの先にいた本当の敵が、コードボールを操作しているお客さんだってことが、この大会でわかってしまったのだ。

本当に言い得て妙だけど、「この大観衆に操作されてたまるか!」と、知らず知らずに僕ら出場者は見えない徒党を組んでいたのかもしれない。僕は、普段話さないラッパーとたくさん話をした。まるで、バイト先の同僚に店長の愚痴を話すように。

帰り際に僕の肩に誰かの手が乗った。その手はまさかのKENさんだった。

KENさんの方からこんな風に話しかけてくれるなんて、ずっと想像できなかったし、これもまたバトルが生んだ奇跡に思えた。

KENさんは去り際にこう言った、倒置法で。

今日はほんと良かったよ! お前と当たんなくて
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ハハノシキュウ // ハハノシキュウ

ラッパー

青森県弘前市出身のラッパーであり、作詞家、コラムニストなどの顔も持つ。MCBATTLEにおける性格の悪さには定評があり、優勝経験の少なさの割には高い知名度を誇っている。2015年にはおやすみホログラムとのコラボをはじめ、8mm(八月ちゃんfromおやすみホログラム×MC MIRI fromライムベリー)の作詞を手掛け、アイドル界隈でもその知名度を上げている。また、KAI-YOUにてMCBATTLEを題材にしたコラムの連載を開始、文筆の世界においても実力に伴わない知名度を上げようとしている。現在、処女作『リップクリームを絶対になくさない方法』、DOTAMAとのコラボアルバム『13月』に続き、おやすみホログラムのプロデューサーであるオガワコウイチとのコラボアルバムを製作中。

ハハノシキュウ

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イベント情報

戦極MCBATTLE第15章 Japan Tour Final

日程 11月6日(日)

【出場MC】
ACE、MC松島、言xTHEANSWER、呂布カルマ、A-MEN、OSCAR、ENEMY、黄猿、JECT、押忍マン、ぶーちゃん、崇勲、CIMA、じょう、MOL53、GOTIT、ミステリオ、BASE、Lick-G、Amateras、Rude-α、9for、MIRI、MAKA、T-Tongue、ADAM、裂固、鉄ちゃん、SAM、MC ニガリa.k.a赤い稲妻、輪入道、MCたっくん、NAIKA MC、TKda黒ぶち、NIHA-C、JAG-ME、TAIC、スナフキン、KOOPA、LAYGAN、Icerey、8busuru、黒さき海斗、龍道、GOLBY、PONY、句潤、カルデラビスタ、ハハノシキュウ、GADORO、KOPERU、あっこゴリラ、ドイケン、掌幻、マツ、TENGG、PEKO、Dragon One、瑞雲、DOTAMA、KEN THE 390、ERONE、Meiso、漢 a.k.a. GAMI

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この記事へのコメント(3)

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匿名のユーザー

匿名のユーザー

ハハシ文章上手い

匿名のユーザー

匿名のユーザー

ここのコラム見つけてからハハノシキュウ大好きなんだがw

tyanyone

米村 智水 認証済みアカウント

めっちゃ面白いし小説書いて欲しい

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