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  • 2023.02.22

ハハノシキュウが観た「戦極MCバトル15章」の群像劇 ブームの先にいた本当の敵

「僕がずっと感じていた底の知れない何かの正体が少しずつわかってきた」──ハハノシキュウによる2016年開催の「戦極MCBATTLE15章レポート」。

※本稿は、2016年にKAI-YOU.netで掲載された記事を再構成したもの

ハハノシキュウが観た「戦極MCバトル15章」の群像劇 ブームの先にいた本当の敵

クリエイター

この記事の制作者たち

表を学べ  裏を知れ  全体を見ろ
善を学べ  悪を知れ  行動を見ろ
先人に学べ 成功を知れ 過程を見ろ
失敗に学べ 過ちを知れ 馬鹿を見ろ
Shing02「44戒」

戦極MCBATTLE」は、ほかのMCバトルイベントとは毛色が異なる。その最大の違いは、主人公の数だと思う。

2016年、MC MIRIが女性アイドルとしてはじめてMCバトルデビューを飾った時、僕はこのような書き出しからその日のことを綴った。

MC BATTLEイベントの一夜を書き上げるとしたら主人公は誰でもいい

2016年11月6日に行われた「戦極MC BATTLE 15章」には65人のMCが参加した。

※64じゃないの?って思った方もいると思うがその辺は割愛させていただきたい

つまり65通りのバトルレポートを書くことができる。さらに誰目線でそれを語るかという一点を追加すると一気にレポートの種類が増える。

65×65通り? そんなもんじゃない。

お客さんやオーガナイザー、DJやスタッフ、在宅でSNSに噛り付いていたバトルファン、数えたらキリがない目線で、レポートは書き上げられる。

僕は計算が苦手なので、全部で何通りのドラマを書き上げられるのか検討もつかない。

だが、そんな計算に意味はない。それは、「戦極MCBATTLE15章」が群像劇 だからだ。

目次

  1. 優勝するために出場した「UMB」
  2. 「戦極」は群像劇としてのMCバトル
  3. フリースタイルバトルにさまざまな思いを乗せるMCたち
  4. バトルの前から盛り上がる優勝者予想
  5. ハハノシキュウとDOTAMAの楽屋裏
  6. ベストバウトが頻発する「戦極15章」 押忍マン vs KEN THE 390
  7. ハハノシキュウ vs NAIKA MC
  8. MCバトルのトーナメント表はドラマの脚本に近い
  9. 群像劇のストーリーを決定づけた一戦
  10. GADORO vs DOTAMA
  11. MCバトルはコードボールを制すものが勝つ
  12. 導かれるように物語が描かれていく決勝戦 MOL53 vs GADORO
  13. フリースタイルブームの先にいた本当の敵

優勝するために出場した「UMB」

「戦極」との対比のために少しだけ「UMB」(ULTIMATE MC BATTLE)の話をさせてもらう。

「UMB」は優勝候補である主人公と、それを阻止する者、つまりライバルの存在がどの大会よりも明確なのが特徴である。

ハハノシキュウ

ハハノシキュウ

僕は2016年、らしくもなく「UMB東京予選」に自分の意思でエントリーした。それが10月の話だ。

「UMB東京予選」は紛れもなく僕の青春である。そんな東京予選で、僕ははじめて「優勝しないといけない」という自責の念に駆られ、DOTAMAさんに電話をかけた。

どうしたら優勝できますか?」この一言だけでDOTAMAさんには全部伝わったと思う。こんな答えが返ってきた。

「『UMB』は、スキルとか試合の出来とかじゃないんだよね、いかに自分がこの物語の主人公だって思い込むかが全てだと思う。

その点、ハハノシキュウは自分をヒールだと思い込んじゃってるから絶対に優勝できない。逆に、自分が主人公だってお客さんに強く印象付ければ絶対に優勝できる!」

この「UMB東京予選」における主人公は誰なのか、エントリー表を見ながら考えた。メンツから考えるに、それはどう考えても黄猿君だった。

黄猿君は2008年の埼玉準予選から8年ものあいだ、周りのラッパーがいくら辞めていっても毎年出場し続けた。そんな彼に順番が回ってきたかのようなエントリー表だった。

黄猿

黄猿

予選当日、黄猿君は予想通りというか、1回戦からしきりに「東京、俺に背負わせろ!」というラインを多用していた。

そんな彼から主人公の座を奪う手段を1週間考えた結果、こんな結論に達した。

DOTAMAの後釜はハハノシキュウ以外に有り得ない

DOTAMA×ハハノシキュウという連名でアルバムもリリースしている

DOTAMAは去年の東京代表であり、その前にも2度、東京予選で優勝している。DOTAMAが「UMB」に出場しないなら、僕にやらせろ。それしかなかった。

結果を言うと、僕は準決勝で黄猿君に敗退した。

彼の「東京を背負わせろ」が、明らかに色濃くフロアーに残っていた。そして、黄猿君は決勝でカクニケンスケを下し、はじめて東京代表という冠を手に入れていた。

「戦極」は群像劇としてのMCバトル

話を元に戻す。「戦極MCBATTLE 15章」には、僕も黄猿君も出演が決まっていた。

しかし、「戦極」というイベントにおいては、僕はおろか「UMB東京予選」を制した黄猿君ですら主人公としては薄い印象になってしまうくらいに、さまざまな物語の主人公が集結していた。

あんまり好きな言い方じゃないが、「オールスター感謝祭」のようなメンツである。ゲームでいうなら『スマブラ』のようなメンツだ。だから、これは群像劇としてのMCバトルなのである。

戦極MC BATTLE第15章 本戦出場MC
言xTHEANSWER
ACE
MC松島
呂布カルマ
A-MEN
OSCAR
ENEMY
黄猿
JECT
押忍マン
ぶーちゃん
崇勲
CIMA
じょう
MOL53
GOTIT
ミステリオ
BASE
Lick-G
Amateras
Rude-a
9for
MIRI
MAKA
T-Tongue
ADAM
裂固
鉄ちゃん
SAM
MC☆ニガリa.k.a ブラックサンダー
輪入道
MCたっくん
NAIKA MC
TKda黒ぶち
NIHA-C
JAG-ME
TAIC
スナフキン
KOOPA
LAYGAN
Icerey
8busuru
黒さき海斗
龍道
GOLBY
PONY
句潤
カルデラビスタ
ハハノシキュウ
GADORO
KOPERU
あっこゴリラ
ドイケン
掌幻
抹 a.k.a. ナンブヒトシ
TENGG
Peko
DORAGON ONE
瑞雲 the Third
DOTAMA
KEN THE 390
ERONE
Meiso
漢 a.k.a. GAMI
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